横浜(神奈川県)と松本(長野県)を結ぶ臨時特急列車「はまかいじ」。横浜線でコンスタントに運転される唯一の特急列車ですが、185系という古い国鉄時代の特急車両で運転されています。特急「踊り子」にも利用されているこの車両、中央本線の特急「あずさ」「かいじ」として運転されていたE257系に置き換られる可能性があります。185系に乗車できるのもあとわずかかもしれないと思い、長野方面への乗り鉄旅のスタートに「はまかいじ」を選んだのでした。
この記事では、特急「はまかいじ」の乗車レポートをお送りします。車両の編成や車内設備、車窓についても紹介します。
特急「はまかいじ」とは?
特急「はまかいじ」は、横浜~松本間を結ぶ臨時特急列車です。観光シーズンや繁忙期の土曜日・日曜日・祝日を中心にコンスタントに運転されています。運転日には、1日1往復、以下のダイヤで運転されています。
- 特急「はまかいじ」ダイヤ
- 下り: 横浜 07:51発 → 八王子 08:42発 → 甲府 09:59発 → 松本 11:22着
- 上り: 松本 15:21発 → 甲府 16:42発 → 八王子 17:55発 → 横浜 18:41着
- 途中停車駅: 新横浜、町田、橋本、八王子、大月、勝沼ぶどう郷、塩山、山梨市、石和温泉、甲府、韮崎、小淵沢、茅野、上諏訪、下諏訪、岡谷、塩尻
下り列車の場合、横浜から一駅先の東神奈川までは京浜東北線を、そこから横浜線を経由して、八王子で中央本線に入ります。
横浜線内の停車駅は、新横浜、町田、橋本、八王子のみです。中央本線内の停車駅は、八王子~甲府は特急「かいじ」と、甲府~松本は特急「あずさ」と同じです。
停車駅が多いのに加えて、臨時列車のためか、車両の性能差のためか、「あずさ」「かいじ」よりも所要時間が多くかかります。
八王子~甲府 | 甲府~松本 | |
---|---|---|
特急はまかいじ | 1時間17分 | 1時間21分~23分 |
特急あずさ | 1時間 | 1時間17分 |
特急かいじ | 1時間6分 | - |
185系特急形車両で運転
特急「はまかいじ」は、185系という国鉄時代の特急形車両で運転されています。2018年7月現在、特急「踊り子」や、臨時夜行快速「ムーンライトながら」などにも利用されている車両です。
特急「はまかいじ」は6両編成で、指定席と自由席のみです。グリーン車はありません。
- 指定席: 1号車、4~6号車
- 自由席: 2~3号車
※6号車が松本行きの先頭車両、1号車が横浜行きの先頭車両になります
中央本線の特急「あずさ」「かいじ」などが9両~12両編成なのに比べると編成が短いですね。
乗車券と特急券が必要
「はまかいじ」は特急列車ですので、乗車するには、乗車券(定期乗車券も可)と特急券が必要です。
区間 | 運賃(乗車券) | 指定席特急料金 | 合計 |
---|---|---|---|
横浜~八王子 | 720円 | 1,050円 | 1,750円 |
横浜~甲府 | 2,270円 | 1,860円 | 4,130円 |
横浜~松本 | 4,000円 | 2,900円 | 6,900円 |
※指定席特急料金は通常期(繁忙期は+200円、閑散期は-200円)
※自由席特急料金は、指定席特急料金-520円
特急列車ですので、青春18きっぷや北海道&東日本パスでは乗車できません。「週末パス」など、特急券を別途購入すれば特急列車に乗車できるフリーきっぷであれば、乗車券として利用できます。
座席と車窓
特急「はまかいじ」の座席と、車窓から見られる主な景色は以下の通りです。
座席 | 主な車窓 |
---|---|
A席(松本行き進行右側) | 八ヶ岳(小淵沢周辺) 東急 長津田検車区(長津田~成瀬) |
D席(松本行き進行左側) | 甲府盆地(勝沼ぶどう郷) 南アルプス(甲府~小淵沢) 諏訪湖(上諏訪~下諏訪) |
特急「はまかいじ」乗車レポート
7月の海の日の3連休初日(土曜日)に、横浜から松本まで、「はまかいじ」に乗り通してみましたので、その様子をレポートします。
横浜駅 京浜東北線ホームから発車!
「はまかいじ」は、横浜駅の京浜東北線のホームから発車します。土曜日といえども、午前7時台には、だいたい5分間隔で京浜東北線の大宮行きの列車が発着するホームです。
前後のダイヤは、以下のようになっています。
- 07:42 各駅停車 大宮行き
- 07:47 各駅停車 大宮行き
- 07:51 特急 はまかいじ 松本行き
- 07:54 各駅停車 大宮行き
07:47発の各駅停車が発車したあと、すぐに「はまかいじ」は入線してきます。ドアが空いて乗客が乗り込んだら、すぐにベルが鳴って発車、という慌ただしい旅立ちです。始発駅で、これほど慌ただしい特急列車の発車はなかなかないのではないでしょうか。
とはいえ、確保していた席が先頭の6号車でしたので、人混みに混ざって先頭車をスマホで撮影。すぐに乗り込みました。
指定された席につくやいなや、「はまかいじ」は横浜駅を発車しました。が、次の東神奈川駅で停車。時刻表上は停車駅ではありませんが、ここから横浜線に入るための運転停車でしょうか。
横浜駅で京浜東北線のホームから発車するのは、東神奈川から横浜線に入れるルートが京浜東北線経由しかないからでしょう。東海道本線や横須賀線のホームであれば、もう少し列車の発着間隔が空いているのですが、線路の配線上、京浜東北線のホームしかないということなのでしょうね。
横浜線を北上、景色は次第に田園風景へ
東神奈川を出発、京浜急行の子安駅が見えたあたりで、東海道本線の線路と分かれて進路を北西へ。横浜線は、横浜市の中部から北部を、東西に横断するように走っています。
新横浜に停車。それなりの乗車があり、横浜出発時点で半分以上埋まっていた座席が、さらに埋まりました。
新横浜から先は、都市や住宅街の車窓から、田園風景がちらほら見えるようになってきます。
横浜市は、日本で最も人口の多い市で、その人口は370万人を超えます。横浜市だけで四国全体の人口に匹敵するというのだから驚きです。ただ、市域(面積)もそれなりに広いため、北部のほうに行くと、田んぼや畑が広がる地域もかなり残っているのです。横浜線沿線だと、長津田周辺がそんな雰囲気でしょうか。
東急田園都市線の車庫(長津田検車区)を右手に見ながら進みます。町田でも少し乗車があり、横浜から50分ほどで八王子に到着しました。
八王子ではかなり乗車があり、私が乗車した6号車の指定席は8割以上は埋まったようです。八王子からなら、「あずさ」や「かいじ」のほうが早いし快適なのですが、三連休初日の午前中ということもあって、軒並み指定席は売り切れだったようです。やむを得ず(?)、この「はまかいじ」を選択したというところでしょうか。
国鉄型の古い特急列車、設備も時代を感じます
ここらへんで、車内の様子をご紹介します。
6号車の車内です。この写真は甲府を出たあとで撮ったので、だいぶ乗客は減っています。
まあ、普通の特急列車なのですが、前のシートとの幅(シートピッチ)は910mmで、最新の特急列車(960mm~970mm)と比べると狭めです。さらに、前の座席の下が機器で埋まっていて、足を伸ばすことができません。
特急列車とは思えない大きな片開きのドア。185系は、特急列車にも普通列車にも使えるというコンセプトで作られた車両なので、通勤列車として利用するときに乗降時間を短縮するために、ドアを大きくしたのです。
もっとも、最近は、いわゆる通勤列車としては使われていませんけどね。
洗面台も時代を感じる古いものでした。蛇口をひねっている間だけ水が出る形式のものです。
ちなみに、トイレも、洋式トイレに改装されている車両もありますが、和式トイレの車両もありましたね。
この185系、前述のとおり、先が長くない可能性があります。中央本線に投入された新型車両E353系により、不要となった従来の特急車両E257系を、東海道線向けにリニューアルして投入されることが発表されているためです。
185系がどうなるかまでは言及されていませんが、JR東日本の東海道線の特急列車と言ったら、「踊り子」に使われている185系です。おそらく、185系が引退し、E257系に置き換わるのでしょう。
空いた車内で八ヶ岳を眺める
甲府で半分以上の乗客が下車。乗ってくる人は少ないため、車内は一気に空いてきました。
右側の車窓には、八ヶ岳が見えるようになってきました。残念ながら上半分は雲に隠れてしまっていました。
10時29分、小淵沢に到着。小海線のホームに「HIGH RAIL 1号」が停まっているのが見えましたが、10時30分発なので、「はまかいじ」からの乗り継ぎは厳しいでしょう。
すずらんの里のあたりでは、山に囲まれたのどかな集落が見られました。
上諏訪、下諏訪、岡谷と連続で停車。このあたりは、諏訪湖の北岸を回り込むように走るのですが、湖岸から少し離れているため、車窓から諏訪湖を見られるのは、上諏訪~下諏訪間のわずかな間だけです。
ここまでくればあとはラストスパート! 塩尻から篠ノ井線に入ると、10分ちょっとで終点の松本駅に到着したのでした。
松本駅は、他の列車がほとんど停車していない空白の時間帯だったのか、他のホームも含めてほとんど人がいませんでした。ということで、遠慮なく、写真を撮らせてもらったのでした。
臨時列車ですが、コンスタントに運転されているため、専用のヘッドマークも用意されています。「臨時」では味気ないですからね。
特徴的なストライプ塗装。個人的には185系というと、この塗装が一番見慣れていることもあってか、しっくりきます。黄色や赤色のブロック型の塗装もありましたが、現在はすべてこのストライプ塗装になっているようですね。
まとめ: 横浜線から甲府・松本方面へ乗換なしで便利な「はまかいじ」
ということで、横浜から松本まで、3時間半もの長時間乗車でした。中央本線を走る「スーパーあずさ」「あずさ」「かいじ」のE353系の出来が良いため、この「はまかいじ」は速達性・快適性の面でかなり劣ってしまいます。
それでも、横浜線沿線から、甲府や松本方面へ乗り換えなしで行けるメリットは大きいです。ただ、逆に言うとメリットはそれくらいです。
鉄道ファン向けには、数少なくなった国鉄型の車両に長く乗車できるのがメリットでしょうか。
以上、特急「はまかいじ」の乗車レポートをお届けしました。横浜線から乗り換えなしで甲府・松本へ直通する便利な特急列車ですが、鉄道ファンには185系の乗り納めにもおすすめします。
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