JR東日本は、山形新幹線に新型車両「E8系」を投入すると発表しました。最高速度は300km/hとなり、所要時間の短縮も期待できそうです。また、福島駅の新幹線と在来線を結ぶアプローチ線の新設も決まり、繁忙期にはかなり混雑する山形新幹線「つばさ」の増発も期待できそうです。
山形新幹線に新型車両「E8系」を投入、2024年に営業運転開始へ!
JR東日本は、山形新幹線に新型車両「E8系」を投入すると発表しました。
概要は以下の通りです。
- E8系電車(7両編成)を17編成(119両)新造
- 2024年春から順次営業運転を開始
- 2022年9月以降に落成、2026年春までに全17編成を落成予定
- 最高速度は300km/h
- 宇都宮~福島間でE5系と併結して運転
詳しくは、JR東日本のニュースリリースをご覧ください。
山形新幹線「E8系」、カラーリングはE3系を踏襲、先頭長はE3系とE6系の中間
(出典)山形新幹線をより便利に快適にします(JR東日本ニュースリリース 2020年3月3日 PDF)
E8系の先頭車の外観は、秋田新幹線「E6系」のノーズを少し短くしたような形状になっています。
カラーリングは、これまでのE3系を踏襲したようで、
- 車体上部: 山形県の県鳥「おしどり」の飾り羽根をモチーフにした「おしどりパープル」
- 車体の帯: 山形県の県花「紅花」の生花の「紅花イエロー」
- 車体側面: 蔵王の雪の色「蔵王ビアンコ」
の3つの色は、E3系「つばさ」にも使われていました。
ただ、E3系「つばさ」のカラーリングに比べると、E8系のほうが配色がシンプルになっています。
また、先頭車のノーズの長さ(先頭長)は、以下のようになっています。
形式 | 先頭長 | 最高速度 |
---|---|---|
E8系 | 9m | 300km/h |
E3系 | 6m | 275km/h |
E6系 | 13m | 320km/h |
先頭長は、現行のE3系「つばさ」と、E6系「こまち」の中間の9メートル。E6系に近い形状ながら、ちょっとずんぐりとして見えるのは、この先頭長の違いによるものでしょう。
先頭長の違いは、そのまま最高速度の違いになります。高速で走る際の騒音を小さくするために、最高速度を上げるためには、先頭長を長くする必要があるのですね。
ちなみに、最高速度360km/hでの運転を視野に入れて開発された試験車両「ALFA-X」の先頭長は、22メートルと16メートルです。(両端で先頭車の形状が異なる)
(出典)山形新幹線をより便利に快適にします(JR東日本ニュースリリース 2020年3月3日 PDF)
一方、インテリアのイメージも公開されています。
グリーン車は「最上川と月山」をテーマにしたデザインで、針葉樹林の月山と、最上川の水面を再現した緑色をベースにした、落ち着いた色合いのシートになっています。
普通車は「最上川と紅花」をテーマにしたデザインを採用し、明るい紅花色のシートになっています。
「E8系」の最高速度は300km/h! 運転区間・停車駅と定員のバランスを考慮
E8系の最高速度は、新幹線区間では300km/h、在来線区間では130km/hとなります。在来線区間の最高速度はこれまでどおりですが、新幹線区間では、E3系の275km/hから25km/h向上しています。
東北新幹線では、E5系「はやぶさ」とE6系「こまち」が最高速度320km/hで運転をしています。
今回、E8系の最高速度を320km/hとしなかったのは、最高速度で走れる区間が短いことや、停車駅などを考慮したためでしょう。
山形新幹線は、東京~福島間で東北新幹線を走りますが、東北新幹線の最高速度は区間によって以下のようになっています。
- 東京~大宮: 110km/h
- 大宮~宇都宮: 275km/h
- 宇都宮~盛岡: 320km/h
- 盛岡~新青森: 260km/h
山形新幹線「つばさ」が走るのは、宇都宮から約150km先の福島まで。これまでの「つばさ」の停車駅と同じだとすると、大半の列車が、宇都宮と郡山にも停車します。
つまり、最高速度で走れる区間が約150kmしかないうえに、その間に停車駅もあるため、最高速度を320km/hにしても、あまり所要時間は変わらないということでしょう。
一方で、前述のように、最高速度を300km/hとすることで、先頭長を、同じ新在直通新幹線車両のE6系に比べて4メートル短くし、その分、先頭車の定員を確保したのでしょう。
最高速度で走れる運転区間や停車駅と、定員のバランスを考慮した結果、最高速度を300km/hにしたのではないかと考えられます。
「E8系」を現行E3系「つばさ」より2編成多い17編成新造
今回、「E8系」を17編成新造すると発表されました。現在、山形新幹線「つばさ」用のE3系は15編成ありますが、それよりも2編成多くなっています。
2編成多く投入する理由の一つが、定員でしょう。
形式 | 普通席 | グリーン席 |
---|---|---|
E8系 | 329名 | 26名 |
E3系 | 371名 | 23名 |
E6系 | 308名 | 22名 |
※すべて7両編成
E6系よりは定員が多いとはいえ、既存のE3系に比べると、先頭長が長くなった分だけ定員が減っています。普通席・グリーン席あわせて39名も定員が減っています。
1列車の定員が減った分を、増発によって補うために、必要になる編成数が増えるのかもしれません。増発と言っても、定期列車ではなく、繁忙期の臨時列車かもしれませんが。
あとで紹介するように、福島駅の新幹線と在来線を結ぶアプローチを新設することも同時に発表されていますので、これによって、山形新幹線の増発が可能になります。
一方、現在残っているE3系を、全てE8系で置き換えると考えると、現在、東北新幹線で運転されている元こまちのE3系(R編成)2編成も対象になるのかもしれません。この場合には、E8系は、「つばさ」だけでなく、「やまびこ」などでも運用される可能性があります。
福島駅での新幹線~在来線のアプローチ線を新設、「つばさ」増発が可能に!
E8系の新造と同時に発表されたのが、福島駅で新幹線と在来線をつなぐアプローチ線の新設です。
(出典)山形新幹線をより便利に快適にします(JR東日本ニュースリリース 2020年3月3日 PDF)
現在、福島駅には、高架の新幹線と、地平の在来線(奥羽本線)をつなぐ線路(アプローチ線)が1本しかありません。この1本は、東北新幹線福島駅の下りホームにつながっています。
そのため、福島駅には、「つばさ」は、上り下りあわせて同時に1本しか入ることができません。福島駅では、東北新幹線との増結・解結作業があるため、停車時間も長めになります。
この部分がネックになり、山形新幹線「つばさ」の増発が難しかったのです。
今回、福島駅の上りホームにつながるアプローチ線を新設すると発表がありました。これが完成すると、上りと下りの「つばさ」が同時に福島駅に停車することができるため、ダイヤ編成上のネックがなくなり、増発が可能になります。
前述の通り、E8系は、現在のE3系「つばさ」よりも2編成多く製造されることが発表されていますが、このアプローチ線の新設と合わせて考えると、「つばさ」の増発を想定している可能性が高いのではと思います。
以上、『山形新幹線に最高速度300km/hの新型車両「E8系」を投入! 福島駅のアプローチ線新設で「つばさ」増発にも期待!』でした。E8系の運転開始は2024年春。まだだいぶ先ですが、今から楽しみですね。
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