JR各社は2025年3月のダイヤ改正の概要を発表しました。JR北海道では特急「大雪」が特別快速へ格下げ、JR四国では特急「うずしお」の岡山乗り入れ中止や「むろと」の廃止、「剣山」の減便など、在来線特急列車の減便・廃止が目立ちます。首都圏では中央線・青梅線のグリーン車サービス開始に伴い、通勤特急が廃止されます。
この記事では乗り鉄的な視点で興味深いトピックをまとめます。
2025年春のJR各社ダイヤ改正(2025年3月15日)
JR各社は、2025年3月15日にダイヤ改正を実施すると発表しました。各社のニュースリリースは以下のとおりです。(全てPDFファイルへのリンクです)
- 2025年3月ダイヤ改正について(JR北海道)
- 2025年3月ダイヤ改正について(JR東日本)
- 2025年3月ダイヤ改正について(JR東海)
- 2025年春のダイヤ改正について(JR西日本)
- 2025年3月ダイヤ改正について(JR四国)
- 2025年春ダイヤ改正(JR九州)
【JR北海道】特急「大雪」を特別快速に格下げ、快速「きたみ」は網走発着に延長へ
石北本線の特急「大雪」が特別快速に格下げされ、H100形2両編成(全車自由席)での運転となります。また、これまで旭川~北見間で運転されていた特別快速「きたみ」は、快速「きたみ」となり、運転区間が旭川~網走間に延長されます。
特別快速化・H100形での運転でも旭川~網走間の所要時間は変わらず
網走~北見~旭川間のダイヤは以下のように変更となります。
2017年に特急「オホーツク」のうち2往復が旭川~網走間運転の「大雪」に変更されてから、わずか8年で特急列車としての運転は終了となります。
ダイヤを見るとわかりますが、特急から特別快速に格下げされても、旭川~網走間の所要時間は3時間50分前後でほとんど変わりません。同区間は駅間が長いうえに、特急列車でもあまり速度を上げられないため、普通列車用のH100形車両でもそん色のない速度で走れるということでしょう。
特別快速「大雪」用のH100形は座席数増加・乗り心地改善に着手
特急「大雪」の代替となる特別快速「大雪」は、H100形2両編成での運転となります。
H100形というとJR北海道の普通列車の車両置き換え用に、ここ数年でどんどん導入されている車両です。基本的にはJR東日本のGV-E400系と同じで、長距離を快適に移動できるような設備はありません。
ところが、JR北海道のニュースリリースによると、
特別快速「大雪」に使用するH100形については例は7年度以降、長距離移動の快適性向上のため、座席数の増加と座り心地の改善を行っていきます。
との記述があります。おそらく座席を特急型のリクライニングシートか、最低でもキハ54形などで使われている転換クロスシートに変更するのではないかと思われます。
旭川~網走間の所要時間が、特急とそん色ないとはいえ、4時間近くにもなるため、長距離移動用の設備は不可欠ということでしょう。どのような設備に更新されるかは注目したいと思います。
旭川~網走間のダイヤ再編、特急オホーツク2号は1時間繰り下げ
札幌から直通する特急「オホーツク」の時刻も変更され、旭川~北見~網走間のダイヤは全般的に再編成されています。
特に、上りの特急「オホーツク2号」のダイヤが見直され、網走発の時刻が1時間繰り下げられています。そのため、札幌到着がこれまでの11時16分から12時10分へと遅くなっています。これにより、札幌滞在時間は1時間短くなります。
- ダイヤ改正前: 網走 05:58発 → 札幌 11:16着
- ダイヤ改正後: 網走 06:55発 → 札幌 12:10着
この「オホーツク2号」には8月の平日に乗車したことがありますが、網走発車時点で乗客は10名に満たないほどと少なかったため、使いやすい時間帯での運転ではなかったということなのかもしません。
【JR東日本】中央線・青梅線でグリーン車サービス開始、通勤特急「はちおうじ」「おうめ」は廃止
すでにグリーン車を連結した列車が走っている中央線・青梅線ですが、ダイヤ改正にあわせてグリーン車サービスが正式に開始されます。これに伴い、通勤特急「はちおうじ」「おうめ」は廃止となり、早朝の上り「かいじ」新設、夕夜間帯の下り「あずさ」が東京始発となります。
中央線・青梅線のグリーン車サービスを開始!
2025年3月15日のダイヤ改正にあわせて、中央線・青梅線のグリーン車サービスが正式に開始されます。運行区間は以下のとおりです。
- 中央線快速: 東京~新宿~高尾~大月(高尾~大月はE233系の列車のみ)
- 青梅線: 東京~新宿~立川~青梅
すでに中央線や青梅線では、グリーン車を組み込んだ12両編成の列車が運転されています。ダイヤ改正前までは無料で乗車できますが、ダイヤ改正の2025年3月15日以降は有料となります。グリーン料金は以下のとおりです。
距離区分 | Suica グリーン料金 |
紙のきっぷ |
---|---|---|
50キロまで | 750円 | 1,010円 |
100キロまで | 1,000円 | 1,260円 |
中央線・青梅線のグリーン車は、他路線との乗り継ぎができません。具体的には、新宿駅での湘南新宿ラインや、東京駅での上野東京ライン、横須賀線、総武快速線などのグリーン車と、1枚のグリーン券での乗り継ぎができません。
普通列車グリーン車については、以下の記事に詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。
通勤特急「はちおうじ」「おうめ」は運転取りやめ
グリーン車サービスの開始に伴い、現在、東京~八王子・青梅間で通勤時間帯に運転されている「はちおうじ」「おうめ」は運転取りやめとなります。
- はちおうじ: 上り(朝)2本、下り(夜)3本
- おうめ: 上り(朝)1本、下り(夜)2本
ダイヤ改正以降、着席通勤にはグリーン車を利用してほしいということでしょう。
通勤特急が快速のグリーン車と競合することは確かですが、グリーン車は自由席、特急列車は全車指定席という違いがあります。中央線の快速列車は基本的に東京駅始発のため、帰宅ラッシュの時間帯に新宿駅からグリーン車に乗車しようとしても席が空いていないという可能性もあります。特に、通勤快速などの速達列車はグリーン車の需要も高そうです。
ダイヤ改正以降、どのような状況になるのか、注目したいところです。
早朝臨時「かいじ」新設、夕方以降の上り特急は全て東京駅発着へ
中央線の特急「あずさ」「かいじ」にも動きがあります。
まず、早朝の臨時「かいじ」が新設されます。
- 臨時特急「かいじ」: 甲府 05:40発 → 新宿 07:29着 → 東京 07:45着
主に平日に運転される臨時特急列車です。甲府駅からの上り「かいじ」は、「かいじ2号」が06時58分発、東京駅着が08時57分でしたが、臨時特急「かいじ」が運転される日は、1時間以上も東京駅到着が早くなります。以前から要望があった早朝の上り特急列車ですが、ここ数年での列車本数の削減や、前述の通勤特急廃止で、ようやく通勤時間帯に特急列車を走らせる目途がついたということでしょう。
また、夕方以降の下り特急列車が、すべて東京駅始発となります。具体的には、以下の5本が、新宿駅始発から東京駅始発に変更されます。
- あずさ 45号・49号・53号・55号
- かいじ 47号
これは、前述の通勤特急「はちおうじ」「おうめ」が廃止になることにより、夕方の帰宅需要に対応したものと考えられます。新宿駅など途中駅からの着席需要には、グリーン車ではなく、定期特急列車を利用してほしいということでしょうか。
【JR四国】特急「うずしお」岡山乗り入れを中止、牟岐線「むろと」は廃止へ
JR四国は、特急列車の運行体系の見直しが多く実施されます。特急「うずしお」の岡山乗り入れ中止、特急「むろと」の廃止、それに、特急「しまんと」「剣山」の減便が実施されます。
特急「うずしお」岡山乗り入れを中止、全列車化が高松~徳島間での運転に!
現在、2往復運転されている「うずしお」の岡山駅乗り入れが廃止され、全列車が高松~徳島間での運転となります。岡山方面へは、高松駅で快速「マリンライナー」との接続となります。
岡山乗り入れ中止となる「うずしお」は以下の4本(2往復)です。
- 岡山→徳島方面: うずしお13号・29号
- 徳島→岡山方面: うずしお6号・22号
これにより、岡山駅と四国を結ぶ特急列車は、特急「南風」に統一されることになります。
人手不足や車両のやりくりなど、JR四国内部での事情もありそうですが、おそらく徳島~岡山間の直通需要がそれほど多くなかったということかもしれません。高松駅で頻繁に運転されている快速「マリンライナー」に乗り換えれば、それほど所要時間は変わらないため、あまりデメリットが大きくないといったことも考えられます。
特急「しまんと」2往復減便、「南風」併結列車は消滅へ
高松駅と高知方面を結ぶ特急「しまんと」は、現在4往復運転されていますが、このうち、南風と併結して運転されている2往復が減便となります。対象列車は以下のとおりです。
- 高松→高知方面: しまんと3号・7号
- 高知→高松方面: しまんと4号・6号
減便となる「しまんと」に代わり、高松方面と高知方面の乗り継ぎは、高松駅発着の快速「サンポート」および普通列車を「南風リレー号」として運転し、多度津駅、宇多津駅などで特急「南風」と接続することになります。
特急「むろと」廃止、「剣山」は2往復減便
徳島駅発着の特急列車では、「むろと」が廃止、「剣山」が2往復減便となります。
徳島~牟岐間で1往復だけ運転されていた特急「むろと」が廃止されます。これにより、牟岐線の定期特急列車は消滅します。
- むろと1号: 徳島 19:33発 → 牟岐 20:58着
- むろと2号: 牟岐 06:59発 → 徳島 08:20着
一方、徳島~阿波池田間を結ぶ特急「剣山」は、現在5.5往復(下り6本、上り5本)が運転されていますが、このうち2往復が減便となります。減便となるのは、朝と夜のそれぞれ1往復ずつです。
- 剣山1号: 徳島 06:45発 → 阿波池田 08:10着
- 剣山9号: 徳島 19:00発 → 阿波池田 20:20着
- 剣山4号: 阿波池田 08:32発 → 徳島 09:47着
- 剣山10号: 阿波池田 19:49発 → 徳島 21:05着
【JR西日本】大阪・関西万博アクセス向けに快速「エキスポライナー」を新設
JR西日本は、2025年に開催される大阪・関西万博アクセスの強化を主軸としたダイヤ改正を実施します。新大阪・大阪駅から万博会場の最寄駅となる桜島駅まで、快速「エキスポライナー」を運転します。
新大阪~桜島間を直通する「エキスポライナー」を新設
新大阪~桜島間に「エキスポライナー」が新設されます。おおむね1時間に1本の運転となり、新大阪~桜島間を約20分で結びます。大阪駅は地下ホーム発着となります。
平日の運転時間帯は以下のとおりです。
- 新大阪→桜島方面: 7時台~19時台
- 桜島→新大阪方面: 11時台~22時台
この「エキスポライナー」を利用すれば、東海道・山陽新幹線の新大阪駅から桜島駅まで乗り換えなしでアクセスできます。桜島駅から万博会場まではシャトルバスが運行されます。
大阪・関西万博の開催期間は、2025年4月13日~10月13日の半年間ですので、万博終了後は「エキスポライナー」の運転も終了するのではないかと思われます。
有料座席サービス「快速 うれシート」設定区間・本数を大幅拡大!
JR西日本が京阪神エリアで導入を進めている有料座席サービスの「うれシート」ですが、2025年のダイヤ改正では設定線区・設定本数ともに大幅に拡大されます。
新たに「うれシート」が導入される線区は以下のとおりです。
- JR宝塚線(大阪~篠山口)
- 京都線・琵琶湖線(大阪~新大阪~京都・野洲 ※神戸線直通快速に新たに設定)
- 嵯峨野線(京都~園部)
また、奈良線では、平日・土休日すべての快速列車に「うれシート」が設定されます。
- 奈良線(「みやこ路快速」「快速」「区間快速」の全列車)
「うれシート」は、通常の転換クロスシートの車両の半分をのれんで仕切り、指定席にしただけの簡易な着席サービスです。自由席の座席との座り心地はまったく変わりませんが、あらかじめ指定席を確保しておけば必ず着席できます。チケットレス指定席券を利用すれば、たった300円というお手軽さも、「うれシート」の人気がある理由でしょう。
このほか、京阪神エリアでは、通勤特急「らくラクはりま」が1往復増便など、着席通勤需要を見込んだ列車の増加が目立ちます。
【JR九州】「あそぼーい」を熊本~宮地に短縮、「九州横断特急」を1往復増便
JR九州は、熊本・阿蘇エリアでの特急列車の運行体系を再編します。観光特急「あそぼーい」の運転区間を阿蘇~宮地間に短縮する一方で、運転日の運行本数を2往復に拡大。また、「九州横断特急」(熊本~大分・別府)を1往復増便します。
特急「あそぼーい」の運行区間を短縮、阿蘇エリアへの観光特急に特化
観光特急「あそぼーい」は、これまでの熊本~別府間で運転日に1往復運転されていましたが、2025年3月のダイヤ改正では、運転区間を熊本~宮地間に短縮します。その代わり、1日2往復運転となります。熊本駅からの阿蘇観光に特化した特急列車となります。
- あそぼーい!1号: 熊本 09:57発 → 宮地 11:32着
- あそぼーい!3号: 熊本 13:36発 → 宮地 15:14着
- あそぼーい!2号: 宮地 12:02発 → 熊本 13:19着
- あそぼーい!4号: 宮地 15:48発 → 熊本 17:08着
特急「あそ」と観光列車「かわせみ やませみ」(いずれも熊本~宮地間)の定期運行gは取りやめとなりますが、後述の「九州横断特急」の増便を考慮すると、「あそぼーい!」運転日の熊本~宮地間の特急列車は、既存の最大4往復から5往復に増えることになります。
阿蘇観光の根強い人気を物語る改正と言えそうです。
特急「九州横断特急」1往復増便で1日3往復運転へ
熊本~大分・別府を結ぶ特急「九州横断特急」が1往復増便され、1日3往復運転となります。
これまで、熊本~大分間の特急列車は、九州横断特急1往復+九州横断特急または「あそぼーい!」1往復の合計2往復の運転でしたが、ダイヤ改正以降、「九州横断特急」3往復の運転となります。
- ダイヤ改正前: 熊本~大分・別府 2往復(九州横断特急1往復+あそぼーい!1往復 ※1)
- ダイヤ改正後: 熊本~大分・別府 3往復(九州横断特急3往復)
※1: 「あそぼーい!」の運転がない日は九州横断特急を2往復運転
ダイヤ改正後は、基本的に大分駅発着となり、別府駅発着となるのは九州横断特急2号(別府駅 07:49発)のみとなります。
熊本から阿蘇エリアへの特急列車に加えて、熊本~大分間の九州横断特急も強化してきたのは、阿蘇エリアの観光に加えて、別府などの温泉地へのインバウンド需要の増加が背景にあるものと思われます。
以上、『【2025年春 JRダイヤ改正】JR北海道・JR四国で特急列車の減便・廃止へ、中央線の着席サービスは通勤特急からグリーン車へ!』でした。都市圏で続いてきた大幅減便はひと段落しましたが、経営が厳しいJR北海道・JR四国の特急列車の衰退が目立つ改正となりました。
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