JR西日本は、2021年10月に昼間時間帯を中心に約130本の列車を見直すダイヤ改正を実施すると発表しました。2022年春には全エリア・全時間帯でのダイヤ見直しを実施するとしており、2021年春の終電繰り上げに次いで、大減便のダイヤ改正が実施されることになりそうです。
JR西日本、2021年10月に昼間時間帯を中心にダイヤの見直しを実施へ
JR西日本は、2021年10月に、一部の路線・区間を対象に、昼間時間帯のダイヤ見直しを実施すると発表しました。これは、2022年春のダイヤ改正で実施する全エリア・全時間帯でのダイヤ見直しを、一部前倒しで実施するということだそうです。
今回発表された2021年10月のダイヤ見直しの概要は以下のとおりです。
- 利用の減少率が大きい昼間時間帯を中心に、列車本数と利用状況の乖離が大きい区間の約130本の列車を見直し
- 近畿エリアでは昼間時間帯で約60本、近畿以外のエリアでは朝・夜間も含めて70本の見直し(減便)
- 近畿エリアの対象線区
- 琵琶湖線(米原~長浜)
- JR京都線(高槻~京都)
- JR神戸線(須磨~西明石)
- 山陽線(姫路~上郡)
- 赤穂線(相生~播州赤穂)
- 大和路線(奈良~加茂)
- 西日本エリア(近畿エリア以外)
- 北陸エリア: 小浜線、越美北線
- 北近畿エリア: 山陰線
- 南紀エリア: きのくに線、和歌山線
- 瀬戸内エリア: 山陽線、瀬戸大橋線
- 山陰エリア: 山陰線、伯備線、因美線、境線
詳しくは、JR西日本のニュースリリースをご覧ください。
京都線、神戸線など大阪近郊線区も見直し対象に! 昼間時間帯も需要回復は見込めずか?
JR西日本のニュースリリースでは、
列車本数と利用状況の乖離が大きい区間の約130本の列車を見直し
とされていますが、対象線区を見ると、京都線の高槻~京都間や、神戸線の須磨~西明石間など、大阪への通勤通学エリアも含まれています。
大阪駅は含まれないので、大阪駅発着の列車の本数は変わらないと見られますが、大都市近郊といってもよい京都線や神戸線が含まれるとなると、来春のダイヤ改正に向けて、大減便がさらに実施されることは間違いないでしょう。
コロナ禍で在宅勤務やテレワークが普及したことで、通勤需要が減少していることは確かです。ところが、2021年10月のダイヤ見直しの対象は、近畿エリアに関しては昼間時間帯です。この時間帯の列車を削減するということは、コロナ禍が落ち着いたとしても、昼間時間帯の需要も元には戻らないと見ているのでしょう。
(出典)5月社長会見:営業輸送概況、ご利用にあわせた列車ダイヤの見直し(JR西日本ニュースリリース 2021年5月20日)
JR西日本が公表した「時間帯別のご利用減少率」(2021年4月平日の大阪・京都・三ノ宮の3駅合計)を見ても、すでに2021年3月のダイヤ改正でテコ入れした深夜帯に次いで、昼間時間帯の落ち込みが大きいのがわかります。
小浜線は半減、越美北線は8割が減便検討対象に!
JR西日本の発表には記載されていませんが、すでにいくつかの路線については、具体的な減便本数(あるいは減便の検討対象本数)が明らかになってきています。
小浜線(敦賀~東舞鶴間)については、便数半減を検討と報道されています。
具体的には、以下の区間・本数を対象としているとのことです。
- 敦賀~小浜間: 現行30本中14本が減便対象
- 小浜~東舞鶴間: 現行26本中15本が減便対象
敦賀~小浜間は半減ですが、小浜~東舞鶴間では6割近い列車が減便の対象として検討されているということになります。
また、越美北線についても、報道されています。
以下の区間・本数が減便の検討対象となっているようです。
- 福井~越前大野間: 現行18本中12本が減便の検討対象
- 越前大野~九頭竜湖間: 現行の全9本が減便の検討対象
越前大野~九頭竜湖間に至っては全9便が減便の検討対象となってしまっています。ゼロになることはないにせよ、大幅に減便する可能性が高そうです。半減でも2往復しか残りません。
JR西日本の区間別平均通過人員(2019年度)によると、小浜線(敦賀~東舞鶴)は991人/日、越美北線(越前花堂~九頭竜湖)は399人/日となっています。このデータは2019年度、つまり、コロナ禍前のデータですから、現在はこの数値からさらに数割減ということになっていると思われます。
もちろん、芸備線や木次線など、小浜線や越美北線よりも輸送密度が小さい線区はありますが、すでに列車の本数が最低限しかなく、これ以上減便の余地がないために、候補となっていないのでしょう。
JR西日本は終電繰り上げ、新幹線・特急列車の一部臨時化に次ぐ大減便へ
JR西日本は、2021年3月のダイヤ改正で、近畿エリアをはじめとする都市圏での終電の繰り上げや、土休日を中心に新幹線や在来線特急列車の一部臨時化(定期列車の削減)を実施しました。また、普通列車でも、山陽本線の減便を実施しています。
2021年3月のダイヤ改正も歴史的な減便改正だったわけですが、それからわずか半年で、今度は昼間時間帯の普通列車を中心に大幅減便を実施するということになります。
さらには、2022年3月のダイヤ改正では、「すべてのエリアで各時間帯のご利用にあわせたダイヤ見直し」を実施するとしています。要は、聖域なく減便を実施するということです。
特に、前回(2021年3月)と10月のダイヤ改正で見送られた、大都市圏の通勤・帰宅時間帯にメスが入るのではないかと思われます。また、出張需要が回復しないと見込んでいるのであれば、新幹線や特急列車の臨時格下げ、減便も視野に入ってくるでしょう。
JR他社もJR西日本に追随するか? JR東日本・JR東海の動向に注目!
JR西日本は、本州3社の中でも、今回のコロナ禍に対して、かなり踏み込んだ対応を実施している印象です。
2021年5月現在、JR東海やJR東日本は、臨時列車の運休は多いものの、新幹線や在来線特急の定期列車については、ほぼすべて運転しています。それに対して、JR西日本は、在来線特急列車を中心にの定期列車を運休していて、2021年5月時点では約45%の定期特急列車が運休となっています。
首都圏をかかえ、コロナ禍が落ち着けばある程度の需要回復が見込めるJR東日本や、利益率ではダントツのJR東海に比べると、JR西日本は収益基盤が若干弱いと言われていますが、それがこの対応の差になっているのかもしれません。
とはいえ、JR東日本やJR東海も、2020年度は数千億円規模の赤字を計上しており、厳しいことに変わりはありません。東京オリンピックの動向にも左右されそうですが、今年度も、昨年度同様の厳しい状況が続けば、JR東日本やJR東海も、2021年3月のダイヤ改正に続く大幅減便を実施する可能性は十分にあると思います。
鉄道会社は、利益を追求する民間企業でありながら、公共性の高い事業を実施していることもあり、列車の減便や路線の廃止に際しては、沿線自治体の理解を得つつ、非常に慎重に進めています。今や、国の支援がないと事業が成り立たないほど経営が厳しいJR北海道ですら、一気にローカル線を廃止することはできないのです。
ところが、コロナ禍によって、これまで毎年黒字を計上してきた本州3社が、一気に厳しい状況に追い込まれました。ここ1年ほどのJR西日本の動きを見ていれば、もうなりふり構っていられないのでしょう。本来ならば、毎年少しずつ減便を進め、10年くらいかけて実施する規模の減便を、1年でやってしまおうということなのかもしれません。
以上、「JR西日本が2021年10月に130本減便のダイヤ改正を実施へ! 2022年春は全エリア・全時間帯のダイヤ見直しも!」でした。歴史的大減便の改正となった前回にとどまらず、それ以上の大幅減便が待っているのかもしれません。
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