中央本線の特急車両E353系は居住性や車内設備等が大きく改善されています。この記事では、新型「あずさ」の乗車記として、座席などの車内設備や、その乗り心地などを中心にお届けします。詳細な座席表や荷物置場の位置、おすすめの座席、どんな車窓が見えるかも掲載していますので、乗車時の参考にしててみてください。
中央本線の特急車両「E353系」とは?
E353系は、中央本線(中央東線)の特急用の車両です。
導入当初(2017年12月)は一部の「スーパーあずさ」に充当されていましたが、2018年3月のダイヤ改正で、全ての「スーパーあずさ」(2019年のダイヤ改正で「あずさ」に統一)がE353系に置き換わりました。その後、「あずさ」「かいじ」に利用されていたE257系との置き換えも進み、2019年3月のダイヤ改正で「あずさ」「かいじ」のすべての特急列車の車両がE353系に置き換わりました。
2025年3月現在では、一部の臨時列車を除いて、中央東線の特急列車(東京・新宿・千葉~甲府・松本・白馬)に乗車すると、基本的にはE353系に乗車することになります。
【2025年ダイヤ改正】「あずさ」の大糸線乗り入れは白馬に短縮、早朝に上り臨時「かいじ」を運転
2025年のダイヤ改正では、中央線特急列車に少し動きがありました。
- 特急「あずさ」の大糸線乗り入れが南小谷から白馬に短縮
これまで1往復の「あずさ」が、松本駅から大糸線に乗り入れ、南小谷駅まで運転されていました。2025年のダイヤ改正では、この乗り入れ区間が白馬駅までに短縮されます。大糸線に乗り入れる列車は、下りが「あずさ5号」(新宿 08:00発 → 白馬 11:40着)、上りが「あずさ38号」(白馬 13:41発 → 新宿 17:25着)となります。
- 夕方以降の下り「あずさ」「かいじ」はすべて東京駅発に変更
夕方以降の特急「あずさ」「かいじ」は、すべて東京駅発に変更となります。具体的には、あずさ 45号・49号・53号・55号、かいじ 47号が新たに東京駅発に変更となります。
- 早朝に上り臨時「かいじ」を運転
主に平日に、甲府発の上り臨時「かいじ」が運転されます。ダイヤは、甲府 05:40発 → 新宿 07:29着 → 東京 07:45着 となっており、午前8時前に東京駅に到着することができます。
- 中央線快速へのグリーン車導入に伴い、特急「はちおうじ」「おうめ」を廃止
2025年のダイヤ改正で、中央線快速列車のグリーン車サービスが正式に開始されました。これに伴い、通勤特急の「はちおうじ」「おうめ」が廃止となります。
中央本線特急列車(E353系)に導入されている「新たな着席サービス」
中央本線の特急「あずさ」「かいじ」では、従来の「指定席」「自由席」という区分が廃止され、「新たな着席サービス」が導入されています。
この「新たな着席サービス」では、すべての普通車の座席が指定できるようになりました。指定を受けていない場合(「座席未指定券」という)、誰も座っていない席に座ることができますが、指定を受けている客が乗ってきた場合には、席を譲る必要があります。
各座席の上にランプが備えられていて、このランプの色で、その座席が空いているのか、人が乗ってくるのかがわかります。
ランプの色 | 意味 | 座席未指定券の利用 |
---|---|---|
赤色 | 空席 | 当面は人が乗ってこないため この座席を利用できる |
黄色 | まもなく指定席 発売済区間 |
まもなく指定席発売済みの区間に 入るため、座席を譲る必要がある |
緑色 | 現在指定席 発売済区間 |
指定席券を持った人が乗っているため この座席を利用できない |
ランプが赤色の座席は、当面は指定席券を持った人が乗ってきません。ですので、座席の指定を受けていない場合には、赤色のランプの座席に座りましょう。
ただし、ずっとその座席の指定席券を持った人が乗ってこないわけではありません。ランプが黄色に変わったら、まもなく指定席券発売済みの区間に入りますので、ランプが赤色の別の座席に移動したほうが良いでしょう。
なお、座席指定券も座席未指定券も、特急料金は同額ですので、早めに座席の指定を受けることをおすすめします。
E353系 特急「あずさ」「かいじ」「富士回遊」の座席表・荷物置場
E353系で運転される中央本線の特急列車は「あずさ」「かいじ」「富士回遊」があります。
各列車の運行区間と両数は以下のとおりです。
列車名 | 運行区間 | 両数 |
---|---|---|
あずさ | 千葉・東京・新宿 ~松本・南小谷 |
12両 9両 ※1 |
かいじ | 東京・新宿~ 甲府・竜王 |
9両 ※1 |
富士回遊 | 千葉・新宿~ 河口湖 |
3両 ※1 |
※1: 千葉・新宿~大月間では、一部の「あずさ」「かいじ」は「富士回遊」と併結運転
12両編成の列車は1~12号車、9両編成の列車は4~12号車、3両編成の列車は1~3号車で運転されます。
座席表、荷物置場、トイレの位置などは以下の画像のとおりです。
E353系「あずさ」「かいじ」車窓別おすすめ座席
E353系が走る中央本線は、南アルプスや富士山、八ヶ岳、甲府盆地などの車窓が眺められる、景色のよい路線です。
せっかく中央本線の特急列車に乗るのであれば、車窓も楽しみたいところ。そこで、窓側の座席であるA席とD席で、どのような車窓が見られるかを簡単にご紹介します。
座席 | 主な車窓 | 区間 |
---|---|---|
D席 | 甲府盆地 | 勝沼ぶどう郷 ~甲府 |
南アルプス 富士山 |
塩山~茅野 | |
諏訪湖 | 上諏訪~ 下諏訪 |
|
A席 | 八ヶ岳 | 韮崎~茅野 |
見どころが多いのはD席ですが、独特な山容の八ヶ岳の車窓もなかなかです。どちらも楽しんでみたいところですが、お好きなほうを選んで乗るのがよいでしょう。
高尾から大月を経て、勝沼ぶどう郷の手前までは、山間部を走行するため、あまり視界が開けていませんが、山間部を抜けると一気に視界が開けます。少し高いところを走っているため、甲府盆地と、その向こうに連なる南アルプスの山々を一望できます。
甲府に近づくあたりから、D席側の車窓から富士山を見ることができます。甲府のあたりでは、手前にある低い山並みに隠されて、頭の部分しか見えませんが、甲府から先、小淵沢や茅野のあたりからは、もう少し下のほうまで見渡すことができます。
小淵沢の前後では、A席側の車窓から、八ヶ岳を見ることができます。この写真は、列車の中からではなく、小淵沢駅の展望台から撮影したものですが、列車の中からでもよく見えます。すそ野が広く、ピークがたくさん並ぶ独特の山ですので、とても目立ちます。
特急「あずさ」「かいじ」おすすめのきっぷ
特急「あずさ」「かいじ」の乗車におすすめのきっぷを紹介します。
特急券は便利な「在来線チケットレス特急券」がおすすめ!
特急「あずさ」「かいじ」に乗車するには、乗車券と特急券が必要です。乗車券は紙のきっぷのほか、Suica等の交通系ICカードを利用することもできます。ただし、大糸線ではSuicaが利用できませんので、豊科、穂高、信濃大町、白馬、南小谷で乗降する場合には、紙のきっぷを購入しておきましょう。
特急券は、チケットレスで乗車できる「在来線チケットレス特急券」がおすすめです。スマートフォンから購入でき、乗車前であれば何度でも変更ができますし、座席指定も可能です。交通系ICカードとあわせて利用すれば、いっさい紙のきっぷを駅で発券することなく、特急「あずさ」「かいじ」に乗車できます。
さらに、「在来線チケットレス特急券」は紙の特急券から100円引きとなります。
「在来線チケットレス特急券」について、以下の記事でわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。

特急券が35%引きの「在来線チケットレス特急券(トク割)」がおすすめ!
列車や区間、席数が限定されますが、特急「あずさ」「かいじ」の割引きっぷとして、「在来線チケットレス特急券(トク割)」が発売されています。
「在来線チケットレス特急券(トク割)」は以下のような割引きっぷです。
- 種別: 特急券が35%引きとなる割引きっぷ
- 設定区間: 千葉・船橋・錦糸町・東京・新宿 ⇔ 大月~南小谷の各駅
- 購入方法: えきねっと(在来線チケットレス特急券と同じくスマートフォンから購入可能)
- 区間・列車・席数限定
特急券のみの割引きっぷですので、別途、乗車券が必要になります。前述のようにSuicaなどの交通系ICカードとあわせれば、チケットレスでお得に乗車できます。
「在来線チケットレス特急券(トク割)」については、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。

乗車券として「週末パス」などのフリーきっぷも利用できる!
乗車券としては、紙のきっぷや交通系ICカード以外にも、乗車する区間がフリーエリアに含まれるフリーきっぷを利用することもできます。
特急「あずさ」「かいじ」の運転区間のすべてまたは一部が含まれるフリーきっぷには、以下のようなものがあります。
- きっぷ名: 週末パス
- フリーエリア: 「あずさ」「かいじ」の全区間
- 効用: 週末の土日の2日間、関東甲信越のJR線・主要な第三セクター路線に乗り放題、特急券を購入すれば、新幹線や特急列車にも乗車できる
週末の旅行であれば、「週末パス」がおすすめです。特急「あずさ」「かいじ」の運転区間はすべてフリーエリアに含まれます。特急券として、前述の「在来線チケットレス特急券」などを組み合わせて、「あずさ」「かいじ」に乗車することができます。
- きっぷ名: 信州ワンデーパス
- フリーエリア: 小淵沢~松本~南小谷
- 効用: 主に長野県内のJR線(北陸新幹線 軽井沢~飯山間含む)に1日乗り放題、特急券を購入すれば、新幹線や特急列車にも乗車できる
フリーエリアは長野県内のみとなりますので、大糸線や中央本線の松本~小淵沢間の移動に「あずさ」を利用する場合に向いているフリーきっぷです。
【E353系 乗車記】ゆったりした客室のE353系、車内の居住性は大幅に向上!
今回、新宿から甲府まで、スーパーあずさ1号(乗車当時、現在はあずさ1号)の普通車(指定席)に乗車しましたので、その乗車レポートをお届けします。
まずは、客室内の設備面でのレポートです。
E353系の広々とした客室
乗車してまず気がつくのは、これまでのE351系の電車と比べると、客室内が広々としていることですね。車両断面が丸みを帯びていたE351系に対して、E353系は四角に近い断面で、その分、広々としているようです。
E351系は、カーブ通過時に車体を大きく傾けるので、その分、車両の横幅を絞らないといけなかったのに対して、E353系は傾斜がかなり小さくなったので、断面を大きくとることができるようになったのでしょうね。
シートピッチは標準的ながら可動式枕の付いたE353系の座席
普通車の座席です。シートピッチ(前の座席との間隔)は960mmで、新幹線の普通車の座席(980mm~1000mm)よりは若干狭いものの、在来線の特急車両としては標準的です。
実は、E351系はシートピッチが970mmでした。E353系では10mm狭くなっているのですが、シートが改良されたのと、前の座席のシート下が空いているので、その狭さを感じさせません。E351系は、前の座席の下に、座席を支える台があって、足を伸ばせなかったのですよね。
E351系ではグリーン車にしかなかった上下可動式の枕が普通車の座席にも付きました。これは個人的には高評価です。枕の位置は、各人の好みも大きいでしょうし、車内で休みたいのか、何らかの作業をしたいのかによっても異なるでしょう。そういう意味で、自分で好きな位置に調整できるのはありがたいです。
「E353」のロゴが入ったカバーもGOODですね!
E353系は大きめのテーブルを装備
テーブルは比較的大きく、モバイル用のパソコンを置いてもはみ出ないくらいの大きさになっています。(サービスサンドは気にしないでください…)
E353系のテーブルの耐荷重は5kgまで。駅弁を食べたり、お酒を飲んだり、パソコン作業をする分には全く問題ないでしょう。
E353系は電源コンセントを全席装備、前の座席の下に
最近の特急型車両の標準設備となっている電源コンセントは、全席に装備されています。
E353系では、前の座席の下部にあります。
常磐線のE657系では、ひじ掛けに付いていたのですが、E353系では変更したようですね。
パソコン作業をするなら、E353系のように前の座席の下にあるほうが、電源ケーブルが邪魔にならなくてよさそうですが、スマホを充電しながら利用したいとなると、ひじ掛けに電源コンセントがあるほうが便利かな、と思いました。もっとも、好みの問題の範疇とは思いますが…。
E353系はWiFiも装備!
E353系は全車両にWiFiが装備されています。「JR-EAST_FREE_Wi-Fi」というSSIDを無料で利用できます。
接続時にメールアドレスの登録を求められますが、それ以上の手続きは不要で、一度接続すると180分利用することができます。
なお、中央本線は、高尾~甲府間ではトンネルが多く、一部の区間ではWiFiが利用できません。こればかりは仕方がないでしょう。
荷物置き場は客室内に設置
E353系では、荷物置き場が一部の車両の客室内に設けられています。車端部の座席のスペースに設置されています。下り列車(松本方面行き)の場合は、最前列のC/D列の座席に相当するところに設けられていました。
ただし、デッキに掲示されている「車内設備のご案内」によると、全車両にあるわけではないようです。
荷物置き場があるのは、
- 1号車、3号車、5号車、7号車、10号車、12号車の客室内
- 9号車(グリーン車)のデッキ部
の7か所です。
大型のスーツケースなど、網棚に載せられないような大きな荷物を持って乗る場合には、上記の号車の、荷物置き場の近くの座席に乗車したほうがよいでしょう。
「E353系」揺れと騒音が少なく、乗り心地はかなり向上!
次に、新宿から甲府まで乗車した際の乗り心地についてです。
E353系の車体傾斜はほとんど気が付かないレベル
中央本線の特急列車には、カーブを高速で通過するために、車体傾斜装置が装備されています。カーブを通過する際に、車体を傾斜させることで、高速でカーブを通過しつつ、乗り心地の改善を図るための装置です。
先代のE351系では、「制御つき自然振り子方式」の車体傾斜装置が採用されていて、カーブ通過時には最大で5度も傾斜していました。一方、E353系では「空気ばね車体傾斜方式」が採用され、傾斜は最大でも1.5度に抑えられているとのことです。
実際に乗車してみると、E351系では車体が傾くのがよくわかったのですが、E353系では車体の傾斜はほとんどわかりませんでした。
個人的には、E351系の車体傾斜も嫌いではなかったのですが、傾斜が大きいので乗り物酔いを誘発しやすく、揺り戻し時の揺れが大きいといったことから、一般的には乗り心地が悪いとされています。
その点では、E353系は大幅に改善されています。急勾配、急カーブの多い中央本線ですので、多少の揺れは発生しますが、小刻みな揺れが多く、E351系のような大きな横方向の揺れはほとんど感じませんでした。少なくとも、不快に感じる変な揺れはほとんどなくなりました。
客室内の静穏性も向上
乗り心地という点では、客室内の静穏性もかなり向上しています。
今回乗車した10号車は、モーターが付いている車両(モーター車)でしたが、そのモーター音がかなり軽減されているのがわかりました。客室内の床が防音構造になっているそうで、モーター音や走行音を軽減しているそうです。
ゆっくりと休みたい方にとっては、とてもよい改善点ですね。
『【E353系】中央線特急「あずさ」乗車記! 改良された座席・広々とした客室で居住性は大幅向上、揺れも少なく乗り心地は上々!(座席表・荷物置場の情報あり)』でした。先代のE351系の欠点を改良しつつ、高速性はそのままという優れた車両に仕上がっている印象を受けました。中央本線の旅がさらに快適になりそうですね。
関連記事
甲信越エリアのおすすめ路線を紹介している記事です。風光明媚なローカル線や、魅力的な観光列車は多く走るエリアです。本記事で紹介した特急「あずさ」に乗車して、訪ねてみてはいかがでしょうか。
コメント
出張で、一回だけ、乗りました。新しい割には、又、車内での騒音が繰り返されています。現在、この車種じゃない千葉までも、走る特急が、扉の吊り下げ構造の欠陥か、半端ない位びびってしまうものがありますが、また、この車種でも、かなり耳障りな音が、していました。Jr東日本は、騒音に無頓着か、こういうのも、乗り心地の一つかと、思いますが、同じこと繰り返しますね。
patikunさん、コメントありがとうございます。
なるほど、騒音ですか。モーター音とかじゃなく、扉のガタつきみたいな音ですかね?
デッキとの間にドアがあるので問題ないという判断になっているのかもしれませんが、車端部に乗っていると気になるかもしれませんね。
今度乗った時には、気にしてみます。