青春18きっぷでおすすめの日帰り旅を紹介するシリーズ。今回は常磐線の水戸駅周辺の観光・散策メインの日帰り旅をご紹介します。水戸駅周辺には、日本三大庭園の「偕楽園」、日本最大規模の藩校「弘道館」、復元が進む「水戸城跡」、水戸のオアシス「千波湖」など、観光や散策に適したスポットがたくさんあります。青春18きっぷで都心から片道2時間。乗車時間も適度で、観光を楽しむ時間も十分にあります。
都心から約2時間、常磐線の普通列車で水戸へ
常磐線の一大ターミナル駅、水戸駅。特急列車を利用すれば都心から1時間ちょっとで到着しますが、普通列車を利用しても2時間ほど。青春18きっぷで日帰り旅をするにはちょうどよい距離です。
水戸駅周辺には、日本三大庭園の一つ「偕楽園」をはじめ、偕楽園の南側に広がる「千波湖」など、散策に適した観光スポットがあります。また、水戸駅から徒歩でアクセスできる観光スポットとしても、日本最大規模を誇る藩校「弘道館」や、近年、復元作業が進む「水戸城跡」といった史跡もあります。
青春18きっぷ利用で都心から水戸駅へ往復しても、十分に観光や散策を楽しむことができます。
区間 | 路線 | 備考 |
---|---|---|
東京 → 水戸 | 常磐線 | 普通列車で約2時間 グリーン車がおすすめ※ |
(観光・散策) | 水戸駅周辺の観光・散策 | |
水戸 → 東京 | 常磐線 | 普通列車で約2時間 グリーン車がおすすめ※ |
※常磐線普通列車のグリーン車は、土浦以北では連結されていない時間帯があります。詳しくはこちらをご覧ください。
青春18きっぷで乗車する列車は、東京~水戸間の常磐線の普通列車のみ。片道約2時間ほどです。当ブログの「青春18きっぷ おすすめ日帰り旅」シリーズでお届けしているルートとしては短めですが、東京~水戸間の片道運賃は2,310円。青春18きっぷ1日分(2,410円)の元を片道だけで取れてしまいます。
常磐線普通列車のグリーン車は時間帯に注意!
常磐線の普通列車で都心から水戸駅へ向かう場合には、青い帯の入った「E531系」という電車に乗車します。取手以南で運転されている緑色の帯の入った列車ではありませんので注意しましょう。
常磐線の取手駅より北側(水戸方面)に直通する普通列車には、普通列車グリーン車が連結されています。都心から水戸駅までは約2時間かかりますので、グリーン車の利用をおすすめします。土休日はホリデー料金800円で乗車できます。
普通列車グリーン車については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
ただし、注意したい点があります。常磐線の普通列車グリーン車は、2022年のダイヤ改正でサービス時間が縮小されてしまい、日中時間帯には土浦~水戸・勝田間でグリーン車が連結されていない時間帯があります。
2023年3月改正ダイヤでは、常磐線のグリーン車の連結に関しては、おおむね以下のようになります。
- 下り(上野→水戸)
- 始発~7時頃: グリーン車あり(水戸・勝田への直通列車)
- 7時台~13時台前半: グリーン車なし(土浦で乗り換えまたは切り離し)
- 13時台後半~終電: グリーン車あり(水戸・勝田への直通列車)
- 上り(水戸→上野)
- 始発~9時台: グリーン車あり(土浦以南への直通列車)
- 10時台~15時台前半: グリーン車なし(土浦で乗り換え)
- 15時台後半~終電: グリーン車あり(土浦以南への直通列車)
※時刻は、下り列車は上野発車時点、上り列車は水戸発車時点
特に注意したいのが朝の下り列車です。上野駅発7時台~13時台後半の時間帯は、土浦以北ではグリーン車の連結がありません。水戸駅までグリーン車に乗車したい場合には、午前6時台(2023年改正ダイヤでは 上野発07時02分発の列車まで)の列車に乗車しましょう。
水戸駅周辺の観光・散策スポット
水戸駅周辺の観光スポット、散策スポットを紹介します。ここで紹介するコースは、2023年春の「水戸の梅まつり」の時期に、春の青春18きっぷで水戸駅に到着後、筆者が実際に歩いたコースです。
日本三大庭園の一つ「偕楽園」
水戸といえば、まずは「偕楽園」ですね。兼六園(金沢)、後楽園(岡山)と並んで、日本三大庭園の一つに数えられています。1842年、水戸藩の第九代藩主 徳川斉昭が、民と偕に(ともに)楽しむための場として創設しました。
偕楽園といえば、2月~3月に開催される「水戸の梅まつり」が有名です。偕楽園本園内(有料エリア内)にある「東西梅林」では、約100品種、3,000本にも及ぶ梅が植えられていて、遊歩道を散策しながら観梅を楽しむことができます。
偕楽園の観梅については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。水戸駅から偕楽園への路線バスでのアクセスについても紹介しています。
そんな偕楽園ですが、Webサイトによると、「陰」と「陽」の世界を感じながら歩くことのできるおすすめのルートがあるそうです。今回、実際にそのルートどおりに歩いてみましたので、簡単に紹介します。
スタートは、偕楽園の北東側にある「表門」です(地図A)。松の木が多く使われていて黒っぽく見えることから「黒門」とも呼ばれているそうです。
偕楽園の「表門」へは、水戸駅から茨城交通10番の路線バスに乗車して、「好文亭表門入口」バス停で下車、徒歩5分です。表門にある料金所で入園料の200円を支払って入園します。
表門を入って遊歩道を歩くと、すぐに竹林に入っていきます。非常に太くて高い竹に圧倒される「孟宗竹林」です(地図B)。孟宗竹は日本では最大の竹類なのだそうです。
遊歩道の左側には孟宗竹林、右側には大杉林が続き、竹と杉で日が遮られた「陰」の世界を感じることができます。
孟宗竹林を抜けたところで、遊歩道から右に階段を下っていくと「吐玉泉」(とぎょくせん)があります(地図C)。常陸太田産の白色の大理石でつくられた自水泉です。
地形の高低差を利用した自水泉で、現在の泉石は4代目なのだそうです。
吐玉泉のすぐ横には、樹齢800年以上とも言われている杉の巨木「太郎杉」があります。かつては、太郎杉以外にも杉の巨木が並んでいて、大きい順に「五郎杉」まで名づけられていたそうですが、現在残っているのはこの「太郎杉」だけです。
近くでみるとわかりますが、幹がとても太くて巨大です。その大きさに圧倒されてしまいました。
遊歩道に戻り、先に進むと、木造三階建ての「好文亭」があります(地図D)。好文亭は、藩主の徳川斉昭自らが設計した別邸で、藩内の人々を集めて詩会や慰安会を開催したのだそうです。
好文亭の敷地内には、入場料200円を支払って入ります。「好文亭」の建物の中も見学することができ、三階からは、見晴広場やその横にある梅林を一望できます。この眺めが、孟宗竹林や大杉林の「陰」と対比される「陽」の世界なのだそうです。
と、こんな感じで、「陰」から「陽」へと至るおすすめのルートを歩いてみました。
偕楽園の南側に広がる水戸のオアシス「千波湖」
偕楽園を散策し終えたら、路線バスで水戸駅へ戻ってもよいですが、時間があれば、偕楽園の南側に広がる「千波湖」を散策するのがおすすめです。
千波湖は古那珂川がせき止められてできた堰止湖です。現在は、北側を流れる桜川とは隔離されて、閉鎖された湖となっています。
千波湖の周囲には散策路が通っていて、湖を眺めながら歩くことができます。カモやハクチョウなどの野鳥が多く、散策路の真ん中で堂々と寝ている野鳥もいます。
千波湖の西側にはカフェ「好文カフェ」(地図E)もあり、ランチ休憩にも向いています。
千波湖周辺は、観光客だけでなく、市民の憩いの場になっているようです。のんびりと散策をされている方もいれば、千波湖の周りをランニングしている方も見かけました。
千波湖に沿って、西側から東側へと歩いていけば(地図F)、水戸駅の近くまで行くことができます。
千波湖、千波公園については、以下の水戸市公園協会のWebサイトをご確認ください。
また、千波湖・千波公園の周辺には、博物館や美術館が多くあります。今回は立ち寄りませんでしたが、興味のある方は、散策ルートに加えてみても良いでしょう。
千波公園の西側にある「徳川ミュージアム」には、水戸徳川家の史料や所蔵品が展示されています。徳川家康の遺品や、第2代藩主徳川光圀が編纂した「大日本史」の草稿など、貴重な史料が展示されています。
千波湖の南東側には「茨城県近代美術館」があります。
日本最大規模の藩校「弘道館」
千波湖の東岸にある千波大橋で桜川と常磐線を渡って約15分で、水戸城三の丸広場にある「弘道館」に到着します(地図G)。
弘道館は、偕楽園と同じく、第九代水戸藩主 徳川斉昭が開設した旧水戸藩の藩校です。藩校としては日本最大規模の敷地面積を誇っていたそうです。現在は、正庁と至善堂などが重要文化財として保存されており、建物の中を見学することができます。
道路から入ってすぐのところに「正門」があります。この正門も重要文化財に指定されています。正門の横にある料金所で、大人300円の入園料を支払って入園します。
正庁と至善堂は建物の中を見学できます。「正庁」は弘道館の中心的な建築物で、藩主が臨席して文武の試験や儀式などが行われたそうです。一方、「至善堂」は、藩主の休息所や、諸公子の勉学の場として使われていたそうです。
いずれも、学問の場ということもあってか、華美な装飾などはあまりなく、落ち着いた和室が多い印象です。
正庁と至善堂のまわりは梅林と散策路が整備されています。梅の時期に訪れれば、観梅を楽しむこともできます。
復元が進む水戸城跡を散策
弘道館は水戸城の三の丸にありますが、その周辺は水戸城跡として整備されています。最近は、水戸城大手門や二の丸角櫓などが復元されています。
弘道館の入口の近くには、上の写真の「水戸城大手門」があります(地図H)。水戸城で最も格式の高い、いわゆる「正門」でした。現在の大手門は、令和2年に、天保年間の姿で復元されたものです。
大手門の四隅には大きな瓦塀(練塀)があります。練塀は、泥土と瓦を交互に何段にも積み重ねて築かれた塀です。復元された大手門は、当時の瓦塀を覆うようにして復元されていて、この小窓から、かつての練塀を見学することができます。
大手門を入ってすぐのところに、「旧水戸彰考館跡」があります。彰考館(しょうこうかん)は、第二代藩主 徳川光圀が「大日本史」の編集をしていた建物です。当初は江戸小石川の藩邸内にあったそうですが、1698年に水戸城内のこの場所に移したのだそうです。
彰考館の建物は残っておらず、現在は水戸市立第二中学校の敷地になっています。
旧水戸彰考館跡の道を真っすぐ進むと、右手に「水戸城二の丸角櫓」への入口があります。ここを入って、通路を5分ほど歩くと……
2021年(令和3年)に復元されたばかりの「水戸城二の丸角櫓」があります(地図I)。水戸城には四つの角櫓があるそうですが、そのうちの一つが「二の丸角櫓」です。
角櫓の中に入ることができて、内部には、水戸城の歴史や、大手門・二の丸角櫓の復元に関する資料が展示されています。
道路まで通路を戻り、先へ進みます。道路左手に「二中見晴台」への入口があります。通路を歩くと、すぐにベンチが置かれた見晴台に到着します。
台地になっている水戸城跡の北側を流れる那珂川を一望できます。那珂川が水戸城北側の天然の掘になっていることがよくわかりますね。那珂川に架かるコンクリートの橋は、JR水郡線の「那珂川橋梁」です。
JR水郡線の上を渡ると、茨城県立水戸第一高等学校があります。その敷地内に「旧水戸城薬医門」があります(地図J)。水戸城跡では貴重な現存する門です。この門は水戸城の本丸橋詰門であると考えられていて、1981年に現在の場所に移設されたのだそうです。ちなみに、この場所が水戸城本丸跡なのだそうです。
水戸城跡の三の丸や二の丸には、中学校や高等学校、図書館などがあり、現在でも「学問の場」として受け継がれています。そのためもあってか、この界隈はとても雰囲気がよく、散策するのにピッタリです。
ということで、水戸城跡のスポットを歩いてきました。弘道館から各スポットを巡りながら水戸駅へと戻るコースですので、弘道館とセットで訪問されることをおすすめします。
乗り鉄向けには「ひたちなか海浜鉄道」「水郡線」もおすすめ!
今回の青春18きっぷ日帰り旅のルートでは、水戸駅周辺での観光・散策をメインに紹介していますが、常磐線だけでなく、もう少し鉄道に乗りたい! という乗り鉄の方向けには、水戸駅の一つ先、勝田駅から「ひたちなか海浜鉄道」の訪問をおすすめします。
ひたちなか海浜鉄道は勝田~阿字ヶ浦間の14.7kmを結ぶローカル線です。終点の阿字ヶ浦駅の近くにある「ひたち海浜公園」や、中心駅となる那珂湊駅から徒歩圏内にある「那珂湊おさかな市場」など、沿線の観光・グルメスポットも充実しています。
ひたちなか海浜鉄道については、以下の記事をご覧ください。
また、水戸駅から水郡線に乗車するのもおすすめです。水戸駅周辺の観光とあわせるなら、水郡線で郡山駅まで乗りとおしてしまうと当日中の帰京が難しくなりますので、袋田駅で途中下車して袋田の滝を訪ねるくらいがよいかと思います。以下の記事では、水郡線を含めた日帰り周遊ルートを紹介していますので、ぜひご覧ください。
水戸駅から都心方面への帰路として、常磐線を戻るのではなく、別のルートで乗り鉄を楽しみたいという方には、水戸駅から鹿島臨海鉄道~JR鹿島線~成田線というルートがおすすめです。
鹿島臨海鉄道 大洗鹿島線は、水戸駅~鹿島サッカースタジアム駅を結ぶ非電化路線です。「臨海鉄道」ではありますが、車窓から海は見えません。その代わり、長閑な田園風景と、沿線に点在する湖沼群を眺めながら、のんびりとした旅を楽しめる路線です。
JR鹿島線は、利根川の下流域、水郷地帯を走る鉄道です。高架から、まるで湖のような川幅の広い利根川を渡る様子を楽しむことができます。
以上、『【常磐線】偕楽園・弘道館・水戸城跡、観光・散策メインの日帰り旅! ~青春18きっぷ おすすめ日帰り旅10~』でした。水戸駅周辺の観光・散策を目的に、青春18きっぷでの旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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