会津と日光を結ぶ下野街道の宿場町に「大内宿」があります。江戸時代の茅葺屋根の民家が30軒以上も並ぶ街並みは壮観で、南会津の一大観光名所となっています。ところが、鉄道駅からかなり離れているため、公共交通機関でのアクセスが難しい場所でもあります。この記事では、会津鉄道と予約制のバスを利用した大内宿へのアクセス方法に加えて、ゴールデンウィークに大内宿を訪問したときの様子をご紹介します。公共交通機関のみで訪問したい方は是非参考にしてみてください。
大内宿とは?
大内宿は、会津と下野(しもつけ)の国を結ぶ下野街道の宿場町です。1640年ごろに整備され、現在も茅葺屋根の民家が残っています。観光地になっているとともに、古い町並みを保存するために、昭和56年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
ほとんどの建物はお土産屋か蕎麦屋等になっていて、年間100万人以上訪れる観光客を迎えています。
という話はともかく、上の写真の街並みを一度はご覧になったことがあるのではないかと思います。
大内宿へのアクセスは?
江戸時代は、江戸と会津を結ぶ主要な街道であったために栄えた大内宿ですが、明治以降は主要な交通路から外れてしまいました。そのおかげもあって、これだけの建物が残っているそうです。
そんな場所にあるだけに、公共交通機関でのアクセスが難しい観光地でもあります。ここでは、公共交通機関だけで大内宿へアクセスする方法をご紹介します。
会津鉄道+乗り合いバス「猿游号(さるゆうごう)」(4月~11月の毎日)
鉄道旅行派におすすめなのは、会津鉄道の湯野上温泉駅から、広田タクシーが運行する乗り合いバス「猿游号」で大内宿へアクセスする方法です。上の写真のようなレトロなバスですが、ゴールデンウィークなど繁忙期には、通常のマイクロバスも利用されるようです。
会津鉄道の湯野上温泉駅までの経路と所要時間は以下の通りです。
- 会津若松駅 → 湯野上温泉駅
- 会津鉄道 普通列車で40分程度
- 浅草駅 → 湯野上温泉駅
- 東武鉄道 特急「リバティ会津」(浅草→会津田島 約3時間10分~20分)
- 会津鉄道 普通列車(会津田島→湯野上温泉 約30分)
首都圏から会津鉄道沿線までのアクセスには、東武鉄道が1日4往復運行している特急「リバティ会津」がおすすめです。会津鉄道の会津田島駅まで乗り入れていて、接続する普通列車に乗り換えて約30分で湯野上温泉駅に到着します。
特急「リバティ会津」については、以下の記事をご覧ください。予約方法も掲載しています。
湯野上温泉駅と大内宿を結ぶ乗り合いバス「猿遊号」は4月~11月に運行されています。2023年現在、湯野上温泉駅~大内宿間に6往復運転されています。所要時間は、時刻表上は20分になっていますが、渋滞がなければ15分程度です。ゴールデンウィークなどで渋滞していると、20分以上かかることもあります。
乗り合いバス「猿游号」ですが、事前に予約しておくことをおすすめします。
「猿游号」を運行する広田タクシーのWebサイトから、「猿游号を予約する」ボタンを押して、フォームに入力すると予約ができます。私が実際に予約したときには、2~3時間程度で返答のメールがありました。
当日、実際に乗車したときの様子からすると、席が空いていればその場で乗車券を購入して乗車することもできそうでした。ただ、観光シーズンは席が空いている保証はありませんので、事前に予約をしておいたほうがよいでしょう。
ちなみに、料金は大人1,100円(子ども500円)です。片道・往復というのではなく、当日何度でも乗車可能な「フリー券」という乗車券です。実際には往復利用でしょうから、湯野上温泉駅~大内宿の往復で1,100円と考えればよいでしょう。
会津鉄道+猿遊号でのアクセスなら「大内宿共通割引きっぷ」がおすすめ
会津鉄道の乗車券と猿游号の往復券がセットになった「大内宿共通割引きっぷ」が販売されています。会津若松駅(西若松駅)や会津田島駅から会津鉄道で湯野上温泉駅までアクセスする場合には、「大内宿共通割引きっぷ」がお得です。
- 有効期間: 以下のいずれも2日間有効
- 以下の4つの行程を選択可能
- 西若松→会津田島(片道乗車券)+猿遊号1日フリー乗車券
- 西若松⇔湯野上温泉(往復乗車券)+猿遊号1日フリー乗車券
- 会津田島→西若松(片道乗車券)+猿遊号1日フリー乗車券
- 会津田島⇔湯野上温泉(往復乗車券)+猿遊号1日フリー乗車券
- 料金: 大人2,200円 小人1,100円
- 発売箇所
- 会津鉄道の有人駅(西若松駅、芦ノ牧温泉駅、湯野上温泉駅、会津田島駅)
- 会津鉄道線内の車掌(ワンマン列車での発売はできません)
- 猿游号車内
- 東山温泉観光協会
- 観光ビューロー駅たびデスク(会津若松駅内)
- スマホ事前購入
会津鉄道線内の片道乗車券か往復乗車券と、猿遊号1日フリー乗車券がセットになったきっぷです。
西若松~湯野上温泉の往復は1,720円、猿遊号1日フリー乗車券は1,100円ですので、別々に購入すると合計で2,820円になりますが、「大内宿共通割引きっぷ」なら2,200円となり、かなりお得になります。
また、片道乗車券は途中下車可能(逆戻りは不可)、往復乗車券は往復区間内がフリー乗降区間となります。いずれの乗車券も、観光スポットが点在する湯野上温泉~塔のへつり間はフリー乗降区間となります。
ちなみに、2019年のゴールデンウィークに、浅草駅から会津田島駅まで特急「リバティ会津」で行き、会津田島駅から乗り継いだ会津鉄道の普通列車の車内で、車掌から「大内宿共通割引きっぷ」を購入することができました。ワンマン列車の車内では発売してくれないそうですが、観光シーズンの週末、特に、特急リバティ会津から接続する普通列車には、車掌が乗車していることが多いようです。(必ず乗車しているわけではないので、ご注意ください)
詳しくは、会津鉄道のWebサイトをご確認ください。
ゴールデンウィークなど繁忙期は「猿遊号」がおすすめ!
2019年のゴールデンウィーク(5月5日)に、湯野上温泉駅~大内宿を、猿遊号で往復しました。
この日は天気が良く、道路は大変に渋滞していました。Twitterで見てみると、駐車場待ちのクルマの列が2km以上にも続き、駐車場に入るまでに1~2時間ほども待ったということです。
このような混雑の中でも、「猿遊号」は5~10分遅れくらいで運行していました。
午前9時の湯野上温泉駅→大内宿の便に乗車したのですが、正規のルートではなく、距離的には遠回りになる裏道を通りました。クルマ1台がすれ違えるかどうかというところを、マイクロバスで進んでいきました。最後の数百メートルは、駐車場待ちのクルマの列に合流してしまうため、多少の遅れは発生しますが、それでも自家用車で駐車場待ちをするのに比べたら、圧倒的に速かったです。
お昼ごろの大内宿→湯野上温泉駅の便で戻りましたが、こちらは正規のルート。道路沿いに、おそらく2km以上に渡って、大内宿への観光客のクルマの列が連なっていました。
今や、大内宿は、南会津の大人気スポットですので、ゴールデンウィークやお盆休みなどの繁忙期に訪問される方は、自家用車ではなく、湯野上温泉駅からの猿遊号の利用を強くおすすめします。
大内宿おすすめの楽しみ方3選
大内宿は観光スポットがコンパクトにまとまっていますので、特定のスポットだけを見るのではなく、ぶらぶら散歩しながら、お土産屋さんを覗いていくのがよいと思います。
大内宿観光のおすすめの楽しみ方を3つご紹介します。
大内宿展望台
大内宿というと、この展望台からの写真が有名ですね。ここは、バス停や駐車場から歩いていくと、大内宿の街並みの一番奥の突き当りにある場所です。
茅葺屋根の民家が並ぶさまが壮観ですので、是非訪れることをおすすめします。階段を数十段ほど登る必要がありますが、その価値は十分にあります。実際に、多くの観光客がこの展望台まで上ってきていて、写真を撮っていました。
私が訪れた5月上旬は、街並みの向こうに見える山に雪が残っていて、青空と雪山を背景にした大内宿の景色が素晴らしかったです。
食べ歩きしながらの散歩
展望台から下りてきたら、茅葺屋根の民家を眺めながらの食べ歩きがおすすめです。
お土産屋さんと並んで、おやきやアイスクリーム、コーヒーを出しているお店もたくさんあります。お土産を物色しながら食べ歩きをするのがよさそうですね。
大内宿の民家が並ぶ道の両側に小さな水路があるのですが、そこでラムネが冷やされています。夏場は冷えたラムネでのどを潤すのもよさそうですね。
そして、大内宿の名物といえばねぎそばです。ねぎが丸ごと1本入っていて、このねぎを箸代わりに食べるそばです。もっとも、ねぎをかじりながら食べるので、最後は箸が必要になりますが…。実際にはねぎ1本でそばを食べるのはなかなか難しく、すぐに箸を使ってしまいました。
今回は、「山形屋」さんで「ねぎおろしそば」をいただきました。古民家の中が蕎麦屋になっていて、ある種の懐かしさを感じる雰囲気の中でそばをいただくことができます。
5月とはいえ、標高の高い大内宿は風が冷たく、いろりが焚かれていました。周りにはたくさんの魚が焼かれていました。
大内宿のすごいところは、こういった古民家に実際に人が住んでいたり、店舗として活用していたりするところです。古い建物ですし、茅葺屋根はメンテナンスが大変なはずですが、あらゆるものがきちんと手入れされていて、地域住民が実際に生活しながらこの街並みを守っていこうとしている様子がよくわかります。
大内宿街並み展示館
大内宿の街並みのほぼ中間あたりに「大内宿街並み展示館」があります。ここは当時の「問屋本陣」を再現した展示館になっています。
当時は、宿場町ごとに荷物を馬に付け替えて運んでいたそうですが、その中継点となるのが問屋本陣です。大内宿には、残念ながら江戸時代の問屋本陣は、資料も含めて残っていなかったそうですが、会津地方の別の宿場町の問屋本陣を参考に復元したそうです。
展示館の内部には、江戸時代の部屋が再現され、当時の生活用具などが展示されています。また、個人的に興味深かったのが、茅葺屋根の保存活動についての解説があったことです。茅葺屋根を保存するために、住民自ら屋根葺きの訓練をしたり、茅葺の材料になる茅を確保するために、近くに茅場を確保したりといった苦労があるそうです。街並みのすべての民家が茅葺屋根で統一されている景色は感嘆に値しますが、その裏には住民の苦労があるのですね。
以上、大内宿への公共交通機関でのアクセス方法と、おすすめの楽しみ方をご紹介しました。これだけ茅葺屋根の民家が立ち並ぶ宿場町はそうそうありませんので、是非一度は訪れてみることをおすすめします!
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