東京(首都圏)発着の青春18きっぷ日帰り旅のルートとして、筆者が一番おすすめしたいのが、「小海線周遊ルート」です。高原列車、小海線の車窓はもちろんのこと、小海線以外の路線もバラエティに富んでいて、飽きることがありません。
夏の青春18きっぷ日帰り旅には絶対におすすめのルート、「小海線周遊ルート」をご紹介します。
1日分余った青春18きっぷ、どうしてますか?
毎年夏になると、青春18きっぷを1枚購入して汽車旅に行くのですが、会社勤めで夏休みも限られていると、たいていは2泊3日、長くて3泊4日くらいの行程になることが多いです。
そうなると、青春18きっぷが1日分余るのですよね。基本的に「乗り鉄」なので、青春18きっぷで4日も旅をすれば、十分に元はとっているのですが、使い切らないうちに青春18きっぷ期間が終了してしまうのももったいない! ということで、日帰りでの青春18きっぷ旅ルートの考案に余念がありません(笑)
この記事では、そのルートの一つ、首都圏から小海線に乗りに行く周遊ルートをご紹介します。個人的にはイチオシのルートで、筆者は何度もこのルートで旅をしています。
青春18きっぷ 日帰り「小海線周遊ルート」
まず、ルートをざっと紹介します。
区間 | 路線 | 備考 |
---|---|---|
東京 → 小淵沢 | 中央本線 | 高尾(甲府)で乗り換え |
小淵沢 → 小諸 | 小海線 | |
小諸 → 軽井沢 | しなの鉄道 | 青春18きっぷで乗車不可 (500円) |
軽井沢 → 横川 | JRバス関東 | 青春18きっぷで乗車不可 (520円) |
横川 → 高崎 | 信越本線 | |
高崎 → 東京 | 高崎線 | グリーン車がおすすめ! |
東京(首都圏)から甲信地方の東部を経由して戻ってくる周遊ルートです。しなの鉄道とJRバス関東には、青春18きっぷでは乗車できませんので、別途運賃を支払う必要がありますが、それでも青春18きっぷ1日分+1,020円でおさまります。
何度か実践していますが、日帰りルートにしてはかなり距離がありますので、朝は早めに出発しましょう。山間部の車窓が美しいルートなので、景色を楽しみたいのなら、雲が湧く前の午前中が狙い目です。
車窓が抜群によい「小海線周遊ルート」を紹介!
「小海線周遊ルート」の各路線の様子を、車窓を中心に紹介します。途中下車して立ち寄りたいスポットもあわせて紹介しますので、自由にアレンジして楽しんでいただければと思います。
【中央本線】実は屈指の山岳路線!(東京 → 小淵沢)
中央本線は、日本でも有数の山岳路線です。都心に近い「中央快速線」(東京~高尾)の区間しか乗ったことがないと、どこが山岳路線なのかと思ってしまいますが、いわゆる通勤電車の終点となる高尾駅から先に行くと、一気に山の中に分け入っていきます。
トンネルも多くなり、列車のスピードも遅くなります。東京駅ではほぼ海抜ゼロメートルですが、次第に高度を上げていきます。最初のピークは、大月を出た後、初狩~笹子間あたりで標高は600メートルにもなります。高尾駅のあたりでは高尾山は山に見えますが、このあたりまでくると高尾山の山頂とほぼ同じ高さなのですね。
勝沼ぶどう郷駅付近までくると、一気に視界が開けてきて、一面ブドウ畑が広がります。眼下には甲府盆地を一望することができます。次第に高度を下げ、周囲に住宅が増えてくると、まもなく甲府に到着です。
甲府駅を出ると、中央本線の列車は、またどんどんと高度をあげていきます。小海線への乗換駅となる小淵沢駅までずっと登り坂です。乗車している分には勾配を感じることはありませんが、車窓を見ていると、どんどん高いところへ進んでいくのがわかります。左側には南アルプスと、その奥に富士山が、右側には八ヶ岳を望むことができます。
小淵沢駅は標高900メートル弱。東京では猛暑日でも、小淵沢駅に下車すると、高原の涼しさを感じることができます。
【小海線】日本一の高原鉄道! 野辺山高原と千曲川が見どころ!(小淵沢 → 小諸)
小淵沢駅で小海線に乗り換えです。普通列車でも十分に楽しめる小海線ですが、全線乗りとおすのであれば、観光列車「HIGH RAIL 1375」がおすすめです。
午前中は小淵沢発小諸行きの「HIGH RAIL 1号」、午後は逆向きの「HIGH RAIL 2号」、夜には野辺山駅前で星空観察会のイベントもある「HIGH RAIL 星空号」になります。車窓を楽しみたいのなら1号か2号がおすすめです。
小淵沢駅を出ると、大きなカーブを描きながら、一気に勾配を登っていきます。ディーゼルカーのエンジンがずっと唸り続けているのがわかります。
清里駅を出てしばらくすると、一気に視界が開けます。野辺山高原です。小淵沢駅を出発してから、ずっと唸り続けていたディーゼルカーのエンジン音が止むと、そこが標高1375メートルの「JR鉄道最高地点」です。
車窓には、高原野菜の畑の向こうに八ヶ岳を望むことができます。このあたりが小海線の車窓のハイライト! 存分に車窓を堪能しましょう。
日本一標高の高いJR駅、野辺山駅から先は千曲川に沿って進んでいきます。何度も千曲川を渡り、車窓の右に左に、その流れを眺めることができます。
千曲川が見えなくなり、再び視界が開けたところに出ると、佐久盆地(佐久平)です。盆地に広がる田園風景の向こうに、浅間山を見ることができます。浅間山の姿が大きくなってくると、まもなく終点の小諸に到着です。
「HIGH RAIL 1375」の車内の様子や、指定席券の予約・購入方法については、以下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
また、小海線に関するまとめページに、車窓や観光スポット、おすすめの列車などを紹介している記事を集めています。以下のリンクからご覧ください。
【小諸散策】懐古園散策とランチ!
小諸駅でしなの鉄道の普通列車に乗り換えますが、1本列車を見送って、駅のすぐ近くにある「小諸城址 懐古園」を散策しましょう。小諸城は、周囲の城下町より低い位置に築城された珍しい「穴城」で有名です。懐古園には400年前に建てられた「大手門」や石垣などが残っています。
朝早く東京を出て、小淵沢駅から小海線に乗ると、小諸駅に着いたあたりでランチタイムになります。小諸駅といえば「小諸そば」。小諸そばの有名店「草笛」本店が、小諸駅から徒歩圏内にあります。
おすすめは「くるみそば」。くるみペーストがお椀に入って出てきますので、そばつゆを入れて溶いてからいただきます。蕎麦の量はかなり多め。一緒にかき揚げを注文しましたが、こちらも大きめ。かなりおなかいっぱいになりました。
人気のお店なので、週末は混雑する可能性があります。時間に余裕をもって訪れることをおすすめします。
【しなの鉄道】優美な浅間山を眺めながら軽井沢へ(小諸 → 軽井沢)
小諸駅からはしなの鉄道線に乗車して軽井沢駅へ向かいます。もともと信越本線だった路線ですが、北陸新幹線(当時は長野新幹線)開業時に第三セクターの「しなの鉄道」に引き継がれました。青春18きっぷでは乗車できませんので、券売機で500円のきっぷを購入します。
しなの鉄道の列車は115系という古い電車です。カラーリングが違いますが、以前は東海道線などにも走っていた型式の電車ですね。(最近は新型車両に置き換えられつつあります)
しなの鉄道では、軽井沢~小諸と、小諸~長野(篠ノ井~長野はJR線に乗り入れ)で分離されている列車が多く、小諸駅から乗車する場合には、始発の列車に乗車することができます。
小諸駅を出ると、進行方向左側の車窓には、浅間山がよく見えます。軽井沢駅までは25分ほどで到着しますが、小諸駅からはずっと勾配を登っていきます。小諸駅の標高は約663メートル、軽井沢駅の標高は約940メートルですので、300メートル弱も登っていくことになります。しなの鉄道のこの区間も、なかなかの山岳路線なのです。
週末になると、終点の一つ手前の中軽井沢駅からは観光客も乗車してきて、車内は混雑します。
【ジェイアールバス関東 碓氷線】かつての横軽の代替バス(軽井沢 → 横川)
軽井沢駅からは路線バスで移動です。北陸新幹線開業前までは、軽井沢~横川間は鉄道でつながっていました。碓氷峠という峠を越えるのですが、ものすごい急勾配で、特急列車や普通列車に、この区間専用の電気機関車を連結して峠越えをしていました。一度だけ乗車したことがありますが、体感的にも勾配がわかるほどでした。
1997年に北陸新幹線が開通すると同時に、この区間の鉄道は廃止され、ジェイアールバス関東が運行するバス路線に転換されました。「ジェイアールバス」ですが、バス路線ですので青春18きっぷでは乗車できません。乗車時に520円の運賃を支払います。
軽井沢駅北口のバスターミナルの5番乗り場に行くと、すぐにバスがやってきました。乗り込むとすぐに発車です。青春18きっぷの時期には、かなり混雑しますので、早めにバス停に行って並んでおいたほうがよさそうです。観光バスタイプの車両ですので、定員を超えると乗車できない可能性があります。
バスは、軽井沢駅の北口を通る中山道(国道18号)を西に進み、新軽井沢の交差点を左折、県道43号線を南下します。沿線には、ショッピングモールやゴルフ場、リゾートホテルなどが立ち並び、これぞ軽井沢という雰囲気です。
南軽井沢の交差点を左折、碓氷バイパス(国道18号)を東へ進みます。ここから、峠を一気に下っていきます。碓氷バイパスが超えるのは碓氷峠ではなく、長野・群馬県境にある「入山峠」です。急カーブが続くつづら折りの道を下っていくと、車窓には、上毛三山の一つ「妙義山」が見えてきます。乗車時間は短いですが、かなり急カーブが連続して左右に揺さぶられますので、乗り物酔いをする方は要注意です。
35分ほどの乗車で、横川駅前に到着しました。標高940メートルの軽井沢駅から、標高387メートルの横川駅まで一気に下ってきたことになります。軽井沢駅では多少の涼しさを感じましたが、横川駅は猛暑でした…。
ジェイアールバス関東の碓氷線については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
【信越本線】群馬の名峰、妙義山を眺めながら高崎へ(横川 → 高崎)
横川では、駅のすぐ近くにある「碓氷峠鉄道文化むら」を訪問しましょう。ここは、先ほど述べた軽井沢~横川間の碓氷峠越えの区間が廃止されたあとに、横川駅にあった車両基地(横川運転区)の跡地に建てられたテーマパークです。
碓氷峠の歴史を伝える展示や、碓氷峠になじみの深い車両がたくさん展示されています。鉄道ファンであればもちろんのこと、そうでなくても楽しめます。このルートで旅をするのであれば、是非寄り道しておきたいスポットですね。
「碓氷峠鉄道文化むら」の訪問記は、以下の記事をご覧ください。
また、横川駅周辺の(鉄道ファン向け)観光スポットについては、以下の記事もご覧ください。
さて、横川駅からは、高崎行きの普通列車に乗車します。信越本線は、もともと高崎~新潟を長野経由で結んでいた路線ですが、現在では、
- 高崎~横川(信越本線)
- 横川~軽井沢(鉄道廃止、JRバス関東が路線バスを運行)
- 軽井沢~篠ノ井(しなの鉄道に移管)
- 篠ノ井~長野(信越本線)
- 長野~妙高高原(しなの鉄道に移管)
- 妙高高原~直江津(えちごトキめき鉄道に移管)
- 直江津~新潟(信越本線)
というように、ばらばらになってしまいました。JR信越本線として残っている区間は3つに分断されてしまっています。横川~高崎は、そんな信越本線のもっとも南側(東京寄り)の部分にあたります。
横川駅にやってきたのは211系のロングシートの電車。4両編成です。いまや群馬県のローカル線となってしまった信越本線ですが、複線電化のまま利用されています。各駅のホームはかなり長く、かつて、正真正銘の「幹線」だった時代を思い起こさせます。
横川駅を出ると、関東平野の縁に沿って群馬県内を東へ進みます。横川駅のすぐ近くでは、妙義山を見ることができます。次第に平野部に入り、視界が開けてきます。次第に建物が増えてくると、高崎駅に到着です。
【高崎線】関東平野を南下(高崎 → 新宿・東京)
高崎駅からは、高崎線に乗り換えて東京へ戻ります。高崎駅から都心までは1時間半~2時間程度の乗車となるので、グリーン車に乗っても良いでしょう。土休日であれば、青春18きっぷにプラスして800円(※2024年3月16日以降は1,550円)で乗車できます。高崎線など、JR東日本の首都圏の普通列車に連結されているグリーン車については、以下の記事をご覧ください。
さて、あとはグリーン車でのんびりと帰宅するだけです。横川駅や高崎駅では、有名な「おぎのや」の駅弁「峠の釜めし」が売られています。帰りのグリーン車の中でいただくのがおすすめです。
「小海線周遊ルート」各自でアレンジして楽しもう!
青春18きっぷの旅とはいえ、ずっと列車に乗りっぱなしだと疲れてしまうので、途中で「ちょい観光」を挟むとよいでしょう。この記事では、小諸の「小諸城址 懐古園」と、横川の「碓氷峠鉄道文化むら」を観光しましたが、各自でアレンジして楽しむこともできます。
軽井沢でショッピングや観光をして、帰りは北陸新幹線に乗ってしまうのもアリです。(青春18きっぷでは乗れませんので、別途、乗車券+特急券が必要です)
また、このルートの場合、東京~小淵沢の4時間の中央本線が難所になります。小海線、信越本線、高崎線だけでも青春18きっぷ1日分の元は十分に取れますので、少し出費は増えますが、小淵沢駅まで特急「あずさ」を利用するとだいぶ楽になります。
以上、青春18きっぷでも日帰りで旅ができる「小海線周遊ルート」をご紹介しました。青春18きっぷで旅をする人には有名なルートなのですが、小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」が登場したことで、さらに魅力が増しました。青春18きっぷが1日分余ったら、是非このルートで日帰りの青春18きっぷ旅を楽しんでみてください。
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