おそらく東京以外の人は知らないであろう路線「日暮里・舎人ライナー」。山手線の日暮里駅と、足立区の見沼代親水公園を結ぶ9.7kmのミニ路線で、東京都交通局が運行しています。この「日暮里・舎人ライナー」の特徴は、とても高いところを走る路線であるということ。ビルの合間を縫い、高架の高速道路のそのさらに上を超えるところまであり、車窓を眺めるだけでも楽しい路線です。
「日暮里・舎人ライナー」とは?
「日暮里・舎人ライナー」は、東京都荒川区の日暮里駅と、足立区北部の見沼団親水公園(みぬまだいしんすいこうえん)駅を結ぶ路線です。
案内軌条式鉄道に分類される路線です。一般には「新交通システム」とも呼ばれている、専用の軌道上をゴムタイヤの車両が走る鉄道 です。ゴムタイヤなのですが、分類上は「鉄道」になっています。代表的な路線としては、東京では「ゆりかもめ」、関西では大阪市交通局の「南港ポートタウン線」、神戸新交通の「ポートアイランド線」「六甲アイランド線」などがあります。
この「日暮里・舎人ライナー」は、2008年に開業した比較的新しい路線です。
すでにビルや住宅、高速道路などで埋め尽くされている東京23区。ここに新たに鉄道を作ろうとすると、空いているのは地下深くか地上高くのどちらかしかありません。そのため、この「日暮里・舎人ライナー」は、非常に高いところを走る路線になっています。
ちなみに、日暮里はともかく、「舎人(とねり)」というのは何?と思いますよね。これは足立区の最も北側に位置するエリアの地名です。難読地名でもありますね。
「日暮里・舎人ライナー」に乗ってみた
ということで、実際に「日暮里・舎人ライナー」に乗車してみましたので、その乗車レポートをお届けします。
日暮里駅の高架ホームから発車!
2月の土曜日の午後。山手線で日暮里駅にやってまいりました。
日暮里・舎人ライナーは、日暮里駅の高架ホームから発車します。山手線や京浜東北線が地上ホームですので、2つほど階を上がることになります。
日暮里・舎人ライナーでは、どの駅も、ホーム全体がガラスで覆われていて、ホームから車両を撮影するのが極めて難しいのです。こんな写真ですいません。
日暮里・舎人ライナーは、開業当初は10分に1本くらいの運転でしたが、現在のダイヤでは、日中時間帯でも1時間に10本、6分毎に運転されています。
先頭車両のかぶりつき席を確保!
日暮里・舎人ライナーは、多くの新交通システムと同様に自動運転を採用しています。そのため、運転士や車掌は乗車していません。運転席もないため、先頭車両の一番前の席は、前面がとてもよく見渡せる特等席になっています。初めて乗車する方は、ぜひこの一番前の座席を確保しましょう。運転本数も多いので、1~2本待てば先頭の席に座ることができるでしょう。
日暮里・舎人ライナーの車内はこんな感じです。向きは固定ですが、クロスシートが並びます。ロングシートの車両もありました。最近、投入された新型の車両はロングシートのようですね。
日暮里駅に停車中の先頭車から見た車窓です。専用軌道がちょっと近未来感。
6分間隔での運転なので、写真を撮影しているとあっという間に出発時刻です。13時16分、日暮里駅を出発です。
都会のビルの合間を縫って走る!(日暮里~熊野前)
日暮里駅を出るとすぐに左にカーブします。
両側に立ち並ぶビルの合間を真っ直ぐに進んでいきます。この高架の下にある道路は都道58号線。台東川口線という名称がついていますが、その名の通り、東京都台東区と埼玉県川口市を結ぶ道路です。この先も、日暮里・舎人ライナーは、この都道58号線の上を走っていきます。
再び右にカーブするとすぐに西日暮里駅です。西日暮里駅も山手線や京浜東北線の乗換駅ですから、かなりの乗客が乗ってきました。
西日暮里を出てから終点までは、ほぼ真っすぐに北を目指して進みます。このあたりも、マンションや雑居ビルが並ぶ都会の光景。沿線のビルと見比べてみると、日暮里・舎人ライナーの高架は、ビルの4~5階くらいに相当します。かなり高いところを通っているのですが、周りのビルのほうが高いので、あまり高さを感じません。
日暮里行きの電車とすれ違いました。本数が多いので、かなり頻繁にすれ違います。都電荒川線(東京さくらトラム)との乗り換え駅の熊野前までは、同じような車窓が続きます。
日暮里・舎人ライナーのハイライト! 急勾配を登って荒川と首都高速を越える!(熊野前~扇大橋)
熊野前を出ると、いよいよ、日暮里・舎人ライナーのハイライト区間へ! ここから急勾配を登って、高度を上げていきます。写真の奥に見えるのが足立小台(あだちおだい)駅ですが、かなりの上り坂になっているのがわかります。
この写真では見えませんが、足立小台駅の手前で、まずは隅田川を渡ります。
足立小台駅を出ると、ジェットコースター区間へ! 首都高の高架の上を越えるため、すごい急勾配になっています。奥に見える赤い高架が首都高速中央環状線です。
都会で新たに地下鉄を掘るとどんどん地下深くなっていくのと同じで、地上に鉄道を作ろうとすると、どんどん高いところを通らなければならないのですね。
上り坂の途中でも日暮里行きの列車とすれ違い。このちょうど下が荒川なので、周りにビルがなく、上空が開けていますね。
これなんか、完全にジェットコースターですね。最高点まであと少し!
最高点を越えると、急な下り坂に! もちろん、ジェットコースターとは違って、いきなりスピードが上がったりしませんが…。ここは急カーブも加わって、なかなかスリルがありますね。眼下に見える駅が、扇大橋駅です。
日暮里へ戻るときに、側面の窓から撮影した首都高と荒川です。2段になった道路のさらに上を超えていくので、あんなに高いところを通るわけですね。ちなみに、画面が緑っぽいのは、UVカットガラスのせいだと思います。(水郡線でも同じようなことがあった気が…)
住宅街の中に広がる舎人公園(扇大橋~見沼代親水公園)
荒川を渡ったあとは、雑居ビルのような建物は減り、マンションや団地が増えてきます。都市部から住宅街への入ってきたようです。
舎人公園(とねりこうえん)駅に到着します。真ん中に止まっている車両は、新たに増備された新型ですね。右側は旧型。
住宅街が続く中にあって、この舎人公園駅だけは他の駅と違う光景が広がります。都会の中のオアシスのような広い公園があるのです。
この日は、午前中は晴れていたのですが、午後から曇ってきて風が強く、寒くなってきたためか、公園には人はまばらでした。
舎人公園駅を出発します。舎人公園駅は3つのホームがあるうえに、舎人公園の地下にある車両基地への線路が分岐しているため、広々としています。公園の中にあるので、周囲に建物がなく、視界がとても開けています。
舎人公園を出ると、わずか二駅で終点の見沼代親水公園駅に到着です。
見沼代親水公園駅周辺を散策!
すぐに折り返してもよいのですが、せっかくなので改札を出て周囲を散策してみます。
駅を出てすぐに目につくのが、この高架が途切れているところでしょう。見事にストンと途切れていて、この先も建設するつもりなのかと思ってしまいますね。
ところで、なぜ、住宅地の真ん中にあるこの駅が終点に選ばれたのでしょうか。他の鉄道の乗り換え駅でもないですし、これと言って観光するようなところもありません。
その答えは、見沼代親水公園駅からすぐの道路上にありました。駅から100メートルほどのところに、東京と埼玉の県境があるのですね。
日暮里・舎人ライナーは都営。つまり、東京都が運営している公営交通です。それで、東京都足立区の最北端に位置する、この見沼代親水公園駅を終点にしたのでしょうね。県境の直前でぶつっと切られたような高架を見ると、大人の事情とは言え、ちょっと露骨に感じてしまいました。
さて、気を取り直して、見沼代親水公園を散策します。駅名の通り、駅のすぐ近くに「親水公園」があります。公園と言っても、住宅街の中の生活道路に沿って、近くの毛長川から水を引いた水路と遊歩道が整備されているくらいのものですが、散策するにはちょうどよいです。
この水路には、鴨がたくさんいます。数羽ずつ固まって、水の上を気持ちよさそうに泳いでいました。今にも雨が降り出しそうな天気ですが、少し心が和みますね。
見沼代親水公園駅に戻ってきました。日暮里・舎人ライナーの高架は駅の近くだけ少し高くなっているのですが、その理由がこれです。
道路の上に高架を作り、線路と道路の間に駅を設けているのですね。こうすることで、地上にスペースがなくても駅を設けることができるというわけですね。大きな箱が線路にくっついているみたいで面白いですよね。
全線乗っても20分ちょっとで330円。東京23区の最北端を走る「日暮里・舎人ライナー」に乗ると、空の上から街を眺めるような感覚を味わうことができます。沿線には目立った観光スポットはないのですが、車窓を眺めるだけでも乗る価値はあると思いますよ。
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