JR各社が、2018年3月のダイヤ改正の概要を一斉に発表しました。JR九州は、1日あたり、新幹線6本、在来線特急列車24本、快速・普通列車87本の合計117本もの大幅減便となります。
この記事では、乗り鉄的に気になるダイヤ改正のポイントをまとめてみました。
JR各社のダイヤ改正ニュースリリース
JR各社は、2018年3月17日(土)にダイヤ改正を実施することを発表しました。
JR旅客6社が発表したニュースリリースのリンクをまとめておきます。(全てPDFファイルが開きます)
- JR北海道 - 平成30年3月ダイヤ改正について
- JR東日本 - 2018年3月 ダイヤ改正について
- JR東海 - 平成30年3月ダイヤ改正について
- JR西日本 - 2018年春ダイヤ改正について
- JR四国 - 平成30年3月ダイヤ改正について
- JR九州 - 平成30年3月にダイヤを見直します
JR九州は鉄道事業の合理化を進める大幅減便改正!
ダイヤ改正が発表される前から、宮崎県を中心としたエリアで減便の方向であることが伝えられていましたが、ふたを開けてみれば、新幹線や特急列車を含む1日あたり117本もの大幅減便ダイヤとなりました。JR九州の看板路線、九州新幹線まで減便というのには正直驚きました。
九州新幹線・在来線特急列車
- 九州新幹線「つばめ」「さくら」: 合わせて6本の運転を取りやめ
- 博多~大分~宮崎方面 在来線特急「ソニック」「にちりん」「きらめき」「ひゅうが」 : 7本の運転区間短縮、1本増発
- 博多~長崎・佐世保方面 在来線特急「かもめ」「みどり」: 定期列車4本を臨時へ降格、3本を運転取りやめ
- 博多~大牟田 在来線特急「有明」: 現在の夕方・夜間帯の下り3本から、通勤時間帯の上り1本へ変更(2本減)
- 博多~小倉 在来線特急「きらめき」: 日中時間帯の9本を運転取りやめ、深夜帯下りの1本を臨時へ降格
- 鹿児島中央~隼人 在来線特急「はやとの風」: 全便(4本)を臨時へ降格
ざっとみたところ、日中時間帯の特急列車の運転取りやめ・臨時への降格と、朝・夜間帯の列車の運転区間短縮が多いようです。利用実態に合わせた改正というところだと思いますが、一度のダイヤ改正でここまで多くの特急列車が運転取りやめになるのは珍しいと思います。
快速・普通列車
JR九州全体で、快速列車、普通列車を合わせて、1日あたり2,702本から2,615本へ、87本の減便となります。また、減便以外に、運転区間の短縮も多数あるようです。
大幅減便となる路線をまとめてみます。
- 肥薩線: 八代~人吉間で3往復の運転取りやめ(11往復 → 8往復)
- 肥薩線: 人吉~吉松間で2往復の運転取りやめ(5往復 → 3往復)
- 肥薩線: 吉松~隼人間で2往復の運転取りやめ(13.5往復 → 11.5往復)
肥薩線は、観光列車「いさぶろう」や「かわせみ やませみ」(いずれも特急列車)が毎日運転される観光路線ですが、普通列車が大幅に減便されることになります。
特に、人吉~吉松間では、もともと5往復しかない列車が3往復へ。しかも、そのうち2往復は、この区間は普通列車ですが、観光列車として運転される「いさぶろう」です。この区間は、スイッチバックやループ線が続く「矢岳越え」と呼ばれ、日本三大車窓の一つに数えられる風光明媚な路線です。その区間を走る列車が1日3往復に。乗り鉄としても寂しいですね…。
- 吉都線: 都城~吉松間で3往復の運転取りやめ(11往復 → 8往復)
吉都線は、鹿児島県の吉松と宮崎県の都城を結ぶローカル線です。普通列車のみが走る路線ですが、11往復から8往復へと減便されます。運転取りやめとなるのは、日中の2往復と夜間の1往復です。
- 日豊本線: 重岡~延岡間で3本(下り2本、上り1本)の運転取りやめ(運転区間短縮)
日豊本線の大分県・宮崎県の県境区間の列車の本数が、現在の3往復から、下り1本、上り2本に減便されます。ただでさえ少なかった普通列車がさらに少なくなってしまいます。この区間は、特急「にちりん」が1時間に1本程度運転されていますので、全体の本数としてはそこまで少なくないのですが、青春18きっぷでの難所と言われていた区間の難易度がさらに上がってしまいますね。
在来線特急への新型車両投入
減便の話だけでは寂しいので、新型車両の話題も。
「スーパーあずさ」全列車を新型車両E353系で運転へ、E351系はどうなる?
2017年12月23日に中央本線の特急「スーパーあずさ」用に、新型車両E353系が投入されます。投入当初は、スーパーあずさの半分程度(4往復)の列車がE353系に置き換えられますが、2018年3月のダイヤ改正時には、8往復すべての「スーパーあずさ」がE353系に置き換わります。
そうなると、気になるのは、現在「スーパーあずさ」として運転されているE351系の去就です。あっという間にE353系に置き換わってしまいますので、中央本線で特急として走るE351系は見られなくなってしまいますね。
札幌~函館間特急「北斗」全列車を「スーパー北斗」化、キハ183系は廃車へ
JR北海道では、札幌~函館を結ぶ在来線特急「北斗」の全列車を、新製したキハ261系で運転する「スーパー北斗」に格上げします。これで、特急「北斗」は消滅し、全列車が「スーパー北斗」になります。(それなら全て「北斗」でもよさそうですが…)
特急「北斗」に使われていたキハ183系の車両は、JR北海道のプレスリリースによると、
今回の261系20両の新製投入に伴い、老朽・劣化の進む183系0代残り14両を順次廃車いたします。
とありますので、札幌~函館間ではキハ183系は見られなくなりそうです。残りのキハ183系は、石北本線を走る特急「オホーツク」と「大雪」のみとなります。
新幹線は利便性向上へ、東京発着は増便
新幹線に関しては、大幅な改正はありませんが、いくつか気になる点をピックアップしてみます。
新潟駅での新幹線「とき」と在来線特急「いなほ」の平面乗り換え開始
新潟駅では在来線を高架化する工事が進められていますが、2018年4月には高架ホームが完成します。これに伴って、上越新幹線「とき」と羽越線の特急「いなほ」が、同一ホームで乗り換えられるようになります。
また、これにより、乗り換え時間が短縮され、首都圏と庄内地方の所要時間が、平均で4分ほど短縮されるようです。
北海道新幹線の終点、新函館北斗駅でも、一部のホームで平面乗り換えができますが、階段を上り下りする必要がなく、とても便利です。
東北新幹線「はやて」を「はやぶさ」化、東京発着の「はやて」は間もなく消滅か?
東北新幹線では、東京~盛岡を結ぶ「はやて」2往復を、E5系車両に置き換え「はやぶさ」として運転します。最高速度が320km/hに引き上げられるため、東京~盛岡間の所要時間が10~11分短縮されます。
2002年の東北新幹線八戸延伸時に投入された「はやて」。当時は速達列車につけられた、いわば東北新幹線のエース的な愛称でしたが、2011年の「はやぶさ」投入時にその座を失いました。その後も、ダイヤ改正のたびに「はやぶさ」の本数が増加し、「はやて」は減っていく一方。いまや、東京発着の「はやて」号は、上り2本、下り3本しかありません。
その貴重な(?)「はやて」が、さらに2往復減ってしまいます。このままだと、東京行きの「はやて」は消滅、東京発の「はやて」は1本のみとなります。これとは別に、新青森・盛岡~新函館北斗間にE5系で運転される「はやて」が残っていますが、それも早朝・夜間の数本のみ。いずれ、「はやて」の愛称は消えてしまうのでしょうか。
ちなみに、「はやぶさ」は、「はやて」から変更になる2往復に加え、さらに1往復が純粋に増発、下り1本は運転区間延長となります。こちらは絶好調のようです(笑)
JR北海道のローカル線の運転時刻見直し
ダイヤ改正では、各路線で、細かな運転時刻の見直しが行われています。主に、乗り換えの改善や、運転間隔の見直しなどによるものが多いです。ここでは、乗り鉄としてちょっと気になるJR北海道の運転時刻の見直しについてご紹介します。
札沼線 新十津川駅の滞在時間が20分拡大!
JR北海道の札幌~新十津川を結ぶ札沼線(さっしょうせん)の末端部分、浦臼~新十津川は1日1往復しか列車が走っていません。その貴重な1往復の上り列車の運転時刻が、20分繰り下がることになります。
これによって、これまで12分しかなかった新十津川駅の滞在時間が、32分に拡大されることになります。
- ダイヤ改正前: 石狩当別 → 新十津川 09:28着,新十津川 09:40発 → 石狩当別 11:03着
- ダイヤ改正後: 石狩当別 → 新十津川 09:28着,新十津川 10:00発 → 石狩当別 11:23着
1日に一度しか列車がやってこない新十津川駅の滞在時間が増えますので、乗り鉄の方に朗報(?)です。なお、石狩当別では、ダイヤ改正前と同じ時刻の札幌行きの列車に乗り継ぐことができます。
当然のことながら、札沼線の末端部分は、JR北海道が公表した「単独では維持できない線区」に含まれています。近い将来、廃止されてしまう可能性も高そうですので、訪問される方はお早めに。
根室本線 新得→帯広の普通列車の運転時刻見直しで代行バスからの乗り換えが可能に!
根室本線の東鹿越~新得間は、2016年の台風被害により運休となったままで、代行バスが運転されています。代行バスは、運休前に走っていた普通列車よりも所要時間がかかるため、新得駅で帯広方面への普通列車の乗り継ぎができなくなっていました。
今回のダイヤ改正では、新得発帯広行きの普通列車の運転時刻が繰り下げられ、代行バスからの乗り継ぎができるようになります。これにより、代行バスから普通列車を乗り継いだ場合の帯広への到着時刻が、1時間以上早くなります。
- ダイヤ改正前: 滝川 05:49発 → 東鹿越 08:04着/08:09発 → 新得 09:19着/10:45発 → 帯広 11:34着/12:42発 → 釧路 16:10着
- ダイヤ改正後: 滝川 05:49発 → 東鹿越 08:04着/08:09発 → 新得 09:19着/09:29発 → 帯広 10:25着/10:25発 → 釧路 13:13着
斜字の部分が代行バスです。現在のダイヤでは、帯広10:25発の釧路行きの普通列車(太字の部分の列車)があります。おそらく、この列車の運転時刻も繰り下がり、帯広駅で乗り継げるようになると思いますので、釧路到着時刻が3時間近く早くなることになります。
青春18きっぷで旅をする旅行者にはありがたいですが、代行バス前提の運転時刻の見直しなので、素直に喜べないところもありますね。
以上、2018年3月のJRダイヤ改正について、乗り鉄的視点でポイントをまとめてみました。JR九州以外は比較的小幅な改正ですが、JR九州の大幅減便は衝撃的でした。減便が乗客減につながり、さらに減便…という悪循環に陥らないことを願うばかりです。
コメント
はじめまして。
初めてコメント致します九州在住のliner883と申します。
今回の九州のダイヤ見直しには驚きました。
鉄道事業はいくら減便したところでインフラ部分の維持費用はほとんど変わらないため、特に幹線の減便には驚いています。
それにしても上場後のJR九州の鉄道事業に対する合理化策は正直露骨過ぎだと感じております。
ただ、今回の見直しや北海道の例は、鉄道やバス、道路ネットワーク含めて、地域交通に対し国民がもっと議論を深める必要があると警鐘を鳴らしているように感じています。
これからもブログ記事を楽しみにしております。
liner883さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
JR九州の大幅減便は驚きましたね。上場したとはいえ、ここまでやるかと…。
ただ、一方で、JR九州は純粋な民間企業でもあるので、大赤字の路線をいつまでも放置しておくわけにはいかないのですよね。
ご指摘のように、鉄道だけでなく、他の交通機関も含めて、地方の公共交通をどうやって維持していくのか、その議論が必要ですよね。
JR北海道の問題がその先例になるのではないかと、注目しています。
これからも、よろしくお願いします。