山梨県の小淵沢駅と長野県の小諸駅を結ぶ小海線。標高1,300メートルを超える高原地帯を走る鉄道です。急坂を登る山岳鉄道区間、八ヶ岳を望む高原区間、千曲川に沿って進む川沿いの区間、それに、浅間山を望む佐久平と、変化に富んだ車窓が特徴のローカル線です。この記事では、高原の魅力たっぷりの小海線の車窓を詳しく紹介します。
小海線とは?
小海線は、山梨県の小淵沢駅と長野県の小諸駅を結ぶJR東日本の路線です。全長78.9kmで31の駅があります。全線が単線・非電化で、1~2両の気動車が走るローカル線です。
小海線の一番の特徴は、標高の高いところを走っていること。全国のJR線の駅の標高トップ10のうち、実に9駅が小海線の駅です。標高トップは野辺山駅の1,345メートル。その野辺山駅の近くに、JR線の最高地点(標高1,375メートル)があります。
小海線を走る列車は?
小海線には特急列車は運転されていません。全駅に停車する普通列車と、快速として運転される観光列車「HIGH RAIL 1375」が運転されています。
普通列車には、主にキハ110系という気動車が使われています。東北や甲信越の非電化区間でよく見るタイプの車両ですね。
小海線にしかない車両としては、ハイブリッド式気動車「キハE200系」があります。今では、JR東日本の各地の観光列車や一部路線で多くのハイブリット式の気動車が運転されていますが、小海線の「キハE200系」は、その先駆けとなる車両です。2007年に世界で初めて営業用に投入されたハイブリッド式気動車です。
そして、2017年にデビューした観光列車「HIGH RAIL 1375」が運転されています。土休日を中心に、春~秋は小海線全線を1.5往復、秋~冬は1往復運転されています。車両はキハ110系+キハ100系を改造した2両編成です。
「HIGH RAIL 1375」については、乗車記を含めて、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
小海線へのアクセスは?
小海線に乗車するには、主に三つのルートがあります。
- 中央本線で小淵沢駅へ(新宿から特急あずさで2時間弱)
- 北陸新幹線で佐久平駅へ(東京から北陸新幹線で1時間10分)
- しなの鉄道で小諸駅へ(長野から約1時間)
首都圏からのアクセスで最も一般的なのは、中央本線で小淵沢駅へ出ることでしょう。特急「あずさ」も多くの列車が小淵沢駅に停車します。
北陸新幹線で佐久平駅へ出て、そこから小海線に乗車することも可能です。首都圏発着の場合、新宿(中央本線)小淵沢(小海線)佐久平(北陸新幹線)東京、のような周遊ルートを作ることができます。
また、長野方面からは、しなの鉄道線で小諸駅へアクセスすることもできます。
【小海線 乗車記】各区間の車窓を詳しく紹介!
それでは、小海線に乗車してみましょう。各区間の車窓を中心に、混雑の様子なども交えてご紹介します。
たった30分で500メートルも登る山岳路線区間!(小淵沢~野辺山)
小淵沢駅では、小海線は中央本線とは別のホーム(4番線または5番線)から発車します。中央本線で小淵沢までやってきたら、跨線橋を渡って、小海線のホームへ移動しましょう。
小淵沢駅を出発すると、中央本線の下り方面に少し進み、その後、小海線は右側へとカーブしていきます。地図で見ると、この区間は、ヘアピンカーブのように180度カーブしています。
実際に乗車してみるとわかりますが、いきなりエンジン全開で急坂を登り始めます。そう、この区間は標高を稼ぐためにぐるっとカーブしているのですね。いわゆるループ線まではいきませんが、似たようなものですね。
この小淵沢~甲斐小泉間の急坂は、北側には八ヶ岳がきれいに見える区間でもあります。八ヶ岳の山ろくを走る小海線を象徴する車窓の一つです。
ぐんぐんと坂を登り、甲斐小泉、甲斐大泉と停車していきます。このあたりは森の中を走るため、眺望はあまりききません。
甲斐大泉~清里間には、小海線の車窓からも見える「吐竜の滝」があります。川俣川渓谷に、小さな滝が何段にもなって落ちていく様子を、一瞬ですが、見ることができます。
小淵沢~野辺山間は、観光客が多い区間なので、夏を中心に混雑します。もし座れなかったら、運転席の後ろで見ていると、かなりの急坂を登っていることがわかって面白いですよ。
小淵沢から約25分で清里に到着します。以前ほどではないですが、特に夏の観光シーズンには、観光客が多く下車します。
そして、清里を出ると、この区間の、というより、小海線のハイライトへ。しばらくエンジン音を響かせて坂を登っていきますが、ふとエンジン音がしなくなり、視界がパッと開けて、左側の車窓には八ヶ岳がどーんと見えてきます。木々で視界が遮られていた区間から、急に高原が広がるこの瞬間が、小海線の車窓のハイライトといって良いでしょう。
車窓の左側を見ていると、踏切の近くに「JR鉄道最高地点」と書かれた大きな碑が立っているのが見えます。この踏切がJR線の最高地点(標高1,375メートル)です。
記事で紹介している方向と逆向きですが、野辺山駅近くからの八ヶ岳の車窓と、JR線最高地点の動画です。「HIGH RAIL 2号」に乗車しているときに撮影しました。踏切を通過すると、すぐにJR線最高地点を示す標柱が建っています。
小淵沢駅の標高が886メートルですから、わずか30分で500メートルも登ってきたことがわかります。ケーブルカーや登山鉄道以外で、これだけの標高を一気に登ってしまう鉄道は、日本では小海線だけでしょう。
小淵沢から30分強で野辺山駅に到着です。ここでも、観光客を中心に大勢の下車があります。
高原路線から千曲川に沿う川の路線へ(野辺山~中込)
野辺山から先は、観光客の数がぐっと減ってしまい、車内が閑散としてしまいます。
野辺山から次の信濃川上までは約10分。この間に、標高で200メートル以上も下っていきます。
野辺山を出ると、周囲を山に囲まれた盆地のような地形の中を進みます。平地には高原野菜の畑が広がり、高原列車っぽい風景が続きます。
冬には、雪をたたえた山々を眺めることができます。野辺山高原は、冬季の気温はかなり低いものの、それほど豪雪地帯ではありませんので、雪で小海線が不通になるということは、あまりありません。
夏と冬、季節を変えて小海線に乗車してみて、車窓の違いを体感してみるのも楽しいと思います。
野辺山と信濃川上の間、東へ向かっていた列車が、カーブを通過して北へ進路を変えるあたりに、かなりの勾配があります。そして、この勾配を下り終えると、小海線は、高原列車から川の路線へと変わります。
車窓の右側には千曲川が見えてきます。千曲川は、新潟県に入ると信濃川と名前を変える川で、ご存知の通り、日本で最も長い川です。このあたりは源流の甲武信ヶ岳に近く、川幅も狭いですね。
このあと、小海線は何度も蛇行する千曲川を渡ります。千曲川が車窓の右へ左へと移動していきます。
佐久海ノ口、海尻、そして小海線の路線名にもなっている小海と、「海」とつく駅名が続きます。日本で最も海から遠いと思われるこのあたりで「海」の文字が使われるのは、八ヶ岳の噴火で川が堰き止められてできた湖沼を「海」と呼んでいたからなんだそうです。
小淵沢から約1時間10分で、小海に到着します。小海町の中心駅で、小海線の拠点の一つでもあります。三角形の時計台が目立つ駅舎があります。
小海から先もしばらくは千曲川とともに進んでいきます。次第に川幅も広くなってきます。
小淵沢から1時間40分ほどで中込に到着。中込駅は小海線の運行の中枢となる小海線営業所があります。佐久市の中心駅にもなっています。
浅間山を眺めながら佐久平を進む(中込~小諸)
中込駅のあたりで千曲川の流れとは別れ、視界が開けたエリアに入ってきます。佐久盆地です。
これまでの車窓とは明らかに違う開放的な景色が広がります。佐久盆地(佐久平)は、北側を浅間山、東側を秩父山地、西側を八ヶ岳連峰に囲まれています。そのため、どちらを見ても山が見えますが、中込~小諸間での見どころは、北側に見える浅間山です。
佐久平駅付近からは、車窓の右側(東側)に浅間山を眺めることができます。このあたりの小海線の線路は高架になっていて、佐久平を一望することができます。
佐久平駅は北陸新幹線との乗換駅。乗客も多く入れ替わります。
その後も、車窓に浅間山を眺めながら北上し、しなの鉄道の線路に合流すると、終点の小諸駅に到着です。
以上、小海線の車窓をご紹介しました。急勾配の山登り区間、八ヶ岳を望む高原区間、千曲川に沿う川沿い区間、そして、浅間山を望む佐久盆地。約2時間の乗車時間で、これだけ車窓の変化が多い路線も珍しいですね。車窓を眺めているだけで飽きない路線です。
小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」の乗車がおすすめ!
小海線に乗車したことがない方、初乗車の方は、観光列車「HIGH RAIL 1375」に乗車してみましょう。
車内は、大きな窓に向いた座席が配置されていて、小海線の美しい車窓を見るのに最適です。
車内にはお菓子や飲み物などを販売するカウンターがあります。また、あらかじめ予約をしておけば、車内でお弁当を受け取れるサービスもあります。
夜間には「HIGH RAIL 星空」も運転されています。野辺山駅での停車時間が長くとられていて、駅前で星空観察会が実施されます。野辺山は周囲を山に囲まれた高原であるため、都市部の明かりが入り込まず、満天の星空を眺めることができます。
「HIGH RAIL 1375」の様子や、乗車方法などは、以下の記事で詳しくまとめています。ぜひご覧ください。
「HIGH RAIL 1375」で運転される三つの列車「HIGH RAIL 1号」「HIGH RAIL 2号」「HIGH RAIL 星空」にすべて乗車し、乗り比べをした記事です。どの列車にしようか迷っている方は、ぜひご覧ください。
小海線沿線の観光地
車窓を眺めるだけでも十分に魅力的な小海線ですが、途中下車して観光してみても良いでしょう。小海線の沿線で、途中下車して観光できるポイントをいくつかご紹介します。
レンタサイクルで高原サイクリング!(野辺山駅)
一番おすすめしたいのは、夏の野辺山駅での途中下車です。前述のとおり、JR線の最高地点のすぐ近く、標高1,300メートルを超える高原地帯にある駅ですので、東京が35℃を超すような猛暑でも、野辺山周辺は27~28℃くらい。爽やかな高原の中を、レンタサイクルでサイクリングをしてみましょう。
おすすめは、野辺山駅前の道路を左へ、小海線の線路に沿って進んでしばらく行ったところにある「JR鉄道最高地点」です。小海線沿いの道路からは、晴れていれば八ヶ岳を見渡すことができます。
線路の向こうにはパラボなアンテナが特徴的な野辺山天文台があります。
小海線の車窓のところでも紹介したJR鉄道最高地点です。近くにお蕎麦屋さんがあるので、ランチに寄るのもおすすめです。
あまり時間がない場合には、駅前の小高い丘にある「銀河公園」を訪れてみましょう。小高くなっているので野辺山駅方向を見渡すことができます。また、銀河公園には、小海線で運転されていた蒸気機関車「C56 96」が展示されています。
野辺山駅から、八ヶ岳まきばラインという道路を北へ向けて3kmほど行くと、「開拓記念碑」があります。このあたりからの八ヶ岳の眺めは最高です!
小諸城址 懐古園(小諸駅)
小海線に乗って終点の小諸駅までやってきたのなら、駅前にある「懐古園」を訪れてみましょう。
周囲の城下町より低いところにお城を構えた珍しい「穴城」として有名です。
小諸城の本丸跡には「懐古神社」があります。廃藩置県後に役割を終えた小諸城を民間が買い取り、祀ったのだそうです。
懐古園の最も奥、水の手展望台からは千曲川を眺めることができます。小諸駅側からは想像できませんが、小諸城は千曲川に切り立った断崖の上に築城されたそうです。この展望台からはそれがよくわかります。
4月中旬頃には、桜が満開になり、懐古園で桜まつりが開催されます。園内には桜の木が多くあり、どこを歩いてもお花見ができます。首都圏からは約2~3週間遅れのお花見を楽しむのもよいと思います。
懐古園を散策したら、すぐ近くにある蕎麦屋「草笛 総本店」での食事がおすすめです。クルミペーストをつゆに溶かして食べる「くるみ蕎麦」が有名な信州蕎麦のお店です。麺のボリュームもたっぷりで、くるみ蕎麦だけでおなかいっぱいになります。
以上、『【小海線 乗車記】 変化に富む車窓が魅力の高原列車! JR最高地点、野辺山での観光もおすすめです!』でした。首都圏からも近く、青春18きっぷでも日帰りが可能な小海線。変化に富んだ車窓で飽きることがありません。ぜひ一度乗車してみてください。
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東京発の青春18きっぷ日帰り旅での小海線ルートの紹介記事です。このルートは絶対おすすめです。特に夏の青春18きっぷでの旅をおすすめします。
当ブログで紹介している観光列車のトップページです。車窓、グルメなどジャンルごとにおすすめの列車を、乗車記とともに紹介しています。
コメント
ひさ(kz_hisa) (id:kzlife)さん
こんにちは!
昼間の小海線の車窓もとてもステキですね!
今度は昼間に訪れてみたいです。
ハヤトさん、コメントありがとうございます!
小海線の車窓、晴れていればすごく良いですよ。
おすすめは、やっぱり夏ですね! 野辺山あたりから見る八ヶ岳は最高です。
ぜひ昼間に乗ってみてください!