和歌山県を走る和歌山電鐵貴志川線は、「たま駅長」など独自の施策で集客を目指すミニ鉄道です。そんな貴志川線を走る「たま電車」は、外装、内装ともに「たま」だらけの電車! 今回「たま電車」に乗車して、二代目駅長「ニタマ」がいる貴志駅を訪れてみましたので、その乗車記・訪問記をお届けします。
和歌山電鐵 貴志川線とは?
和歌山電鐵は、岡山市内で路面電車や路線バスを運行する岡山電気鉄道の子会社です。2006年、南海電気鉄道から貴志川線を引継いで運行しています。
貴志川線は、和歌山駅と貴志駅を結ぶ14.3kmの単線・電化路線。駅数は14で、和歌山市周辺の通勤・通学路線でもあります。
和歌山電鐵といえば、貴志駅の駅長として「たま駅長」を任命し、人気を博していました。「たま」は2015年に亡くなり、現在は二代目の「ニタマ」が貴志駅の駅長を務めています。
また、南海から引き継いだ2270系電車をリニューアルし、「たま電車」「いちご電車」として走らせるなど、「たま駅長」とあわせて、独自の施策で集客を図っています。
どの車両がどの列車として運転されているかは、和歌山電鐵のWebサイトの時刻表に掲載されています。「たま電車」など、乗車したい車両がある場合には、時刻表を確認しておきましょう。
それでは、和歌山電鐵貴志川線「たま電車」の乗車記をご覧ください。乗車したのは2017年8月で、ダイヤなどは当時のものです。
1日乗車券を購入して和歌山駅から貴志行きに乗車!
和歌山駅まで青春18きっぷで紀勢本線を乗りとおしてきました。紀勢本線の乗車記は以下の記事をご覧ください。
和歌山駅で下車した紀勢本線のホームから、地下通路を通って和歌山電鐵のホームへ急ぎます。階段を上ったところに窓口と改札があり、そこで「和歌山電鐵貴志川線1日乗車券」(810円)を購入しました。和歌山駅から貴志駅までは片道410円なので、往復するだけでも微妙におトクです。
「和歌山電鐵貴志川線 1日乗車券」については、和歌山電鐵のWebサイトをご覧ください。2023年現在は、スマホで利用できる「和歌山電鐵貴志川線 スマホ1日乗車券」もあります。
このような地方私鉄では、たいてい1日乗車券を販売していますので、乗りに行ったらなるべく購入するようにしています。多少でも応援することができますし、何といってもきっぷが手元に残るので記念になります。
貴志川線のホームはJR駅の片隅に設けられています。ホームに上がると、すでに電車が入線していました。乗車したのは2270系の2両編成の電車。和歌山電鐵の車両は、貴志川線を南海から引き継いだ際に譲渡されたもので、現在も現役で走っています。
市街地から住宅地、田園風景を抜けて貴志駅へ
12時25分発の貴志行きに乗車します。車内はロングシートで、発車までに8割以上埋まりました。和歌山市民の足として、それに観光客の足としても、しっかり活用されているようです。日中時間帯は1時間に2本程度、ラッシュ時には3~4本運転されていて、比較的利用しやすいダイヤになっています。
和歌山駅を出ると、すぐに東へカーブし、市街地を抜けていきます。住宅が増えてくると今度は南側へカーブ。しばらく南下します。このあたりの駅で下車する地元民と思われる方もいて、日常的に利用されているようです。
車窓に田園風景が目立つようになると、伊太祈曽(いだきそ)駅に到着。ここで和歌山行きの列車と交換です。この伊太祈曽駅には、駅長見習いの「よんたま」というネコが勤務(?)しています。よんたま目当てで下車した観光客もそこそこいました。
伊太祈曽駅を出ると、さらに田園風景が目立つようになります。途中、大池という池のほとりにある大池遊園という駅を抜け、再び住宅街っぽい車窓に変わってくると、12時57分、終点の貴志駅に到着です。全線乗車しても30分ちょっとのミニ路線でした。
貴志駅の駅舎は完全に「たま」です。屋根上に「TAMA」とありますね。ここまで徹底していると、もう恐れ入りましたというほかありません。真ん中が改札口と駅長室、向かって左側がたまグッズやお土産を多数扱っているショップ、右側が「たまカフェ」です。完全にたまワールドと化していました。どうせやるならここまでやるべし、という見本のようです。
終点貴志駅は完全に「たま」ワールド!
この貴志駅は、「たま駅長」で一世を風靡した駅です。たま駅長は、残念ながら2015年に亡くなりましたが、現在は二代目駅長の「ニタマ」が、貴志駅の駅長に任命されています。
「ニタマ駅長」とご対面!
早速、二代目「ニタマ駅長」とご対面! ガラス張りの駅長室に鎮座されていますが、完全におやすみモード。(私も含め)観光客がさかんに写真を撮っていますが、我関せずといったご様子。まあ、このくらいでないと駅長など務まらないのでしょう。
ちなみに、写真撮影はOKですが、フラッシュは使用禁止ですので、撮影する前にカメラの設定を確認しましょう。
貴志駅のニタマ駅長、伊太祈曽駅のよんたまは、勤務時間が決まっています。また公休日もあります。ニタマ&よんたまの勤務予定は、和歌山電鐵のWebサイトのトップページで確認できます。ニタマ駅長を目当てに訪れる場合には、必ず勤務予定を確認しておきましょう。
たまカフェで「ホットキャット」のランチ!
ニタマ駅長とご対面し、貴志駅をひととおり見てまわったあとは、駅舎内にある「たまカフェ」でランチにします。
たまカフェは、貴志駅の改札横、駅長室の前にあります。店内はそれほど大きくはありませんが、テーブル席に加えて、ソファ席もありました。
たまカフェに併設されている「たまショップ」には、たまやニタマのいグッズがところ狭しと並んでいます。目立った観光資源のない貴志川線の沿線ですが、この貴志川線や駅そのものが観光スポットになっています。
一番のおすすめという「ホットキャット」(コーヒーとセットで550円、※2023年現在は620円)をいただきます。ホットドッグのネコ版ということで、パンに挟まっているのが、ソーセージではなく、魚肉ソーセージになっています。味は・・・想像どおりでした(笑)。思ったよりも小さいので、ランチには足りないかもしれません。おやつくらいに思っておいたほうがよさそうですね。
リニューアル列車「たま電車」はたまだらけの電車
貴志駅から和歌山駅に戻るさいに、「たま電車」に乗車しました。その外観や内装を見てみましょう。
2270系電車をリニューアルした「たま電車」
「たま電車」は和歌山電鐵のリニューアル列車の第三弾で、駅長「たま」をモチーフにした電車です。2008年に「たま駅長」が就任したあと、2009年に「たま電車」がデビューしました。ちなみに、鉄道デザインの第一人者、水戸岡氏のデザインによるものです。
上の写真のように、外観からしてネコです。塗装を変更して、先頭車に耳?を付けただけなのですが、往路で乗車した2270系電車と同じ形式の車両とはとても思えませんね。
とことん「たま」にこだわった「たま電車」の内装
乗車してみると、さらにビックリ! ここまでやるかというほどに「たま」一色に染まっています。ロングシートは、いろいろな形の座席に取り換えられていて、モケットの柄が異なるだけでなく、デザインまで異なるこだわり様です。
車端部には本棚が設置され、子供向けの本がたくさん並べられていました。全線乗車しても30分ほどですが、これなら飽きることもなく、お子様連れでも安心ですね。
背面がネコの形をした座席や、ソファ型の座席まであります。自由席ですので、空いていれば、どの座席に座っても構いません。
よく見ると、ブラインドにも「たま駅長」が描かれています。
乗降扉もこんな感じです。このように、とことん「たま駅長」にこだわった内装になっています。
この車両は、特別な列車として運転されているわけではなく、他の車両と共通的に運用されています。つまり、時刻表にある普通列車の一つとして運転されていて、乗車券だけで乗車できるのです。
貴志駅から乗車したのは、ニタマ駅長目当ての観光客がほとんどでしたが、途中駅からは、高校生やサラリーマンも乗車してきて、普通にネコ型の座席に座っています。観光客には特別な電車でも、地元の方々にとっては日常なのでしょうね。
外国人観光客も多く訪れる貴志川線
乗車していて気が付いたのは、外国人観光客がかなり乗っていることです。アジア系の、言葉からするとおそらく中国からの観光客だと思いますが、往路・復路ともに、数名ほど乗車しているのを見かけました。また、ランチに寄った貴志駅の「たまカフェ」でも、中国人観光客と思われる家族連れが食事をとっていました。
当然、この「たま電車」や、貴志駅のニタマ駅長が目当てだと思うのですが、和歌山県のローカル私鉄に過ぎず、沿線に目立った観光地もない貴志川線に、外国人観光客がわざわざ乗りに来るというのは、ある意味すごいことですね。
観光客を呼ぶ努力が実ったのか、和歌山電鐵に移管された2006年以降、それまで減少傾向にあった乗客数や運賃収入が増加に転じています。2006年にはリニューアル電車第一弾の「いちご電車」、2007年に「たま駅長」就任とリニューアル電車第二弾の「おもちゃ電車」の投入、それに、2009年には今回乗車した「たま電車」を投入と、矢継ぎ早に施策を打っています。ローカル線にはこうやって観光客を呼ぶべし、というお手本のようだなと感じたのでした。
2016年以降は、乗客数が再び減少傾向となっています。少子高齢化が進み、通学輸送が減少しつつあることが原因だと思われますが、コロナ禍が終わった2023年以降の反転攻勢に期待したいところです。
以上、「【和歌山電鐵 貴志川線】和歌山県を走るミニ鉄道、貴志川線の「たま電車」に乗り貴志駅の「ニタマ駅長」を訪ねる!」でした。ニタマ駅長やたま電車など、鉄道そのものに魅力が多い和歌山電鐵貴志川線。片道30分程度と気軽に乗れますので、ぜひ訪ねてみてください。
関連記事
乗り鉄や鉄道旅行におすすめの路線や列車を、エリアごと、ジャンルごとに紹介しているページです。ぜひご覧ください。
コメント