JR東海の中央本線(中央西線)沿線は木曽路と呼ばれ、中山道の宿場町がたくさんあります。今回、比較的大きな宿場町である馬籠宿と妻籠宿に、中央本線の旅の途中に、路線バスを利用して巡ってきました。駅から離れている宿場町でも、公共交通機関をうまく使えば、効率よく観光することができます。この記事では、路線バスを活用して、2つの宿場町を訪問したときの様子をお届けします。
中央本線沿線に点在する「木曽路十一宿」
JR東海の中央本線(中央西線 塩尻~名古屋間)の沿線には、中山道の宿場町がたくさん残っています。中山道が木曽谷を通る木曽路には、「木曽路十一宿」と呼ばれる宿場町があり、当時の面影を非常によく残しています。
「木曽路十一宿」とは、江戸側(信濃側)から順に以下の11の宿場町です。
- 贄川宿、奈良井宿、藪原宿、宮ノ越宿、福島宿、上松宿、須原宿、野尻宿、三留野宿、妻籠宿、馬籠宿
このうち、京都側の二つの宿場町「馬籠宿」と「妻籠宿」には、比較的大きな街並みが残されていて、観光するにも良い宿場町になっています。
公共交通機関で「馬籠宿」と「妻籠宿」へアクセスする方法
公共交通機関で宿場町へ観光に行く場合には、鉄道駅から路線バスを利用することになります。今回、観光した「馬籠宿」と「妻籠宿」への最寄り駅とアクセス方法は以下のとおりです。
- 「馬籠宿」へのアクセス
- 最寄り駅: 中央本線 中津川駅
- 駅からのアクセス: 北恵那交通バス 馬籠線
- 中津川駅 → 馬籠 約25分、530円(1時間に1本程度)
- Webサイト: 北恵那交通 馬籠線
馬籠宿へは、中央本線の中津川駅から北恵那交通の路線バスでアクセスできます。日中時間帯も1時間に1本ほどあり、比較的利用しやすいです。
- 「妻籠宿」へのアクセス
- 最寄り駅: 中央本線 南木曽駅
- 駅からのアクセス: 南木曽町地域バス 馬籠線(運行:おんたけ交通バス)
- 南木曽駅 → 妻籠宿 約7分、300円(土休日は1日4~5本)
- Webサイト: 南木曽町 地域バス
妻籠宿へは、中央本線の南木曽駅から、南木曽町の地域バスが出ています。平日は1日3~4本、土休日でも4~5本と本数が少ないので注意が必要です。おんたけ交通が運行しています。
南木曽駅からのバスは「馬籠線」となっていて、妻籠宿を経由して、馬籠まで運転されます。南木曽駅から馬籠までは約35分(800円)です。
この南木曽町の地域バス「馬籠線」を活用すると、馬籠宿~妻籠宿間を移動することができます。今回は、このバスを利用して、馬籠宿を観光したあと、妻籠宿へ移動して観光、その後、南木曽駅へ出ました。
具体的には、以下のような行程になりました。(2021年4月時点での土休日ダイヤ)
- 名古屋 09:24発 → 中津川 10:39着(中央本線 快速)
- 中津川駅前 10:45発 → 馬籠 11:10着(北恵那交通バス)
- 馬籠宿を観光(約2時間40分)
- 馬籠 13:25発 → 妻籠 13:51着(南木曽町 地域バス)
- 妻籠宿を観光(約1時間30分)
- 妻籠 15:26発 → 南木曽駅 15:35着(南木曽町 地域バス)
路線バスを上手く活用すると、「馬籠宿」と「妻籠宿」を効率よく観光できます。
【「馬籠宿」訪問記】急坂にある珍しい宿場町を散策! 展望広場からの絶景も必見!
中央本線の列車で、中津川駅に10時39分に到着。馬籠行きの路線バスへの乗り継ぎ時間は6分しかありませんので、事前にバス乗り場を調べておきました。そのせいもあってか、スムーズに乗り継ぐことができました。
12月中旬の土曜日でしたが、乗客はなんと私だけ。途中のバス停で3名ほど乗ってきましたが、今後がちょっと心配になるほどでした。
中津川駅から25分ほどで馬籠に到着。バス停は、観光案内所や大きなお土産屋があるところの少し先にあります。
道路を渡ったところに、馬籠宿の入口があります。石畳の道や、道の両側に立ち並ぶお店が良い雰囲気を醸し出しています。土曜日ということもあって、観光客が多いようです。
馬籠宿の特徴は、何といってもこの急な坂道! 宿場町は、山の中であっても、たいていは平らなところに築かれるそうですが、馬籠宿はこんな坂道の途中にあるのです。坂道の途中にある宿場町は、全国でも珍しいそうです。
かなり急な坂道が続きます。道が狭いので、余計に坂道が長く感じますね。道の両側には、お食事処や古民家カフェ、お土産屋などが並びますが、普通の住宅もあります。
古い民家を利用した民宿やお茶屋さんもありますね。宿場町はぶらぶらと歩くだけでも楽しいですが、古民家カフェなどで休憩したり、食べ物を買うのもいいですね。
宿場町の中には「藤村記念館」があります。島崎藤村は馬籠宿の出身。馬籠宿で本陣や問屋を営んでいた島崎家に生まれました。藤村の生家は火事で消失してしまったそうですが、昭和22年に有志により、現在の藤村記念館が建てられたそうです。
藤村記念館の向かい側には、観光案内所やトイレ等があります。ちょうど、馬籠宿の坂の中間地点にあって、観光の拠点となっています。ここで馬籠宿の地図を手に入れることができます。
馬籠宿の坂の途中にある道標。馬籠宿は、急な坂道に600メートルにも渡って続いています。散策するのも結構大変ですよ……
馬籠宿の一番上までやってきました。ここには展望広場があります。何を展望できるかというと……
かなり逆光ですが、展望広場からは恵那山を一望できます。江戸時代、中山道を歩く旅人も見たであろう風景です。
散策しておなかも空いてきたので、お昼にしましょう。馬籠宿の中間地点より少し上のほう、車道と交差する角にあるのが、「恵盛庵」(けいせいあん)というお蕎麦屋さんです。人気のお店のようですが、まだ時間が早かったせいか、すぐに入ることができました。
「ざるそば」(1,000円)を注文。太めでコシのあるお蕎麦は、店内の石臼で挽いた自家製粉のそば粉を使っているのだそうです。そばの香りもして、お蕎麦だけで十分満足できました。ちなみに、ざるそばは2枚がデフォルトだそうです。
【「妻籠宿」訪問記】元祖町並み保存の宿場町、当時の面影を残す路地を散策!
さて、そろそろバスの時間が近づいてきました。ちょうど時間どおりに、13時25分発の妻籠経由南木曽行きのバスがやってきました。南木曽町がおんたけ交通に委託して運行している地域バスです。これに乗車して、次の目的地、妻籠宿へと向かいます。
バスは、かつての旧中山道に並行する県道7号線を北へ。馬籠峠を超え、国道256号線に入ると、まもなく妻籠宿です。妻籠宿沿いにバス停がいくつかありますが、妻籠宿の北側の入口近くにある「妻籠」バス停で下車しました。
妻籠バス停の近くは駐車場になっていて、観光バスも1台停まっていました。ツアー等で宿場町を訪れるのでしょう。
駐車場の端にある細い道をのぼっていくと、妻籠宿の古い景観が残る通りに出ます。このあたりがだいたい北側(南木曽側)の端に近いところになります。路線バスで妻籠宿を訪れるのであれば、妻籠バス停で下車すれば、端から散策することができます。
坂の途中にあった馬籠宿と比べると、道幅があり広々としている印象です。
すこし南側へ歩いていくと、無料休憩所があります。このあたりが妻籠宿の観光の拠点でしょうか。
妻籠宿は、宿場町の集落全体を保存する運動の先駆けとなったところです。建物や文化財単位での保存は行われていたそうですが、集落全体の保存を最初に目指したのが、妻籠宿なのだそうです。
妻籠宿では、宿場町の建物だけでなく、周囲の自然環境も含めての保存が行われていて、かなり広い範囲が保存地区に指定されています。建物や町並みだけでなく、町から見える自然の風景も、江戸時代とは大きく変わっていないのでしょう。
妻籠宿本陣です。江戸時代でも、このあたりが妻籠宿の中心だったのでしょう。他の建物に比べると、大きく立派です。
本陣の向かいには、脇本陣奥谷があります。国の重要文化財に指定されている貴重な建物です。
妻籠宿を一通り歩いたあと、少し時間があったので、この「脇本陣奥谷」を見学しました(有料: 600円)。
脇本陣と問屋を兼ねた家だったようです。建物の中では、案内人の解説付きで見学できます。写真撮影禁止だったので、写真はありませんが、当時の旧家の豪華なつくりを垣間見ることができます。
もう少し南へ足を進めると、狭い道がクランク状に曲がっているところがあります。これは「桝形」(ますがた)と呼ばれる構造で、外敵が宿場に侵入しにくいように、わざと道を直角に二度曲げているのです。
広々としたアスファルトの道とは違い、狭い道の両側に古い建物が並ぶこのエリアは、なかなか雰囲気が良く、きっと当時の面影を良く残しているのだろうなと思います。
石段と路地の両側に古い建物が並びます。こういうところは、歩いているだけで楽しいですね。
妻籠宿の南端、尾又橋までやってきました。先ほど刊行した馬籠宿までは7.8km。ハイキングコースにもなっているようですが、歩くとなるとかなりの距離ですね。
歩き疲れたので、バスの時間まで「栗きんとんソフトクリーム」でブレイク。お茶屋やカフェのようなお店もたくさんあるので、立ち寄りながら、ぶらぶら散歩するだけでも楽しいですね。
ということで、妻籠宿の散策を終え、妻籠バス停15時26分発のバスに乗車。10分ほどで南木曽駅に到着し、特急「しなの」、特急「あずさ」を乗り継いで帰宅しました。
以上、「【中央本線 木曽路宿場町巡り】中山道の宿場町、馬籠宿と妻籠宿を路線バスで巡る旅!」でした。路線バスを上手く活用することで、半日で二つの宿場町を訪れることができました。中央本線を旅する際には、途中下車して、宿場町を散策してみることをおすすめします。
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