JR九州は、2022年9月23日の西九州新幹線の開業にあわせてダイヤ改正を実施します。西九州新幹線開業に伴う長崎方面の特急列車の運行体系の見直しだけでなく、九州全体でのダイヤ見直しが実施されます。特に、博多や北九州、熊本、大分などの都市圏近郊での普通列車、快速列車の減便が目立ちます。
※アイキャッチ画像はJR九州のニュースリリースより
JR九州、西九州新幹線開業にあわせて九州全体でのダイヤ改正を実施
JR九州は、2022年9月23日の西九州新幹線の開業にあわせて、ダイヤ改正を実施すると発表しました。ダイヤ改正のポイントは以下のとおりです。
- 西九州新幹線(武雄温泉~長崎)開業と、それに伴う長崎方面の特急列車の運行体系の見直し
- 長崎本線 肥前浜~長崎間の非電化と普通列車の運行体系の変更
- 新D&S列車「ふたつ星4047」運行開始、「かわせみ やませみ」の運転区間変更
- 都市部近郊の普通列車で、通勤・日中時間帯の減便と終電の繰り上げを実施
詳しくは、JR九州のWebサイトをご確認ください。
以下では、それぞれについて、ポイントをまとめてみます。
西九州新幹線(武雄温泉~長崎)開業と特急列車の運行体系の見直し
今回の改正の最も大きなトピックは西九州新幹線の開業です。武雄温泉~長崎間でフル規格の新幹線が先行開業します。また、あわせて、博多~長崎方面の在来線特急列車の運行体系の見直しも実施されます。
西九州新幹線開業後の運行体系は、以下のようになります。
(出典)2022年9月23日ダイヤ改正 西九州新幹線が開業します 在来線各線区でダイヤを見直します (JR九州ニュースリリース 2022年6月10日 PDF)
主なポイントは以下のとおりです。
- 西九州新幹線(武雄温泉~長崎)が開業、「かもめ」を1日あたり47本運転(うち3本は新大村~長崎の区間運転)
- 武雄温泉駅で西九州新幹線「かもめ」に接続する在来線特急「リレーかもめ」を博多~武雄温泉間で運転
- 使用車両は、885系6両編成または787系8両編成
- 武雄温泉駅では西九州新幹線「かもめ」と同一ホームで対面乗り換えが可能
- 特急「みどり」(博多~佐世保)22本のうち10本を「みどり(リレーかもめ)」として運転、武雄温泉駅で西九州新幹線「かもめ」に接続し、対面乗り換えが可能
- 一部の特急「ハウステンボス」も、「ハウステンボス(リレーかもめ)」として運転、武雄温泉駅で西九州新幹線「かもめ」に接続し、対面乗り換えが可能
- 博多~佐賀・肥前鹿島間に在来線特急「かささぎ」を新設(上り9本、下り8本を運転)
- 一部の「かささぎ」は門司港・小倉~佐賀・肥前鹿島間で運転
西九州新幹線 武雄温泉~長崎間が先行開業、博多~長崎は最速1時間20分へ
西九州新幹線が武雄温泉~長崎間の66.0kmで開業します。武雄温泉駅、嬉野温泉駅、新大村駅、諫早駅、長崎駅の5駅です。西九州新幹線の停車パターンは、以下の図のようになっています。
(出典)2022年9月23日ダイヤ改正 西九州新幹線が開業します 在来線各線区でダイヤを見直します (JR九州ニュースリリース 2022年6月10日 PDF)
全列車が停車するのは、起終点となる武雄温泉駅、長崎駅の他に諫早駅のみ。新大村駅には47本中37本が、嬉野温泉駅には25本が停車します。
西九州新幹線の開業により、博多~長崎間の所要時間(最速)は、これまでの1時間50分から1時間20分へと30分短縮されることになります。
30分の短縮と引き換えに、武雄温泉駅での乗り換えが必要となります。こればかりは、先行開業ということでやむを得ないでしょう。同一ホームでの対面乗り換え、「リレーかもめ」と「かもめ」のきっぷを1枚で発券する等、九州新幹線の先行開業時と同様の対応となるようです。
従来の「かもめ」は「リレーかもめ」で武雄温泉行きに、肥前鹿島行き「かささぎ」を新設
長崎方面への在来線特急列車は、西九州新幹線の開業により、運行体系が大きく変わります。
(出典)2022年9月23日ダイヤ改正 西九州新幹線が開業します 在来線各線区でダイヤを見直します (JR九州ニュースリリース 2022年6月10日 PDF)
これまでの特急列車の運行体系から大きな変更があるのは、以下の2点です。
- 長崎本線経由の特急「かもめ」が、肥前山口駅(「江北駅」に改称)から佐世保線経由、武雄温泉行きの「リレーかもめ」に変更
- 上記変更により、肥前山口駅からの長崎本線経由の在来線特急列車がなくなるため、新たに特急「かささぎ」を博多~肥前鹿島間に新設
長崎本線を走っていた特急「かもめ」が、西九州新幹線「かもめ」に変更になります。西九州新幹線「かもめ」へのリレー列車として設定される「リレーかもめ」は、在来線と西九州新幹線の乗換駅が佐世保線の武雄温泉駅になることに伴って、「リレーかもめ」は肥前山口駅(「江北駅」に改称)から佐世保線に乗り入れて、武雄温泉駅行きとなります。
一方、肥前山口駅から長崎本線を走る在来線特急列車「かもめ」がなくなるため、新たに特急「かささぎ」が博多~肥前鹿島間に新設されます。博多~肥前鹿島間に7往復設定されます。
肥前鹿島駅は、これまで博多方面からの特急「かもめ」が1日あたり45本も停車していましたが、ダイヤ改正後は「かささぎ」14本のみとなります。
並行在来線となる長崎本線 肥前浜~長崎間の非電化と普通列車の運行体系の変更
西九州新幹線の開業に伴って、長崎本線の肥前山口~諫早間が並行在来線に指定されましたが、最終的には上下分離方式を採用して、JR九州が運行を継続することとなりました。
ただし、肥前浜~長崎間については、普通列車のみの運行となることから、電化設備を撤去して非電化区間となります。
- 肥前山口(江北)~肥前浜間: 電化のまま(設備を佐賀県・長崎県が保有)
- 肥前浜~諫早間: 非電化に変更(設備を佐賀県・長崎県が保有)
- 諫早~長崎間: 非電化に変更(設備はJR九州が継続して保有)
長崎県、佐賀県とJR九州等の合意により、当面は現状の運転本数を維持することとなっているため、普通列車の本数そのものはそれほど変わりません。ただし、肥前浜~長崎間が非電化となることにより、普通列車の運行体系が変更されます。
現在の普通列車の運行体系と比べると、大きな変更点は以下の2点です。
- 鳥栖・佐賀方面からの直通列車(普通列車)は肥前浜止まりとなる
- 気動車による普通列車は江北(肥前山口)~諫早間での運転が基本となり、長崎方面へは諫早駅での乗り換えが必要となる(通勤時間帯には直通列車も運転)
なお、非電化となる区間の普通列車には、キハ47形車両が利用されるようです。
新D&S列車「ふたつ星4047」運行開始、「かわせみ やませみ」の運転区間変更
(出典)ふたつ星4047(JR九州)
西九州新幹線の開業に関連して、新たな観光列車(D&S列車)「ふたつ星4047」が運行を開始します。
- 特急「ふたつ星4047」
- 運転開始日: 2022年9月23日(金)
- 運転区間・運転時刻
- 午前便: 武雄温泉 10:22発 → 長崎 13:15着(長崎本線経由)
- 午後便: 長崎 14:53発 → 武雄温泉 17:45着(大村線経由)
- 使用車両: キハ40形+キハ47形 3両編成(全車指定席 定員86名程度)
西九州新幹線の運行開始と同時に、「ふたつ星4047」も運転を開始します。2022年9月~11月は、土休日に加えて、月曜日・金曜日にも運転されます。
西九州新幹線と接続する観光列車という点でも注目ですが、午前便と午後便で運行経路が異なるため、両方乗っても楽しめそうです。
「ふたつ星4047」については、JR九州のWebサイトをご覧ください。料金、運転日なども掲載されています。
一方、肥薩線を走っていた観光列車「かわせみ やませみ」は、ダイヤ改正以降、豊肥本線の熊本~宮地間で運転されます。
肥薩線は、令和2年7月豪雨で大きな被害を受け、現在も運転見合わせが続いています。「かわせみ やませみ」は、博多~門司港間で臨時に運転されていますが、ダイヤ改正以降、路線は違うものの、熊本発着のD&S列車として運転されることになります。
- 特急「かわせみ やませみ」
- 運転日: 土休日・祝日を中心に運転
- 運転区間・運転時刻
- 往路: 熊本 10:32発 → 宮地 12:09着
- 復路: 宮地 15:47発 → 熊本 17:08着
- 途中停車駅: 肥後大津、立野、阿蘇
阿蘇観光へのアクセスにも利用できそうですね。
「かわせみ やませみ」については、JR九州のWebサイトをご覧ください。豊肥本線での運転開始日や運転日は、別途、発表されることになっています。
各都市圏の普通列車、通勤・日中時間帯の減便と終電の繰り上げを実施
今回のダイヤ改正では、福岡・北九州エリアをはじめとして、各都市圏で、通勤・帰宅時間帯、日中時間帯の減便と、最終列車の繰り上げが実施されます。
福岡・北九州エリアの運行体系の見直し
最も大きく見直されるのが、福岡・北九州エリアの普通列車、快速列車です。
鹿児島本線では、以下の見直しが実施されます。
- 朝通勤時間帯の減便(博多着の列車で定員比90%に減便)
- 日中時間帯の快速列車の運転取りやめ、区間快速の運転パターン見直し
- 運転取りやめとなる快速列車はそのまま減便となる
- 夕夜間時間帯の減便(小倉駅・博多駅でおおむね1時間に上下1本ずつを減便)
- 最終列車を20~30分程度繰り上げ
鹿児島本線以外でも、以下の見直しが行われます。
- 日豊本線
- 朝時間帯2本、夜間帯2本の普通列車の運転を取り止め
- 若松線・福北ゆたか線
- 朝時間帯5本、日中時間帯1本、夕時間帯1本の運転を取り止め
- 新飯塚→博多の最終列車を10分程度繰り上げ
- 久大本線
- 一部列車の運転区間見直し、運転取りやめ
- 久留米からうきは~日田への最終列車を約65分繰り上げ
九州各線区での運転本数の見直し・終電の繰り上げ
福岡・北九州エリア以外でも、普通列車の運転本数の見直しや、終電の繰り上げが実施されます。
- 長崎エリア(長崎本線)
- 長崎→諫早・竹松方面の最終列車を約30分繰り上げ
- 大分エリア(豊肥本線)
- 午前9時台の豊後竹田~三重町の普通列車を上下1往復削減
- 熊本エリア(鹿児島本線)
- 日中時間帯(11時~14時台)の荒尾~玉名間の列車を毎時2本から毎時1本に削減
- 日中時間帯の普通列車を大牟田駅で系統分離(乗り換えが必要)
- 熊本エリア(豊肥本線)
- 熊本~肥後大津~宮地間で合計6本の運転を取り止め
- 鹿児島エリア(指宿枕崎線)
- 指宿→山川の1本を運転取りやめなど
- 宮崎エリア(日豊本線・日南線)
- 宮崎から延岡方面の最終列車を約15分、都城方面を約25分、日南方面を約25分繰り上げ
終電の繰り上げや、利用状況に応じた運転本数の見直しがメインですが、熊本エリアの熊本~玉名~荒尾間の日中時間帯の減便は要注意です。もともと運転本数が多くない日中時間帯の減便ですので、影響が大きそうです。
JR九州も本格的に通勤時間帯の減便を実施へ
JR各社は、2022年3月のダイヤ改正で通勤時間帯などの普通列車を減便していましたが、JR九州はほぼ手つかずでした。2021年3月のダイヤ改正で、一部区間の終電繰り上げを実施しただけでした。その分を、今回のダイヤ改正でまとめて実施する形になるようです。
改めて、ここ数年のJR九州のダイヤ改正について振り返ってみます。
- 2018年: 特急列車・普通列車を大幅に減便
- 2019年: 小幅な改正のみ
- 2020年: 小幅な改正のみ
- 2021年: 九州新幹線・特急列車を大幅に減便
- 2022年: 九州新幹線「さくら」の一部を臨時化、それ以外は小幅な改正
2018年に特急列車を中心に大減便のダイヤ改正を実施したあと、2019年、2020年は小幅な改正にとどまっていました。ところが、コロナ禍の2021年には、再び九州新幹線、特急列車を中心に大減便の改正となりました。
普通列車に関しては、2018年にかなりの減便があった以降、一部の路線で終電の繰り上げや運転区間の短縮といった変更はありましたが、2022年3月のダイヤ改正までは小幅な変更に留まっていました。
ところが、西九州新幹線開業にあわせた今回のダイヤ改正では、都市圏の普通列車を中心に、かなり大きなメスが入りました。JR各社は、2021年には終電繰り上げ、2022年には通勤ラッシュの時間帯を中心に減便を実施しましたが、JR九州もそれに追随する結果となりました。
西九州新幹線の開業が控えていたため、2022年3月のダイヤ改正は小幅にとどめ、2022年9月に九州全体でのダイヤ改正の実施に踏み切ったのでしょう。
以上、「【JR九州ダイヤ改正】2022年9月、西九州新幹線開業に合わせてダイヤ改正を実施、都市部の普通・快速列車が大幅減便に!」でお届けしました。西九州新幹線の開業はうれしいことですが、同時に九州各地で普通列車の大幅減便という痛みを伴う改正になりました。
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