2021年10月に近畿エリアを中心とした減便を実施するとしていたJR西日本が、その詳細を発表しました。昼間時間帯を中心に、近畿エリアで60本、その他のエリアで67本、合計で127本の列車の減便・一部区間の運転取りやめを実施します。
JR西日本、2021年10月のダイヤ見直しの詳細を発表!
JR西日本は、2021年5月に、昼間時間帯の減便を中心とするダイヤ見直しを2021年10月に実施すると発表していました。
今回は、その詳細を発表した形になります。ダイヤ見直しは2021年10月2日(土)に実施することと、具体的な路線・線区・ダイヤを発表しました。概要は以下のとおりです。
- 見直し線区は21線区、見直し本数は127本
- 近畿エリアで60本、その他のエリアで67本の見直しを実施
- 昼間時間帯の減便、一部区間の運転取りやめが中心
- ダイヤ見直しは2021年10月2日(土)に実施
各エリア・線区・見直し本数は以下のとおりです。
エリア | 線区・区間 | 見直し本数 |
---|---|---|
近畿 | 琵琶湖線(米原~長浜) | 10本 |
JR京都線(京都~高槻) | 16本 | |
JR神戸線(須磨~西明石) | 8本 | |
山陽線(相生~上郡) | 10本 | |
山陽線・赤穂線 (姫路~播州赤穂) |
8本 | |
大和路線(奈良~加茂) | 8本 | |
北陸 | 小浜線、越美北線 | 11本 |
北近畿 | 山陰線 | 5本 |
南紀 | きのくに線、和歌山線 | 14本 |
瀬戸内 | 山陽線、瀬戸大橋線、津山線 桃太郎線、福塩線 |
17本 |
山陰 | 山陰線、伯備線、因美線 境線、芸備線 |
20本 |
詳しくは、JR西日本のニュースリリースをご覧ください。
以下では、青春18きっぷでの旅に影響がありそうな線区をピックアップしてみます。
近畿エリアでは需要の少ない末端部の区間廃止が中心、1時間に1本への減便も!
(出典)2021年秋ダイヤ見直しについて(JR西日本 近畿統括本部 PDF)
近畿エリアでは、合計60本のダイヤ見直しが実施されますが、対象列車の末端部分での運転区間の短縮という形での見直しが多くなっています。
大阪に近いところでは、JR京都線の高槻~京都間、JR神戸線の西明石~須磨間で、土休日の日中時間帯の普通列車が減便となります。いずれも、既存の列車の末端区間での運転取りやめとなり、対象列車は、高槻発着、須磨発着となります。
青春18きっぷの旅で影響が大きそうなのは、もともと列車の本数が少ない琵琶湖線(米原~長浜)、山陽線・赤穂線(姫路~相生~播州赤穂)です。
- 琵琶湖線(北陸本線) 米原~長浜間
- 10時台~15時台の長浜発着の新快速5本を米原発着に変更
- 日中時間帯、米原~長浜間は1時間に2本から1本へ
琵琶湖線(北陸本線)の米原~長浜間は、長浜発着の新快速5本(10時台~15時台)が、米原発着に変更されます。米原~長浜間は、日中時間帯、1時間に2本から1本への減便となり、この駅間にお住まいの方には影響が大きそうです。一方、近江塩津発着の新快速は残りますので、北陸本線~東海道本線の乗り継ぎは、それほど変わりがなさそうです。
- 山陽線・赤穂線 姫路~播州赤穂間
- 11時台~14時台の姫路~播州赤穂間の列車4往復(8本)の運転を取りやめ
- 日中時間帯、山陽線の姫路~相生を直通する列車は1時間に2本から1本へ
山陽線・赤穂線の姫路~播州赤穂間では、日中時間帯の4往復が運転取りやめとなります。姫路~播州赤穂間の列車は、山陽本線を乗り継ぐ際に必要な列車ですが、相生~岡山間の列車に接続するほうは残されるので、乗り継ぎには影響はなさそうです。
いずれも、青春18きっぷの旅では、乗り継ぎができなくなることはありませんが、始発列車に乗り換えて座っていこうというようなことができなくなりそうです。青春18きっぷで旅をする人が、同じ列車に集まることにより、混雑が増すことがあるかもしれません。
8割見直し対象と報道のあった小浜線・越美北線は1~2割の減便へ
北陸エリアでは、小浜線、越美北線が減便の対象となります。いずれも、事前の報道では、列車の8割が見直し対象だとされていましたが、今回のダイヤ見直しでは、1~2割程度の減便となりました。
小浜線は8本の見直し、敦賀発は3時間半の空白も!
小浜線は、以下のように列車の本数が見直されます。
運転区間 | 現行 | 改正 |
---|---|---|
敦賀~小浜 | 平日 30本 休日 28本 |
24本 |
小浜~東舞鶴 | 全日 26本 | 22本 |
敦賀~小浜間では平日で2割の減便、小浜~東舞鶴間では約15%の減便となります。
注意したいのは、敦賀発の時刻です。これまでは、午前8時台、10時台、12時台と、約2時間に1本程度の本数がありましたが、見直し後は、午前7時49分のあとは、11時18分まで、約3時間半も空いてしまいます。午前中に小浜線に乗車する場合には要注意です。
越美北線は3本減便、越前大野~九頭竜湖間は減便なし!
越美北線は、以下のように列車本数が見直されます。
運転区間 | 現行 | 改正 |
---|---|---|
福井~越前大野 | 18本 | 15本 |
越前大野~九頭竜湖 | 9本 | 9本 |
越美北線は、福井~越前大野間で3本の減便となります。もともと本数が少なかった越前大野~九頭竜湖間は、今回は減便なしということになりました。
九頭竜湖発の週列車は、これまでの21時10分発(越前大野行き)から、20時06分発に繰り上げられます。ただ、20時06分の列車は福井行きとなりますので、福井駅から九頭竜湖駅までを往復する場合、これまでの3パターンから、4パターンの行程で乗ることができるようになります。
- 福井 09:08発 → 九頭竜湖 10:50着/10:57発 → 福井 12:23着
- 福井 12:50発 → 九頭竜湖 14:22着/14:34発 → 福井 16:03着
- 福井 16:50発 → 九頭竜湖 18:28着/18:36発 → 福井 20:11着
- 福井 18:21発 → 九頭竜湖 19:50着/20:06発 → 福井 21:32着
最後の福井18時21分発の列車でも、九頭竜湖まで往復できるようになります。とはいえ、この時間だと、車窓を楽しむのは難しいですね。
山陰エリアでは最終列車の繰り上げを実施!
今回のダイヤ見直しでは、日中時間帯の減便が中心ですが、山陰エリアでは最終列車の繰り上げも実施されます。
主なところでは、以下の区間で最終列車が繰り上がります。
- 山陰本線
- 鳥取~浜坂: 鳥取発22分、浜坂発19分(平日のみ)
- 倉吉~鳥取: 倉吉発46分
- 米子~倉吉: 米子発26分、倉吉発30分
- 出雲市~米子: 出雲市発46分、米子発44分
- 浜田~出雲市: 浜田発68分、出雲市発55分
- 因美線
- 鳥取~智頭: 鳥取発30分
- 伯備線
- 米子~新見: 米子発64分
- 境線
- 境港~米子(平日): 境港発22分、米子発24分
- 境港~米子(土休日): 境港発48分、米子発45分
区間によっては、1時間以上の繰り上げも実施され、主要駅を発車する最終列車が21時台となるところも多くなります。
青春18きっぷの旅では、移動距離を稼ぐために、夜遅くまで乗り継ぐことが多いかと思いますが、最終列車が早まることによって、到着できる範囲が狭くなるといった影響がありそうです。
事前報道より小幅の見直しに、本番は2022年3月のダイヤ改正か?
今回のJR西日本のダイヤ見直しですが、事前に「本数半減」「8割が見直し対象」などと報道されていましたが、実際には、それに比べて小幅な見直しにとどまりました。事前に自治体と調整する時間が足りなかったのではないかと思います。
とはいえ、コロナ前の感覚で見れば、臨時のダイヤ改正で、ここまで減便を実施するということ自体、異常事態といえるでしょう。
JR西日本は、2020年度の決算で、単体で2,338億円の営業損失となっています。2021年度の通期業績は、当初、30億円の営業利益を予想していましたが、2021年7月30日に発表された第1四半期の決算発表では、通期で1,010億円~1,340億円の赤字に変更になりました。
JR西日本の直近(6月~7月)の収入概況によると、以下のようになっています。
2020年比 | 2019年比 | |
---|---|---|
6月 | 95.3% | 49.8% |
7月 (7/1~7) |
109.1% | 60.3% |
6月の実績は、コロナ前(2019年)と比べると収入は半分以下、昨年(2020年)と比べても95.3%と、昨年の水準にも達していません。7月は回復傾向が見られますが、これも、7月中旬以降の感染拡大の影響が出てくると、今後の見通しは不透明な状況です。
鉄道会社のコストは固定費が大部分を占めるため、今回のダイヤ見直し程度では、大幅なコスト削減は難しいと考えられます。ましてや、2,000億円を超える赤字の前では、焼け石に水レベルと思われます。
そう考えると、本命は、
- 大都市圏のラッシュ時の大幅減便
- 赤字ローカル線の廃止
でしょう。
大都市圏では、在宅勤務・テレワークの普及により、JR各社は、コロナ禍が終息しても需要は元に戻らないと判断しています。鉄道会社は、ラッシュ時に必要な本数の車両や人員を確保していますので、これを削減できれば、車両保有と人件費という大きな固定費の削減につながります。
2021年3月のダイヤ改正では終電の繰り上げを実施、今回(2021年10月)は日中時間帯の減便に着手しましたが、本命は、来年以降のダイヤ改正でのラッシュ時間帯の減便でしょう。
一方、ローカル線については、もともと運行本数が少ないため、これを多少減便したところで、大きなコスト削減は不可能です。大幅なコスト削減には、路線ごと廃止するしかありません。
もともと、都市部の路線の黒字を前提に、大幅な赤字が出るローカル線を維持するという構造で成り立っていましたが、その構造がコロナ禍で崩れました。コロナ後に需要がどこまで回復するかにもよりますが、ローカル線の一斉廃止という事態もあり得ると思います。
このような状況は、JR西日本に限らず、JR東日本やJR九州も同様でしょう。JR西日本が積極的に動いている感じはしますが、JR他社も追随する可能性は高いと思います。
「JR西日本が2021年10月の減便の詳細を発表! 事前報道より小幅の見直しも、本番は来年のダイヤ改正か?」でした。人口減に伴って、ゆるやかに進んでいくはずだった減便ですが、コロナ禍により、一気に前倒しされてしまいました。今後の動向にも注目していきたいと思います。
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