東武鬼怒川線の下今市~鬼怒川温泉間を走る「SL大樹」。乗車時間は35分程度と短めですが、転車台でのSLの回転や、ホームでのSLと客車の連結など、乗車前後のイベントも楽しめる列車です。この記事では、「SL大樹」の乗車レポートをお届けします。(※2018年4月下旬に乗車)
ゴールデンウィークの「SL大樹4号」に乗車!
乗車したのは、ゴールデンウィーク前半の4月29日、鬼怒川温泉発下今市行きの「SL大樹4号」です。
SL座席指定券は、往復の特急の指定券とともに、4月25日の夜にインターネット予約で申し込みました。翌日の10時過ぎには予約完了のメールが届いていました。
「SL大樹」の予約方法は以下の記事をご覧ください。
ゴールデンウィーク前半の天気がよさそうだということで、数日前に急遽計画した旅行です。前日に龍王峡を散策し、川治温泉に宿泊。当日は、SL出発の時間まで、鬼怒川温泉周辺をぶらぶらしていました。ゴールデンウィークということで、鬼怒川温泉駅前はとても賑わっていました。
鬼怒川温泉駅の転車台でのイベント
今回乗車する「SL大樹4号」は、鬼怒川温泉駅を14時35分に発車しますが、その30分ほど前の13時50分に、駅前の転車台にSLが入線して、車両の向きを変えます。
東武鉄道の「SL大樹」のサイトでは、鬼怒川温泉駅、下今市駅の転車台にSLが入線する時刻を公表しています。
ということで、急いでランチを済ませて、駅前広場の転車台へ。
予定の13時50分からやや遅れて、蒸気機関車C11-207が転車台に入線してきました。SLの横(デフレクタ)には、4月下旬からの1ヶ月間限定で、鳳凰の特別装飾が施されています。黄金の鳳凰、なかなかマッチしていてカッコイイですね。
さらに、この日は祝日ということで、日章旗も掲げられています。
SLが転車台に完全に入線すると、転車台の回転が始まります。少し回転させては止まり、汽笛を鳴らして、また回転する、ということを繰り返して、少しずつ回転していきます。
駅前広場には放送で案内がされていて、大きなイベントになっています。鬼怒川温泉の転車台は、駅前広場の、誰でも見ることができる場所に設置されているので、大注目ですね。
180度回転してSLの向きが変わると、駅構内へと発車していきました。
SLが走る路線では、終着駅に転車台が設置されていることが多いのですが、ここまで観光客や乗客が見やすい場所に設置されているのは、初めてです。駅前広場に巨大な鉄の塊のSLが入ってくるのは、ものすごく迫力があります。
鬼怒川温泉駅のホームでSLと客車の連結作業を眺める
さて、鬼怒川温泉駅のホームに行くと、3番線ホームには、既に客車3両と最後尾のディーゼル機関車「DE10」が入っていました。ディーゼル機関車にも「大樹」のヘッドマークが取り付けられているのですね。
ちなみに、このディーゼル機関車「DE10-1099」はJR東日本から譲渡されたもの、青色の3両の客車(14系)はJR四国から譲渡されたものです。蒸気機関車「C11-207」も、JR北海道から借り受けているものですので、全国の鉄道会社の協力があって、東武鉄道でのSL復活運転プロジェクトが実現できたのですね。
先ほど、転車台で方向転換したSLと客車の連結作業を眺められるのではないかと思い、反対側の2番線ホームで待っていました。すると、すぐに、SLがバックしてやってきました。
SLが少しずつバックし、3両の客車と連結されます。
SLは転車台での方向転換が必要ですが、それだけではありません。終点に到着したら、先頭のSLと最後尾のDL(ディーゼル機関車)を入れ替える作業(「機回し」といいます)を実施する必要があります。このような作業が、鬼怒川温泉や下今市に到着するたびに実施されるのですね。これも、乗車前や乗車後の楽しみの一つです。
無事に連結作業が終了しました。このSLの後ろについている「ヨ8634」という車両は、車掌車です。普通は貨物列車の最後尾などに連結されるものですが、「SL大樹」では、自動列車停止装置(ATS)を積んでいるそうです。
ホームでは撮影大会に!
急いで跨線橋を渡って3番線ホームに向かいます。すでにドアが開いていましたが、まだ発車まで少し時間があるので、SLの撮影をします。
SLはやっぱり大人気! SLの前では撮影大会になっていました。
指定された3号車に入ると、客車の中はズラッとクロスシートが並びます。青色のモケットが国鉄時代を感じさせます。
SLの座席はボックスシート(二人がけの座席が向かい合ったシート)が多いのですが、「SL大樹」の客車はクロスシート。リクライニングもしますが、「簡易リクライニングシート」といって、リクライニングの位置が固定されません。なので、背もたれに寄りかかっている間はいいのですが、体を起こすとバッタンと元の位置に戻ります。かつては、通称「バッタンシート」と呼ばれていたものですね。
乗車した3号車は、「スハフ14-1」という車両。なんと、スハフ14のトップナンバー、スハフ14形で最初に造られた客車ですね。この車両は、国鉄からJR東海に引き継がれ、その後、JR四国に譲渡。それを東武鉄道が購入したという経歴のようです。
鬼怒川温泉を発車! 東武ワールドスクエア駅で大量乗車!
14時35分、定刻どおりに下今市を発車します。
3号車は、前の方の数列だけが埋まっていて、後ろの3分の2ほどはガラ空きです。なぜだろうと思っていると、次の停車駅、東武ワールドスクエア駅から大量の乗車があったのでした。
どうやら、ツアー客のようで、ガイドさんが案内していました。鬼怒川温泉に宿泊、翌日は東武ワールドスクエアで遊んで、下今市までSLに乗車、といったところでしょうか。
満員の乗客を乗せて、「SL大樹4号」は進みます。
沿線では手を振ってくれる人がたくさん!
「SL大樹」、はっきり言ってノロいです。クルマやバイクにバンバン抜かれ、自転車にも抜かれていきます。各駅に停車する普通列車でも25分くらいのところを、SL大樹は35分かけて走ります。
これ以上スピードを出せない(出さないようにしている)のか、スピードを出すと乗車時間が短くなりすぎてしまうためなのかわかりません。それでも、乗ることに意味があるSL列車ですので、これでよいのでしょう。
その遅いスピードが嬉しいのは、沿線で手を振ってくれる人がよく見えること。東武鉄道では、SL大樹の運行開始にあたって、『SL「大樹」にみんなで手を振ろう』というプロジェクトを実施しています。沿線の住民にも協力を得ているようで、踏切待ちの人、田んぼで田植えをしている人、庭作業をしているおばあさんまで、SLに向かって手を振ってくれるのです。
ぶっちゃけ、SLなんて、乗ってしまったらSLだか、ただのノロい電車だかわからないわけです。特に、SL大樹の客車は窓が開けられないので、煙の匂いも感じられません。それでも、今乗っているのがSLだと実感できるのは、沿線のあらゆる人が手を振ってくれるのを見たときですね。もちろん、こちらも手を振りかえします。
沿線のあらゆるところでSLが歓迎されているのがわかります。自動車学校にも「歓迎!SL大樹」の文字が! 「列車の運転は教えられません」には笑わされました。
あっという間に下今市に到着!
「SL大樹」は、途中、三つの川を渡ります。その3つ目の川、「大谷川(だいやがわ)」を渡ると、間もなく終点の下今市に到着です。
下今市には15時09分に到着。わずか34分の短いSL乗車でしたが、車内では記念撮影や、乗車証の配布などもあり、楽しむことができました。
下今市駅に到着したSL。ここでもSLは大人気で、引き上げ線に回送されるまでの短い間に、記念撮影を楽しむ乗客がたくさんいました。
下今市の転車台・機回しは見もの!
さて、SLの乗車を終えても、イベントは続きます。今度は、下今市駅の転車台でのSLの方向転換です。下今市での複雑な機回しは見ものです。
下今市駅の転車台は、機関庫の前に設置されています。単にSLの方向転換をするためだけでなく、扇形に配置された格納庫(「扇形庫」(せんけいこ)といいます)へ車両を誘導するための役割もあります。
下今市の扇形庫は、2両分の小さなものですが、これでも立派に扇形庫です。もともと、JR西日本の長門市駅にあったものを、東武鉄道が譲渡を受けて移設したとのことです。
ちなみに、上の写真の柵より左側は、駅構内扱いになっていて、下今市駅に入場できるきっぷを持っていれば、誰でも入ることができます。SLから下車したあと、跨線橋を渡って、転車台や機関庫を見学することができるようになっています。鬼怒川温泉駅の転車台よりずっと空いているので、よく見たい方は下今市駅がおすすめ。
SL大樹は、編成丸ごと、上り線を回送されていきます。その後、ポイントを通過して、ホームと転車台や機関庫の間にある留置線にバックしていきます。SLがバックしているわけではなく、ディーゼル機関車が引っ張っているのだとは思いますが…。
その後、SLだけが編成から切り離され、再び、引き上げ線を上り方向へ。すぐに停車し、ポイントを変えると、今度はバックして転車台に入ってきます。
転車台の上に停車すると、鬼怒川温泉の転車台とは逆向きの左回りで向きを変えていきます。下今市の転車台は、機関庫に向かって左半分しか見学できるスペースがないので、左回りでSLの正面が見えるようにしてくれているのでしょうか。
転車台でSLが向きを変えている間も、下今市の駅にはスペーシアが次々と到着し、そして発車していきます。黄金色のスペーシアと一緒にSLを撮ってみました。
転車台で向きを変えると、SLは一旦、機関庫に収まります。機関庫の中では、何やら作業をしています。機関庫の横がガラス張りになっていて、そこから作業の様子をみることができます。
作業時間としてはそれほどでもなかったので、おそらく給水作業でもしていたのでしょう。
そうこうしていると、今度は、機回し線からディーゼル機関車DE10が転車台に入ってきました。機回し線は、客車が留置されている留置線のさらに外側にあり、留置線の前後でポイントを介して繋がっています。DE10は、客車の最後尾(鬼怒川温泉側)から切り離され、機回し線を通って、転車台に入ってきたことになります。
こちらも機関庫に入れるのかと思いきや、少しだけ回転して、上り方向にある引き上げ線に出ていきました。
今度は、DE10が留置線に入ってきて、留置されてあった客車に連結されます。これで、DE10の機回しは完了です。
最後の見どころは、機関庫に収まっていたSLが機回し線を通って、編成の最前列に移動する場面です。機回し線は、転車台広場の一番近くを通っているので、すぐ脇をSLの巨体が通過していきます。すごい迫力でした。
このあと、留置線上の客車にSLが連結されて、SLの機回しも完了です。SLとDLの配置が入れ替わった編成は、一旦、引き上げ線へ回送されました。
ここまでで、SLが下今市駅に到着してから約1時間。この機回しを見るならば、下今市で1時間程度の余裕時間を確保しておくとよいでしょう。私は、SL到着から1時間半後の「リバティ会津140号」で帰宅することにしていたので、この行程をすべて見ることができました。
今回は、「SL大樹4号」が下今市に到着して、「SL大樹5号」として鬼怒川温泉へ向けて発車するための機回し作業でしたが、「SL大樹2号」でも同様に見られるのではないかと思います。ただ、「SL大樹6号」の場合は、その日の最終便ですので、すぐに機回し作業を実施するのかわかりません。
SL展示館からの眺めもGOOD!!
下今市駅の転車台広場の手前に「SL展示館」があります。1階はテーブルとイスが置いてある休憩所で、トイレもあります。2階が展示室になっていました。
展示はそれほど多くはないのですが、「SL大樹」プロジェクトの経緯などが解説されています。先ほど説明した、下今市駅での機回しも、図入りで解説がありました。
この展示室の、転車台広場側がガラス張りになっていて、ここからも転車台の様子がよく見えました。全体を俯瞰して見られるので、機回しの様子を見るならココもおすすめです。
以上、SL大樹の乗車レポートでした。乗車時間は35分程度と短めですが、鬼怒川温泉駅や下今市駅での転車台でのイベントなど、前後のイベントが充実しています。個人的なおすすめは、下今市駅の転車台でのSLの方向転換と、DE10を含めた機回し作業の見学です。乗車前後に時間を確保して、ぜひこれらのイベント(作業?)を見学されることをおすすめします。
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