静岡県の第三セクター鉄道「天竜浜名湖鉄道」の天竜二俣駅で開催されている「転車台&鉄道歴史観見学ツアー」に参加してきました。現役で利用されている転車台で気動車が回転する様子や、貴重な文化財などを間近で見学できるツアーです。この記事では、ツアーの様子を詳しくお届けします。
天竜二俣駅で開催されている「転車台&鉄道歴史観見学ツアー」とは?
天竜浜名湖鉄道は、静岡県の掛川駅と新所原駅を、浜名湖の北岸を経由して結ぶ第三セクター鉄道です。1987年に国鉄二俣線を引き受け、「天竜浜名湖線」(通称、天浜線)として開業しました。
天竜浜名湖線(以下、天浜線)には、駅舎やプラットホームなど、国鉄二俣線開業当初から残る貴重な文化財がたくさんあります。しかも、ほとんどが現役で利用されているのです。
そんな中でも、天竜浜名湖鉄道の本社や車両基地がある天竜二俣駅には、現役で利用されている転車台や扇形車庫、木造の事務所などが数多くあります。その天竜二俣駅の文化財などを見学できるツアーが「転車台&鉄道歴史観見学ツアー」です。
2023年1月現在、「転車台&鉄道歴史観見学ツアー」は、以下のように毎日開催されています。
- 開催日時(予約不要)
- 土日祝: 10時50分~,13時50分~
- 平日: 13時50分~
- 所要時間: 約40分
- 集合場所: 天竜二俣駅 待合室
- ツアー料金: 大人600円、小人300円
13時50分~の回は毎日開催されています。ツアーの参加券は、天竜二俣駅の窓口で購入できます。予約不要ですので、現地でツアー参加券を購入して、開始時刻に待合室に集合するだけで参加できます。
なお、列車に乗ったまま洗車機や転車台を体験できる「洗って!回って!列車でGO!」というツアーも開催されています。こちらは土日祝のみの開催で、事前予約が必要です。
詳しくは、天竜浜名湖鉄道のWebサイトをご確認ください。
重要文化財の宝庫、天竜浜名湖鉄道 天竜二俣駅
掛川駅から天浜線の列車に乗って、約50分、天竜二俣駅に到着しました。
掛川駅から天竜二俣駅の間にあるいくつかの駅にも、開業当初の木造駅舎やプラットフォーム上屋などが残っています。これらを訪問したときの記事を以下の乗車記で公開していますので、ぜひご覧ください。
天竜二俣駅も文化財の宝庫です。
天竜二俣駅の駅舎本屋です。右側が待合室や出札窓口、改札口、真ん中にラーメン店「ホームラン軒」が営業しています。左側の屋根が少し出っ張っているところは、天竜浜名湖鉄道の本社が入っています。
天竜二俣駅本屋の待合室部分です。昭和15年の開業当時から残る木造平屋建ての本屋です。待合室はそれほど広くはないのですが、天上が高いために広々と感じます。
そして、この「きっぷ売場」と書かれた出札窓口。待合室に出っ張っている窓口が現役で利用されています。この窓口で、転車台&鉄道歴史観見学ツアーのツアー参加券を購入します。
駅ホームの上屋とプラットホームも重要文化財に指定されています。こちらも国鉄二俣線全線開業時の昭和15年から使われているものです。
鉄製の柱や桁の上に、トラスを構成した木造の屋根が乗る構造です。この柱や桁には、古いレールが使われています。1911年にアメリカで製造されたレールや、日本の八幡製鉄所で製造されたレールが使われているそうです。
昭和15年の開業時、他の鉄道路線で不要となったレールを活用したということなのでしょうね。当時の歴史を感じさせてくれます。
シン・エヴァンゲリオン劇場版コラボの「第3村」
シン・エヴァンゲリオン劇場版に登場する「第3村」のモデルの一つが、この天竜二俣駅なのだそうです。ちょうど、天竜浜名湖鉄道とエヴァンゲリオンのコラボ企画「人類乗車計画」が開催されていました。
駅待合室入口上の看板が「第3村」となっていました。
駅ホームにある駅名看板も「だいさんむら」となっています。
いまやそれ自体が貴重な存在となっているホーロー駅名板ですが、ここもしっかりと「だいさんむら」となっていました。
また、あとで紹介しますが、映画で登場するモデルとなった風景は、転車台&鉄道歴史観見学ツアーに参加すると見ることができます。
このほか、天竜二俣駅の売店「てんはまや」では、エヴァンゲリオンとのコラボグッズがたくさん販売されていました。
今回の「第3村」コラボは、2022年11月~2023年1月の予定とのことです。ご覧になりたい方はお早めに。
駅待合室で集合して運転区へ
13時50分少し前に駅待合室へ。すでに大勢の人が待っています。日曜日ということで家族連れの姿も多く見られます。将来有望そうなお子様も!
集合時刻となる13時50分には、天竜二俣駅から掛川行きの列車と、新所原行きの列車が発車していきます。これらの列車が発車したあと、ツアーガイドの方が案内をしてくれます。
転車台&鉄道歴史観見学ツアーの参加券は細長い硬券タイプ。これを改札口で見せてから入場します。
駅本屋から下り線(新所原方面)のホームへと渡る構内踏切を、ホームよりさらに先まで渡ります。
そこには構内の入れ替えに使われている線路がありましたが、ちょうど列車の入れ換えが行われていました。ホーム側から入ってきた列車をこの引き上げ線に入れ、ポイントを変えて車庫へ。その一連の様子を見学することができます。
見学会のためにデモンストレーションでやっているわけではなく、日常業務を横から見学させてもらっているのです。
列車の入れ換え作業の様子を見学したあとは、構内から裏の細い道路へ出て、運転区へと向かいます。
運転区の入口のすぐ近くには、立派な高架貯水槽があります。昭和15年の開業時にはすでに存在したそうです。当時、国鉄二俣線を走っていた蒸気機関車に給水するための貯水槽で、70リットルの大きさです。井戸水を組み上げて貯水槽に貯めておくのだそうです。
現在は蒸気機関車はありませんので、さすがに貯水槽は現在では使われていませんが、井戸水は現在でも利用しているそうです。
道路から高架貯水槽を見学したあとは、いよいよ運転区へと潜入します。
現役で利用されている運転区事務室・休憩室
運転区へと入ると、すぐに木造の長屋が2棟あり、その間を歩いていきます。左側の建物は、運転区の事務室や休憩室として今の使われているそうです。
入口には「天竜浜名湖鉄道車両区」とかかれた木の看板が掲げられています。中からはお仕事をされている方の話し声が聞こえてきて、実際に現役で使われていることがわかります。当たり前ですが、中を見ることはできません。
右側の建物には浴場があります。今は使われていませんが、当時は、蒸気機関車の煤だらけになった体を洗うために使われていたそうです。
浴場の窓は大きくあけられていて、中を見ることができるようになっていました。いまはヘッドマークがたくさん展示されています。
他にはトイレや洗濯室がありました。洗濯室のドアは開いていて中が見えるようになっていましたが、洗濯機がたくさん置かれていました。作業服などを洗うのでしょうね。
80年以上前に建てられた木造の扇形車庫も現役!
木造の長屋を抜けると、転車台と扇形車庫があるところに出ます。
扇形車庫は何と木造! ガイドさんの話によると、戦前・戦中の物資不足の時期に建設されたため、鉄が不足していたためとのこと。現在は4線分の車庫がありますが、建設当時はこの右側にさらに2線分、あわせて6線分の車庫があったそうです。
扇形車庫には2両の車両が入っていました。左側は東海道線のカラー、いわゆる「湘南色」をまとった車両です。TH2100形という形式ですが「Re+(リ・プラス)」と名づけられています。
現在、天浜線の車両は全てTH2100形ですが、ほぼ全てがラッピング車両となっているそうです。アニメ「ゆるキャン△」や「新世紀エヴァンゲリオン」などとのコラボや、沿線の起業の広告ラッピングなど。ガイドさんのお話では、貴重な広告収入減となっているとのことです。
右側のTH3500形の車両は、2021年に運用を終え、現在はもう使われていません。
車両が入っていないところを見ると、この扇形車庫が木造であることがよくわかりますね。建てられてから80年以上にもなりますが、これが現役で使われているのはすごいことだと思います。
扇形車庫の横にある建物には、オリジナルカラーのTH2100形の車両が入っており、整備作業の真っ最中でした。
貴重な文化財を近くで眺められるのも素晴らしいですが、いままさに鉄道を動かすための作業を間近で見られるのもいいですね。
転車台で実際の入れ換え作業見学!
扇形車庫の前には転車台があります。扇形車庫など他の文化財と同じく、全線開業時の昭和15年から使われていて、いまなお現役です。4線分の扇形車庫と、構内へと伸びる5本の線路をつないでいます。
当時はもちろん蒸気機関車の向きを変えるために使われていました。天竜二俣駅以外にも、掛川駅や豊橋駅にも転車台があったそうです。
現在は、主に扇形車庫への車両の移動、構内の各線路への入れ換えなどに使われています。ツアーでは、実際に気動車の入れ換えを見ることができます。扇形車庫に入れる作業ではなく、5本ある線路のうちの一つから別の線路に車両を移す作業です。
↓転車台の回転の様子は、動画でどうぞ。
転車台ツアーは、この入れ換え作業の時間に合わせて組まれているようです。実際の作業をすぐ近くで見られるのはいいですね。
昔は電気が来ておらず、蒸気機関車を乗せた転車台を人力で回していたそうです。蒸気機関車は、現在の気動車の2倍近い重さがあるそうで、人力で回すのはかなり大変な作業だったそうです。
シン・エヴァンゲリオン劇場版「第3村」のモデルに!
転車台や扇形車庫、その奥にある木造の長屋は、シン・エヴァンゲリオン劇場版に登場する「第3村」のモデルになった場所です。
この転車台の奥にある木造の長屋はトウジの家のモデルに、先ほど紹介した扇形車庫は診療所のモデルになったそうです。
そういえば、こんなカットもあったような……。実際に、庵野監督が天竜二俣駅までロケハンに来られたそうです。
鉄道ファン的には、この広い構内は、国鉄時代の賑わいというか繁栄を思い起こさせてくれる風景ですが、シン・エヴァンゲリオン劇場版ではニアサードインパクト後の避難民が暮らしている村のモデルになっています。
人気アニメの「聖地」になったことで、訪れる人も増えたとのこと。厳しい状況が続くローカル線ですが、まさに救世主となったのでしょうね。
貴重なモノがたくさん! 「鉄道歴史館」を見学!
最後は、扇形車庫の奥にある「鉄道歴史館」を見学します。
木造の鉄道歴史館の中には、所狭しと貴重なモノが展示されています。見学する時間が10分弱しかないので、細かく見ることはできません。もっと時間があればじっくりと見学したいところです。
ということで、天竜浜名湖鉄道 天竜二俣駅で開催されている「転車台&鉄道歴史観見学ツアー」に参加してきました。わずか40分ほどのツアーですが、貴重な文化財を間近で見学することができますし、車両基地での実際の業務の様子を見ることもできます。
とても面白いので、天浜線を訪れる際には、ぜひ参加してみてください!
以上、『【天浜線 天竜二俣駅】転車台&鉄道歴史館見学ツアー参加レポート! 貴重な文化財や扇形車庫と現役の転車台を間近で眺められるツアー!』でした。貴重な文化財に、車両基地での作業の様子など、普段はなかなか見ることのできないものを見ることができるツアーでした。毎日開催ですので、ぜひ参加してみてください!
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