高崎と下仁田を結ぶ上信電鉄「上信線」は、2両編成の電車が行き来する地方私鉄路線です。高崎近辺を除けば、沿線には長閑な田園風景が広がりますが、この鉄道は世界遺産「富岡製糸場」へのアクセス路線でもあります。そんな上信電鉄「上信線」に久々に乗車してきましたので、乗車記をお届けします。
上信電鉄「上信線」とは?
上信電鉄(上信電鉄株式会社)は、群馬県の鉄道会社です。鉄道以外にも路線バスなどを運行しています。鉄道路線は「上信線」の1路線のみです。
その「上信線」ですが、高崎駅と下仁田駅を結ぶ全長33.7kmの鉄道路線です。全線が電化されていますが単線です。
地図を見るとわかりますが、上信電鉄「上信線」は、利根川水系の烏川の支流「鏑川」(かぶらがわ)に沿って走ります。上信線は関東平野の北西のはずれに位置しますが、鏑川がつくる富岡盆地に沿っているため、それほど大きな勾配はなく、全体的に田畑が広がる田園風景の中を走っていきます。
ちなみに、会社名、路線名の「上信」の「上」は上州、「信」は信濃のことです。もともと、下仁田から先、長野県の佐久地域まで延伸し、小海線の羽黒下駅に接続する計画がありましたが、残念ながら実現しなかったのです。
上信電鉄「上信線」の駅数は21。全長34km弱の鉄道路線にしては多いほうで、高崎周辺と、富岡周辺では、駅間距離が1キロに満たないところも多くあります。このあたりは、地方私鉄らしいですね。
上信電鉄「上信線」の乗車におすすめのきっぷ
上信電鉄を利用しての旅行や乗り鉄におすすめのフリーきっぷ、割引きっぷをまとめておきます。
- ぐんまワンデーパス
- 利用期間: ~2024年3月31日(日)の毎日
- 発売期間: ~2024年3月31日(日)
- フリー区間: 群馬県内のJR線、上信電鉄上信線、上毛電気鉄道線、東武線など
- 発売金額(紙のきっぷ): 大人 2,670円 小児 1,330円
- 発売金額(デジタル版): 大人 2,370円 小児 1,180円
- 発売箇所: フリーエリア内の JR東日本の主な駅の指定席券売機、みどりの窓口、主な旅行会社
JR東日本が、毎年、期間限定で発売しているフリーきっぷです。JR線だけでなく、上信電鉄上信線にも乗車できます。スマートフォンから購入できるデジタル版「ぐんまワンデーローカルパス」の価格が2,370円ですので、上信線の高崎~下仁田間の往復(2,260円)でほぼ元を取ることができます。
JR線などにも乗車する場合には、まず「ぐんまワンデーパス」がおすすめです。詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
- 一日フリー乗車券
- 利用期間: 通年
- 発売期間: 通年(利用当日も購入可能)
- フリー区間: 上信線全線(高崎~下仁田間)乗り降り自由
- 発売金額: 大人 2,260円 小児 1,140円
- 発売箇所: 高崎駅・吉井駅・上州福島駅・上州富岡駅・下仁田駅
上信電鉄上信線の乗り降りにおすすめなのが、「一日フリー乗車券」です。上信線の全線に1日乗り降り自由で、価格は2,260円。高崎~下仁田間の片道運賃が1,130円ですから、単純に往復すれば元が取れますし、1回でも途中下車すればお得になります。
- 富岡製糸場見学往復割引乗車券
- 利用期間: 通年
- 発売期間: 通年(利用当日も購入可能)
- きっぷの効力
- 高崎~上州富岡間1往復乗車可能
- 往路・復路ともに1回に限り途中下車可能
- 富岡製糸場見学料(1,000円)がセット
- 発売金額: 大人 2,200円 小児 840円
- 発売箇所: 高崎駅・上州富岡駅
世界遺産「富岡製糸場」の見学に便利でお得なのが「富岡製糸場見学往復割引乗車券」です。高崎~上州富岡間の往復乗車券に、富岡製糸場見学料(1,000円)がセットになって、420円もお得になります。
上信電鉄「上信線」乗車記
2021年5月の平日、上信電鉄「上信線」に乗車してきましたので、乗車記をお届けします。きっぷとしては、前述の「ぐんまワンデーパス」を利用しました。
※列車のダイヤは乗車そした2021年5月時点でのものですので、ご了承ください。
上信線の列車は高崎駅0番線から発車!
2021年5月下旬の平日、高崎駅の0番線ホームにやってきました。0番線は、高崎駅の最も西側のホームです。写真の左側の柵のむこうが1番線だったのですが、今は使っていないようです。
改札を入ると、0番線のホームに設置されたベンチには、たくさんの人が腰かけていて、電車を待っています。大半は若い人でしたが、平日の午前8時台ですので、大学や学校への通学でしょう。
高崎駅のホームの端、トイレの横には、古い車両が待合室として置かれていました。ただ、残念ながら、新型コロナウイルス感染症対策のため、座席部分は閉鎖されていて、車端部の自販機が置いてあるところにしか入れませんでした。
発車時刻の5分ほど前に、高崎行きの電車としてやってきました。車両は700形。JR東日本の元107系電車です。高崎など北関東を中心に活躍していた車両ですので、上信電鉄にやってきても違和感はありませんね。もっとも、カラーリングはだいぶ変わっていますが。
車内はロングシートです。3つのドアの間に長いロングシートがあります。
車端部のここにだけ、2席分のクロスシートがあります。そういえば、JR東日本の211系にもこんな座席がありましたね。左側はトイレではなく、「機器室」のようです。
※車内の写真は下仁田到着前、乗客が私以外みな下車してしまってから撮影したものです。
空席がぽつぽつあるものの、立ち客も若干いるくらいの乗車率で、08時21分、高崎を発車しました。
烏川を渡って田畑が目立つ郊外へ
一つ目の南高崎駅までは、高崎の市街地の中を走っていきます。その後、徐々に住宅街のような雰囲気に変わり、2つめの佐野のわたし駅を出ると、烏川を渡ります。
烏川は、この場所より少し下流で、これから上信線が沿って走る鏑川と合流します。烏川の上流側(北西側)に見えているのは榛名山でしょうか。
08時33分、高崎商科大学前駅に到着。駅名のとおり、近くに大学があるようで、かなりの乗客が下車しました。この2つ先の西山名駅でも多くの学生らしき乗客が下車したのですが、この列車で大半の乗客が下車した2つの駅が、両方とも無人駅というのも面白いですね。学生さんは定期券利用が多いですので、ワンマン運転の運転士だけでも問題が少ないのでしょうね。
このあたりから、住宅よりも田畑が目立つようになってきます。土地柄か、水田よりも野菜などの畑が目立つようです。
この時期は、ちょうど小麦の収穫期のようで、一面、黄金色に染まった麦畑もありました。秋に種をまいて、6月頃に収穫するのだそうです。
前述のとおり、西山名駅でも大量下車があり、車内はガラガラに。9時ちょうどに上州富岡駅に到着しましたが、乗降はほとんどありませんでした。
世界遺産「富岡製糸場」最寄り駅の上州富岡駅で途中下車!
上州富岡駅で途中下車します。実際には、下仁田まで乗り通したあと、高崎へ戻る途中で下車しました。
上州富岡駅といえば、世界遺産「富岡製糸場」の玄関口。前回、この駅を訪れたのは2011年。世界遺産登録前でしたが、こんなにきれいな駅ではありませんでした。どうやら、世界遺産登録と同時に、新たな駅舎が供用開始されたようです。
富岡製糸場の建物は煉瓦造りなのですが、それを模したような煉瓦風の建物になっています。
改札口には、列車の発車案内表示器も新設されていました。この改札口に向かって右側に待合室があります。待合室はそれほど大きくはないですが、出札窓口とハイヤーの窓口がありました。
元からあると思われるホーム上の木造の上屋は健在です。島式ホームに木造の上屋と、新築された駅舎のギャップが、なかなかすごいことになっています(笑)
駅舎側にもホームがあります。上州富岡駅発着の列車がこのホームを使うようですが、日中時間帯は島式ホームのほうしか使われていないようです。
それに、構内踏切も残ったまま。駅舎を新築するなら跨線橋でも設置すればと思いましたが、有人駅ですし、列車の本数も少ないので、構内踏切でも問題ないのかもしれません。むしろ、バリアフリーには、こちらのほうが良いのかもしれません。
ところで、上州富岡駅で途中下車したのは、駅舎を眺めるためではありません。もちろん、富岡製糸場を見学するためです。
山間部を経由して終点の下仁田駅へ
上州富岡駅から先も、しばらくは田園風景が続きます。上の写真は、上州七日市駅から上州一ノ宮駅へ向かう途中ですが、少し高いところを通るため、見晴らしが良かったです。
このあたりから、よく見るとネギ畑が多くなってきます。他の作物の畑に比べると地味なので、よく見ないとわかりにくいのですが、さすがにネギの産地、下仁田です。
「なんじゃい」。「南蛇井」と書きますが、面白駅名の一つですね。
千平駅から終点の下仁田駅までの間は、これまでの田園風景から一変して、山間部に入ります。鏑川がつくる急峻な谷を見下ろしながら、山の斜面と谷の間のわずかな平地を縫うように、くねくねと曲がりながら進んでいきます。
谷の下のほうには鏑川の流れも見えるのですが、木に遮られて、きれいに見えるところはほとんどないですね。
高崎駅から約1時間、09時23分に終点の下仁田駅に到着しました。終点で下車したのは、私以外にもう1名のみでした。
反対側のホームも700形が停まっていましたが、こちらはJR時代のカラーリングのまま。側面の「JR」のマークに似せた「JDX」のマークがなかなか良いですね。
700形は2019年に運転を開始したばかりですが、現在では5編成もあるようで、あっという間に上信電鉄の主力車両となっています。
折り返し列車の発車時刻まで20分ほどあるので、駅舎の外へ出てみました。下仁田駅の駅舎は、ローカル線の終着駅といった雰囲気が漂う、味のある駅舎です。
下仁田駅の駅舎の右側には、上信ハイヤーの事務所があります。こちらも下仁田駅の駅舎と同じようなデザインの建物です。
駅舎の中には、待合室と出札窓口があります。終日駅員がいる有人駅で、この時も地元の方がきっぷを買われていました。
このあと、折り返しの09時42分発の電車で、高崎方面へと戻りました。
以上、「【上信電鉄 上信線 乗車記】鏑川沿いの田園地帯を走る世界遺産へのアクセス路線!」でした。世界遺産の富岡製糸場へのアクセス路線ではありますが、終点の下仁田駅まで続く長閑な田園風景や、下仁田駅の味のある駅舎は、のんびりとした鉄旅を楽しむにはぴったりの路線です。
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