2022年12月下旬、五能線の観光列車「リゾートしらかみ5号」に乗車してきました。五能線といえば日本海の車窓ですが、この時期は、鈍色の空に白波が打ちつける荒々しい冬の日本海を、暖かい車内から楽しむことができます。冬の五能線の車窓とともに、「リゾートしらかみ5号」の乗車記をお届けします。
冬の日本海を眺める五能線「リゾートしらかみ」の旅
五能線の観光列車「リゾートしらかみ」は、秋田県~青森県の日本海側の海岸線に沿って走り、その車窓は日本一とも言われます。夏の青々とした穏やかな日本海も良いですが、冬のどんよりとした雲の下、白波が立つほどに荒れている日本海も良いものです。
今回は、冬の日本海の車窓を眺めに、秋田駅から青森駅まで「リゾートしらかみ5号」に乗車してきましたので、その乗車記をお届けします。
五能線は、2022年8月の豪雨被害により、一部区間で運転を見合わせていましたが、2022年12月23日に全線で運転を再開。その翌日の12月24日には「リゾートしらかみ」も全区間で運転を再開しました。今回訪れたのは「リゾートしらかみ」運転再開翌日の12月25日。五能線の運転再開を祝して、冬の青春18きっぷを利用して乗りに行ったというわけです。
「リゾートしらかみ」の運転日、ダイヤ、車内設備、おすすめの座席、指定席券の予約方法などについては、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
また、「リゾートしらかみ」から眺められる車窓、車内での食事情、沿線の観光スポットについては、以下の記事にまとめています。
ということで、早速、冬の五能線「リゾートしらかみ」の乗車記をご覧ください。
【秋田駅】リゾートしらかみ5号に乗車、乗客は少なく快適な車内!
この日は、自宅から上越新幹線「とき」~羽越本線特急「いなほ」で秋田駅までやってきました。秋田新幹線ではなく、上越新幹線といなほの組み合わせにしたのは、「どこかにビューーン!」で選ばれた駅が新潟駅だったためです。
今回は、JR東日本の新しいサービス「どこかにビューーン!」と青春18きっぷを組み合わせた旅なのです。詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
秋田駅の駅ビルでお昼を食べたあと、車内で飲むビールとおつまみを購入して、「リゾートしらかみ5号」が発車する2番線へ。
ホームの行先案内には「全車指定 快速リゾートしらかみ5号」と表示されています。2022年夏の豪雨被害の影響で、「リゾートしらかみ」は青森~鰺ケ沢間での短縮運転となっていましたが、前日の12月24日から秋田~青森間での運転を再開しました。
「リゾートしらかみ5号」はすでに2番線に停車していましたが、車内清掃の真っ最中。今朝、青森駅から「リゾートしらかみ2号」として秋田駅までやってきて、その折り返しが「リゾートしらかみ5号」になるのです。
車内清掃を見ていると、シートの一つ一つまで、とても丁寧に掃除をされていました。折り返しまでにたっぷりと時間があるというのもありますが、観光列車ということもあって、念入りに清掃が行われているのでしょう。
今回乗車するのは、3編成あるリゾートしらかみ用の車両のうち「青池」編成です。ハイブリッド車両(HB-E300系)の青池編成は2代目。初代は気動車を改造した編成で、現在は2両編成に短縮されて「クルージングトレイン」として活躍していますが、先日、引退が発表されたばかりでした。
初代青池編成は、まだ「リゾートしらかみ」が1編成しかないころから何度も乗車した思い出のある車両です。そのため、青いカラーを引き継いだ2代目も青池編成が一番しっくりきます。
そうこうしているうちに、車内清掃が終わり、乗車できるようになりました。発車時刻の15分前くらいだったと思います。
今回は4号車に乗車。シートピッチが広く快適なリクライニングシートの車両です。運転席の後ろには展望スペースもあります。
日曜日ではありますが乗客は少なく、各車両に数名程度。車内はとても静かで、快適に過ごせそうです。
13時57分、「リゾートしらかみ5号」はゆっくりと秋田駅を発車しました。
【秋田~東能代】雪景色の向こうに寒風山を眺めながら東能代駅へ
早速、秋田駅で購入しておいたビールを開けて乾杯! 外は真冬の寒さですが、暖かい車内でビールを飲みながら車窓を眺める「呑み鉄」は最高ですね。
「リゾートしらかみ」は、秋田駅から東能代駅までは奥羽本線を走ります。この区間、日本海を眺めることはできませんが、車窓の見どころとしては、八郎潟の奥に見える寒風山があります。男鹿半島の付け根にある低い山ですが、干拓地の八郎潟の奥に見えるので、リゾートしらかみの車内からもその形がよくわかります。
森岳駅手前には大きな池が見えます。「角助堤」という沼だそうです。このあたりも積雪は多くはありませんが、それでも雪景色を眺めながらの旅は良いものです。
14時51分、東能代駅に到着です。この駅から進行方向が変わって五能線に入るため、7分ほどの停車時間があります。座席を回転させてからホームに下りてみます。
ホームにある待合室には、リゾートしらかみのくまげら編成を模した待合室があり、その横には「JR五能線 起点駅 0KM 000M」との表示がありました。この東能代駅が五能線の起点駅なのです。
待合室の片隅には、キハ58形の運転台が展示されています。「キハ58 23」は、国鉄時代には各地を転々とし、最後はJR東日本の秋田エリアで急行「よねしろ」として活躍していた車両です。
外はみぞれが降っています。これまで先頭だった4号車は、五能線に入ると最後尾に。すでに赤色の尾灯が点灯していました。
14時58分、「リゾートしらかみ5号」は五能線に向けて発車しました。
【東能代~深浦】荒れる冬の日本海を眺める絶景区間へ!
次の能代駅にも停車し、米代川を渡って「リゾートしらかみ5号」は進んでいきます。次のあきた白神駅を過ぎたあたりから、進行方向左側(西側)の車窓には、日本海が少しずつ見えるようになってきます。
岩館駅では、上り普通列車と行き違いのため4分停車。五能線は単線のため、対向列車との行き違いで停車時間が長い駅が多くあります。
岩館駅のホームにはうっすらと雪が積もっています。日本海がすぐ近くにあり、冬は強風が吹き荒れるため、このあたりはあまり雪が積もりません。それでも気温は低く、風もあるため、とても寒く感じます。
岩館駅の良い雰囲気の駅舎。まだ15時半ですが、駅舎やホームの街灯が点灯していて、すっかり夕方です。
岩館駅を発車すると、列車はいよいよ日本海の海岸線に沿う区間へ。こんな絶景を長時間に渡って楽しむことができます。
夏の穏やかな日本海とは異なり、どんよりとした灰色の雲が重くのしかかる日本海の景色です。風はそれほど強くはありませんが、波が高く、海岸線の奇岩にぶつかって白波が立っています。
高いところから海岸線を見下ろすようなところもあれば、ほぼ同じ高さから眺められるところもあります。複雑に入り組んだ入り江のようなところをいくつも通過していきます。
このような奇岩が立ち並ぶところも多く、延々と続く日本海の車窓を眺めていても飽きることがありません。
列車は、十二湖、ウェスパ椿山と停車していきます。ウェスパ椿山は「黄金崎不老ふ死温泉」の最寄り駅。リゾートしらかみ号の到着にあわせて送迎バスが運行されています。今日も送迎バスが待機していて、下車した2名を乗せていました。
「黄金崎不老ふ死温泉」は海岸に作られた露天風呂からの眺めが素晴らしい温泉。日本海に沈む夕陽も素晴らしいです。以前、リゾートしらかみの旅で日帰りで訪れた時の様子を、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
そろそろ日没の時間なのですが、分厚い雲が西の空にかかっていて、夕陽を拝むことは難しそうです。五能線沿線からは素晴らしい夕陽を眺めることができますが、冬場はお天気が悪いことが多いので、あまり期待しないほうがよさそうです。
16時24分、リゾートしらかみ5号は、深浦駅に到着しました。この駅で19分の停車時間があります。
【深浦~青森】日没後の静かな車内でのんびりとしたひととき
深浦駅で停車時間があるのは、上りの「リゾートしらかみ4号」と行き違いをするためです。こちらの「リゾートしらかみ5号」が先に到着して、あとから到着する「リゾートしらかみ4号」を待つ形になります。
駅から出て、駅前の道路を渡ると、すぐ目の前に日本海が広がります。もう暗くなってきましたが、まだ何とか景色を眺めることができます。
海を眺めていると、突然、あられのようなシャリシャリとしたものが降ってきました。急いで駅舎に戻ります。
16時38分ごろ、リゾートしらかみ4号が到着しました。「橅」編成です。ざっとホームから車内を見てみましたが、リゾートしらかみ4号も閑散としていました。
そういえば、リゾートしらかみ「橅」編成にあった車内の売店「ORAHOカウンター」はもう営業していないのでした。青池編成にもあるセルフレジの売店に変更されてしまいました。
リゾートしらかみ同士が並んでいます。すでに外は暗く、この先、この2つの列車は暗闇の中をそれぞれ青森駅、秋田駅に向けて走っていくのです。
リゾートしらかみ4号が先に発車し、こちらのリゾートしらかみ5号は16時43分に発車しました。
外は暗くなり、車窓も見えなくなってしまったので、2号車の端にあるセルフレジの売店へ。リゾートしらかみの運転再開後、青池編成と橅編成には、セルフレジの販売サービスがスタートしました。
行ってみると、とても狭く、一人しか入れません。商品のラインナップも多くはなく、ソフトドリンクやお茶、お菓子類、それに、グッズ類が少しあるだけでした。アルコール類はないので、乗車前に買っておいた方が良いでしょう。
「スパークリングアップル」(180円)を購入してみました。購入は簡単で、バーコードをかざして、Suicaかクレジットカードでお会計をするだけです。
この「スパークリングアップル」、ノンアルコールですが、とてもおいしかったです。
そうこうしているうちに、列車は次の停車駅、千畳敷駅に到着しました。15分の停車時間があり、駅前の「千畳敷海岸」を見に行くことができます。
……ですが、冬至を過ぎたばかりのこの時期、すでに17時を回っていて、あたりは真っ暗。道路を渡って、千畳敷海岸を見渡せるところまで行ってみましたが、何も見えませんでした。ただ、波の音だけがするのと、たまに波の華が舞ってくるくらいです。
次の鰺ケ沢駅を出ると日本海の海岸線ともお別れなのですが、すでに何も見えないので、車窓の変化もありません(笑)
このあとは、車内でうとうとしたり、読書をしたりして過ごしました。
18時41分、川部駅に到着。この駅で五能線の旅は終わりです。リゾートしらかみ5号は、川部駅で進行方向が変わるため、6分ほどの停車時間があります。
ホームに降りてみましたが、内陸部に来ると雪が増えてきますね。日本海の海岸線沿いではほとんど積もっていなかったのですが。
川部駅からわずか7分の弘前駅で、再びの方向転換のために4分停車。川部~弘前駅間だけ進行方向が変わるのは、リゾートしらかみを弘前駅に停車させるためです。川部駅から弘前駅まで少しだけバックする感じになります。
弘前駅を出発すると、あとは新青森駅に停車するだけ。新青森駅到着は19時27分。なんと、15分の接続で、東京行き最終の「はやぶさ44号」に乗り継ぐことができます。
お隣の県にある秋田駅から延々と5時間以上をかけてここまでやってきましたが、まだ東京まで帰ることができるなんて、本当に新幹線は速いと思います。
19時38分、時刻どおりに終点の青森駅に到着しました。秋田駅から5時間半以上の長旅もここで終了です。
「リゾートしらかみ」には何度も乗車していますが、どの季節、どの列車に乗っても、本当に素晴らしい車窓を眺めることができますね。5時間以上にも及ぶ長旅ですが、飽きることなく過ごすことができました。まさに「乗ること自体が観光」を体現している列車です。
以上、『【リゾートしらかみ 乗車記】鈍色の荒波打ちつける冬の日本海を満喫する五能線「リゾートしらかみ」青池編成の旅!』をお届けしました。何度乗っても素晴らしい体験ができる観光列車「リゾートしらかみ」。北東北へ鉄道旅行や乗り鉄に行く際には、ぜひ乗車してみてください。
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「リゾートしらかみ」の概要、運転日、ダイヤ、車内設備の様子、指定席券の予約方法、おすすめの座席などをまとめた記事です。「リゾートしらかみ」に乗車したいという方は、ぜひご覧ください。
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