1997年に廃止された信越本線の横川~軽井沢間の一部の線路を利用して、トロッコ列車「シェルパくん」が運行されています。碓氷峠鉄道文化むらの「ぶんかむら駅」から、温泉施設、峠の湯がある「とうげのゆ駅」までの2.6km。かなりの急勾配をゆっくりとトロッコ列車が走ります。
横川駅~旧熊ノ平駅の旧線跡を整備した遊歩道「アプトの道」をハイキングしたときに、トロッコ列車「シェルパくん」に乗車してきましたので、乗車記をお届けします。また、温泉やレストランなどが入った施設「峠の湯」の様子もお伝えします。
トロッコ列車「シェルパくん」とは?
トロッコ列車「シェルパくん」は、横川駅に隣接する「碓氷峠鉄道文化むら」の園内遊具の一つです。
トロッコ列車「シェルパくん」の運転区間
トロッコ列車「シェルパくん」は、JR信越本線の横川駅に隣接する「碓氷峠鉄道文化むら」内にある「ぶんかむら駅」から、温泉施設「峠の湯」がある「とうげのゆ駅」までの2.6㎞を結びます。
途中駅は、旧丸山変電所がある「まるやま駅」のみ。とうげのゆ駅行きのトロッコ列車は、この「まるやま駅」に停車しますが、この駅からの乗降はできません。ただし、短い停車時間があるので、トロッコ列車から降りて、旧丸山変電所を見学することができます。
旧信越本線「横軽」間のレールをそのまま活用
このトロッコ列車、1997年に廃止された旧信越本線(新線)の下り線(横川→軽井沢方向)のレールを走ります。当時、信越本線の「横軽」を乗車したことのある方なら、周囲の風景に懐かしさを感じるのではないでしょうか。
なお、旧信越本線(新線)の上り線は、遊歩道「アプトの道」として整備されています。アプトの道は舗装された歩きやすい道になっていますが、上り線のレールはそのまま埋められています。
「アプトの道」は、峠の湯まで「シェルパくん」の線路に沿っていますので、ハイキング気分で歩くこともできます。2.6kmですので、40分ほどで歩くことができます。
「シェルパくん」は碓氷峠鉄道文化むらの園内遊具
「シェルパくん」は、正式な鉄道路線ではなく、あくまで碓氷峠鉄道文化むらの園内遊具の一つという位置づけです。
ですので、「シェルパくん」に乗車するには、碓氷峠鉄道文化むらの入園券が必要です。
そもそも、「ぶんかむら駅」は碓氷峠鉄道文化むらの園内にありますので、まずは碓氷峠鉄道文化むらに入園しないと乗車することができません。
トロッコ列車「シェルパくん」の運転日・運転時刻
トロッコ列車「シェルパくん」の運転日・運転時刻は以下の通りです。(2023年7月現在)
- 運転日
- 3月~11月の土日祝日
- 夏休み期間中(7月下旬~8月下旬)は毎日運転
- 運転時刻
- ぶんかむら駅発: 10:10, 11:10, 13:10, 14:10, 15:10
- とうげのゆ駅発: 10:40, 11:40, 13:40, 14:40, 15:40
冬季(12月~2月)は運転されませんのでご注意ください。また、3月の運行開始日、11月の運行終了日、夏休み期間中の運転日は、碓氷峠鉄道文化むらのWebサイトでご確認ください。
トロッコ列車「シェルパくん」に乗車するには?
トロッコ列車「シェルパくん」には、碓氷峠鉄道文化むら園内にある「ぶんかむら駅」か、峠の湯にある「とうげのゆ駅」から乗車することができます。
碓氷峠鉄道文化むら「ぶんかむら駅」から乗車する場合
碓氷峠鉄道文化むらの園内にある「ぶんかむら駅」から乗車する場合は、
- 碓氷峠鉄道文化むらの入口で、入園券とトロッコ乗車券を購入
- 碓氷峠鉄道文化むらに入園
- 碓氷峠鉄道文化むら入口のすぐ右側にあるトロッコ列車の「ぶんかむら駅」から乗車
という手順になります。
なお、碓氷峠鉄道文化むらの入園券、トロッコ乗車券(往復、片道)の料金は以下のとおりです。
大人 (中学生以上) |
小学生 | 小学生未満 | |
---|---|---|---|
入園券 | 700円 | 400円 | 無料 |
往復 | 1,200円 | 600円 | 大人1名につき 2名まで無料 |
片道 | 700円 | 400円 | 大人1名につき 2名まで無料 |
前述のとおり、トロッコ列車は碓氷峠鉄道文化むらの遊具という位置づけですので、乗車するには、碓氷峠鉄道文化むらの入園券とトロッコ列車の乗車券が必要となります。
峠の湯「とうげのゆ駅」から乗車する場合
温泉施設「峠の湯」の横にある「とうげのゆ駅」から乗車する場合、「碓氷峠鉄道文化むら」の入園券を持っているかどうかで異なります。
当日有効な「碓氷峠鉄道文化むら」の入園券を持っていて、トロッコ乗車券を持っていない場合には、車掌からトロッコ乗車券を購入することができます。
当日有効な「碓氷峠鉄道文化むら」の入園券を持っていない場合は、トロッコ乗車券に加えて、「碓氷峠鉄道文化むら」の入園券(大人700円、小学生400円)を別途購入します。入園券、トロッコ乗車券ともに、「とうげのゆ駅」でトロッコ列車の車掌から購入することができます。
ただし、定員が決まっているようですので、混雑していると乗車できないこともあるようです。
トロッコ列車「シェルパくん」の車両紹介
トロッコ列車「シェルパくん」の車両と車内の様子をご紹介しましょう。
トロッコ列車「シェルパくん」は、ディーゼル機関車に2両の客車が連結された編成となっています。
ディーゼル機関車は、2011年に新製された新しいものです。2005年の開業時には、碓氷峠の保線機械を改造したディーゼル機関車が利用されていましたが、故障してしまいました。トロッコ列車「シェルパくん」そのものが運休してしまいましたが、運転再開に合わせて、現在のディーゼル機関車が新製されたそうです。
「ポッポタウン」のイラストが描かれたポップな印象のディーゼル機関車ですね。
トロッコ列車には2両の客車が連結されています。とうげのゆ駅側はオープンなトロッコ型車両、ぶんかむら駅側は窓のあるタイプの車両です。
「とうげのゆ駅」側の客車は、トロッコ型の窓がないオープンな車両になっています。白い木製の硬いボックスシートが並び、乗り心地はなかなかワイルドです。
そして、車端部には展望スペースがあり、「とうげのゆ駅」行きでは前面展望を楽しむことができます。ここから線路を眺めると、その勾配がとてもよくわかります。
横川駅側(ぶんかむら駅側)の客車は、窓のある普通車型の客車です。車内はレトロ調でまとめられています。木製の背もたれに、青い座面のボックスシートが、かつて横軽間を走っていたであろう客車列車の車内をイメージさせます。
窓はありますが、大きく開けることができるので、こちらの車両でも風を感じることができます。
トロッコ列車「シェルパくん」乗車記
前置きが長くなりましたが、乗車記をお届けします。
今回は、横川駅からめがね橋(碓氷第三橋梁)を経て、旧熊ノ平駅(熊ノ平信号場)まで、信越本線の旧線跡を遊歩道として整備されている「アプトの道」をハイキングしてきましたが、その復路、峠の湯(とうげのゆ駅)から碓氷峠鉄道文化むら(ぶんかむら駅)まで、「シェルパくん」に乗車しました。
「アプトの道」のハイキングの様子は、以下の記事をご覧ください。鉄道遺産の宝庫で、鉄道好きにはたまらないハイキングコースです。
思いつきでトロッコ列車「シェルパくん」乗車へ
「アプトの道」のハイキングのあと、「峠の湯」で温泉に入ったり、食事&ビールを楽しんでいました。このあと、横川駅まで戻らないといけないわけですが、いったん休んでしまうと歩いていくのも面倒になります(笑)
「峠の湯」の温泉施設エリア内にある食事処で「峠の釜めし」を食べていると、窓の外にトロッコ列車「シェルパくん」が走っているのが見えました。
「あれに乗れば、歩いて下山しなくてもよいのでは…」
と思い、急いで時刻表を調べてみると、15時40分発の最終列車があるではないですか。
「ブログのネタにもなるし……」(注:この記事のことです(笑))と思い、急遽、トロッコ列車「シェルパくん」で横川駅まで下りることにしたのでした。
「峠の湯」の様子は、この記事の最後のほうでご紹介します。
「とうげのゆ駅」発、最終列車に乗車
15時25分ごろ、ぶんかむら駅から「シェルパくん」がやってきたのが見えたので、急いで飲食代を精算して、「とうげのゆ駅」へ。
「とうげのゆ駅」は、温泉施設「峠の湯」の駐車場とは反対側の裏口のような出入口から出ると、すぐ目の前です。
ちょうど、ぶんかむら駅から乗車してきた乗客が下車するところでした。
女性の車掌さんに「シェルパくん」に乗りたい旨を告げて、碓氷峠鉄道文化むらの入園券(500円)とトロッコ乗車券(片道500円)を購入し、ホームへ。
※2023年現在、入園券が700円、トロッコ乗車券(片道)は700円となっています。
とても良い天気だったので、最後尾の、窓のないトロッコ型の車両に乗車。最終列車ということもあってか、空いていました。2両の客車合わせて、10名ちょっとといったところでしょうか。
写真を撮っていたら、すぐに発車時刻になりました。
最徐行で「横軽」勾配を下る
「とうげのゆ駅」を出発すると、すぐにポイントを通過。「とうげのゆ駅」は、信越本線の新線跡から分岐したところに作られているようで、本線に合流する形です。
最後尾の展望スペースから後面展望を眺めてみます。真っすぐの線路が印象的。写真ではわかりづらいですが、かなりの勾配です。右側のアスファルトの道が「アプトの道」の遊歩道です。
動画でも背面展望をどうぞ。とてもゆっくり走っていることがわかると思います。途中、「アプトの道」をハイキングしていた方々が手を振ってくれました。
トロッコ列車の客車の乗り心地はなかなかワイルド。レールのつなぎ目では、「ガタン」という振動がダイレクトに伝わってきます。とはいえ、とてもゆっくりなので、不快なほどの振動ではありません。
旧丸山変電所(まるやま駅)を通過
ほぼ中間地点に、鉄道遺産「旧丸山変電所」があります。煉瓦造りの2棟の建物が保存されています。機械室と蓄電池室です。以下、動画でどうぞ。
「シェルパくん」の峠の湯(とうげのゆ駅)行きでは、旧丸山変電所の前にある「まるやま駅」に停車しますが、今回乗車した鉄道文化むら(ぶんかむら駅)行きの列車は通過します。
通過するとはいえ、このスピードですので、煉瓦造りの貴重な鉄道遺産をゆっくり眺めることができます。
上の動画でもわかりますが、旧丸山変電所を過ぎると、少しスピードが上がりました。旧丸山変電所より下側は勾配が若干緩いのと、直線に入るからでしょうか。
碓氷峠鉄道文化むらの屋外展示場横を通って「ぶんかむら駅」へ
直線を下り終え、少し左にカーブすると、碓氷峠鉄道文化むらの敷地内に入っていきます。
↑は、碓氷峠鉄道文化むらの屋外展示場の横を通って、終点の「ぶんかむら駅」に到着するまでの車窓の動画です。
古い(貴重な)車両が並ぶ屋外展示場を眺めながら、鉄道文化むらの入口横に作られた「シェルパくん」専用のホームに到着しました。
「シェルパくん」から下車して、「ぶんかむら駅」をパチリ。この日の運行は、先ほど乗車した列車が最終でしたので、ホームや駅の周りは閑散としていました。
「とうげのゆ駅」から「ぶんかむら駅」までの2.6km、約20分ばかりのトロッコ列車の乗車でした。景色がよいところはあまりないのですが、何といっても旧信越本線「横軽」の線路をそのまま利用したトロッコ列車ですので、かつて信越本線で碓氷峠を超えたことのある方や、鉄道好きの方は、ぜひ乗車してみてください。
温泉施設「峠の湯」で温泉・峠の釜めし・クラフトビールを満喫
時系列的には、「シェルパくん」に乗車する前ですが、温泉施設「峠の湯」で温泉に入り、横川の名物駅弁「峠の釜めし」や、クラフトビール「軽井沢高原ビール」を楽しんできました。
「天然温泉 峠の湯」は、温泉、レストラン、売店などが入った施設です。
1階には売店とレストランがあり、このエリアは入館料を払わずに利用できます。「アプトの道」のハイキングをしたとき、横川駅から1時間ほどかけて歩いてきましたが、「峠の湯」の売店横のソファで休憩しました。トイレや自動販売機もあるので、ハイキング前の準備にも最適です。
温泉に入るには入館料(700円、3時間まで)が必要です。入口横の靴箱に靴をしまって鍵をかけ、その鍵を受付に持っていき、入館料を支払うと、靴箱の鍵と引き換えにリストバンドを渡されます。このリストバンドが、温泉施設エリアの入館証明ですね。
温泉は天然温泉で、上記のWebサイトの記載によると「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉」だそうです。
それほど成分が濃いわけではないですし、循環されているようなので、「温泉」としては期待しすぎないほうがよいでしょう。それでも、ハイキング後の汗を温泉で流すのは最高です。
温泉を出たあとは、少し遅めのランチに。温泉を出て、温泉施設エリア内にあるお休み処「やすらぎの場」へ。セルフサービスですが、食事を提供するカウンターがあり、畳敷きの座敷で食事をいただくことができます。
温泉を出たところで、「軽井沢高原ビール」がアピールしています(笑) ということで………
軽井沢高原ビール(ワイルドフォレスト)の生ビールを注文。湯上りの生ビールは最高ですね。
ランチには「峠の釜めし ミニ蕎麦セット」をチョイス!
軽井沢高原ビール(ワイルドフォレスト)は、とても爽やかな飲み口。「峠の釜めし」は安定の味。ごはんの味付けがやさしいので、具のおいしさが引き立ちます。少し温かい状態で出てきました。そして、塩気の利いた蕎麦。「峠の釜めし」はかなりボリュームがあるので、ちょっと食べすぎました(笑)
「峠の湯」は温泉と食事が楽しめる施設です。横川駅から散歩がてら「アプトの道」を歩いても1時間はかかりませんし、シーズンの土休日であればトロッコ列車「シェルパくん」に乗るのもおすすめです。
以上、『【トロッコ列車「シェルパくん」乗車記】 かつての信越本線「横軽」の線路をゆっくり走るトロッコ列車! 「峠の湯」での温泉・食事とセットでの乗車がおすすめ!』でした。鉄道遺産盛りだくさんのトロッコ列車です。鉄道好きは、「碓氷峠鉄道文化むら」の訪問とセットで、ぜひ乗車してみてください。
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