日本各地で運転されている観光列車。車窓を楽しんだり、車内で沿線のグルメを楽しんだり。楽しみ方はいろいろですが、ゆったりした座席で移動できる観光列車は、鉄道旅行の強い味方です。この記事では、多くの観光列車に乗車してきた筆者が、観光列車の魅力について語ってみます。鉄道旅行初心者にもおすすめです。
日本各地で運転されている観光列車
JR各社をはじめ、大手私鉄や第三セクター鉄道会社まで、日本各地の鉄道会社が観光列車を運転しています。
2000年代から、JR各社での観光列車の運転が徐々に始まり、2010年代になると、大手私鉄や第三セクター会社も参戦。次々と新しい観光列車の運転が始まりました。
ここ数年、新しい観光列車の投入はひと段落した感がありますが、それでも、週末や観光シーズンになると、どれに乗ろうか迷うほどの観光列車が運転されています。
観光列車の魅力といえば、車窓、グルメ、イベント。この記事では、観光列車のこれらの魅力についてお伝えします。また、鉄道の旅で、観光列車を賢く利用する方法についても、筆者のこれまでの経験を踏まえて書いてみます。
観光列車の魅力「車窓」「グルメ」「イベント」
観光列車は、一言で言えば、「乗ること自体が観光になる列車」です。本来、鉄道は移動手段ですが、観光列車は、その移動手段である鉄道を「乗ること自体が目的」にしてしまう列車なのです。
そんな観光列車の魅力をざっくり分類してみると、「車窓」「グルメ」「イベント」の三つになります。それぞれ、紹介していきます。
海・川・山……観光列車で風光明媚なローカル線の「車窓」を楽しむ!
観光列車の一番の魅力、それは風光明媚な「車窓」でしょう。
各社の観光列車も、まず絶景車窓を眺められる路線から運転を開始していますし、現在の観光列車でも、一番のウリは間違いなく車窓です。
JR各社のローカル線では、海や川、高原などの車窓を楽しめる路線がたくさんあります。観光列車の代名詞、五能線の「リゾートしらかみ」も、日本海の絶景車窓を眺められる観光列車として誕生しました。
もちろん、同じ路線を走る普通列車からでも、同じ車窓を眺めることはできます。それでも、車窓を眺めることを目的とした観光列車は、窓が大きいうえに、特急列車と同じような前向きのリクライニングシートを具備しているため、ロングシートやボックスシートが多い普通列車に比べると、ゆったりと車窓を楽しむことができるのです。
お食事・お酒……観光列車で沿線の「グルメ」を楽しむ!
最近の観光列車は、車窓だけでなく、車内で味わえる「グルメ」に力を入れている列車が多くあります。
いわゆる「レストラン列車」のようなフルコースを出す観光列車もありますが、そこまでのお食事でなくても、軽食+飲み物くらいで気軽に利用できる観光列車もあります。
羽越本線の新潟~酒田間を走るJR東日本の観光列車「海里」では、フルコースの料理を提供するプランもありますが、通常の指定席への乗車でも、事前予約しておくことで、車内でお弁当を受け取ることができます。新潟や庄内の食材を利用した、とてもおいしいお弁当です。
JR西日本の氷見線・城端線を走る観光列車「べるもんた」(正式名称は「ベル・モンターニュ・エ・メール」)では、車内で、富山湾の新鮮なネタを利用したお寿司をいただくことができます。しかも、車内に寿司職人が乗車して、その場で握ったものを提供してくれるのです。
お酒好きには堪らない観光列車が、JR東日本の「越乃Shu*Kura」です。新潟のお酒をコンセプトにした珍しい観光列車で、車内では沿線の地酒をいただくことができます。車内に設けられたイベントスペースでは、ジャズの演奏を聞きながらお酒をいただくことができ、まるで「走る日本酒バー」です。
※2021年8月現在、新型コロナウイルス感染症予防のため、車内でのイベントは中止されています。
このように、一言で「グルメ」といっても、かなり個性的です。車内でのお食事はやや高めではありますが、列車の中で食べると一層おいしく感じます。車内でお食事をいただくことができる観光列車に乗る際には、ぜひ事前に予約をしていくことをおすすめします。
星空観察、夜景観賞……観光列車で「イベント」を楽しむ!
変わり種としては、乗客が参加する「イベント」を実施している観光列車もあります。車窓やグルメをウリにしている観光列車でも、停車時間のある駅では小イベントを実施することもありますが、ここで紹介するのは、イベントがメインの観光列車です。
JR小海線を走る観光列車「HIGH RAIL 1375」は、高原の車窓と車内で提供される軽食が魅力の観光列車です。ところが、夜間に運転される「HIGH RAIL 星空」からは車窓を眺めることができません。その代わり、野辺山駅で「星空鑑賞会」が開催されるのです。ボランティアの星空案内人が同乗し、車内で星座の解説をしてくれます。その後、野辺山駅の星空観察会では、実際に星空を眺めながら解説してくれるのです。
夏季の金曜日を中心に運転される観光列車「ナイトビュー姨捨」。長野~姨捨間のごく短い距離での運転ですが、この列車の目的は、日本三大車窓の一つにも数えられる姨捨駅からの夜景を眺めることです。
姨捨駅に到着後は、ホームから善光寺平の夜景を眺めることができます。また、駅舎内ではお味噌汁のふるまいや、姨捨伝説の朗読会などもあります。復路の「ナイトビュー姨捨」が発車するまでの約1時間を、姨捨駅で楽しむことができるのです。
このように、何らかのイベントを楽しむことを目的とした観光列車も、数は少ないながらも運転されています。
観光列車の活用方法
観光列車は、乗ること自体が観光になる列車なのですが、鉄道の旅にうまく取り入れることによって、旅が快適になります。また、指定席券さえ確保しておけば必ず座れますし、基本的に乗客は観光客ばかりなので、鉄道旅行の初心者にも利用しやすい列車なのです。
青春18きっぷの旅を快適に! 長距離を快適に移動できる列車として活用しよう!
観光列車の中には、特急列車並みの長距離を走る列車も少なくありません。それに、単に長距離であるだけでなく、普通列車では乗り換えが必要な区間を、乗り換えなしで移動することもできるのです。
このような観光列車の特徴をいかして、乗り鉄のような鉄道旅行に活用してみることをおすすめします。車窓や食を楽しむだけでなく、鉄道本来の目的である「移動手段」としても活用してしまおうということです。
特に、普通列車・快速列車にしか乗車できない青春18きっぷの旅に活用することをおすすめします。
JR各社のSL列車やトロッコ列車、それに、JR東日本の観光列車「乗ってたのしい列車」は、全車指定席の快速列車として運転されているものが多くあります。快速列車ですので、乗車券としては「青春18きっぷ」を使うことができます。あとは、指定席券(530円~840円くらいが多い)をプラスすれば、青春18きっぷの旅でも観光列車に乗ることができます。
青春18きっぷ+指定席券で乗車できる観光列車については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
ローカル線の旅はハードルが高い? そんな方にも観光列車がおすすめ!
鉄道を単なる移動手段ではなく、鉄道に乗ることそのものを目的にした旅行、いわゆる「乗り鉄」を始めてみようと考えていらっしゃる方にとって、ローカル線の普通列車に乗るのは、ややハードルが高いかもしれません。
基本的に地元の人が使う列車ですし、混雑していたら座ることができないかもしれません。風光明媚なローカル線だったとしても、車内が混雑していると、なかなか落ち着いて車窓を楽しむこともできませんね。
そんな方には、車窓をウリにした観光列車に乗ってみることをおすすめします。海や川の車窓が素晴らしい路線は、ローカル線に多くあります。そんなローカル線で車窓を楽しむには、観光列車がぴったりです。
- 全車指定席の列車がほとんどなので、指定席券さえ確保できれば、必ず座って移動できる
- 乗客はほとんどが観光客や「乗り鉄」なので、車窓を眺めたり、写真を撮ったりすることに気兼ねしなくて良い
こんなメリットがありますので、初めてローカル線に乗ってみようという方は、まず観光列車で旅をしてみることをおすすめします。
旅先での普通列車は、方言など、その地方の空気が感じられて、それはそれで楽しいのですが、楽しみ方としては、やや玄人向けかもしれません。鉄道の旅に慣れてきたら、普通列車の旅も楽しんでみるとよいでしょう。
以上、『車窓・食・イベントが充実の「観光列車」に乗ろう! 鉄道旅行初心者にもおすすめ!』でした。鉄道旅行初心者にも、乗りなれた人にも、それぞれの楽しみ方がある観光列車。うまく利用して、旅行や移動を充実させたものにしていきましょう!
関連記事
観光列車の一つのジャンルに「SL列車」があります。以下の記事では、関東近郊のSL列車を5つ紹介しています。首都圏から日帰りで乗りに行けるSLばかりです。
関東甲信越地方のおすすめの観光列車10選です。いずれも、筆者が乗車したことのある列車ばかりで、自信をもっておすすめできます。
コメント