宇都宮駅と日光駅を結ぶJR日光線。世界遺産、日光へのアクセス路線なのですが、どちらかというとマイナーな路線という印象です。そんな日光線を走る観光客向けの列車「いろは」に乗車してきましたので、乗車記をお届けします。
JR日光線とは?
JR日光線は、宇都宮駅と日光駅を結ぶ全長40.7kmのJR東日本の路線です。全線が単線です。
栃木県の中央付近にある宇都宮駅から、北西方向へ延び、同県西部の日光市へと至る路線です。
日光といえば、世界遺産「日光の社寺」に登録されている日光東照宮、二荒山神社、輪王寺をはじめ、これらの社寺を取り囲むように点在する遺跡群などがある、日本でも有数の観光地です。
とはいえ、日光へ旅行する際に、JR日光線を利用される方は多くないでしょう。都心から日光へのアクセスとしては、東武鉄道の特急「スペーシアけごん」「リバティけごん」(浅草~東武日光)や、JR~東武線直通の特急「日光」(新宿~東武日光)が有名です。
一方、JR日光線に乗るとわかりますが、外国からの観光客は、日光線を利用します。新幹線を含むJR全線に格安で乗れる「JAPAN RAIL PASS」を利用して、宇都宮まで東北新幹線で、宇都宮から日光線に乗り換えて日光へアクセスすれば、追加出費がかからないのですね。
2022年3月、日光線に新型車両投入で「いろは」は定期運行終了へ
JR東日本は、東北本線の小山~宇都宮~黒磯や、日光線に、新型の電車「E131系」を投入します。これにより、これまで日光線などで使われてきた205系電車を置き換える計画になっています。
この置き換えは、205系電車を改造して作られた「いろは」も対象となっており、2022年3月12日のダイヤ改正の前日、3月11日で定期列車としては運行終了となる予定です。
ダイヤ改正のニュースリリースにも、以下のように記載されています。
宇都宮線 宇都宮~黒磯間と日光線は、全ての車両がE131系となります。
※現行使用している205系(いろは車両含む)は定期列車としての運転を終了します。
(出典)2022年3月ダイヤ改正について(JR東日本大宮支社 2021年12月17日 PDF)
定期運行終了後、3月26日には、団体臨時列車「さよなら いろは日光号」として、大宮~日光間を走行します。大宮駅を午前8時12分に出発、午前11時ごろに日光駅に到着します。日光駅貴賓室見学と、日光東照宮の特別祈祷がセットになったツアーとして発売され、大人15,500円です。
詳しくは、びゅうトラベルサービスの「日本の旅、鉄道の旅」をご覧ください。
日光線「いろは」の運転日・ダイヤ(2021年3月改正ダイヤ)
そんな日光線に、2018年に登場したのが観光風列車「いろは」です。
「いろは」は、日光の名所の一つ「いろは坂」と、「物事のいろは」を掛け合わせて命名されたそうです。
観光列車ではなく「観光風列車」としたのは、観光客だけが対象の列車ではなく、日光線の普通列車として、沿線の方々の利用も多いためです。
「いろは」のダイヤは以下の通りです。
下り(宇都宮→日光方面)
行先 | 鹿沼 | 鹿沼 | 日光 | 日光 | 日光 | 日光 | 日光 | 鹿沼 | 鹿沼 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
宇都宮 | 7:16発 | 7:59発 | 8:40発 | 10:25発 | 12:20発 | 14:30発 | 16:24発 | 18:03発 | 18:45発 |
鶴田 | 7:22発 | 8:06発 | 8:46発 | 10:31発 | 12:26発 | 14:35発 | 16:30発 | 18:08発 | 18:51発 |
鹿沼 | 7:31着 | 8:14着 | 8:56発 | 10:40発 | 12:36発 | 14:45発 | 16:40発 | 18:17着 | 18:59着 |
文挟 | - | - | 9:03発 | 10:48発 | 12:44発 | 14:53発 | 16:47発 | - | - |
下野大沢 | - | - | 9:10発 | 10:55発 | 12:50発 | 14:59発 | 16:54発 | - | - |
今市 | - | - | 9:16発 | 11:01発 | 12:56発 | 15:06発 | 17:07発 | - | - |
日光 | - | - | 9:24着 | 11:09着 | 13:03着 | 15:14着 | 17:14着 | - | - |
上り(日光方面→宇都宮)
行先 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 | 宇都宮 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日光 | - | - | 9:38発 | 11:24発 | 13:10発 | 15:26発 | 17:18発 | - | - |
今市 | - | - | 9:45発 | 11:31発 | 13:17発 | 15:33発 | 17:24発 | - | - |
下野大沢 | - | - | 9:51発 | 11:37発 | 13:23発 | 15:39発 | 17:30発 | - | - |
文挟 | - | - | 9:58発 | 11:43発 | 13:29発 | 15:45発 | 17:37発 | - | - |
鹿沼 | 7:36発 | 8:20発 | 10:06発 | 11:51発 | 13:36発 | 15:53発 | 17:44発 | 18:22発 | 19:03発 |
鶴田 | 7:46発 | 8:29発 | 10:14発 | 12:00発 | 13:45発 | 16:01発 | 17:53発 | 18:31発 | 19:12発 |
宇都宮 | 7:52着 | 8:35着 | 10:20着 | 12:05着 | 13:51着 | 16:07着 | 17:58着 | 18:37着 | 19:17着 |
「いろは」は、基本的に日光線の他の普通列車と同じように運用されていて、日中時間帯に、宇都宮~日光間で1日5往復運転されています。朝晩には鹿沼発着の区間運転の列車にも充当されています。日光へアクセスするときに「いろは」に乗りたいのであれば、日中時間帯の5本のいずれかに乗車するようにしましょう。
ほぼ毎日運転されますが、たまに運転されない日があります。乗車する予定の日に「いろは」が運転されるのかを事前に調べておいたほうが良いでしょう。
「いろは」の運転日は、JR東日本のWebサイトをご確認ください。
日光線を走る観光風列車「いろは」の車内の様子
それでは、日光線「いろは」の車内の様子を見ていきましょう。
「いろは」は、かつで、都心を走っていた通勤電車「205系」を改造してつくられた車両です。
4両編成の電車で、普通列車として運転されていますので、乗車券(きっぷ)さえあれば乗車できます。もちろん、青春18きっぷなど、日光線がフリーエリアに含まれるフリーきっぷでも乗車できます。
車内は木目調のデザインを多用したレトロな雰囲気に仕上がっています。車両の端がロングシート、それ以外は片側に2人用、もう片側には4人用のボックスシートが並びます。JR東日本のローカル線でよく見られる構成です。
各車両には荷物置き場が設置されています。外国からの旅行者が多く利用することを考慮したものでしょう。実際、今回乗車した「いろは」には、大きなスーツケースを持った外国の方が多く乗車していました。
シートのモケットは落ち着いた色合いの生地に、キスゲの花模様をあしらったものです。木目調の壁や床のデザインとあいまって、統一感のあるインテリアを演出しています。
車内ではWiFiが使えるらしく、こんなステッカーが貼られていました。実際に試していないのでわかりませんが、特に外国からの観光客にはありがたいサービスですね。
乗車時間は40分ほどと短めですが、日光駅に到着してからの交通機関や観光名所へのアクセスなど、調べたいことはたくさんありそうですし。
ドア上の案内表示には、小さめの液晶タイプのものが新設されていました。205系には、もともとこのようなものは設置されていなかったと思いますが、さすがに観光客向けの列車では必要ですね。
205系は、もともと片側4扉の電車ですが、「いろは」では、車両中央よりの2つの扉が埋められていて、前後2か所のみの2扉となっています。その分、ボックスシートを設置するスペースが確保されています。
日光線「いろは」乗車記
それでは、日光線「いろは」の乗車記をお届けします。
2019年8月上旬の平日、宇都宮08:40発の「いろは」に乗車しました。時間帯的には、日光の観光に使いやすい列車だと思います。
宇都宮駅5番線に「いろは」が入線
日光線は、宇都宮駅の5番線ホームから発車します。
5番線のホームは、宇都宮駅の在来線ホームの中では最も西側。ホームの柱や壁などがダークブラウンに塗装されていたり、駅名標も同じデザインに統一されていたりして、レトロな雰囲気になっています。
鹿沼始発の宇都宮行きとして「いろは」が入線してきました。入線時刻は08時35分。発車までは5分しかありません。
車内は座席が半分近く埋まるくらいの乗車率。一番前の車両(階段から最も遠い側)に乗車しましたが、観光客らしき乗客の姿は多くありません。
ホームに降りた時にわかったのですが、階段の近くにベンチが多くあり、そのあたりに、大きなスーツケースやバックパックを持った外国の方々が多く待っていました。
写真を撮っていると、すぐに発車時刻になりました。
のどかな田園風景を西へ
08時40分に宇都宮を出発。宇都宮線の線路と並行して南側へ向けて出発していきます。しばらく宇都宮線と並行して進んだあと、西側へ分かれていきます。
08時46分、鶴田に到着。まだ宇都宮の市街地や住宅地が続いているエリアで、早くも下車する人がそれなりにいました。
鶴田を出ると、宇都宮の市街地を抜け、車窓は一気に田園風景へ。緑の田んぼが広がる夏の田園風景が続きます。
次の鹿沼は比較的大きな町。とはいえ、市の中心部は、東武日光線の新鹿沼駅のほうが近いようで、JR日光線の鹿沼駅の周囲は、どちらかというと住宅地です。
関東平野を抜け、日光の山並みを眺める
鹿沼市は関東平野の端っこ。この先は、低いながらも車窓に山が見えてきます。
文挾(ふばさみ)駅で、宇都宮行きの列車と行き違い。あちらは普通のロングシートの205系電車でした。
日光線の駅は、この文挾駅の駅名標のような、レトロ調の駅名標に統一されています。宇都宮駅や日光駅ののホームも同じ色調になっていて、「いろは」の内装も含めて、日光線全体で統一したカラーリングとデザインを採用しているようです。
路線としての印象が深まるので、なかなか良い取り組みだと思います。
遠くに日光の山々が見えてきました。左側は皇海山(すかいさん)、右側の山並みが男体山などでしょうか。それにしても、長閑な夏の田園風景です。
終点、日光に到着
日光の一つ手前の今市駅で大半の乗客が下車。ガラガラになった車内からは、男体山などの日光の山並みが大きくみえるようになってきました。
09時23分、終点の日光に到着。駅舎に近い1番線に到着しました。
日光駅のホームも、宇都宮駅の5番線ホームと同様、いや、それ以上に、レトロ調にデザインされています。
日光駅の駅舎は、大正時代に立てられた洋館風の駅舎です。まさに、大正ロマン! 東武線で日光へアクセスしたとしても、JR日光駅の駅舎だけは見に来る価値があります。
日光駅の駅舎のエントランスです。天井には東照宮にもある鳴龍が!
JR日光駅前の様子です。東武日光駅の駅前と比べるとこじんまりとしていますが、駅前には小さなバスターミナルがあり、「いろは」から下車した観光客が、東照宮や中禅寺湖などへ向かうバスを待っています。
駅前の道路の向こうには、男体山や女峰山といった日光の山々がよく見えていました。
日光線「いろは」乗車の日帰り周遊ルート
JR日光線は日光駅が終着駅で、そこから先の乗り換え路線は、東武日光線以外にはありません。
もちろん、日光は世界的な観光地ですので、観光を楽しむのが良いでしょう。そのうえで、同じ日光線を戻るのではなく、別のルートを経由して帰宅するのがおすすめです。
おすすめは、以下の記事で紹介している、「日光市営バス 足尾線」を利用して、わたらせ渓谷鐵道の間藤駅や足尾駅などに出るルートです。帰路は、渡良瀬川の渓谷美が美しいわたらせ渓谷鐵道に乗ってみましょう。
「日光市営バス 足尾線」については、以下の記事もご覧ください。途中、日光の市街地を通りますので、観光後に、途中のバス停から乗車してもよいでしょう。
日光線「いろは」で日光へ行こう!
都心から日光へのアクセスは、前述のとおり、東武鉄道の特急「スペーシアけごん」「リバティけごん」や、JR~東武直通の特急「日光」などがメジャーですが、今回ご紹介した日光線「いろは」を利用してのアクセスも趣があります。
都心からであれば、宇都宮までは東北新幹線を利用してもいいですし、宇都宮線の普通列車を利用してもよいでしょう。宇都宮線の普通列車にはグリーン車が連結されていますので、普通列車グリーン車と日光線「いろは」を乗り継げば、立派なアクセスルートのできあがりです。
以上、『【日光線「いろは」乗車記】 木目調のレトロ風インテリアが特徴的! ボックスシートの205系電車で日光へ行こう!』でした。JR日光線で日光へアクセスする際には、時間があえば、ぜひ乗ってみてください。ロングシートの電車に比べると、観光気分が高まりますし、ボックスシートは快適ですよ。
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当ブログで紹介している、各地の観光列車やSL列車、風光明媚な路線の乗車記の目次ページです。車窓を中心に紹介しています。ぜひご覧ください。
コメント
ひさ (id:kzlife)さん
こんにちは!
いろは乗られたんですね!
乗ってみたいとは思っていましたが、観光列車とは言え、通勤通学常用利用が多いのですね。
確かに日光行くなら東武特急に乗ってしまいますね…。
ハヤトさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。
「いろは」は、他の205系と共通的に運用されているみたいですね。ダイヤは公開されているので、運用は固定されているみたいですが。
距離も短いので、他の観光列車に比べるとおとなしめですが、あの205系がこうなるのか、という目で見ると興味深いです(笑)