高知県の東部を走る高知東部交通の路線バスは、かつて計画された鉄道「阿佐線」の未成区間を結んでいます。途中、室戸岬や室戸世界ジオパークセンターを経由するため、乗り鉄にも観光にも便利な路線バスです。見どころは、太平洋の海岸沿いを走る区間。車窓からは太平洋の大海原を眺めることができます。
この記事では、高知東部交通の安芸・室戸線、室戸・甲浦線の乗車記をお届けします。
高知東部交通 安芸・室戸線、室戸・甲浦線とは?
高知東部交通は、高知県の東部で路線バスを運行するバス会社です。
安芸・室戸線は安芸営業所~奈半利駅~室戸岬を結ぶバス路線、室戸・甲浦線は室戸岬~甲浦を結ぶバス路線です。
高知県の東部、室戸岬を沿岸部に沿って、安芸・室戸線葉西半分を、室戸・甲浦線は東半分を走り、両方の路線を合わせてぐるっと半周するようなルートで走ります。(市街地では内陸部を走るため、上記ルートは細かいところでは異なっています)
この路線バス、公共交通機関で室戸岬へアクセスするのに有用ですが、乗り鉄をする際にもとても便利です。途中、土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線の終点「奈半利駅」を経由しますし、阿佐海岸鉄道DMVとの乗換駅「道の駅 東洋町」にも止まります。
この区間はもともと「阿佐線」の一部として鉄道が建設される予定でしたが、今のところ未整備となっています。今後の人口減少を考えると、新たに鉄道ができるとは思えませんので、この高知東部交通の室戸・甲浦線は、鉄道主体の旅行でも重要な交通機関となります。
阿佐海岸鉄道のDMV開業に伴って乗り換えバス停が「道の駅 東洋町」に変更
2021年12月に阿佐海岸鉄道のDMVが開業しました。DMV開業に伴って、高知東部交通バス(室戸・甲浦線)と阿佐海岸鉄道の乗り換え駅(バス停が)、甲浦駅から「道の駅 東洋町」に変更になりました。
- DMV開業後(2021年12月~): 道の駅 東洋町
- DMV開業前(~2021年12月): 甲浦駅
かつて、阿佐海岸鉄道は通常の鉄道として、甲浦駅~海部駅間を結んでいましたが、2021年12月にDMVが開業したことにより、道の駅 宍喰温泉~阿波海南文化村を結ぶ路線となりました。また、土休日には1往復のみですが、室戸岬を経由して、「道の駅とむろ」まで走る便もあります。
阿佐海岸鉄道DMVについては、阿佐海岸鉄道のWebサイトをご確認ください。
高知東部交通 安芸・室戸線、室戸・甲浦線 所要時間と運賃
高知東部交通 安芸・室戸線と室戸・甲浦線の所要時間と運賃は以下のとおりです。
区間 | 所要時間 | 運賃 |
---|---|---|
奈半利駅~室戸ジオ | 約1時間 | 1,420円 |
室戸ジオ~ 道の駅 東洋町 |
約55分 | 1,310円 |
※「室戸ジオ」は「室戸世界ジオパークセンター」で、安芸・室戸線と室戸・甲浦線の乗り換えバス停です。
※「道の駅 東洋町」では、阿佐海岸鉄道のDMVへの乗り換えができます。
ごめん・なはり線の安芸駅からも乗車できますが、奈半利駅から乗車するよりも若干運賃が高くなります。
西側の安芸~奈半利駅~室戸世界ジオパークセンターは1時間に1本ほど運転されていますが、室戸世界ジオパークセンター~道の駅 東洋町間は本数が少なくなります。安芸駅や奈半利駅から室戸岬を経由して、道の駅 東洋町まで乗りとおす場合には、事前に時刻表を調べておきましょう。
高知東部交通バスの時刻表は、以下のページに掲載されています。
高知東部交通 安芸・室戸線、室戸・甲浦線 乗車記(奈半利駅~甲浦駅)
高知東部交通バスの安芸・室戸線、室戸・甲浦線の乗車記をお届けします。
乗車したのは2019年夏です。当時は、阿佐海岸鉄道DMVの開業前で、室戸・甲浦線は甲浦駅を経由していました。また、当時は安芸~室戸岬~甲浦を走破するバスが走っていました。ダイヤ、運賃等は当時のものですので、ご了承ください。
奈半利駅から高知東部バス「安芸・室戸線」に乗車
この日は、朝早く高知駅を出発、後免駅で土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線に乗り換えて、奈半利駅に到着したのでした。
奈半利駅前から、8時43分発の甲浦行きのバスに乗ります。あいにくの雨模様のせいか、乗客は私以外に2名のみ。室戸岬への観光客も少ないようです。
奈半利町の市街地を抜けて国道55号線に入ると、すぐに右手に太平洋が見えてきます。雨はやみましたが、どんよりとした曇り空。
基本的に国道55号線を南下していきますが、沿岸に点在する町では、街中の道路に入っていきます。
室戸市の営業所で運転手が交代。営業所を出ると、数分で室戸岬のバス停に到着しました。奈半利駅から約1時間、運賃は1,200円でした。
室戸岬と室戸世界ジオパークセンターを観光
あまりに天気が悪かったら観光をやめようと思っていたのですが、雨は降ったり止んだり。降ってきてもパラパラと小雨が降る程度でしたので、予定通り、室戸岬を観光します。
岬というと、断崖絶壁のイメージがありますが、室戸岬はこのとおり、海のすぐ近くまで降りることができます。
室戸岬の海岸には、このような縞々の岩石がたくさん見られます。これは「タービダイト層」と呼ばれる地形で、海岸に近い浅い海底で、川などによって運ばれてきた砂や泥が堆積してできた地層です。それが地震などで隆起して、地上に姿を現したというわけです。
タービダイト層は、室戸岬の特徴的な地形のひとつです。
室戸岬の海岸を散策していたら雨が強くなってきたので、道路沿いにある休憩所へ。休憩所に併設されている小さな展望台(地上3階くらいの高さ)から、室戸岬を眺めることにしました。ゴツゴツとした特徴的な岩が広がる海岸線が一望できます。
お天気もいまいちなので、室戸岬での観光はこのあたりで切り上げて、室戸世界ジオパークセンターへ向かいましょう。室戸岬のバス停から、10時47分のバスに乗車。8分ほどで室戸世界ジオパークセンターに到着です。
室戸岬は、ユネスコが認定する「ユネスコ世界ジオパーク」の一つです。日本には9つしかありませんが、その一つが室戸岬なのです。
「室戸世界ジオパークセンター」は、室戸世界ジオパークのビジターセンター的な施設で、ジオパークについての展示や映像による紹介や、観光案内などの機能が集約されています。
高知や安芸のほうから室戸岬に来ると、室戸世界ジオパークセンターは室戸岬より先になってしまうのですが、できれば、先に室戸世界ジオパークセンターを訪れて、室戸岬の地形や地質、歴史について学んでから観光するほうがよさそうですね。
じっくりと展示や映像の上映を見たあとは、室戸世界ジオパークセンター1階にある「ジオカフェ」でランチ。高知名物、カツオのカツ定食です。これで500円! コスパ抜群のランチでした。
※2019年夏時点での価格です。
太平洋の絶景車窓を眺めながら甲浦駅へ
室戸世界ジオパークセンターを12時10分に出発する甲浦行きのバスに乗って、再び高知東部交通バスの旅を再開します。ここから甲浦駅の直前までは、ずっと海沿いの国道55号線を北上していきます。進行方向右側には、ずっと太平洋の絶景を眺めることができます。
カーブの手前では、海岸線を眺めることができる場所もあります。あまりお天気が良くないのが残念ですが、それでも太平洋の大海原を眺めながらのバス旅はなかなか良いものです。
甲浦に近づくと、入り江のようなところを通ります。先ほどまでの、太平洋の大海原が広がる景色とは一味違いますね。
太平洋の絶景を眺めていると、あっという間に甲浦駅に到着。室戸世界ジオパークセンターから約45分の絶景車窓のバス旅でした。
甲浦駅からは、四国のミニ鉄道路線、阿佐海岸鉄道 阿佐東線に乗車しました。そのときの様子は以下の記事をご覧ください。
※前述のとおり、2021年12月にDMVが開業して、現在はかつての「鉄道車両」は走っていません。すべてDMVでの運行となっています。
その後、JR牟岐線に乗車して徳島まで行きました。高知から徳島まで、鉄道がつながっていない室戸岬経由のルートでも、高知東部交通の安芸・室戸線、室戸・甲浦線の路線バスを利用すれば、公共交通機関だけで旅をすることができます。
以上、「高知東部交通バスで室戸岬へ! ごめん・はなり線 奈半利駅と阿佐海岸鉄道 甲浦駅をつなぐ抜け道&絶景ルート!」でした。室戸岬への観光でも、乗り鉄の旅でも、とても利用価値の高い路線バスです。室戸岬方面へご旅行の際は、ぜひ乗車して、太平洋の絶景を楽しんでみてください!
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コメント
ひさ (id:kzlife)さん
こんにちは!
室戸岬、天気が良ければ絶景でしたね!
先日「鉄道ひとり旅」という番組でちょうど同じルート(逆方向)をやっていたので、行ってみたいなと思っていたところでした。
DMVが導入されたら、また大分様子が変わりそうですね。
ハヤトさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
天気がちょっと残念だったのですよね。
このエリアで鉄道を乗り継ごうとすると、必ずこのバスに乗ることになると思いますが、思わぬ絶景路線にびっくりしたのでした。
順調にいけば、次に訪問するときにはDMVが走っていると思うので、今度は晴れているときにリベンジしてみたいです。