JR北海道は、2021年春のダイヤ改正の詳細を発表しました。特急列車の減便・臨時格下げ、札幌圏の減便等、コロナ後も需要が戻らない前提での大幅縮小の改正となっています。中でも、宗谷本線は、全体の約4分の1にあたる12駅を廃止、特急を1往復臨時格下げなど、大ナタを振るう改正となっています。
JR北海道、2021年春のダイヤ改正の詳細を発表!
JR北海道は、2021年春のダイヤ改正の詳細を発表しました。
JR北海道は、10月14日に、特急列車の減便・臨時格下げを柱とするダイヤの見直しについて発表していました。今回の発表では、具体的に削減される列車が公表されています。また、宗谷本線の12駅をはじめとする18駅もの廃止についても発表しました。
この記事では、JR北海道の2021年春のダイヤ改正について、ポイントをご紹介します。
特急列車の減便・臨時格下げ
減便、臨時格下げされる特急列車は以下のとおりです。
改正前 | → | 改正後 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
区間 | 列車 | 定期列車 | → | 定期列車 |
運転 取りやめ |
閑散期の 曜日運休 |
土休日等 の運転 |
札幌~函館 | 北斗 | 24本 | → | 20本 |
2本 北斗23号・24号 |
2本 北斗5号・14号 |
- |
札幌~旭川 |
カムイ ライラック |
48本 | → | 44本 | - | - |
4本 カムイ9号・29号 ・28号・42号 |
旭川~網走 | 大雪 | 4本 | → | 4本 | - |
4本 大雪1~4号 |
- |
旭川~稚内 | サロベツ | 4本 | → | 4本 | - |
2本 サロベツ3号・4号 |
- |
減便は「北斗」の最終列車2本です。これに伴い、新たに札幌発函館行きの最終となる「北斗22号」のダイヤを、札幌発時点で36分繰り下げるため、新函館北斗で最終の北海道新幹線「はやて100号」(新函館北斗 21:57発 → 新青森 22:59着 ※2020年12月時点のダイヤ)に乗り継げなくなるとのことです。
臨時格下げは、北斗(札幌~函館)2本、カムイ(札幌~旭川)4本、大雪(旭川~網走)の全便、サロベツ(旭川~稚内)2本の計12本です。
このうち、カムイ4本については、土休日と繁忙期にのみ運転されるということで、減便に限りなく近い臨時格下げとなります。運休日数は年間230日程度とのことです。
一方、北斗2本、大雪4本、サロベツ2本は、「閑散期の曜日運休」となっています。具体的には、以下のとおりです。
- 北斗2本(5号・14号)
- 4月、10月、11月の水・木運休(GW除く)
- 運休日数は年間30日程度
- 大雪4本(1~4号)・サロベツ2本(3号・4号)
- 4月、5月、10月、11月の火・水・木運休(GW除く)
- 運休日数は年間50日程度
観光の閑散期となる4~5月、10~11月の週の半ばに運休とするようです。
その他、特急「北斗」「おおぞら」は編成の見直しも実施されます。
- 特急「北斗」: 7両 → 5両(指定席を2両減車)
- 特急「おおぞら」: 6両 → 5両(指定席を1両減車)
いずれも5両編成を基本に、利用状況に合わせて増結する運用になるようです。
札幌圏は普通列車7本減便、快速「エアポート」を含む13本を土休日運休へ
札幌圏では、日中・夜間帯の普通列車7本を減便(一部区間運転取りやめ含む)とするほか、快速「エアポート」6本を含む13本の列車を土休日運休とします。
方面別の減便となる列車の本数は以下のとおりです。
- 札幌~手稲方面:3本
- 札幌発14時台、札幌着16時台・19時台の各1本を運転取りやめ
- 札幌~千歳方面:4本
- 札幌発11時台・19時台、札幌着14時台・22時台の各1本を運転取りやめ
また、土休日運休となる列車は、以下のとおりです。
- 快速「エアポート」:6本
- 札幌発 新千歳空港行き: 70号・88号・202号
- 新千歳空港発 札幌行き: 81号・97号・211号
- 手稲方面~札幌~江別方面:5本
- 6時台~8時台発の5本
- 学園都市線:2本
札幌圏では、これまで、平日と土休日ではほぼ同じダイヤで、一部のホームライナーが土休日に運休する程度でした。土休日は、通勤・通学需要が減るものの、観光需要が増えるため、平日と同じ本数でも問題がなかったのではないかと思います。
それが、コロナ禍により、観光需要が減ってしまったことにより、平日と土休日で利用状況に大きな差ができる状況になっているのでしょう。
宗谷本線の12駅をはじめ18駅を廃止、18駅を自治体管理へ移行
今回のダイヤ改正では、宗谷本線の12駅をはじめ、JR北海道全体で18もの駅が廃止されます。また、それとは別に、18駅が自治体管理へと移行されます。
廃止される駅は以下のとおりです。
- 函館線(1駅): 伊能駅
- 宗谷線(12駅): 南比布駅、北比布駅、東六線駅、北剣淵駅、下士別駅、北星駅、南美深駅、紋穂内駅、豊清水駅、安牛駅、上幌延駅、徳満駅
- 石北線(4駅): 北日ノ出駅、将軍山駅、東雲駅、生野駅
- 釧網線(1駅): 南斜里駅
2021年度から自治体による維持管理に移行する駅は、以下のとおりです。
- 宗谷線(17駅): 蘭留駅、塩狩駅、日進駅、智北駅、恩根内駅、天塩川温泉駅、咲来駅、筬島駅、佐久駅、歌内駅、問寒別駅、糠南駅、雄信内駅、南幌延、下沼駅、兜沼駅、抜海駅
- 石北線(1駅): 瀬戸瀬駅
宗谷本線は、全部で53の駅がありますが、実にその4分の1にあたる12駅が一気に廃止されます。さらに、残る41駅のうち、17駅が自治体の管理となります。
宗谷本線の名寄~稚内は、JR北海道が「単独で維持困難な線区」にあげていて、詳細なデータが公開されています。各駅の乗車人員(平日の特定日調査、平成27年~令和1年の5年間の平均)は、以下のとおりとなっています。
駅名 |
1日平均 乗車人員 |
ダイヤ 改正以降 |
備考 |
---|---|---|---|
名寄 | 377.8 |
特急停車駅 有人駅 |
|
日進 | 0.0 | 自治体管理 | |
北星 | 0.2 | 廃止 | |
智恵文 | 3.8 | ||
智北 | 2.0 | 自治体管理 | |
南美深 | 0.4 | 廃止 | |
美深 | 66.4 | 特急停車駅 | |
初野 | 3.2 | ||
紋穂内 | 1.6 | 廃止 | |
恩根内 | 0.8 | 自治体管理 | |
豊清水 | 0.4 | 廃止 | |
天塩川温泉 | 0.2 | 自治体管理 | |
咲来 | 0.2 | 自治体管理 | |
音威子府 | 26.2 |
特急停車駅 有人駅 |
|
筬島 | 0.0 | 自治体管理 | |
佐久 | 1.2 | 自治体管理 | |
天塩中川 | 11.8 | 特急停車駅 | |
歌内 | 0.2 | 自治体管理 | |
問寒別 | 1.2 | 自治体管理 | |
糠南 | 0.0 | 自治体管理 | |
雄信内 | 0.0 | 自治体管理 | |
安牛 | 0.0 | 廃止 | |
南幌延 | 0.0 | 自治体管理 | |
上幌延 | 0.2 | 廃止 | |
幌延 | 26.2 |
特急停車駅 有人駅 |
|
下沼 | 0.4 | 自治体管理 | |
豊富 | 49.4 | 特急停車駅 | |
徳満 | 1.2 | 廃止 | |
兜沼 | 1.8 | 自治体管理 | |
勇知 | 4.0 | ||
抜海 | 1.8 | 自治体管理 | |
南稚内 | 67.8 |
特急停車駅 有人駅 |
|
稚内 | 105.4 |
特急停車駅 有人駅 |
これを見ると分かりますが、特急停車駅以外は1日の乗車人員が10人以下で、智恵文駅(3.8人)、初野駅(3.2人)、勇知駅(4.0人)以外は全て2人以下。
JR北海道は、かつてから、駅の廃止、または、自治体管理への移行を打診していました。自治体が負担して駅を残すことをしなければ、特急停車駅以外はほとんど消えていた可能性もあるのです。
ローカル線を計13本運転取りやめ、かつての最長普通列車も消滅へ!
特急列車、札幌圏以外にも、以下の13本の運転を取りやめます。
- 函館線:合計1本
- 滝川~旭川間(旭川発1本)
- 留萌線:合計3本
- 留萌発2本、深川発1本
- 根室線:合計6本
- 滝川~新得間(滝川発1本、東鹿越発1本 ※代行バス含む)
- 新得~帯広間(帯広発2本、新得発1本)
- 帯広~釧路間(厚内発1本)
- 宗谷線:合計2本
- 旭川~比布間(旭川発1本、比布発1本)
- 石北線:合計1本
- 遠軽~生田原間(遠軽発1本)
上記のうち、留萌線と根室線(富良野~新得)は、「単独で維持困難な線区」の中でも、JR北海道がバス転換を提案している線区です。高校生の通学・帰宅時間帯を除くと、ほとんど乗っていない線区ですので、減便もやむを得ないでしょう。
日本で最長運転時間を誇る普通列車「2429D」にルーツを持つ列車が運転取りやめへ
乗り鉄、鉄道ファンには有名な(?)、日本の定期普通列車で最も長い時間をかけて走る「2429D」(2016年ダイヤ改正で「2427D」に変更)という列車がありました。滝川~釧路間の308.4kmを、約8時間半かけて走る列車です。
2021年春のダイヤ改正で運転取りやめとなる滝川発東鹿越行きの普通列車と、接続する代行バスは、元「2429D」(の成れの果て)なのです。
- 滝川 09:42発 → 東鹿越 12:00着(2475D)
- 東鹿越 12:05発 → 新得 13:13着(代行バス 103便)
「2429D」が走っていた東鹿越~新得間は、2016年の台風被害の影響で運休のまま。前述のとおり、JR北海道は、鉄道廃止・バス転換を提案している線区ですので、現状、鉄道で復旧される見込みはかなり薄い状況です。
この区間が廃止されれば、かつての「2429D」も同時に廃止(列車としては区間短縮)になるわけですが、鉄道の廃止を待つまでもなく、列車のほうがなくなってしまうことになりました。
新型車両「H100形」大量投入! 宗谷本線では最大31分の時間短縮!
「H100形」電気式気動車30両を新たに投入し、キハ40形などの国鉄型の車両を置き換えることで、所要時間を短縮します。
H100形を新たに投入する線区と、時間短縮効果(速達化効果)は、以下のとおりです。
- 室蘭線
- 苫小牧~室蘭間: 66本中43本をH100形で運転、最大11分(平均4分)速達化
- 東室蘭~長万部間: 20本全てをH100形で運転、最大11分(平均8分)速達化
- 宗谷線
- 旭川~名寄間: 37本中34本をH100形で運転、最大31分(平均13分)速達化
- 石北線
- 旭川~上川間: 23本中2本をH100形で運転、最大7分(平均5分)速達化
最も時間短縮効果が大きいのは、宗谷本線の名寄発旭川行きの普通列車です。
- 改正前: 名寄 06:23発 → 旭川 08:24着(所要時間 2時間01分)
- 改正後: 名寄 06:45発 → 旭川 08:15着(所要時間 1時間30分)
2時間1分から1時間半へ、実に31分もの時間短縮となります。いくら最新の車両とはいえ、各駅に停車する普通列車で31分もの時間短縮は容易ではありません。
実は、車両変更による時短効果だけでなく、前述の駅の廃止による効果もかなり効いているのです。名寄~旭川間では、南比布、北比布、東六線、北剣淵、下士別の5駅が廃止されます。この5駅に停車しなくなるわけですから、それだけで約12分の時短効果があるのです。
速達化そのものはサービスの向上であり、歓迎すべきことなのですが、駅の廃止の効果がかなりあるということで、少し複雑な思いになりますね。
以上、『【JR北海道 2021年ダイヤ改正】宗谷本線は12駅廃止、「サロベツ」1往復臨時格下げの大ナタ! 札幌圏は日中夜間帯に減便へ!』でした。コロナ禍により、鉄道事業の縮小傾向が一気に早まった、そんなダイヤ改正になりそうです。
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