2024年春のダイヤ改正、首都圏では千葉方面に大きな変化があります。特急列車では房総特急の減便、短編成化、全車指定席化など大幅な見直しが行われます。また、ラッシュ時間帯の京葉線の通勤快速・快速が全廃され、すべて各駅停車としての運転となります。千葉方面以外は、全般的に小幅な改正に留まっています。
2024年ダイヤ改正では千葉・房総半島方面に大きな動き
2024年のJR各社のダイヤ改正の概要が発表されました。全般的には、北陸新幹線の敦賀延伸開業をはじめとして、山形新幹線への新型車両「E8系」の投入など、新幹線の話題が多いダイヤ改正となっています。
JR全社のダイヤ改正のポイントについては、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
一方、2024年春のJR東日本(首都圏)のダイヤ改正では、千葉・房総半島方面に大きな変化があります。房総方面への特急列車が減便、短編成化、全車指定席化と大幅に見直しが行われるほか、成田エクスプレスはダイヤの修正と特急料金・グリーン料金の一部値下げが行われます。
また、通勤電車では、朝晩の京葉線の快速がすべて各駅停車に変更になるという大きな変更があります。現在の快速通過駅では乗車機会が大幅に増える一方で、外房線・内房線など遠方から都心への所要時間が増えることになります。
千葉・房総半島方面以外では、全般的に小幅の改正となっています。
房総方面の特急列車の輸送体系・車両を大幅に変更、全車指定席化も!
今回の首都圏のダイヤ改正の中で、最もインパクトが大きいのが、房総方面の特急列車「しおさい」「わかしお」「さざなみ」の輸送体系の変更と車両の変更でしょう。既報の全車指定席化とあわせて、房総特急の風景が大きく変わりそうです。
房総特急、土休日を中心に減便へ
2024年のダイヤ改正では、「しおさい」「わかしお」「さざなみ」のいずれも減便されます。
※「2024年3月ダイヤ改正について」(JR東日本千葉支社)に掲載されている図を編集して利用
「しおさい」は佐倉以遠で平日に1往復を減便、土休日は全体で1~2往復の減便となっています。「わかしお」も平日は全体で1~2往復の減便、土休日に至っては下り2本、上りは4本もの減便となっています。「さざなみ」は平日下りが1本減便となります。
もともと運転本数の少ない土休日の減便が目立ちます。平日の減便は通勤客の減少に伴うものと考えられますが、土休日の乗客のメインは観光客。房総方面では観光客の鉄道離れが進んでいるのかもしれません。
「しおさい」にE259系を投入、「わかしお」「さざなみ」はE257系5両に統一
減便に加えて、車両面でも大きな動きがあります。
(出典)「2024年3月ダイヤ改正について」(JR東日本千葉支社)
「しおさい」は1往復を除いて、成田エクスプレスで利用されていたE259系(6両編成)が投入されます。E259系は乗り心地が良いですし、WiFiやコンセントも装備しているので、客室面のサービス向上にはなりますが、問題は大幅に両数が減っている点です。これまで、255系9両またはE257系10両で運転されていた「しおさい」は、ほとんどがE259系6両になってしまいます。前述の減便とあわせると、輸送力は半減しているといってもよいでしょう。
また、「わかしお」「さざなみ」はE257系5両編成に統一されます。こちらも9~10両という長編成の列車が消えてしまうため、輸送力は大幅に減ることになります。
前述の減便とあわせると、房総特急はかなり大きなテコ入れがされたと言えます。今後の行く末が心配になるレベルです。
房総特急全列車を全車指定席に!
房総特急「しおさい」「わかしお」「さざなみ」は、2024年のダイヤ改正以降、全列車が全車指定席となります。首都圏の主要な特急列車にすでに導入されている「新たな着席サービス」が、房総方面への特急列車にも導入されます。
- 普通車の全座席が指定席となる
- 指定席特急券のほか、座席を指定しない座席未指定券でも乗車できる(座席未指定券では空席を利用できる)
- 新たな特急料金は、これまでの指定席特急料金と自由席特急料金の中間に設定
- チケットレスで特急券を購入できる「えきねっとチケットレス」を導入
JR東日本は、2019年3月に中央本線の特急列車で「新たな着席サービス」を開始して以来、首都圏の主要な特急列車に次々と導入してきました。房総方面への特急列車への導入で、首都圏のほぼすべての特急列車から自由席が消えて全車指定席となります。
房総特急「しおさい」「わかしお」「さざなみ」の全車指定席化については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
ラッシュ時間帯の京葉線の快速を各駅停車に変更、通勤快速は廃止
通勤客に大きな影響がありそうなのが、京葉線の輸送体系の変更です。朝晩のラッシュ時間帯の快速列車がすべて各駅停車に変更されます。現行の快速通過駅では乗車機会がかなり増えますが、遠方からの所要時間が増えることになります。また、朝晩にわずかに運転されていた通勤快速も各駅停車に格下げされ、通勤快速は廃止となります。
京葉線の快速列車は日中時間帯のみの運転に
京葉線の朝晩の快速列車が各駅停車に変更されます。快速列車の運転時間帯は、下り(東京発時刻)、上り(蘇我発時刻)でおおむね10時台~15時台のみとなり、ラッシュ時間帯の列車は各駅停車と特急列車のみとなります。
ラッシュ時間帯の快速列車の各駅停車への変更の理由は、JR東日本千葉支社のニュースリリースを見ると、快速通過駅での乗車機会の増加にあるようです。越中島、塩見、葛西臨海公園、市川塩浜、二又新町、新習志野、幕張豊砂の各駅では、以下のように乗車可能回数が増えることが記載されています。
- 快速通過駅での乗車可能回数(上下列車の合計)
- 平日: +31~32回
- 土休日: +39~42回
現行の快速通過駅の利用者からすれば、大幅な増発になるのと一緒ですので、ありがたい改正でしょう。
一方、遠距離から都心に通勤する方にとっては、所要時間が増えることになります。蘇我駅~東京駅で見てみると、快速が40分ちょっとなのに対して、各駅停車は50分以上と、10分以上も所要時間が異なります。
京葉線では、2013年のダイヤ改正で、朝ラッシュのピーク時間帯の快速列車を廃止しています。蘇我駅発車時刻で見てみると、午前7時台~午前8時台は、通勤快速と特急列車を除くと各駅停車しかありません。そのため、朝晩の快速列車の廃止といっても、京葉線沿線では影響を受ける人は少ないのかもしれません。
とはいえ、外房線、内房線から朝6時台の快速列車で通勤している方には大きな影響がありそうです。
朝晩2本ずつあった「通勤快速」は廃止
京葉線の「通勤快速」も2024年のダイヤ改正で廃止されます。
現在、京葉線の通勤快速は、朝の上り2本、夜の下り2本のみの運転です。それぞれ、外房線、内房線から直通する列車が1本ずつです。蘇我駅を出ると新木場駅まで30分以上も停車しない、首都圏では随一の俊足を誇る列車です。
外房線との直通列車は勝浦発着(夜の下りは成東行きを併結)、内房線との直通列車は、朝は上総湊発、夜は君津行きと、長距離の通勤に適した列車でしたので、こちらも影響を受ける方がそれなりにいると思われます。
人口減で居住地の都心回帰が進んでいることを反映した改正と思われます。
成田エクスプレスは中央線発着の運転取りやめと一部区間での特急料金・グリーン料金値下げ
成田エクスプレスは、千葉駅、佐倉駅などに停車する列車が増える一方、中央線発着(新宿~八王子間)の成田エクスプレスは運転取りやめとなります。また、空港第2ビル、成田空港を含まない区間の特急料金、グリーン料金が値下げされます。
八王子発着の中央線経由の成田エクスプレスは運転取りやめ
成田エクスプレスは、八王子駅発着の2往復の運転を取りやめ、新宿駅発着に変更されます。中央線で運転取りやめとなる成田エクスプレスは以下のとおりです。
- 成田空港行き
- 3号: 八王子 05:55発 → 成田空港 07:58着
- 7号: 八王子 06:28発 → 成田空港 08:37着
- 八王子行き
- 50号: 成田空港 19:48発 → 八王子 22:00着
- 52号: 成田空港 20:44発 → 八王子 22:50着
成田エクスプレスの中央線内での停車駅は、立川、国分寺、三鷹、吉祥寺でした。中央特快が止まらない吉祥寺駅に、特急列車である成田エクスプレスが停車するという変わった運用が続いていましたが、これも見納めになりそうです。あわせて、中央線の特急列車が停車しない三鷹駅、国分寺駅は、ダイヤ改正以降、まったく特急列車が停車しない駅となります。
一方で、千葉駅、佐倉駅に停車する成田エクスプレスの本数が増えます。
成田エクスプレスの一部区間の特急料金・グリーン料金を値下げ
成田エクスプレスの特急料金・グリーン料金が値下げされます。
- 特急料金
- 空港第2ビル・成田空港を含む特急料金: 変更なし(A特急料金)
- 空港第2ビル・成田空港を含まない特急料金: 「しおさい」と同じ特急料金
- グリーン料金
- 現行: 200キロまで2,800円
- 改正後: 100キロまで1,300円、200キロまで2,800円
空港アクセス特急としての特急料金は変わりませんが、東京~千葉・佐倉など一部区間のみを利用する場合には、大幅な値下げとなります。
例えば、東京~千葉間(39.2km)で見てみると、以下のようになります。
- 現行の特急料金: 1,290円
- 現行の割引料金: 830円(チケットレス特急券35%引き)
- 改正後の特急料金: 660円(えきねっとチケットレス)
成田エクスプレスでは、一部区間の利用を喚起するために、多くの区間で、特急料金が35%引きになる「えきねっとチケットレス特急券」を設定していますが、ダイヤ改正後はそれよりもさらに安い料金になります。
JR東日本だけでなく、多くの鉄道会社で運賃や料金が値上げされている中で、成田エクスプレスだけは値下げされます。ライバルとなる京成スカイライナーとの競争も激しく、空港アクセス特急としてだけでは座席を埋められない状況が続いています。幸い、成田エクスプレスは東京駅、新宿駅など都心のターミナルを通りますので、通勤客にライナー的な列車として利用してもらうことを目的とした値下げと思われます。
宇都宮線・高崎線では帰宅時間帯の快速列車を各駅停車に変更
宇都宮線・高崎線では、夕方~夜間帯の快速列車の運転を取りやめ、各駅停車に変更します。快速列車の運転が取りやめとなる時間帯は、始発駅基準で以下のとおりです。
- 宇都宮線
- 上り: 19時台以降(宇都宮駅発時点)
- 下り: 21時台以降(上野駅発時点)
- 高崎線
- 上り: 16時台以降(高崎発時点)
- 下り: 20時台以降(上野発時点)
宇都宮線、高崎線では、コロナ禍以降のダイヤ改正ごとに、少しずつ列車の本数が少なくなっています。今回のダイヤ改正でも、高崎線の17時以降の列車が1往復減便となります。
減便に際しては、優等列車の通過駅で極端に列車の本数が少なくならないように、優等列車から削られていきます。今回の快速列車の削減も、減便によって全体の本数が減ってしまったため、優等列車を走らせる余地がなくなってきたということだと思われます。
首都圏の普通列車グリーン車の料金値上げ、距離区分に101キロ以上を設定
首都圏の普通列車に連結されているグリーン車の料金が、2024年3月16日以降乗車分から値上げされます。
- | 見直し後 | 現行(事前料金) | ||
---|---|---|---|---|
距離 |
Suica グリーン料金 |
通常料金 | 平日 | ホリデー |
50キロまで | 750円 | 1,010円 | 780円 | 580円 |
100キロまで | 1,000円 | 1,260円 | 1,000円 | 800円 |
101キロ以上 | 1,550円 | 1,810円 | 1,000円 | 800円 |
これまで、平日とホリデー(土休日)で料金が異なっていましたが、ダイヤ改正以降は曜日にかかわらず統一されます。また、距離区分に101キロ以上が設けられ、これまでの2区分から3区分に変更になります。
一方、これまでは事前料金と車内料金で料金が異なりましたが、今後はSuica料金(モバイルSuica、または、カードタイプのSuicaでグリーン券を購入した時に適用)と通常料金(紙のグリーン券を購入した時に適用)が設けられます。
現行の事前料金と、改正後のSuica料金を比べてみると、平日の100キロまでの料金はほとんど変わりませんが、101キロ以上は新たに設けられた距離区分のため、550円高くなります。これまで割安に設定されていた土休日では、50キロまでは580円から750円へ、100キロまでが800円から1,000円へと値上げになるほか、101キロ以上は800円から1,550円へと2倍近い値上げとなります。
普通列車グリーン車は大幅値上げとなってしまいますが、JRE POINT で交換できる「Suicaグリーン」は、これまでどおり600ポイントで交換できます。改正後のグリーン料金は最低でも750円、最高では1,550円となりますから、600ポイント(600円相当)で交換できるのはありがたいですね。なるべく、JRE POINTを貯めて、Suicaグリーン券に交換するのがよさそうです。
首都圏の普通列車グリーン料金の値上げについては、以下のニュースリリースをご覧ください。
また、普通列車グリーン車については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
JRE POINT 600ポイントで、普通列車グリーン車に乗車できる「Suicaグリーン券」に交換できます。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
以上、「【2024年JR東日本ダイヤ改正(首都圏)】房総特急に大ナタ! 京葉線は通勤時間帯の快速を廃止、普通列車グリーン車は値上げへ」でした。ここ数年続く通勤快速や快速の廃止・減便は、やむを得ない面があるものの、都心への通勤圏が狭まるという影響もありそうです。
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