1910年に開業した留萌本線。100年以上の歴史のある路線ですが、現在、JR北海道が「単独で維持困難な線区」に指定し、廃止の危機にあります。2018年8月、そんな留萌本線に乗車してみましたので、その様子をご紹介します。
留萌本線とは?
留萌本線は、函館本線の深川駅と、日本海側の留萌(るもい)駅を結ぶ、全長50.1kmの路線です。全線単線、非電化で、1両の気動車が行ったり来たりするローカル線です。
1910年に深川~留萌間が開業、その後、1921年に留萌~増毛(ましけ)間が延伸開業しました。留萌港が栄えていたころは、海産物や物資の輸送で栄えた路線ですが、他のローカル線同様、輸送人員はどんどん減り、2016年12月には、留萌~増毛間が廃止になりました。
残っている深川~留萌間も、現在廃止の危機にあります。JR北海道が2016年に公表した「単独で維持困難な線区」に含まれているうえに、JR北海道が国から総額400億円の支援を受ける際に、支援の対象外とされた5線区にも含まれています。
留萌本線 乗車レポート
そんな廃止の危機にある留萌本線に乗車してきましたので、乗車レポートをお届けします。
青春18きっぷで留萌まで往復!
このときは、「ひがし北海道フリーパス」で、新千歳空港から、釧路、網走、旭川と周遊してきましたが、留萌本線は「ひがし北海道フリーパス」のフリーエリア外。ということで、余っていた青春18きっぷを活用します。
旭川駅で青春18きっぷに日付印を押してもらい、ホームへ。既に、留萌行きの列車が入線していました。
JR北海道の普通列車ではおなじみのキハ54形。この車両は単行が似合うと思うのは、2両以上の編成をほとんど見たことがないからかもしれません。
深川で乗客総入れ替え?
空席が目立つまま、15時14分に旭川駅を出発。深川駅までは函館本線を快調に飛ばしていきます。途中駅からの乗客はほとんどないまま、15時44分に深川駅に到着。深川では24分の停車時間があります。
深川駅に到着すると、私を除く乗客はみな下車してしまいました。が、発車時刻が近づくに連れて、少しずつ高校生が乗車してきます。結局、座席が3割ほど埋まるくらいになりました。旭川から留萌への直通需要は少ないのかもしれません。
田園風景の中を北進
16時08分に深川駅を出発すると、すぐに函館本線の線路と分かれて北へ向かいます。
このあたりは石狩平野の北端で、勾配がほとんどない平地が続き、見渡す限りの田園風景が広がります。相変わらず雲が多い天気ですが、雲間からわずかに青空も覗いてきました。
雨竜(うりゅう)川という石狩川の支流を渡ります。ここ数日の雨のせいか、水量が多く、茶色に濁っています。
この雨竜川を渡ると、沿線の中心駅、石狩沼田に到着です。ここまで、各駅で少しずつ高校生が下車していましたが、この石狩沼田でほとんどが下車。車内は閑散としてしまいました。
JR北海道が公表している路線データでも、深川-石狩沼田間の輸送密度が200~300人/日程度あるのに対して、石狩沼田~留萌間は60~70人/日と、石狩沼田駅を堺にして需要が激減します。
この石狩沼田駅、かつては札沼線の終点でもありました。札沼線の名称は、「札」=札幌、「沼」=沼田、の意味だったのですね。ところが、残念ながら、1972年に新十津川-石狩沼田間が廃止されてしまいました。前述の通り、留萌本線はその全線が、札沼線も末端部分の北海道医療大学-新十津川間が廃止の危機にあります。
峠を越えるとそこは日本海
平地が続くのは恵比島(えびしま)駅あたりまで。
この恵比島駅、1999年に放送されたNHKの連続テレビ小説「すずらん」で、「明日萌(あしもい)駅」としてロケに使われた駅です。木造の古い駅舎がいい味を出しています。
当時は「SLすずらん号」が走るなど、大変賑わったようですが、車窓から見る限りでは閑散としていました。
恵比島駅を出ると、列車は山間部へ。峠超えの区間です。峠と言っても、それほど険しいものではありません。それでも、先ほどまで車窓に広がっていた田園風景は姿を消し、木々で覆われた山の中へ入っていきます。
10分ほどで次の峠下駅へ。その駅名の通り、峠を超えて下ってきたことがわかります。
その後は、しばらく、低い山々の間に小さな田んぼが広がる景色が続きます。
幌延、藤山と素朴な駅が続きます。乗降客はなし。駅に停車しても、車内は静まり返っていて、キハ54形のエンジン音だけが響きます。
この列車には冷房がありません。天井には、このような扇風機がいくつも付いています。窓の横にあるボタンを押すと可動するようになっています。窓を少し開け、外の空気に当たっていると十分に涼しいです。窓が開く列車は貴重ですね。
海沿いの街、留萌に到着
大和田駅を出ると、住宅街や市街地に入っていきます。急に視界がひらけてくると、もうすぐ近くは日本海。
列車は、定刻通り、17時07分に終点の留萌駅に到着しました。
結局、石狩沼田駅までに高校生が下車した後は、車内は閑散としたまま。留萌駅まで乗車したのは数名でした。
留萌本線の一部の区間を除いて、国道233号線と深川留萌自動車道が並行して走っています。線路が蛇行して速度が出せない留萌本線に対して、深川留萌自動車道は直線的な線形。
これでは、札幌・深川~留萌間の都市間輸送に鉄道が使われるはずがありませんね。鉄道ファンとしては残念なことではありますが、高校生の通学さえ手当ができれば、留萌本線が廃止されても、それほど困る人はいないのでは、と思ってしまいました。
留萌駅周辺を散策
留萌駅からは、折り返し深川行きの列車で戻りますが、1時間ほど時間があります。その時間を利用して、留萌駅やその周辺を散策してみました。
立派な駅舎と広い構内の留萌駅
留萌駅に到着して感じたのは、ホームが長く、駅構内が広いこと。ホームの屋根など、かなり古く、腐食しているところも見られたので、改修などされていなくて、昔の駅のままなのでしょう。
暗くて足元が良く見えない跨線橋を渡って反対側の2番線ホームへ。ホームはコンクリートが傷んでいて、いまにも朽ち果てそうな状態でした。使われているのは、駅舎のある1番線ホームだけなのでしょうか。2番線ホームはあまりメンテナンスされていないようでした。
留萌駅から先への線路が続いているように見えますが、少し先に車止めがあり、線路はそこで途切れています。2016年12月までは、この先、増毛駅まで線路がつながっていました。
留萌駅の待合室は広くて立派。本州であれば、ちょっとしたターミナル駅並みの広さです。ただ、その待合室では、誰も列車を待っていません。
改札口の前も広々といていますが、夕方~早朝は駅員が不在、つまり無人駅です。留萌駅に到着した時に、運転士に青春18きっぷを見せて下車しましたが、それはこの駅が無人だったからなのですね。
駅前には駐車場があり、広々としています。駅舎も立派です。この駅が、夕方~早朝だけとはいえ、無人駅とはとても思えません。
途切れた線路が廃止の事実を突きつける
駅から出て、線路沿いに歩いてみます。
海のほうへ少し歩いていくと、かつては踏切があったであろう道路に出ます。比較的交通量の多い道路で、クルマが行き交います。その道路の両側では、線路が途切れています。
上の写真は留萌駅のほうを眺めたもので、途中で分岐した2本の線路の先に、留萌駅のホームと跨線橋が見えています。
反対側からは、少し先に鉄橋が見えます。この先も、レールは残されたままで、それが逆にもの悲しさを感じさせます。
ここから先は線路沿いに歩けないので、少し回り道をして、国道が通る港栄橋から、旧留萌本線の鉄橋を眺めてみます。レールも鉄橋もそのまま残っていました。鉄橋は腐食が目立ちますが、海のすぐそばなので、元からこんな感じだったのではないかと思います。
いまにも列車がやってきそうな感じを受けますが、この鉄橋にはもう列車は来ません。
留萌駅前まで戻ってきました。駅前の案内図には、留萌本線が留萌駅より先まで伸びています。留萌の市街地の外側を回り込むように進み、そのまま、海沿いを増毛駅まで走っていました。
留萌駅は市街地の端に位置していて、留萌市街の中心からは少し離れているようですが、それにしても、人がほとんど歩いていません。平日、金曜日の18時頃ですが、シャッターを閉めている飲食店が多く、営業している店は数えるほど。道路の交通量はかなり多いので、移動はクルマなのですね。
乗客6名の列車で深川へ
留萌駅を18時18分に出る列車に乗車します。先ほど、旭川から乗ってきた車両は1番線ホームに停車したままですが、この車両がそのまま深川行きの列車になりました。
車内はこのようにクロスシートが並びます。向きが固定されたタイプのクロスシートですね。
乗客は私を含めて6名。平日18時の列車とは思えませんが、通勤には全く利用されていないと考えれば、高校生の下校時刻を過ぎると、閑散時間帯ということなのでしょう。
日没を迎えて外も暗くなり、車窓が見えなくなりました。各駅に停車しますが、乗降客はゼロ。結局、乗客は増えも減りもせず、留萌で乗車した6名のまま、19時14分、終点の深川駅に到着しました。
深川駅に到着した留萌本線の列車です。高校生たちで賑わっていた夕方のホームとは異なり、ほとんど誰もいません。
このあとは、「ひがし北海道フリーパス」を利用して、19時36分発の特急「ライラック35号」に乗車。空いていた最後尾の自由席に座り、20分弱で旭川駅に到着したのでした。
旭川駅では、隣のホームに、20時06分発の稚内行き、特急サロベツ号が停車していました。ライラック35号から乗り換えた人も多いようです。終点の稚内到着は23時47分。さらに4時間弱の道のりですね。いかに北海道が広いかがわかります。
この日は旭川の宿を予約していたので、ここで下車しました。
以上、留萌本線の乗車レポートをお届けしました。田園風景に峠越えの車窓が続くローカル線ですが、車窓の美しさよりも、乗客の少なさや、留萌駅の活気のなさが心に残りました。あちこちで車窓から見える高規格の高速道路を見るにつけ、この留萌本線の役割はもう終わったのだろうか、と思わずにはいられませんでした。
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