長野駅と湯田中駅を結ぶ長野電鉄長野線。長野の都市近郊輸送と、湯田中温泉や志賀高原への観光輸送の両面を持つ路線ですが、首都圏で活躍した古い電車が現役で頑張っているのも魅力の一つです。今回、特急「スノーモンキー」と「ゆけむり」に乗り、湯田中まで往復してみましたので、乗車記をお届けします。
長野電鉄 長野線とは?
長野電鉄長野線は、長野駅~湯田中駅を結ぶ全長33.2kmの私鉄路線です。全線電化され、長野~朝陽間は複線、残りの朝陽~湯田中間は単線となっています。
長野電鉄長野線は、長野~信州中野間の都市近郊輸送と、信州中野~湯田中間の観光輸送に大きく分かれています。それを反映してか、普通列車は信州中野駅で運転系統が分離されていますが、特急列車は長野~湯田中間を直通します。
長野電鉄の車窓は、都市部から住宅地、そして田園風景と変化に富んでいます。信州中野~湯田中間は、長野盆地から山間部、志賀高原への入口にあたり、曲がりくねった急勾配の区間になるなど、車窓の移り変わりも多く、乗っているだけで楽しい路線です。
それでは、早速、乗車記をお届けします。
【長野電鉄 乗車記1】地下駅の長野から8500系普通列車に乗車!
前日は長野駅近くに宿泊し、午前中いっぱい、長野電鉄の乗車を楽しむ予定です。
長野電鉄の長野駅は地下にあります。JR長野駅とは地下道で結ばれているのですが、JRの駅が地上にあるのに対して、長野電鉄の駅は地下ですので、少しわかりにくいのですね。
あとで詳しく紹介しますが、長野電鉄に1日乗り降り自由となる「長電フリー乗車券」(1日用,2,070円)を窓口で購入してホームへ。
本当は特急で往復しようと思っていたのですが、ホームに降りてみると、その1本前の信州中野行きの普通列車が止まっていました。
この電車は、東急線を走っていた8500系。田園都市線の沿線に住んでいた筆者は、おそらく何度も乗ったことのある車両です。とても懐かしくなり、急遽、この電車に乗ることに。
車両の側面には、長野電鉄の鉄道むすめ「朝陽さくら」の巨大なイラストが。東急時代にはなかったものですね。
車内はほぼ東急時代のまま。ロングシートもそのまま使われているようです。
2020年7月現在、同系の車両は、東急田園都市線で現役で走っていて、筆者も年に何度か乗車する機会があるので、車内にいるとどこにいるのかわからなくなってきます(笑)
08時28分、長野駅を出発です。
善光寺下まで3駅ほど地下区間が続きます。地上に出たあとも、しばらくは長野の市街地や住宅地が続きます。
柳原駅を出ると、千曲川を渡ります。梅雨がなかなか明けず、雨ばかり降っているので、水量もやや多めでしょうか。
千曲川を渡ると、住宅よりも田畑が多くなり、長閑な車窓が広がります。日本の田園風景といえば田んぼが広がる景色なのですが、長野電鉄の沿線は桃やぶどうなどの果物畑が多いようです。
【長野電鉄 乗車記2】小布施駅で途中下車して「2000系」特急電車を見学
9時02分、小布施駅に到着。途中下車します。小布施駅で途中下車した理由は二つ。
一つ目は、「ながでん電車の広場」を見学するためです。小布施駅の構内に、古い特急電車が保存されているのです。
構内踏切を渡り、「ながでん電車の広場」へ向かいます。広場への道は特に設けられていなくて、線路の上をそのまま歩いていきます。歩きやすいように、枕木の上にシートが敷かれていますが、雨水がたまっていたので、レールの上を歩いていきます。
保存されているのは、2000系という古い特急電車。現在は大手の鉄道会社で活躍した車両が多い長野電鉄ですが、この2000系は、長野電鉄オリジナルの特急車両です。
1957年から1964年にかけて、3両編成が4編成(合計12両)製造され、長野電鉄の特急列車として活躍してきましたが、2012年に全ての編成が引退しました。小布施駅の「ながでん電車の広場」に保存されているのは、4編成のうち、最後まで活躍していたD編成です。2012年の引退後に、「ながでん電車の広場」に保存されることになりました。
昔ながらの丸っこい車体と2色のカラーリングで、とても愛嬌のあるデザインですね。
次の電車の時間が近づいてきたので、ホームに戻ります。
小布施駅の2番線と3番線があるホームには、木造の時代を感じさせる屋根がありました。なかなかいい雰囲気ですね。
ホームで列車を待っていたら、長野行きの普通列車がやってきました。最近走り始めた元東京メトロ日比谷線の03系ですね。長野電鉄では3000系と呼ばれているようです。
日比谷線の時には前面の帯がグレーでしたが、長野電鉄では赤になっていました。赤い帯もなかなか似合いますね。
【長野電鉄 乗車記3】元成田エクスプレスの特急「スノーモンキー」で湯田中へ
小布施駅で途中下車した理由の二つめが、これに乗車するためです。
元JR東日本の特急「成田エクスプレス」(253系)として活躍していた車両です。長野電鉄では特急「スノーモンキー」として運行されています。
車両側面には、列車名のとおり、猿の写真がでかでかと貼られています。
車内は「成田エクスプレス」として走っていた当時のまま。回転しない集団見合い式のシートや、飛行機の荷物棚を模した網棚(ではないですが…)も健在です。
特急「スノーモンキー」は3両編成。筆者が乗り込んだ2両目の先客は3名ほどと、ガラガラでした。
信州中野駅までは長野盆地の平地が続きますが、信州中野駅から先は急勾配を登っていきます。車窓の両側には、先ほどまでは遠くに見えていた山々が間近に迫り、山間部への入口のようなところを走っていきます。
このあたりは傾斜地のためか、ほとんどの斜面が果物畑になっていました。信州らしい風景ですね。
千曲川の支流、夜間瀬川(よませがわ)を渡ります。小さな川ですが、この川がつくった谷の部分を、周りの山を周りこむようにして湯田中へと登っていきます。
9時36分、定刻どおり、終点の湯田中駅に到着しました。下車した乗客はわずか。この時間では、まだ観光には早いのでしょうか。
【長野電鉄 乗車記4】湯田中駅横の「楓の湯」で温泉堪能!
湯田中駅の駅舎は、ローカル私鉄の駅舎としてはかなり立派です。湯田中温泉の玄関口であるだけでなく、この先の志賀高原へのアクセスにも使われているからでしょうか。
かつて、国鉄時代には、上野から急行「志賀」が湯田中まで直通していました。冬は温泉客やスキー客で大賑わいだったのでしょうね。
湯田中駅は、1面1線、つまり、ホームも線路も一つしかありません。写真右側に見えるのは、かつて利用されていた旧1番線ホームと、旧駅舎です。
その旧駅舎、現在は「楓の館」としてリニューアルされ、交流室や展示室として使われています。現役の駅舎として使われていたのは昭和31年までとのことですから、すでに60年以上前のことですね。
中に入ってみると、休憩によさそうなテーブルがいくつかと、観光用のパンフレットなどが置かれていました。レンタサイクル用と思われる自転車も数台ありました。
「楓の館」の前には、足湯がありました。観光客と思われる家族連れが楽しそうに入っていました。
「楓の館」の隣には、「楓の湯」という日帰り温泉施設があります。営業開始が10時なので、それまで湯田中駅の周辺を散策していたというわけです。
午前10時になり、営業開始と同時に入館。入浴料は大人300円と、街中の銭湯よりも安いほどです。
館内はそれほど広くなく、廊下の右側が脱衣所と浴室、左側がお休み処となっていました。浴室はみかげ石風呂と檜風呂があり、男女月替わりになっているそうです。筆者が訪れた時は、みかげ石風呂が男湯になっていましたので、そちらへ。
洗い場は5つほどで、それほど広くはありません。内湯も大きくはないですが、露天風呂(岩風呂)があり、そちらも合わせると、そこそこの人数は入れそうです。
お湯はナトリウム―塩化物・硫酸塩温泉(弱アルカリ性)で、温泉地らしく掛け流し。泉温が91℃もあるため、加水だけしているようです。とてもさっぱりとしたお湯を堪能してきました。
観光客が少ない時間帯なのか、地元の年配の方が多かったですね。足湯の前で「楓の湯」が開くのを待っていた方たちのようです。毎日、こんなに良いお湯に入れるのはうらやましい限りです。
湯上り後はお休み処で小休止。残念ながら(?)飲酒禁止でアルコール類も置いていないため、自販機でコーラを買いました。
このお休み処、湯田中駅の旧1番線ホーム上にあるため、窓から湯田中駅に停車している列車を目の前に眺めることができます。まさにトレインビューですね。このあと乗る予定の特急「ゆけむり」が入線していました。
【長野電鉄 乗車記5】元小田急ロマンスカー、特急「ゆけむり」で長野へ
長野への帰路には、元小田急ロマンスカーの特急「ゆけむり」に乗車します。
元小田急の10000形、通称「HiSE」と呼ばれていた車両で、小田急では特急ロマンスカーとして活躍していました。小田急では同形式の車両は2012年で引退していますが、長野電鉄では2006年から営業運転を開始しています。長野電鉄では「1000系」となっています。
ロマンスカーといえば、先頭車にあるこの展望席です。まだ空席もあったのですが、ここはお子様連れに譲る意味も込めて、筆者は中間車に乗車しました。
車内の様子です。赤い絨毯が通路に敷かれ、その両側にブルーのモケットのリクライニングシートが並びます。これもほぼ当時のままでしょう。今でも、当時の小田急の看板列車だった頃の貫録を感じますね。
リクライニングシートのモケットは若干色褪せていますが、座り心地は抜群! 往路に乗車した特急「スノーモンキー」(元成田エクスプレス)よりも古いはずですが、居住性はこちらのほうが上ですね。
10時57分、湯田中駅を発車しました。
特急「スノーモンキー」は3両編成ですが、この特急「ゆけむり」は4両編成。元ロマンスカーの車両なので、連接車なのですね。連接車は、2つの車両の間に台車(連接台車)を設置する形態の車両のことで、日本ではあまり採用例は多くありません。国鉄、JRがほとんど採用しなかったせいでしょう。
連接車はその構造上、1両の車両の長さが短くなるため、特急「ゆけむり」は4両編成なのですね。
まあ、ホームに停車していると台車は見えないですし、乗ってしまえば普通の人にはわかりません(笑) ただ、台車が少ない=車輪が少ないということになるので、通常は「ガタンゴトン、ガタンゴトン、…」となる音が、「ガタン、ガタン、…」となるので、走行時に耳を澄ませていれば分かります。
長閑な車窓と連接車のジョイント音を楽しんでいると、いつしか千曲川を渡り、北陸新幹線の高架が見えてきました。ここまでくると、すっかり長野の住宅地です。
地下区間へ入り、11時47分、終点の長野に到着しました。湯田中から50分の特急「ゆけむり」の旅を堪能しました。
長野電鉄の乗り歩きにおすすめ!「長電フリー乗車券」
今回、長野電鉄に乗車する際に利用したのは、「長電フリー乗車券」というフリーきっぷです。長野電鉄の全線に乗り降り自由となります。通常は特急券(1乗車100円)が必要な特急列車にも、そのまま乗車できるという優れモノのフリーきっぷです。
- 長電フリー乗車券
- 利用期間: 通年
- 発売期間: 通年
- フリーエリア: 長野電鉄全線(特急料金含む)
- 発売箇所
- 長野、権堂、須坂、小布施、信州中野、湯田中の各駅
- 無人駅から乗車の場合、発売駅まで乗車後に購入することも可能
「長電フリー乗車券」には、1日用と2日用があり、価格は以下の通りです。
おとな | こども | |
---|---|---|
1日用 | 2,070円 | 1,040円 |
2日用 | 2,580円 | 1,290円 |
2日用は連続する2日間有効です。湯田中駅や、その先の志賀高原など、長野電鉄の沿線への1泊旅行に使えます。
長野~湯田中の全線の片道運賃は1,190円。往復すると2,380円となりますので、単純に湯田中駅まで往復するだけで、「長電フリー乗車券」(1日用)の元を取ることができます。
以上、『【長野電鉄 乗車記】懐かしい車両たちが行き交う「ながでん」、首都圏で活躍した特急車両乗り比べで湯田中へ!』でした。長野の都市部と温泉地、湯田中を結ぶ長野電鉄。信州の長閑な車窓も魅力的ですが、首都圏の鉄道ファンには懐かしい車両たちに再会できる路線でもありますね。
関連記事
当ブログで掲載している観光列車やSL列車、風光明媚な路線の乗車記の目次ページです。
コメント