房総半島の真ん中を横断する私鉄「小湊鉄道」と「いすみ鉄道」に乗車する青春18きっぷ日帰り旅ルートをご紹介します。東京のすぐ近くなのに、古いディーゼルカーやトロッコ列車に乗車できたり、長閑な風景を眺めたり、旅情たっぷりのルートです。
青春18きっぷで日帰り「房総半島横断ルート」
今回ご紹介するルートは、千葉県の房総半島を横断するルートです。「小湊鉄道」「いすみ鉄道」という2社が運行する鉄道路線に乗車します。この2社はJRとは別の会社ですので、「青春18きっぷ」では乗車できません。それでも、東京からの往復にJR線を利用するだけで、十分に元が取れてしまいます。
東京駅発着の場合は、以下のようなルートになります。
区間 | 路線 | 備考 |
---|---|---|
東京 → 五井 | 総武快速線 ・内房線 |
君津行きに乗車すれば 乗り換えなし |
五井 → 上総中野 | 小湊鉄道線 | 古い気動車に乗車! 養老渓谷で散策 |
上総中野 → 大原 | いすみ鉄道 いすみ線 |
古い気動車に乗車! 大多喜城・城下町を散策 |
大原 → 千葉 | 外房線 | |
千葉 → 東京 | 総武快速線 |
房総半島を西から東へ抜けるルートですが、もちろん逆向きでも成り立ちます。
また、神奈川県から房総半島へアクセスするなら、久里浜港~金谷港を結ぶ東京湾フェリーもおすすめです。小湊鉄道の起点駅、五井駅へのアクセスにも利用できます。
上のルートの、東京→五井の総武快速線・内房線を、東京湾フェリー→内房線に置き換えることができます。移動にも変化をつけたい場合はおすすめです。詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
「小湊鉄道」「いすみ鉄道」とは?
日帰り旅のメインとなる小湊鉄道といすみ鉄道について、簡単に紹介しておきましょう。
小湊鉄道「小湊鉄道線」
小湊鉄道は千葉県市原市に本社を置く鉄道・バス会社です。鉄道路線は、JR内房線の五井駅と、房総半島内陸部の上総中野駅を結ぶ「小湊鉄道線」だけです。全長39.1kmの非電化路線で、全線に渡って単線です。
五井から途中の上総牛久までは、列車の本数が比較的多く、千葉方面への通勤・通学路線の役割を担います。一方、上総牛久から先の内陸のほうは、1~2時間に1本程度の本数しかなく、ローカル線の色合いがグッと濃くなります。
小湊鉄道線は、キハ200形という1961年~1977年にかけて製造された気動車で運行されています。国鉄のキハ20形気動車に準じていますが、今となってはとても古い車両です。古い気動車での旅を楽しむことができます。
いすみ鉄道「いすみ線」
いすみ鉄道は、千葉県夷隅郡に本社を置く第三セクターの鉄道会社です。鉄道路線は、JR外房線の大原駅と、小湊鉄道の終点駅でもある上総中野駅を結ぶ「いすみ線」のみです。全長26.8kmの非電化・単線です。
この大原~上総中野間は、かつては国鉄木原線でしたが、国鉄の分割民営化時にJR東日本からいすみ鉄道が引き継ぎました。キハ58やキハ28という、現在ではほとんど見られなくなった古い気動車をJRから譲り受けて走らせています。
房総半島縦断ルートへのアクセスとおすすめのきっぷ
ここでは、過去、実際にこのルートで旅をした経験から、小湊鉄道・いすみ鉄道へのアクセス方法や、おトクなきっぷ、汽車旅+「ちょい観光」の見どころなどを紹介していきます。
小湊鉄道・いすみ鉄道へのアクセス
前述のように、小湊鉄道へはJR内房線の五井駅から、いすみ鉄道へはJR外房線の大原駅から乗車することができます。内房線、外房線ともに起点は千葉駅ですので、東京方面からは総武快速線、総武線(各駅停車)などでアクセスできます。
総武快速線には、本数は少ないですが、内房線や外房線に直通する列車があります。
- 内房線直通 君津行き: 東京駅から五井駅まで乗り換えなし
- 外房線直通 上総一ノ宮行き: 上総一ノ宮駅で乗り換え
総武快速線は、横須賀線からの直通列車が多くあります。グリーン車(自由席)も連結されていますので、普通列車用のグリーン券を購入すれば、青春18きっぷとあわせて乗車できます。東京駅からなら1時間~1時間半弱、横浜駅からはさらに30分程度余計にかかりますので、グリーン車の利用を考えてみてもよさそうです。
普通列車のグリーン車については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
外房線直通の列車は、終点の上総一ノ宮駅で乗り換えが必要ですが、乗り継ぎを考慮したダイヤになっていますので、さほど待つことなく乗り継げます。
おトクなきっぷ「房総横断記念乗車券」
小湊鉄道といすみ鉄道を乗りとおす場合には、「房総横断記念乗車券」がおすすめです。
- きっぷ名: 「房総横断記念乗車券」
- 乗車できる区間
- 五井駅で購入: 五井(小湊鉄道) → 大原(いすみ鉄道)
- 大原駅で購入: 大原(いすみ鉄道) → 五井(小湊鉄道)
- きっぷの効力: 途中下車可能、前進のみで後戻りはできない
- 有効期間:1日(購入した当日限り)
- 発売箇所
- 小湊鉄道: 五井駅ホーム事務所・各駅自動券売機・車掌
- いすみ鉄道: 大多喜駅(窓口)・大原駅(売店、券売機)・列車内(乗務員)
- 価格: 大人2,000円,小人1,010円
小湊鉄道、いすみ鉄道の両方に乗車できる乗車券です。途中下車はできますが、後戻りはできないという面白いきっぷです。まさに、房総半島を横断するためのきっぷですね。
ちなみに、五井~大原間は、普通にきっぷを購入すると2,170円になりますので、単純に乗りとおすだけでも170円おトクになります。途中下車すれば、さらにお得度は増しますね。
詳しくは、各社のお得なきっぷのページをご覧ください。
房総半島横断ルートの車窓と観光スポット
小湊鉄道(小湊鉄道線)といすみ鉄道(いすみ線)の車窓とおすすめの観光スポットをご紹介します。
小湊鉄道の車窓と観光スポット
五井駅から小湊鉄道の気動車に乗り込みます。小湊鉄道では、上の写真のようなキハ200形という気動車が主力で、製造されてから40~50年を経た古い車両です。車内は長いロングシートです。また、キハ200形に加えて、2021年からJRのローカル線で活躍していた「キハ40形」も導入されています。
小湊鉄道で五井駅を出ると、しばらくは住宅地と田畑が交互に車窓を飾ります。房総半島を「横断」というと、東京湾側の五井から東のほうへ進みそうですが、小湊鉄道は「南下」します。
列車の本数が多い上総牛久駅を過ぎると、次第に車窓に山地が迫ってきます。途中、養老川という東京湾に注ぐ川を何度か渡ります。というより、小湊鉄道は、この養老川沿いに敷かれていると言ってよいでしょう。
高滝湖というダム湖を過ぎると、さらに山深い車窓に変わってきます。紅葉とハイキングの名所として知られる養老渓谷を過ぎると、終点の上総中野に到着です。
途中下車して観光したい場合には、養老渓谷がおすすめです。ハイキングや滝めぐりができますが、養老渓谷駅から離れているので、「ちょい観光」という感じではありません。少し多めに時間を確保したほうがよいでしょう。
土休日なら小湊鉄道「房総里山トロッコ」もおすすめ!
土休日のみですが、小湊鉄道の上総牛久~養老渓谷間(一部は五井発着)には、「房総里山トロッコ」というトロッコ列車が運転されています。
SLの形をしたディーゼル機関車が、4両の小さなトロッコ客車を牽引します。2号車と3号車は窓のない展望車。トロッコ列車に乗車するのであれば、この展望車に乗りたいところですね。
「房総里山トロッコ」に乗車するためには、乗車券のほかに、トロッコ指定席券(1乗車600円)が必要です。乗車日の前日まで、小湊鉄道のWebサイトで予約できます。空席があれば当日券も発売されますが、確実に乗車したければ、Webサイトで事前購入をしておいたほうがよいでしょう。
「房総里山トロッコ」の乗車記や指定席券の購入方法、最新のダイヤ等については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
いすみ鉄道の車窓と観光スポット
上総中野でいすみ鉄道の普通列車に乗り換えます。どうしてこんな山奥で2社の鉄道会社が接続しているのかと思えるほどの駅です。
しばらくは山地に囲まれた谷を走っていきます。川を何度も渡りますが、先ほどの養老川とは違う「夷隅川」という川です。養老川は東京湾に注いでいますが、夷隅川は太平洋へ流れていきます。小湊鉄道といすみ鉄道の境界駅の上総中野あたりが、房総半島の分水嶺となっているのですね。
次第に視界が開けてくると、沿線の中心駅、大多喜(おおたき)駅に到着です。
大多喜駅は、大多喜町の中心駅です。駅から徒歩15分ほどのところに、大多喜町のシンボルとも言うべき大多喜城があります。大多喜城は、徳川四天王の一人である本田忠勝が築城したことで有名です。現在の天守閣は、当時のものではなく、本丸跡に建てられた天守閣風の博物館です。
※令和3年12月から施設改修のため当面の間休館となっていますので、ご注意ください。
お城があれば、城下町があります。大多喜で途中下車して、昔ながらの建物が残る大多喜の町を歩いてみましょう。駅から徒歩圏内に、当時の面影を残す古い建物が多く残っています。
土蔵造りの建物を改修した「商い資料館」です。「商いと城下町のくらし」をテーマにした資料館で、江戸時代の商家を再現しています。当時の生活道具や商売道具なども展示されています。入場無料ですので、気軽に寄ってみましょう。
現役の酒屋さんです。こちらも時代を感じさせる建物ですね。
大多喜駅にはいすみ鉄道の車両基地があります。車両基地に止まっている気動車と、並行する道路にかかる大きな門をパチリ。
暗くてわかりにくいですが、門には「房総の小江戸」と書かれています。
大多喜駅に戻って、いすみ鉄道の旅を続けましょう。大多喜からはほぼ東に進路を取り、外房を目指します。山地から抜け、田畑が広がる長閑な車窓が続きます。のんびりと旅をしたくなる路線ですね。
大多喜から30分ほどで、JR外房線との接続駅、終点の大原駅に到着です。
鉄道ファンは「ぽっぽの丘」に立ち寄ろう!
いすみ鉄道沿線の観光スポットとしては、いすみ市にある「ぽっぽの丘」があります。各地の古い鉄道車両を集め、保存・展示をしている施設です。
車内に入れるようになっている車両も多く、鉄道好きの方にはたまらないスポットですね。
いすみ鉄道の駅から少し離れていますので、公共交通機関利用の場合には、大多喜駅からレンタサイクルがおすすめです。約4km、20~25分ほどです。少し起伏があるので、電動アシスト付きのほうがよいと思います。
なお、営業日が金曜・土曜・日曜・月曜の週4日になっています。アクセスや営業日の詳細などは「ぽっぽの丘」の公式Webサイトをご覧ください。
いすみ鉄道の古い気動車にも注目!
鉄道好きの方は、いすみ鉄道で走っている古い気動車にも注目してみましょう。
左側の朱色の車両は、JR西日本の大糸線を走っていたキハ52形という古い車両です。「キハ52-125」という車番(車両の番号)が読めます。
こちらが、JR西日本の車両だった頃の写真です。2004年の夏に大糸線の南小谷駅で撮影しました。「キハ52-125」という同じ車番です。大糸線に新しい気動車を投入したときに不要になったものを、いすみ鉄道が譲り受けたというわけです。
以上、小湊鉄道といすみ鉄道に乗車する「房総半島横断ディーゼルカーの旅」をご紹介しました。青春18きっぷで日帰りシリーズなのに、主役がJR線でないのはご愛嬌ということで。1日分余った青春18きっぷを活用して訪問するのがおすすめですよ。
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コメント
こんにちは。
いすみ鉄道、良いですね。
西日本を走ってい車両だけど、ディーゼルだから、50ヘルツ、60ヘルツ関係ないから走っているのかな?(よくわかっていない)
ディーゼルは、昔、長万部-小樽間を乗ったきり乗っていないです。
はっち555さん、コメントありがとうございます。
東京近郊でディーゼルカーに乗車できるのでおすすめですよ。
ディーゼルカーは燃料の軽油さえあればどこでも走れるので、西日本から譲ってもらったのでしょうね。