房総方面への特急列車「しおさい」「わかしお」「さざなみ」が、2024年春から全車指定席での運転となります。首都圏の他の特急列車に導入されている「新たな着席サービス」が導入されます。これで首都圏の在来線特急列車からは自由席が消滅します。全車指定席化の前に「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」40%割引キャンペーンも実施されます。
房総特急「しおさい」「わかしお」「さざなみ」を全車指定席で運転!
JR東日本は、2024年春に、房総方面の特急「しおさい」「わかしお」「さざなみ」を全車指定席で運転すると発表しました。
対象列車と実施時期は以下のとおりです。
- 対象列車
- 「しおさい」東京~佐倉・成東・銚子間
- 「わかしお」「新宿わかしお」東京・新宿~茂原・上総一ノ宮・勝浦・安房鴨川間
- 「さざなみ」「新宿さざなみ」東京~木更津・君津間
- 実施時期: 2024年春
ニュースリリースには、『「新宿わかしお」「新宿さざなみ」も対象となります』と記載されていますので、「新宿さざなみ」の館山発着の臨時列車では、君津~館山間も対象になるものと思われます。
2024年1月~春頃に「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」40%割引キャンペーン実施
房総方面の特急列車の全車指定席化に先立って、2024年1月~春頃に「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」40%割引キャンペーン実施が実施されます。
現在、「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」で35%引きのチケットレス特急券が販売されていますが、2024年1月から値引き幅が40%に拡大されます。
これまでより少し安くなるだけですが、全車指定席化と同時に導入される「えきねっとチケットレス特急券」に慣れてほしいという意味合いもあるのだと思います。
詳しくは、JR東日本の特設サイトをご確認ください。
房総特急に導入されるのは「新たな着席サービス」
2024年春に房総方面への特急列車に導入されるのは「新たな着席サービス」です。中央本線や常磐線、東海道本線の特急列車で導入されているサービスで、首都圏の特急列車ではおなじみのサービスになりました。
具体的には、以下のようなサービスになります。
- 指定席・自由席の区分をなくして、全ての座席を指定できるようにする
- 座席を指定しない「座席未指定券」で乗車した場合は、普通車の空いている座席に座ることができるが、その座席の指定席券を保持してる乗客が乗ってきたら席を譲らなければならない
- 特急料金は座席指定券、座席未指定券で同じ価格(現在の指定席特急料金よりも安く、自由席特急料金よりも高い)
- 特急料金は年間を通じて同額(繁忙期や閑散期での価格変動はない)
ニュースリリースは「全車指定席で運転」というタイトルになっていますが、正確には上記のような座席未指定券での乗車もできる「新たな着席サービス」です。
特急料金は一本化、現行の指定席特急料金と自由席特急料金の中間に!
前述のとおり、特急料金は座席指定券、座席未指定券で同額となります。現行の指定席特急料金よりも安く、自由席特急料金よりも高い価格に設定されます。
房総方面の特急列車「全車指定席」導入後の特急料金
具体的には、以下のような特急料金となります。
営業キロ | - | 50キロまで | 100キロまで | 150キロまで |
---|---|---|---|---|
変更後 |
正規料金 (事前料金) |
¥760 | ¥1,020 | ¥1,580 |
えきねっと チケットレス |
¥660 | ¥920 | ¥1,480 | |
車内料金 | ¥1,020 | ¥1,280 | ¥1,840 | |
変更前 | 自由席特急料金 | ¥520 | ¥950 | ¥1,360 |
指定席特急料金 (通常期) |
¥1,050 | ¥1,480 | ¥1,890 |
2024年春以降は、座席指定・未指定にかかわらず、上の表で「正規料金(事前料金)」の料金となります。
現行の自由席特急料金からは100~200円程度の値上げとなりますが、指定席特急料金と比べると300~400円程度の値下げとなります。特に、51~100キロの区分では、現行の1,480円から1,020円へと460円(32%)も値下げとなります。
ただし、車内で特急券を購入すると、正規の特急料金に比べて260円高くなります。それでも現行の指定席特急料金よりはわずかに安くなりますが、あえて高い料金を払う必要もないので、次で説明する「えきねっとチケットレス特急券」などを活用して、事前購入するのがおすすめです。
スマートフォンで手軽に購入できる「えきねっとチケットレス特急券」はさらに100円引き
2024年春の全車指定席化(「新たな着席サービス」導入)とともに、「えきねっとチケットレス特急券」のサービスも開始されます。
「えきねっとチケットレス特急券」は、スマートフォンのえきねっとアプリなどで在来線の指定席特急券を購入でき、紙の特急券を受け取らずに、そのまま特急列車に乗車できるサービスです。発車直前まで購入できるうえに、発車時刻前であれば何度でも変更が効きますので、とても便利なサービスです。
「えきねっとチケットレス特急券」は、すでに首都圏の主な特急列車で導入されています。以下の記事でわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。
「えきねっとチケットレス特急券」の価格は、正規の特急料金(事前料金)よりも100円安く設定されていますので、その点でもおすすめです。
自由席を利用していた通勤客には値上げに
たまに旅行などで特急列車の指定席を利用する乗客にとっては、特急料金が大幅値下げとなり、しかも、指定できる座席が増えるので、とてもありがたいサービスです。
一方、通勤などで自由席を多用していた乗客にとっては値上げとなります。前述の「えきねっとチケットレス特急券」を利用しても、50キロまでで140円、100キロまでで30円の値上げとなります。特に、近距離(50キロまで)の値上げ幅が大きくなっています。
特に、通勤ライナー的な利用が多い特急「さざなみ」の乗客には影響が大きそうです。
首都圏の在来線特急列車から自由席が消滅、全列車が「全車指定席」に
今回の房総方面の特急列車の「全車指定席」化に伴って、JR東日本の首都圏の在来線特急列車からは自由席が消滅します。2019年に中央本線の特急列車に初めて導入された「新たな着席サービス」の拡大がひと段落ということになりそうです。
首都圏の特急列車への「新たな着席サービス」の導入が完了
2019年から始まった首都圏の特急列車への「新たな着席サービス」の導入ですが、最後まで自由席が残っていた房総特急にも導入されることで、約5年間で首都圏の特急列車への導入が完了することになります。
「新たな着席サービス」の導入の目的は、長距離の特急列車の指定席需要に応えることと、車内改札のコスト削減でしょう。特に、「新たな着席サービス」とセットで導入されている「えきねっとチケットレス特急券」と車内料金の導入により、事前に特急券を購入しないで飛び乗る乗客がかなり減ったのではないかと思います。そういう意味では、当初の目的をある程度は達成したのではないでしょうか。
自由席は普通列車グリーン車、指定席は特急列車?
通勤需要の観点では、首都圏の在来線特急列車が運転されている路線では、普通列車にグリーン車が連結されていることが多くなっています。唯一、グリーン車が連結されていなかった中央線快速にも、2024年度以降に導入されることが決まっています。
普通列車グリーン車はすべて自由席、特急列車は全車指定席ということで、通勤での自由席の需要についても、普通列車グリーン車で吸収できるため、特急列車の全車指定席化も問題ないという判断があったのではないかと思われます。
もっとも、「新たな着席サービス」導入で特急列車の自由席特急料金が実質値上げとなっても、相変わらず普通列車グリーン車との料金逆転は残っています。
50キロまで | 100キロまで | |
---|---|---|
特急列車 | 660円 | 920円 |
普通列車 グリーン車 |
780円 | 1,000円 |
※特急列車はえきねっとチケットレスの料金、普通列車グリーン車は平日料金
特急列車は所要時間が短いうえに、確実に座席が確保できる指定席ですが、一方の普通列車グリーン車は自由席で着席の保証はありません。普通列車グリーン車のシートは特急列車の普通車とほぼ同じ。天井が低いことや、2階建て部分に網棚がないなど、特急列車の普通車よりも劣る部分も多々あります。2024年度以降に、特急街道の中央線にもグリーン車が導入されると、この逆転現象はさらに意識されるようになるのではないかと懸念されます。
「全車指定席」と「新たな着席サービス」は異なるサービス
首都圏の主要な特急列車から自由席がなくなり「新たな着席サービス」に統一されることになりますが、そうなると気になるのが、本当の意味での「全車指定席」の列車との違いです。
2023年10月現在、少なくとも、「全車指定席」と「新たな着席サービス」は違うサービスで、料金面でも異なります。
- 全車指定席: 全座席を指定席として指定席特急料金で発売、自由席はなく、指定席を確保できないと乗車できない
- 新たな着席サービス: 全座席を指定席として(一本化された)特急料金で発売、自由席はないが「座席未指定券」で空いている座席に着席できる
首都圏の在来線特急列車では「成田エクスプレス」と「草津・四万」が全車指定席で運転されています。また、大半の臨時列車(多客臨)も全車指定席となっています。いずれも、指定席を確保できないと乗車することすらできません。
上記以外の主要な特急列車はすべて「新たな着席サービス」を採用していて、指定席が満席でも、座席未指定券で乗車することができます。(座ることはできないかもしれませんが……)
ところが、今回の房総方面の特急列車のニュースリリースでは「全車指定席」という言葉が使われていて、「新たな着席サービス」という言葉は全く使われていません。少なくとも、2023年のダイヤ改正で高崎線特急「あかぎ」に導入されたときには「新たな着席サービス」という言い方になっていました。
すべて「全車指定席」と案内するものの、「指定席券を購入しないと乗車できません」「座席未指定券で乗車できます」のような案内をするのかもしれません。
いずれにしても、非常に紛らわしいので、今後も全車指定席(座席未指定券では乗車できない列車)と新たな着席サービスを並存させるのであれば、明確に違うサービスの列車として案内しないといけないと思います。
以上、『【房総特急】2024年春から全車指定席へ、首都圏の在来線特急から自由席は消滅!』でした。新幹線では速達列車を中心に全車指定席の列車がありますし、JR西日本の特急列車でも最近は全車指定席での運転が増えています。今後は、この流れがどこまで広がるのか注目です。
関連記事
「新たな着席サービス」がすでに導入されている中央本線特急「あずさ」「かいじ」の記事です。おすすめの座席やお得なきっぷの情報も紹介しています。
同じく、「新たな着席サービス」導入済みの常磐線特急「ひたち」「ときわ」の記事です。お得なきっぷの情報もあります。
コメント