磐越東線は、福島県の郡山駅といわき駅を結ぶローカル線です。郡山寄りはのどかな里山風景が続きますが、途中の小野新町から東側は、夏井川がつくる渓谷の中を走って阿武隈高地を抜けていきます。そんな磐越東線の乗車記をお届けします。
磐越東線とは?
磐越東線は、福島県の郡山駅といわき駅を結ぶJR東日本の路線です。全長85.6kmで16の駅があります。全線が非電化で単線です。
磐越東線は、福島県の中通りと浜通りを結ぶ路線ですが、地図で見ると、郡山からおおむね南東方向に伸びていることがわかります。このあたりは阿武隈高地という山地が南北に連なっていますが、その山地の間を、夏井川がつくった渓谷に沿って走ります。
磐越東線は、全線が福島県内に閉じるため、福島県民以外の利用者は多くないと思われます。同じ郡山を起点とする磐越西線のほうは、東北新幹線から乗り継ぐ会津若松への観光ルートですし、「フルーティアふくしま」(郡山~会津若松・喜多方)や「SLばんえつ物語」(新津~会津若松)などの観光列車が走ります。磐越西線と比べると、磐越東線は地味な印象がありますが、磐越西線とは、また違った車窓を楽しむことができます。
磐越東線の列車は、郡山側(郡山~小野新町間)では、おおむね1時間に1本程度ありますが、いわき側は本数が少なく、日中は4時間以上も列車がない時間帯があります。
郡山~いわき間を直通する列車は1日5往復。小野新町での乗り継ぎも含めると、1日6往復となります。運転本数が少ないので、乗車する際には、あらかじめ時刻表を見て、どの列車に乗るか、計画を立てておきましょう。
【磐越東線 乗車記1】のどかな田園風景の中を飛ばす磐越東線
1月上旬の郡山駅。6番ホームに、これから乗車するいわき行きの普通列車がすでに入線していました。
磐越東線の列車は、すべてキハ110系での運行です。この列車は2両ですが、朝晩には4両での運転もあるようです。
車内は4人掛けと2人掛けのボックスシートが並びます。2人掛けの進行方向向きの座席を確保し、準備万端。東北本線からの列車が到着すると、徐々に乗客も増え、発車時点では、すべてのボックスに2~3人ほどが着席している程度にまでなりました。
この列車は13時17分発のいわき行きですが、この前の磐越東線の列車は11時19分の小野新町行き。小野新町まではおおむね1時間に1本ほどありますが、この時間帯だけは約2時間空くためか、乗客が多めなのかもしれません。
13時17分に郡山駅を発車。郡山の車両基地の脇を北へ進み、東北本線の線路と分かれると、進路を東へとります。すぐに阿武隈川を鉄橋で渡ります。
鉄橋を渡ると、市街地や住宅地が途切れ、田んぼや畑、それに、丘のような森が多くなってきます。
舞木、三春と停車し、数名ずつが下車していきます。郡山近郊の近距離利用も結構多いようですね。
三春を出ると、駅周辺に見られた大きな集落もなくなり、田園風景のあいだに家が点在するようになります。
この日は、寒波が来ていて、午前中に乗車した磐越西線では雪模様でしたが、郡山から東側はほとんど雪がなく、青空。同じ福島県でもだいぶ天候に差があるようです。
この先も、低い丘・山地に囲まれた里山のような風景がずっと続きます。ただ、次第に、周囲の山の高さが高くなっていくようではあります。
里山の長閑な車窓を眺めながらのんびりと…と思ったのですが、磐越東線の列車は意外と飛ばします。地図でみるとかなり蛇行して走っているように見えますが、実際には比較的線形が良いようで、キハ110はエンジン音を唸らせながら飛ばしていきます。
ちなみに、今回乗車した列車の表定速度(始発駅~終着駅の距離を所要時間で割って算出した実質的な速度)は約54km/h。磐越東線のような単線・非電化のローカル線としてはかなり速いほうです。
【磐越東線 乗車記2】磐越東線 車窓のハイライト、夏井川の流れを眺める旅
14時09分、沿線の主要駅、小野新町駅に到着。比較的大きな町がある駅です。数名の乗降がありました。
小野新町を出ると、これまでの田園風景の車窓が少しずつ変わってきます。次第に、線路の両側の平地部分が狭くなってきて、谷筋のようなところを走るようになります。
小野新町駅を出て、夏井川を渡ると、ここから先、しばらくは夏井川に沿って進みます。次の夏井駅は、夏井川沿いの桜並木「夏井千本桜」が有名です。夏井駅から夏井川を見ることはできませんが、少し先の木が並んでいるところが夏井川でしょう。
夏井駅から先は、蛇行する夏井川を何度も渡ります。車窓を見ていると、夏井川が左右に行ったり来たり。谷が深くなるにしたがって、渓谷の様相を呈してきます。長時間、夏井川を車窓に眺められるところは多くないですが、左右どちらの車窓でも、それなりに見られると思います。
川前駅、江田駅と、夏井川のすぐそばにある駅に停車していきます。江田駅は、夏井川渓谷の最寄り駅。紅葉がとてもきれいなんだそうです。
磐越東線は、終点のいわき駅に到着する直前まで、夏井川沿いに進みますが、江田~小川郷の間あたりから、渓谷を抜け、平地が目立ってきます。
冬のこの時期、夏井川の渓谷沿いでは、日光が当たらずに少し薄暗かったのですが、平地に出るとまぶしいくらいの青空でした。
右側から常磐線の線路が近づいてくると、終点のいわき駅はまもなく。14時52分、郡山から約1時間半で、いわき駅に到着しました。
青春18きっぷの旅で磐越東線に乗ろう!
ということで、磐越東線の乗車記をお届けしました。
福島県に閉じるローカル線のため、福島県外の旅行者にはあまりなじみのない路線かもしれません。
ただ、郡山駅は東北本線や磐越西線の、いわき駅は常磐線の乗り換え駅ですから、鉄道の旅では比較的ルートに組み込みやすい路線でもあります。
青春18きっぷの旅でも、首都圏発でこんなルートも組めるでしょう。
- 東北本線(東京・上野 → 郡山)
- 磐越東線(郡山 → いわき)
- 常磐線(いわき → 上野・東京)
乗りっぱなしになってしまいますが、青春18きっぷの日帰り旅も可能です。
また、首都圏と仙台など東北地方を移動する際に、東北本線や常磐線だけを利用するのではなく、磐越東線を経由するルートにすると、車窓にアクセントがあってよいと思います。
- 常磐線(東京 → いわき)
- 磐越東線(いわき → 郡山)
- 東北本線(郡山 → 仙台)
青春18きっぷで首都圏~仙台を移動するおすすめのルートについては、以下の記事もご覧ください。磐越東線経由のルートも紹介しています。
以上、『【磐越東線 乗車記】 のどかな里山風景と夏井川の流れが見どころの福島のローカル線!』でした。東北方面への鉄道旅行・乗り鉄の際に、磐越東線をルートに組み入れて、乗車してみてはいかがでしょうか。
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