LCC利用者限定のJR北海道のフリーきっぷ「ひがし北海道フリーパス」。札幌から東側のほとんどの路線の特急列車自由席に5日間も乗り放題で15,500円と格安なきっぷです。
8月下旬、この「ひがし北海道フリーパス」を利用して、道東方面に旅行に行ってきましたので、使い勝手や列車の混雑状況などをレポートします。
事前のきっぷ購入・列車の予約は一切不要
いつもは、乗り鉄旅を計画する段階で、途中で乗車する列車の指定席券を予約したり、利用するフリーきっぷを購入したりするわけですが、今回の北海道旅行では、出発時点で手元に一つも列車のきっぷがありません。(北海道までの飛行機のチケットは当然あります)
というのも、「ひがし北海道フリーパス」の発売箇所は、新千歳空港のみどりの窓口だけ(2018年8月からは釧路駅でも購入可能)。当日のバニラエアまたはピーチの新千歳空港到着便の搭乗券を提示しないと購入できません。
また、特急列車に乗車可能ではありますが、乗車できるのは自由席のみ。ということで、指定席券を確保する必要がない(特急列車の指定席には乗車できない)ので、事前に列車の予約は一切していないのです。
いつもは出発時点で乗車する列車の指定席券が何枚か手元にあるのですが、3泊4日という比較的長い旅程にも関わらず、それが一切ないというのも、何となく落ち着かないものです。
なお、ひがし北海道フリーパスの詳細は、以下の記事をご覧ください。
新千歳空港のみどりの窓口で「ひがし北海道フリーパス」を入手!
今回は、バニラエアの成田→新千歳空港便を利用しました。自宅からは圧倒的に羽田空港が近いのですが、今回は「ひがし北海道フリーパス」を利用するために、早起きして、LCCが発着する成田空港まで行ったというわけです。
バニラエアの搭乗レポートは別に書きますが、まあ、乗ってしまえば、多少座席が狭いのと、ドリンクのサービスがない以外は、大手のANAやJALと変わりません。
新千歳空港に到着したら、早速、新千歳空港駅のみどりの窓口へ。このみどりの窓口、結構混んでいますし、日本の鉄道に詳しくない外国からの旅行者も多く、一人当たりの窓口での対応時間が長いので、時間には余裕を見ておきましょう。
バニラエアの搭乗券を提示して、「ひがし北海道フリーパス」を無事に購入。利用期間は、購入日から5日間になります。購入当日の搭乗券でないと「ひがし北海道フリーパス」を購入できないので注意しましょう。
特急列車自由席の混雑状況は?
「ひがし北海道フリーパス」を利用するにあたって、最も気になっていたのが、自由席の混雑状況です。
長距離の特急列車は自由席が少ない
JR北海道の特急列車は、自由席の割合が比較的少なく、特に長距離の列車でその傾向があります。
- スーパーおおぞら(札幌~釧路): 指定席3両、グリーン席1両、自由席2両
- スーパー北斗(札幌~函館): 指定席4両、グリーン席1両、自由席2両
- オホーツク・大雪(網走~札幌・旭川): 指定席1.5両、グリーン席1両、自由席1.5両
このように、長距離を走る列車では、自由席は2両しかありません。それでいて、3時間以上乗車する列車が多いので、座席を確保できるのかを心配していました。
特急列車自由席の混雑状況
で、実際はどうだったかというと、今回の旅行で乗車した特急列車では、すべての列車で自由席の座席を確保することができました。簡単に自由席の混雑状況をまとめておきます。
列車 | 乗車区間・時刻 | 自由席の混雑状況 |
---|---|---|
スーパーおおぞら5号 | 新札幌 12:02 → 釧路 15:56 | 終始、乗車率2~3割程度(平日) |
オホーツク2号 | 網走 05:56 → 旭川 09:44 | 乗車率2割以下、がらがら(平日) (車両不具合で1時間半遅延) |
ライラック22号 | 旭川 12:00 → 札幌 13:25 | 旭川発車時点で満席(土曜) |
スーパーおおぞら5号は、始発駅の札幌からの乗車ではなかったため、座席が確保できるのかが心配でした。そのため、新千歳空港から新札幌まで戻って、新札幌から乗車したのですが、まったく杞憂でした。札幌を朝や夕方以降に出発する列車は、ビジネス客が多く利用するでしょうから、混雑するかもしれませんね。
網走から乗車した「オホーツク2号」、車両不具合で1時間半ほど遅れて、午前7時半ごろに網走駅を出ましたが、下車した旭川まで、自由席はがらがらでした。網走駅の待合室や改札前で列車を待っていた人数から想像するに、指定席もがらがらだったと思われます。旭川までの途中駅からの乗車した人もわずかでした。
一方、土曜日の正午に旭川を出発する札幌行き「ライラック22号」の自由席は、かなり混んでいました。特急ライラック号は、指定席2両(一部グリーン席)、自由席4両と、自由席の割合が大きいのですが、旭川発車時点でほぼ満席。途中駅からも乗車が多く、札幌到着時点では、デッキは立ち客でいっぱいでした。
長距離の列車は指定席から埋まる
長距離の特急列車は、一般的に指定席から埋まります。これは、座れなかった時のダメージが大きいため、指定席料金を払っても座席を確保しておきたいという乗客が多いからでしょう。
さらに、JR北海道特有の事情として、「Sきっぷ」「Rきっぷ」の存在がありそうです。「Sきっぷ」「Rきっぷ」は、札幌~旭川・網走・稚内方面の特急列車の往復割引きっぷです。
- Sきっぷ: 札幌~旭川、旭川~網走・稚内などの比較的短距離の区間に設定、特急列車の自由席に乗車可能
- Rきっぷ: 札幌~網走・稚内などの長距離の区間に設定、特急列車の指定席に乗車可能
「Sきっぷ」が自由席用、「Rきっぷ」が指定席用ですが、設定されている区間が異なります。札幌~網走といった長距離には、指定席用の「Rきっぷ」しか設定されていませんので、「Rきっぷ」を購入→自動的に指定席を利用、となるわけです。
というわけで、JR北海道の長距離を走る特急列車では、指定席から埋まる傾向が特に強いのではないかと感じました。
とはいえ、指定席が満席になれば、次は自由席が埋まってきます。ですので、サイバーステーションの空席案内などで指定席の混雑状況を確認し、指定席が満席のときには早めに自由席の列に並ぶ といっ対策をとったほうがよさそうです。
「ひがし北海道フリーパス」の使い勝手
「ひがし北海道フリーパス」の使い勝手は、特急での座席確保さえできてしまえば、極めて良好です。
広大なフリーエリア・普通列車の少ない区間を特急列車で移動可能!
北海道は広大なので、青春18きっぷや北海道&東日本パスのような、普通列車にしか乗車できないフリーきっぷでは、都市間を移動するのはなかなか困難を極めます。その点、「ひがし北海道フリーパス」を利用すれば、普通列車の少ない石北本線(旭川~網走)や根室本線(帯広~釧路)を特急列車で移動できます。
「ひがし北海道フリーパス」のエリアは広大。おおむね、札幌や新千歳空港から東側、函館本線・石北本線(札幌~旭川~網走)から南側が全てフリーエリアです。そのうえ、新千歳空港から、帯広や釧路・根室 → 網走 → 旭川・富良野 → 札幌 という周遊ルートを作りやすく、実際、今回はほぼこのルートで旅行しました。周遊ルートを組みやすいフリーエリアがこのきっぷの魅力の一つ ですね。
長い有効期限に通年利用可能!
5日間有効なので、新千歳空港~道東(釧路や網走)間の往復に各1日を費やしたとしても、3日間を観光に利用できます。
さらに、「ひがし北海道フリーパス」は通年利用できます。JR北海道全線乗り放題の「北海道フリーパス」(7日間有効、特急指定席に6回まで乗車可能、26,230円)を利用できない繁忙期にも利用できる点はメリットです。同じく、青春18きっぷや北海道&東日本パスが利用できない期間でも利用できますね。
LCC利用者限定が唯一のデメリット
唯一のデメリットは、LCC(バニラエア、ピーチ)利用者限定という点 でしょう。
現状(2018年9月現在)では、成田空港、関西空港、福岡空港、仙台空港からしか飛んでいません。これらの空港が利用できないところにお住まいの方は、「ひがし北海道フリーパス」を利用しづらい状況です。
また、首都圏在住の場合には、成田空港が利用できるのですが、やはり羽田空港よりも遠い場合が多く、自宅~成田空港間の往復に、時間・お金ともにかかります。LCCは、少しでもチェックインに遅れると乗せてもらえない傾向にあるので、時間的にはかなり余裕を見ておく必要があります。その点からも、空港まで遠いというのはデメリットになります。
もっとも、逆に言えば、このデメリットが問題にならない方であれば、おすすめできるフリーきっぷです。
どれくらいお得?
特急列車に乗り放題のフリーきっぷとなれば、どのくらいお得になるものなのかも気になります。
今回、乗車した区間の普通運賃と特急料金(自由席)で比べてみましょう。
区間 | 列車種別 | 特急料金 |
---|---|---|
新千歳空港 → 南千歳 | 普通列車 | - |
南千歳 → 釧路 | 特急列車 | 2,590円 |
釧路 ⇔ 根室(往復) | 普通列車 | - |
釧路 → 川湯温泉 → 網走 | 普通列車 | - |
網走 → 旭川 | 特急列車 | 2,590円 |
旭川 → 留萌 | 普通列車 | - |
留萌 → 深川 | 普通列車 | - |
深川 → 旭川 | 特急列車 | 620円 |
旭川 ⇔ 美馬牛(往復) | 普通列車 | - |
旭川 → 札幌 | 特急列車 | 1,800円 |
札幌 → 新千歳空港 | 普通列車 | - |
あちこち寄り道しているので、乗車券は一筆書き+はみ出した部分の往復で計算してみました。
- 乗車券(普通運賃): 合計 22,340円
- 新千歳空港 → 釧路 → 網走 → 旭川 → 札幌 → 千歳: 12,450円
- 千歳 → 新千歳空港: 350円
- 釧路 ⇔ 根室(往復): 4,980円(※)
- 旭川 ⇔ 留萌(往復): 3,280円(※)
- 旭川 ⇔ 美馬牛(往復): 1,280円
- 特急料金: 合計 7,600円
乗車券(運賃)と特急料金を合計すると29,940円。「ひがし北海道フリーパス」は15,500円ですので、ざっくりと半額になった計算です。
まあ、普通の旅行の行程では、根室や留萌を往復したりはすることは少ないでしょうけれど、それ(上記の※の部分)を引いても、6,000円以上お得になります。
ということで、特急列車を利用して、新千歳空港から道東方面をぐるっと一周する行程で十分に元は取れます。私のような乗り鉄で、あちこちの路線を乗りまわるのであれば、さらにお得感は増しますね。
【まとめ】実践!「ひがし北海道フリーパス」で道東一周乗り鉄旅!
ということで、最後に「ひがし北海道フリーパス」を利用してみてわかったことをまとめておきます。
- 長距離の特急列車の自由席は比較的空いているが、短距離(札幌~旭川)は混んでいる(繁忙期や早朝・夕方以降は長距離列車も混雑する可能性あり)
- 新千歳空港駅の窓口は混んでいるので、「ひがし北海道フリーパス」を購入する時間に余裕を見ておく
- 「ひがし北海道フリーパス」の購入には、当日新千歳空港着のバニラエアまたはピーチの搭乗券が必要なので、なくさないように!
- 道東一周の周遊ルートであれば十分にお得!
以上、LCC利用者限定のフリーきっぷ「ひがし北海道フリーパス」のレポートでした。JR北海道のフリーきっぷとしては破格の安さで、使い勝手も良いので、北海道外から道東方面へ旅行される際にはおすすめのきっぷです。
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