富士山を望む景勝地「薩埵峠」(さったとうげ)。富士山だけでなく、駿河湾や伊豆半島、手前を走る東名高速道路、国道1号線、それに、東海道本線などの構造物を一望にできる絶景ポイントです。興津駅から由比駅まで約7キロのハイキングをしてきましたので、ハイキングコースと絶景ポイントを詳しく紹介します。
「薩埵峠」は富士山を望む景勝地
薩埵峠は、静岡県静岡市(清水区)にある標高93メートルの峠です。山が海に突き出たような地形になっているため、標高の低い薩埵峠からでも、富士山や駿河湾、伊豆半島などを一望することができます。
また、山と海の間が非常に狭まった地形となっているため、その間を、東名高速道路、国道1号線、東海道本線がギュッと集約されて通っています。東名阪を結ぶ日本の大動脈を一望できるポイントでもあります。
薩埵峠は昔から富士の景勝地として知られており、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次・由比」でも有名です。
現在は、遊歩道が整備されているため、軽いハイキングの装備で気軽に訪れることができます。
「薩埵峠」への鉄道でのアクセスは?
薩埵峠の最寄り駅は、東海道本線の興津(おきつ)駅、もしくは、由比(ゆい)駅です。
東京など首都圏からは、以下の手段でアクセスできます。
- 東京(東海道新幹線 こだま号 約45分)熱海(東海道本線 約55分)興津駅・由比駅
- 東京(東海道新幹線 こだま号 約50分)三島(東海道本線 約50分)興津駅・由比駅
- 東京(東海道新幹線 ひかり号 約1時間)静岡(東海道本線 約20分)興津駅・由比駅
- 東京(東海道本線 約2時間50分)興津駅・由比駅
- 小田原、熱海、沼津などでの乗り換えが必要
東海道新幹線の「こだま」で、熱海駅もしくは三島駅まで行き、東海道本線に乗り換えるのがおすすめです。「ひかり」で静岡経由で行くのが最も速いですが、静岡から少し戻る形になりますので、運賃は高めになります。
また、東京から、東海道本線だけでも3時間弱でアクセスできます。青春18きっぷを利用することもできます。途中、最低1回(時間帯によっては2~3回のときもあり)の乗り換えが必要になります。
興津駅から薩埵峠へ!
それでは、興津駅から薩埵峠を経由して、由比駅までのハイキングコースをご紹介します。絶景ポイントも詳しく紹介します。訪問したのは2020年1月上旬です。
以下の説明中の丸番号は、上の地図と対応していますので、道順を確認しながらご覧ください。
青春18きっぷで東京から興津駅へ
東京都内に在住の筆者は、早朝午前6時前の東海道本線(上野東京ライン)の列車に乗り、小田原、熱海、沼津と乗り換えて、午前9時21分に興津駅に到着しました。
ちなみに、利用したきっぷは「青春18きっぷ」。東京都内の自宅から興津駅への乗車券だけで2,600円以上かかるため、青春18きっぷの1日分(2,410円)の元は取れてしまいます。
ちなみに、東京方面から興津駅へアクセスする場合、「Suica」などの交通系ICカードは利用できませんので要注意です。JR線の乗車駅で興津駅までのきっぷを購入しましょう。
興津駅→興津川
住宅地の中にあるような「①興津駅」からスタートします。
興津駅前の道をまっすぐ行くと、国道1号線(バイパスではない方)の交差点に出ます。「②興津駅前」の交差点です。ここを左折して、国道1号線を由比方面へ進んでいきます。
しばらくいくと、「③興津中町」の交差点に出ます。角にローソンがあります。ここまでは迷わないでしょう。
国道1号線に沿ってさらに進むと、正面に「駿河健康ランド」の建物が見えてきます。その少し手前に、左側へと分かれる道(④分岐)が出てきますので、左側の道へ進みます。分岐の真ん中にENEOSのガソリンスタンドがありますので、目印にしましょう。
しばらく行くと、興津川を渡る「⑤浦安橋」(興津川橋)がありますので、そのまま渡ります。
興津川→駐車場
興津川にかかる橋を渡り終えると、すぐに上の写真のような標識(⑥薩埵上道分岐)があります。これは「薩埵上道」経由で薩埵峠へ至るルートです。こちらからも行けるのかもしれませんが、わかりやすくて近いのは「薩埵中道」経由のルートです。そのため、この標識はスルーしてまっすぐ進みます。
少し行くと、国道1号線のバイパスと合流(⑦国道1号線バイパスと合流)しますが、そのまま歩道を直進します。途中で、「由比方面へ自転車・徒歩で行く方は海側へ」というような意味の看板がありましたが、それに惑わされずに進みます。
この看板は、「このバイパスの左側の歩道は途中で終わっていて、由比までは抜けられない」という意味ですが、歩道が終わる前に薩埵峠への道へ曲がるので問題ありません。
左手に東海道本線の「⑧洞踏切」が見えてきたら、その踏切を渡ります。
踏切を渡ってすぐに線路沿いの道がありますが、ここは曲がらず、次の道を右折します。細い生活道路のような道で分かりにくいので注意です。
上の写真は踏切を渡り切ったところですが、直進して、突き当りを右折します。
細い道を道なりに(上記の右折後、さらに左へ折れます)進んでいくと、上の写真(⑨薩埵峠への道)のように少し登り坂になってきます。
こんな細い道を登っていきます。左側にはミカンの木が、右側には……
駿河湾の絶景!(⑩駿河湾の絶景ポイント)
対岸に見えるのは伊豆半島の西岸です。
道なりに左へ折れていくと、少し道幅が広くなります。すぐに、小さな交差点のようなところに出ます(⑪薩埵峠へ右折)ので、ここを右折します。角に薩埵峠への標識がありますので、迷うことはないでしょう。
薩埵峠まで1.2km、35分とありますが、そんなにかかりません。いや、絶景に気を取られていると、もっとかかります(笑)
そのまま坂道を登っていくと、墓地に突き当たりますが、そこに小さな駐車場とトイレがあります(⑫駐車場・トイレ)。マイクロバス以下の大きさの車両であれば、ここまで来られるようです。
この先、薩埵峠展望台の駐車場までトイレはありませんので、必要であればここで済ませておきましょう。
駐車場→薩埵峠
墓地の中をとおり、その先にある木の階段(⑬階段)を登っていきます。少し急ですが、すぐに終わりますので心配はいりません。
この日は、平日にもかかわらず、何組かの人たちが登っていきました。天気がよかったからでしょうね。
ここから先は駿河湾を右手に眺めながら、整備された遊歩道を歩いていきます。そして、少し広くなった場所に出ると、そこが「⑭薩埵峠」です。
この先に「薩埵峠展望台」もありますが、この薩埵峠のポイントも絶景ですので、しばし足を休めながら、富士山と駿河湾の景色を堪能しましょう。
「薩埵峠」からの絶景! 富士山と国道1号線・東海道本線
最初の絶景ポイント「薩埵峠」からの景色です。
駿河湾の向こうに富士山が堂々と聳えています。海側の道路は国道1号線、その左側に東海道本線が並んでいます。東名高速道路は薩埵峠の下をトンネルで抜けていて、ここからは見ることができません。
少し引いてみると、富士山の右側に愛鷹山も見えています。沼津あたりからだと富士山の前に見える愛鷹山ですが、薩埵峠からは富士山と並んで見えるのですね。
海のほうへ目を向けると、駿河湾の向こうに伊豆半島がくっきり見えます。海と空の青さがとても美しいです。
薩埵峠の絶景ポイントの近くでは、寒椿が咲いていました。青い海や空と対照的なピンク色。冬のちょっと寂しい山の風景を明るくしてくれる花ですね。
絶景の遊歩道を歩いて薩埵峠展望台へ
薩埵峠から、薩埵峠展望台を経て、由比駅へと向かいます。
ここからは、上の地図を参考にご覧ください。
薩埵峠から薩埵峠展望台までは、上の写真のような絶景を眺めながら歩ける遊歩道(①絶景の遊歩道)が続いています。
薩埵峠展望台までの距離はたいしたことはないのですが、あまりの絶景で、すぐ足が止まってしまいます(笑)
薩埵峠から薩埵峠展望台までの中間地点には、「②東屋」もあります。ここで休憩していくのもよさそうですね。東屋があるところは少し陸側に引っ込んでいるので富士山は見えないのですが、駿河湾の絶景を眺めることができます。
東屋の前からの景色です。冬の柔らかい日差しが海に反射してまぶしいくらいでした。
遊歩道の脇には、ミカンの木があります。ちょうど実がなっている時期でした。
そして、二つ目の絶景ポイント、「③薩埵峠展望台」に到着しました。小さな展望台が設置されていますが、下の遊歩道からでも十分に絶景を堪能できます。
薩埵峠展望台からの絶景! 自然と人工物の競演!
それでは、薩埵峠展望台からの絶景を見てみましょう!
先ほどの「薩埵峠」からの景色に加えて、東名高速道路が加わって、構造物がにぎやかになっています。
薩埵峠と駿河湾に挟まれた、この狭い土地に、東名高速道路、国道1号線、東海道本線が集まっているのは壮観です。それだけ、交通の難所だったということでしょう。
東名高速道路が薩埵峠の下のトンネルを抜けて、国道1号線をオバークロスするところは、なかなか迫力があります。
ちなみに、よく見ると、東海道本線の列車も写っています。3両編成と短いので、よく見ないとわかりません(笑)
縦構図で撮ると、手前の構造物が強調されて迫力が出ますね。背景の富士山や駿河湾の景色も美しく、自然と人工物がとてもバランスの取れた競演をしています。
ちなみに、現在は遊歩道になっている薩埵峠を超える道は、江戸時代に整備されたそうです。海の崖際を行く危険な道の代わりに整備されたそうです。鉄道や道路を敷設できるくらいのスペースがあれば、危険なんてことはないでしょ? なぜわざわざ峠越えの道を作ったのか?
実は、江戸時代には、現在の東海道本線や国道1号線が通っているところには陸地がなかったそうなのです。それが、1854年の「安政の大地震」で地面が隆起して、今の地形になったのだとか。
駿河湾といえば地震活動の盛んなところですが、たった150年前の地形が今と違うということを知ると、自然の力はすごいものだと感心してしまいます。
少し引いて撮ってみると、駿河湾の向こう、富士山の横に愛鷹山も写ります。駿河湾の濃い青色が、富士山山頂の雪を際立てますね。
この薩埵峠展望台の前にある標識によると、興津駅から4km、由比駅から3kmとのこと。興津駅~薩埵峠~由比駅の全区間を歩くと7kmになります。
先ほど、薩埵峠から歩いてきた遊歩道は、とても気持ちの良い道ですので、ぜひ歩いてみてほしいです。
薩埵峠展望台から由比駅へ!
あまりの絶景に、だいぶ長居をしてしまいましたが、そろそろ由比駅へ向かいましょう。
薩埵峠展望台→薩埵峠駐車場
再び、富士山と駿河湾を眺めながら、気持ちの良い遊歩道を歩いていきます。
5分も歩けば、このような階段があり、トイレと駐車場に出ます。由比側からは、この駐車場(④薩埵峠の駐車場)まで車で来ることができます。ですが、途中の道は、車一台がやっと通れるくらいの細い道ですし、駐車場のキャパシティも少ないので、できれば徒歩で訪れたいところです。
薩埵峠の駐車場です。ご覧のとおり、広くはありません。
ツーリングの途中で立ち寄るのか、バイクで来られている方もかなり多かったです。
薩埵峠駐車場→一里塚跡
駐車場を出て少し歩くと、左手にミカン畑が広がります。その向こうには富士山も。いかにも静岡らしい風景ですね。(⑤ミカン畑と富士山)
この先で分かれ道がありますが、右側に進みます。上の写真のミカン畑の上の石垣がある道を進みます。
ミカン畑の脇の道をしばらく進むと、右手に駿河湾を一望できるところに出ます。ここにも「⑥薩埵峠の碑」が立っていました。
ずっと一本道ですので、迷うことはないでしょう。富士山や駿河湾を眺めながら、坂道を少しずつ下っていきます。
先ほどの駐車場へは、この道を通って行くようで、途中で何台かの車とすれ違いました。もう駐車スペースがないのでは、と心配になったりして。
途中で振り返ってみると、薩埵峠展望台が見えました。東名高速道路がトンネルに入るちょうど上あたりです。
建設された時期が古い国道1号線と東海道本線は海岸線に沿って敷かれているのに、東名高速道路はトンネルで薩埵峠を貫いています。もっとも、ここでは見えませんが、さらに新しい東海道新幹線は、少し内陸側を長いトンネルで抜けていますが。
由比側の町まで降りてきました。ここには写真(左)にあるような「⑦一里塚跡」があります。由比側から薩埵峠へ行く場合には、写真(右)の急坂を登っていきます。車もこの道を通るので、注意しましょう。
江戸時代の風情が残る東海道を歩いて由比駅へ
一里塚跡から由比駅へは、江戸時代の旧家などがたくさん残る道を歩いていきます。
明治天皇が休憩したといわれる「⑧脇本陣 柏屋」が右手にあります。この柏屋をはじめ、この付近には、薩埵峠を行き来する旅人が休憩するための「間の宿」が数軒あり、現在もそのまま残っています。
江戸時代の風情が残る街道を歩いていきます。
由比駅までの途中に、この地域の名物「桜えび」をいただける「⑨くらさわや」があります。ここまで歩いてきて、おなかもすいているでしょうから、この「くらさわや」さんでお昼にするのがおすすめです。ただし、桜えびは漁期が限られていて、いつでも食べられるとは限りません。「くらさわや」さんのWebサイトで確認することをおすすめします。
また、由比駅や興津駅周辺のグルメ情報については、はてなブロガーのFrostmoonさんのブログに詳しいレポートがあります。由比側から自転車で薩埵峠展望台へ行かれたときの旅行記もありますので、ぜひご覧ください。
さらに街道を進んでいくと、「⑩あかりの博物館」があります。江戸から昭和にかけての照明器具などが展示されているミニ博物館です。
さらに進むと、左手に上の写真のような「⑪薩埵峠への看板」があります。ここは小さな交差点になっていますが、そのまま直進します。
すると、このような「⑫歩道橋」に出ますので、これを渡ります。歩道橋を渡ったら、歩道橋で超えた車道のさらに奥の道路を左へ歩いていきます。
そのまま直進すると、右手に「⑬由比駅」があります。
興津駅から薩埵峠を経由して由比駅まで。約7kmの散策、お疲れさまでした。
以上、『薩埵峠(さったとうげ)で富士山を見よう! 興津駅から由比駅への旧東海道のハイキングコースと絶景ポイントを詳しく紹介します!』でした。薩埵峠の絶景、一度は見る価値があります。晴れた日にぜひ訪れてみてください。
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