コロナ禍になって2回目のダイヤ改正。前回の終電繰り上げに続き、今回は首都圏での朝夕ラッシュ時間帯の減便にも踏み込みました。テレワークの普及によってコロナ後も需要が戻らないことを見越したものですが、そんな首都圏のダイヤ改正についてまとめました。
JR東日本、2022年3月のダイヤ改正で首都圏の通勤路線で減便へ!
JR各社は、2022年3月12日にダイヤ改正を実施すると発表しました。JR各社のダイヤ改正のトピックについては、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
今回のダイヤ改正で象徴的なのが、首都圏をはじめとする都市部での朝夕ラッシュ時間帯の減便です。
前回、2020年3月のダイヤ改正では、終電の繰り上げ、始発の繰り下げが実施されましたが、一部を除いて、ラッシュ時間帯の減便はありませんでした。
それが、今回は、鉄道会社の本丸ともいえるラッシュ時間帯の減便に踏み込みます。コロナ禍によりテレワークが普及したことで、コロナ後も通勤需要は元に戻らないと考えているのでしょう。
以下では、2021年12月に発表されたダイヤ改正の概要から、首都圏の通勤路線の減便について、ポイントをまとめたいと思います。
首都圏の主要路線で朝ラッシュ時間帯を中心に減便、一部は日中時間帯も!
首都圏の主要路線では、朝ラッシュ時間帯を中心に減便となります。また、一部の路線では、日中時間帯、夕夜間帯も運転本数の見直し、つまりは、減便が実施されます。
各路線の朝ラッシュ時間帯(最も運転本数が多い1時間)の減便本数と、日中時間帯・夕夜間帯の運転本数見直しの有無は、以下の表のようになります。
- | 朝ラッシュ時 | 日中時間帯 | 夕夜間帯 | ||
---|---|---|---|---|---|
線 区 | 現行 [本/時] | 改正後 [本/時] | 減便率 | 運転本数見直し | 運転本数見直し |
東海道線 | 19 | 17 | 11% | - | 〇 |
横須賀線 | 11 | 10 | 9% | - | 〇 |
山手線(外回り) | 21 | 18 | 14% | 〇 | 〇 |
山手線(内回り) | 22 | 20 | 9% | 〇 | 〇 |
中央線快速 | 30 | 29 | 3% | 〇 | - |
中央・総武線各駅停車 (千葉方面行き) |
23 | 19 | 17% | - | 〇 |
宇都宮線 | 13 | 11 | 15% | - | - |
高崎線 | 14 | 13 | 7% | - |
〇 1本減便 |
京浜東北・根岸線 (南行き) |
25 | 23 | 8% | - | - |
常磐線快速・常磐線 | 19 | 15 | 21% |
〇 毎時1本減便 |
〇 |
常磐線各駅停車 | 23 | 20 | 13% | - | 〇 |
総武線快速 | 19 | 18 | 5% | - | 〇 |
中央・総武線各駅停車 (三鷹方面行き) |
26 | 25 | 4% | - | - |
南武線 | 25 | 24 | 4% | - | - |
横浜線 | 19 | 17 | 11% | - | - |
青梅線 | 17 | 16 | 6% | - | - |
京葉線 | 15 | 13 | 13% |
〇 毎時1本減便 |
- |
朝ラッシュ時間帯は、ほとんどの路線で減便となります。郊外と都心を結ぶ路線だけでなく、山手線、京浜東北線などの都心部を走る路線も減便となります。
最も運転本数の多い時間帯で、各路線とも1~3本程度の減便となります。常磐線は4本(約2割減)、中央・総武線各駅停車(千葉方面行き)も4本(約2割減)と、減便が多くなっています。
また、日中時間帯、夕夜間帯も、一部の路線で減便となります。
常磐線(普通列車)は日中時間帯におおむね毎時1本の減便となり、現在の毎時4本から毎時3本へと減便となります。運転取りやめとなるのは、毎時1本の特別快速列車です。その結果、日中時間帯は普通列車のみの運転となります。
京葉線は、東京~海浜幕張間で、日中時間帯の快速列車1本の運転を取りやめます。
そして、なんといっても、注目は山手線です。朝の最繁時間帯の2~3本の減便に加えて、日中時間帯、夕夜間帯と、すべての時間帯で減便となります。もともと運転本数が多い路線とはいえ、東京を代表する路線での減便は、このコロナ禍を象徴しています。
朝・夜間帯の通勤特急でダイヤ変更・運行体系の見直しを実施
首都圏を走る通勤特急では、ダイヤの変更や運行体系の見直しが行われます。
特急「湘南」は、一部運転区間を延長、大崎駅に停車へ
東海道本線を走る通勤特急「湘南」は、以下のように変更になります。
- 朝時間帯(上り)
- 「湘南6号」を品川~東京間で延長し、東京行きに変更
- 新宿行きの「湘南22号」「湘南24号」「湘南26号」を大崎駅に停車
- 夜時間帯(下り)
- 新宿駅18時25分発(小田原行き)の「湘南21号」を新設
- 現行の新宿駅21時30分発の「湘南23号」は運転取りやめ
- 新宿発の「湘南21号」「湘南23号」を大崎駅に停車
運転本数に変更はありませんが、朝の上りで唯一の品川止まりだった「湘南6号」が東京行きに変更になります。これで、上り「湘南」は、すべて東京駅または新宿行きとなります。
一方、夜間の下りについては、現行の新宿駅発の2本のうち、21時30分発の「湘南」の運転を取りやめ、18時25分発の「湘南」を新設します。運転本数は変わりませんが、少し早い時間帯にシフトすることになります。
また、新宿発着の「湘南」すべてが、新たに大崎駅に停車することになります。
高崎線「スワローあかぎ」は、夜間下り2本を臨時化へ
高崎線の通勤特急「スワローあかぎ」にも変化があります。
- | 改正前 | 改正後 | ||
---|---|---|---|---|
列車名 | 始発 | 終着 | 始発 | 終着 |
スワローあかぎ2号 | 熊谷 06:06発 | 上野 07:05着 | 本庄 05:50発 | 上野 07:05着 |
スワローあかぎ4号 | 高崎 07:40発 | 新宿 09:11着 | 高崎 05:52発 | 上野 07:37着 |
スワローあかぎ6号 | 高崎 08:10発 | 上野 09:39着 | 高崎 07:40発 | 新宿 09:07着 |
スワローあかぎ8号 | 高崎 08:50発 | 上野 10:13着 | 高崎 08:11発 | 上野 09:39着 |
朝の上り「スワローあかぎ」は、現行の8号が運転取りやめとなり、新たに高崎駅5時52分発の「スワローあかぎ」が新設されます。全体的に早い時間帯へシフトすることになります。また、熊谷始発の「スワローあかぎ2号」は、本庄始発となり、運転区間が延長されます。
一方、夜間の下り「スワローあかぎ」については、以下のように変更になります。
- | 改正前 | 改正後 | |
---|---|---|---|
運転区間 | 定期列車 | 定期列車 | 臨時列車 |
上野→本庄 |
3本 1・3・7号 |
3本 1・3・7号 |
- |
上野→高崎 |
3本 5・9・11・13号 |
2本 5・9号 |
2本 11・13号 |
上野発高崎行きの下り2本が臨時列車に格下げされます。スワローあかぎ11号は上野21時発、スワローあかぎ13号は上野22時発と、夜間の遅い時間帯の列車です。利用が多く見込まれる日に臨時列車として運転するとのことです。
中央線「はちおうじ」は下り1本減便、1本臨時化へ
中央線の東京~八王子を走る通勤特急「はちおうじ」と、中央・青梅線の東京~青梅を走る「おうめ」も、運行体系やダイヤが変更されます。ダイヤ改正前後で、運転本数は以下の表のように変更になります。
- | - | 改正前 | 改正後 | 改正後 |
---|---|---|---|---|
列車 | 行先 | 定期列車 | 定期列車 | 臨時列車 |
はちおうじ |
東京行き (朝の上り) |
2本 2・4号 |
2本 2・4号 |
- |
八王子行き (夜の下り) |
5本 1・3・5・7・9号 |
3本(▲2本) 1・3・5号 |
1本 7号 |
|
おうめ |
東京行き (朝の上り) |
1本 2号 |
1本 2号 |
- |
青梅行き (夜の下り) |
2本 1・3号 |
2本 1・3号 |
- |
現在、夜の下り「はちおうじ」は5本が運転されていますが、最も遅い時間に運転されている「はちおうじ9号」(東京駅23時ちょうど発)が運転取り止め、その1本前の「はちおうじ7号」は臨時列車に格下げされます。これにより、「はちおうじ」の下り定期列車は、現在の5本から3本へと縮小されます。
一方、「おうめ」については、もともと運転本数が少ないこともあり、大きな変化はありません。下り「おうめ3号」の東京駅の発車時刻が15分繰り上げられ、現行の22時30分から22時15分に変更になります。
首都圏の通勤特急の運行体系やダイヤの見直しでは、主に夜の遅い時間帯の減便や、早い時間帯へのシフトが多くなっています。昨年のダイヤ改正では、深夜帯の利用が著しく減少していることから、終電の繰り上げを実施しました。帰宅時間帯が全般的に早まっている傾向を反映したものでしょう。今回の通勤特急の見直しも、同じ理由であると思われます。
宇都宮線、常磐線で普通列車グリーン車の営業区間・営業列車が縮小!
首都圏の普通列車に連結されているグリーン車ですが、今回のダイヤ改正で、一部の路線での営業区間の短縮、営業列車の削減が実施されます。主なものとしては、以下の2つがあります。
- 宇都宮線 宇都宮~黒磯間での普通列車グリーン車の営業終了
- 常磐線 日中時間帯の土浦以北での普通列車グリーン車の影響縮小
宇都宮線 宇都宮~黒磯間でグリーン車の営業を終了
宇都宮線では、現在、本数は少ないものの、宇都宮~黒磯間でもグリーン車を連結した列車が走っています。朝の上り列車数本と、夜の下り列車1本に、グリーン車が連結されています。
グリーン車を連結した列車は、宇都宮以南と直通する10両編成または15両編成の列車です。
ところが、今回のダイヤ改正で、宇都宮以北の普通列車は、新型車両のE131系に統一されます。E131系にはグリーン車が連結されませんので、結果として、宇都宮~黒磯間での普通列車グリーン車の営業が終了となるわけです。
常磐線 土浦以北で日中時間帯のグリーン車連結列車が縮小
現在、常磐線では、品川・上野~水戸・勝田間で普通列車を運転しています。全区間乗ると2時間ほどと、なかなかの長距離普通列車です。土浦以南は15両編成、土浦以北は10両編成で運転される列車が多く、土浦駅で分割・連結を実施しています。
ところが、今回のダイヤ改正で、日中時間帯に限りますが、土浦駅で系統分離されることになります。ダイヤ改正後の日中時間帯は、以下の2パターンでの運転となります。
- 土浦駅で系統分離(乗り換え)
- 品川・上野~土浦: 10両編成で運転
- 土浦~水戸・勝田: 5両編成で運転
- 土浦駅で切り離し(土浦以北は5両で運転)
- 品川・上野~土浦: 15両編成で運転
- 土浦~水戸・勝田: 5両編成で運転
ダイヤ改正後は、土浦駅で乗り換えとなるか、直通運転する列車についても、土浦以北へ直通するのはグリーン車が連結されていない5両編成の列車となります。
(出典)2022年3月ダイヤ改正について(JR東日本水戸支社 2021年12月17日 PDF)
これにより、日中時間帯の土浦以北の普通列車グリーン車の営業が大幅に縮小されます。
常磐線には、特急「ひたち」「ときわ」が30分間隔で運転されています。品川・上野~水戸の特急料金は1,580円、えきねっとチケットレスを使えば1,480円です。
一方、普通列車グリーン車の平日料金は1,000円(51km以上)です。特急なら1時間で上野~水戸間を走破しますが、普通列車は2時間かかります。500円ほどの違いで、所要時間が1時間も違いますので、長距離を普通列車のグリーン車で移動する乗客は少なく、日中時間帯はいつもガラガラでした。
このようなグリーン車の利用状況と、土浦以北の乗客数が少ないことから、5両編成での運転としたのでしょう。
以上、「【2022年 JR東日本(首都圏)ダイヤ改正】朝夕ラッシュ時間帯に大幅減便を実施! 普通列車グリーン車サービスは縮小へ!」でした。山手線をはじめとする首都圏通勤路線の朝ラッシュ時間帯の減便は、コロナ禍を象徴するようです。
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