道東を旅行するのであれば、ぜひ訪れたいのが、摩周湖や屈斜路湖などのカルデラ湖が点在する「阿寒摩周国立公園」です。このエリアは、公共交通機関が発達していなくて、レンタカーを使わないと訪問しづらい印象がありますが、観光シーズン限定で運行されている路線バスを活用すれば、主要な観光地を巡ることができます。さらに、2日間このエリアのバスに乗り放題で2,000円という「弟子屈えこパスポート」を活用すれば、お得に観光することができます。
JR北海道の釧網本線と、「弟子屈えこパスポート」を利用して、摩周湖・屈斜路湖を観光をしてきましたので、その様子をご紹介します。
公共交通機関では観光しづらい摩周湖・屈斜路湖
摩周湖や屈斜路湖がある「阿寒摩周国立公園」は、釧路と網走の中間に位置します。
JR釧網本線(釧路~網走)の摩周駅、川湯温泉駅がこのエリアの観光の拠点になっているのですが、釧網本線の列車の本数が少ないうえ、観光スポットが点在していて、レンタカーを利用しないと観光しづらい印象があります。
日本最大のカルデラ湖「屈斜路湖」や、その近くで噴煙を上げる「硫黄山」、さらに、世界でも随一の透明度を誇る神秘的な湖「摩周湖」など、日本でも一級レベルの観光資源があります。
クルマが運転できない、クルマの運転が苦手という方も多いと思いますが、それだけでこのエリアを避けてしまうにはあまりにもったいないです。
摩周湖バス・屈斜路バスに乗り放題の「弟子屈えこパスポート」
このエリアを公共交通機関で観光するときに、ぜひ利用したいのが、夏と冬の観光シーズン限定で運行する摩周湖バスや屈斜路バス、それに、これらのバスに乗り放題となる「弟子屈えこパスポート」です。
地元住民向けの路線バスなども、一部「弟子屈えこパスポート」の対象路線となっていますが、観光スポットを巡るのに利用できるのは、主に以下の3つのバスでしょう。
- 摩周湖バス: JR摩周駅~摩周湖第一展望台
- 屈斜路バス: JR川湯温泉駅~硫黄山~屈斜路湖砂場~コタン~丸山~道の駅~JR摩周駅
- 川湯線: JR川湯温泉駅~川湯温泉(大鵬相撲記念館前)
また、「弟子屈えこパスポート」の価格と有効期間は、以下の通りです。
おとな | こども | |
---|---|---|
2日券 | 2,000円 | 1,000円 |
3日券 | 3,000円 | 1,000円 |
1日券はないのですが、1日だけ利用したい場合でも2日券を購入すればOKです。2日券で2,000円ですから、1日でも十分に元が取れる価格設定になっています。
路線バスを乗り継いで観光スポットを巡ったことがある方はわかると思いますが、路線バスの運賃はかなり高く、少し距離のあるところに行こうとすると、あっという間に数百円~千円以上になってしまいます。
その点、「弟子屈えこパスポート」は、かなりお手頃な値段に設定されています。2日券(2,000円)を1日の観光で利用しても十分にお得です。
「弟子屈えこパスポート」、2024年冬は1月27日~3月3日に利用可能!
「弟子屈えこパスポート」2024年冬版の概要は以下のとおりです。
- 利用期間: 2024年1月27日(土)~3月3日(日)
- バスの運行本数
- 摩周湖バス: 3往復(1便はジャンボタクシーでの運行)
- 屈斜路バス: 2往復
- 定期路線バス 川湯線: 6往復
屈斜路バスと摩周湖バスにそれぞれ乗車すれば、主だった観光スポットを巡ることができます。屈斜路バスの往路では硫黄山や砂場で、摩周湖バスでは摩周湖第1展望台でで15~25分ほどの停車時間がありますので、その間に観光することができます。
釧路駅06:38発の普通列車に乗車すれば、川湯温泉駅に08:18着ですので、上記の屈斜路バス1便(川湯温泉駅 08時30分発)に乗車することができます。
詳しくは、「弟子屈えこパスポート」のWebサイトをご確認ください。路線バスの時刻表なども掲載されています。
「弟子屈えこパスポート」で摩周湖・屈斜路湖の観光ポイントを周遊!
2018年8月に、釧路駅から釧網本線で川湯温泉駅へアクセスし、川湯温泉駅から「弟子屈えこパスポート」を利用して、「屈斜路バス」に乗車して観光地を巡ってきましたので、その様子をご紹介します。
※現在とは利用できるバス路線や弟子屈えこパスポートの価格が異なっていますのでご注意ください。
川湯温泉駅で「弟子屈えこパスポート」を入手!
早朝、6時05分に釧路を出発する釧網本線の一番列車に乗車しました。車両はキハ54形の1両。平日の早朝だから空いているだろうと思っていたら、通学の高校生たちで座席が埋まり、立ち客も出るほどでした。
通学にしては早すぎだろうと思いますが、次の列車は、8時57分発の快速しれとこ摩周号までありません。6時58分着の標茶(しべちゃ)で下車していきましたが、もうちょっと、貴重なローカル線のお客様である高校生に配慮したダイヤにできないものなのですかね。
それはともかく、午前7時46分に川湯温泉駅に到着しました。下車したのは私を含めて3名ほど。さすがに、観光するには早すぎるのでしょうか。
川湯温泉駅は無人駅ですが、小さいながら立派な駅舎があります。椅子が並ぶ待合室と、カフェレストラン「オーチャードグラス」、それに、足湯まであります。
その待合室にカウンターらしきものがあったので、少し待っていると、午前8時過ぎに担当の方がやってきて、「弟子屈えこパスポート」を買うことができました。
有効期限の日付が入ったパスポートを、ケースに入れて、首にかけて行動します。
「屈斜路バス」1便に乗車! まずは摩周湖へ往復
前述のとおり、「屈斜路バス」は、摩周湖、屈斜路湖の各観光ポイントを巡る定期路線バスです。手軽にメジャーな観光ポイントを周りたい方にはちょうどよいバスですね。
バスはこのような普通の路線バスタイプのものです。観光バスタイプに比べると乗り心地はよくないうえに、かなり飛ばすので、ちゃんと席に座っておきましょう。
8時35分に川湯温泉駅を出発。まずは摩周湖へ往復します。摩周湖第一展望台へは約25分。摩周湖は標高の高いところにあるので、川湯温泉駅からずっと上り坂になります。
小雨が降るイマイチの天気でしたが、摩周湖へ向かう途中から、ところどころで眺められる硫黄山を見下ろす景色は絶景でした。(写真は撮れませんでしたが…)
標高が上がると霧(というか雨雲)の中へ。9時ちょうどに摩周湖第一展望台へ到着しましたが、案の定、霧の摩周湖、ならぬ、「雨の摩周湖」でした。
ときおり、かろうじて摩周湖の中央に浮かぶ「カムイシュ島」が見える程度。全景を見渡すことはできませんでした。
ちなみに、晴れていれば、このような絶景を望むことができます。道東は夏季に霧が発生しやすいうえに、摩周湖は標高が高く、地形的にも霧が発生しやすいそうで、このように晴れるかは運次第。
しかし、晴れれば、「摩周ブルー」と呼ばれる美しい青色の湖が見られます。流入・流出する河川が一つもないうえに、周囲を断崖絶壁に囲まれていて湖面に降りることができないため、日本一の透明度を有しています。中央の「カムイシュ島」は、火山が噴火した時の溶岩ドームが湖面に頭を出しているものだそうです。摩周湖も、火山活動とともに形成されたカルデラ湖なのですね。
硫黄山(アトサヌプリ)へ
摩周湖での停車時間は25分。摩周湖第一展望台には、レストハウスがあり、軽食やお土産を買うことができます。雨が降るこの天気では景色を眺めていても仕方がないので、お土産を物色しながら、バスの発車時刻までを過ごしました。
このあとは、いったん、川湯温泉駅まで戻ります。川湯温泉駅には9時50分着。5分間の停車があり、ここから乗車してくる人もいました。
次の目的地は「硫黄山」(アトサヌプリ)。川湯温泉駅からも間近に眺めることができるほど近い場所にあります。9時55分に川湯温泉駅を再び出発すると、10時ちょうどに硫黄山の駐車場に到着。ここでは20分の停車時間があります。
駐車場のすぐ目の前に、不気味に噴煙を上げる硫黄山の姿を望むことができます。硫黄の強烈なにおいが漂ってきました。
すぐ近くまで近寄ることもできます。すぐ目の前で、ぼこぼこと熱湯が湧き出し、湯気が吹きあがる姿はとても迫力があります。
硫黄が噴き出しているところは、このように黄色く変色しています。ここまで近くで火山の噴気孔を見られる場所はなかなかないのではないでしょうか。
危険なところには柵があって入れないようになっていますが、その手前にも、小さく熱湯が湧き出しているところがあります。明らかに100℃近い熱湯なので、誤って足を踏み入れないように注意しましょう。間違いなくやけどします。
硫黄山は標高512メートルの活火山で、山名の「アトサヌプリ」は「裸の山」という意味だそうです。山名のとおり、岩がむき出しです。これだけあちこちで熱湯や硫黄、火山ガスが噴き出していたら、植物は育たないでしょうね。
ということで、硫黄山の迫力のある姿に圧倒されていたら、あっという間にバスの出発時間になってしまいました。
屈斜路湖畔の砂浜から温泉が湧き出す「砂湯」
10時20分に硫黄山を出発すると、川湯温泉の温泉街を通り、10時35分に屈斜路湖畔に広がる「砂湯」に到着。ここでは15分の停車時間があります。あいにくの雨模様でしたが、せっかくなので傘をさして湖畔まで行ってみます。
前述のとおり、屈斜路湖は日本最大のカルデラ湖で、日本の湖沼の中でも第6位の面積を誇る大きな湖です。冬季には全面氷結します。屈斜路湖の南側からは、釧路川が流れ出ています。釧路湿原の中を蛇行して、釧路市街で太平洋に注ぐ川ですね。
屈斜路湖の湖畔からは、温泉が湧き出ています。10センチも手で砂浜を掘ると、暖かいお湯が沸き出ていることがわかります。あちこちに、観光客が掘ったと思われる穴がありましたので、触ってみると、ぬるま湯くらいの温度のお湯でした。掘る場所や深さによってお湯の温度が変わり、最も高いところでは50℃くらいのお湯が沸き出るそうです。
雨が降り、8月下旬なのにかなり肌寒い天気でしたが、砂湯の温泉で(手だけですが)温まることができました。
雨雲の中の「美幌峠」
※2024年冬季は美幌峠へのバスはありませんのでご注意ください。
砂湯を10時50分に出発、途中、アイヌ集落で温泉やアイヌ民俗資料館がある「コタン」や、屈斜路湖に突き出し、キャンプ地で有名な「和琴半島」などを経由して、先ほどの砂湯とは屈斜路湖を挟んで反対側の「美幌峠」に到着しました。
ここは、屈斜路湖を一望できる峠で、立派なレストハウスまであるのですが、この日は全く何も見えず。硫黄山や砂湯のあたりでは小雨模様でも視界はそれなりにありましたが、少し標高が高くなると、完全に雨雲の中に入ってしまうようです。
本来は、このような絶景が見られるはずだったのです。個人的にもお気に入りのスポットの一つでしたので、残念でした。まあ、天気ばかりはどうしようもありませんね。
この美幌峠では50分の停車時間があります。レストハウスで食事をしたり、お土産を物色したりするのにちょうどよい時間ですね。
レストハウスの2階には立派な休憩所がありました。本当は、この大きな窓から絶景が眺められるはずだったのですが、今日は真っ白で何も見えません。
このレストハウス、8月下旬だというのに暖房が入っていました。雨で肌寒く、気温は15℃に届くかどうかといったところ。8月下旬は、北海道ではもう秋ですね。
川湯温泉駅へ
12時25分に美幌峠を出発、各停留所に停車しつつ、これまで通ってきた道を戻ります。美幌峠からの帰り道は、観光の時間は確保されていません。川湯温泉駅には13時35分に到着。路線バスとしては、かなりのスピードで飛ばしていましたが、美幌峠から川湯温泉駅までは1時間もかかるのですね。
【まとめ】公共交通機関での道東観光におすすめ!「弟子屈えこパスポート」
公共交通機関が少ない阿寒摩周国立公園にあって、「弟子屈えこパスポート」と、このパスポートで乗車できる摩周湖バス、屈斜路バスは貴重な存在です。1日あれば、屈斜路バスと摩周バスの両方に乗車できますので、上手にプランを作って、効率よく観光したいところです。
屈斜路バスや摩周湖バスの運行や、「弟子屈えこパスポート」が利用できる期間は限定されています。例年、夏は7月~9月頃、冬は1月下旬~3月上旬に利用できます。
「弟子屈えこパスポート」を利用する場合には、起点となる川湯温泉駅や摩周駅まで、JR釧網本線を利用することになります。釧網本線は、釧路湿原やオホーツク海の絶景を眺められるローカル線です。詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
以上、「摩周湖・屈斜路湖を公共交通機関で観光しよう!」と題して、格安で観光地を巡るバスに乗車できる「弟子屈えこパスポート」を利用したレポートをご紹介しました。手軽に摩周湖・屈斜路湖周辺の観光ポイントを周れますので、初めて道東へ観光へ行く方にはおすすめです。
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