岩手・三陸エリアの鉄道は、三陸海岸に沿って走る三陸鉄道リアス線や八戸線、内陸部ののどかな田園風景の中を走る釜石線、北上線と、対照的な車窓を楽しむことができる路線がそろっています。この記事では、岩手・三陸エリアのおすすめの路線や列車、沿線の観光スポット、お得なきっぷなどを紹介します。
リアス式海岸が続く三陸沿岸の鉄道の旅
岩手県から青森県にかけての三陸海岸の沿線には、三陸鉄道や八戸線が走っています。いずれも太平洋の車窓が素晴らしく、リアス式海岸の複雑に入り組んだ地形が車窓からもよくわかります。
南端の盛(さかり)駅から北端の久慈駅までを結ぶ三陸鉄道リアス線と、久慈駅から八戸駅を結ぶJR八戸線を乗り継げば、三陸海岸に沿って鉄道の旅ができます。南の盛駅から北上する形で、各路線を紹介します。
三陸鉄道リアス線(盛~釜石)
三陸鉄道リアス線は、盛~久慈間の160km以上にも及ぶ長大な第三セクター路線ですが、その運行系統は、南側の盛~釜石、中間の釜石~宮古、そして北側の宮古~久慈間の3つに分かれています。
中間の釜石~宮古間は、JR山田線(盛岡~宮古~釜石)の一部でしたが、2011年の東日本大震災で被災。JR東日本が復旧させたあと、三陸鉄道に移管され、2019年3月に三陸鉄道リアス線の一部として運転を再開したという経緯があります。
まずは、三陸鉄道リアス線の南側、以前は「南リアス線」と呼ばれていた盛~釜石間に乗車してみましょう。
三陸鉄道リアス線の盛~釜石間は、これぞリアス式海岸という地形の中を走ります。入り江を作る小さな岬や半島が海に突き出ているところを短いトンネルで通過し、トンネルを抜けるとその入り江の穏やかな車窓が広がる……。そんな車窓を眺めることができます。
上の写真は、恋し浜駅近くにある越喜来湾(おきわいわん)ですが、ここも典型的なリアス地形。湾の向こうには南側に張り出した岬の一部が見えていますね。
三陸鉄道リアス線の盛~釜石間の車窓については、以下の乗車記をご覧ください。まだ「南リアス線」と呼ばれていたときに乗車しました。
三陸鉄道リアス線(釜石~宮古)
三陸鉄道の中間となる釜石~宮古間は、前述のようにかつてはJR山田線だった区間です。東日本大震災の被害が最も大きく、2019年3月にようやく復旧。同時に、三陸鉄道に移管されました。
この区間も、リアス式海岸の複雑な地形の中を走っていきます。両石駅付近からの両石湾、大槌駅付近からの大槌湾、浪板海岸~岩手船越駅付近からの船越湾などを車窓から見ることができます。
津波の被害が大きかったこの区間は、建て直された新しい駅舎が多くなっています。三陸海岸の車窓に加えて、そんな駅舎を眺めながらの旅ができます。
三陸鉄道リアス線(宮古~久慈)
三陸鉄道リアス線の北部、宮古~久慈間は、リアス式海岸があまり発達していないところが多いうえに、海から少し離れた海岸段丘をトンネルで通過してしまうところが多いため、太平洋を眺められる区間は多くありません。
それでも、上の写真の「大沢橋梁」や「安家川橋梁」では、少し高いところから海岸線を見下ろすことができる絶景ポイントがあります。
三陸鉄道リアス線の中でも乗客が少ない区間ですので、のんびりとした旅を楽しむことができるでしょう。
太平洋の車窓が素晴らしい「八戸線」
三陸鉄道の久慈駅と、東北新幹線の八戸駅を結ぶ路線がJR八戸線です。三陸鉄道と乗り継いで、三陸海岸に沿って鉄道の旅を楽しむことができます。
八戸線も三陸海岸に沿っていますが、このあたりの海岸線は直線的で、太平洋の大海原を感じることができます。三陸鉄道のリアス式海岸とは対照的です。同じ海の車窓といっても、地形によって印象がかなり違いますので、三陸鉄道と乗り継いで比較してみるのも楽しいです。
八戸の市街地へ入る直前、陸奥白浜~鮫間が車窓のハイライト! 春~夏にウミネコが繁殖のために集まってくる「蕪島」をはじめ、風光明媚な車窓を楽しむことができます。
八戸線の乗車記については、以下の記事をご覧ください。
三陸鉄道リアス線の乗車におすすめのお得なきっぷ
三陸鉄道はJR線に比べると運賃が高めですが、以下のようなフリーきっぷや割引きっぷを発売しています。
きっぷ名 | 盛~釜石 | 釜石~宮古 | 宮古~久慈 | 有効期間 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
全線フリー乗車券 | 〇 | 〇 | 〇 | 2日間 |
大人 6,100円 小人 3,050円 |
1日フリー乗車券 (盛~釜石) |
〇 | × | × |
土休日 1日間 |
大人 1,500円 小人 750円 |
1日フリー乗車券 (釜石~宮古) |
× | 〇 | × |
土休日 1日間 |
大人 2,400円 小人 1,200円 |
1日フリー乗車券 (宮古~久慈) |
× | × | 〇 |
土休日 1日間 |
大人 2,600円 小人 1,300円 |
片道途中下車きっぷ (盛⇔久慈) |
⇔ | ⇔ | ⇔ | 2日間 |
大人 3,780円 小人 1,890円 |
片道途中下車きっぷ (盛⇔宮古) |
⇔ | ⇔ | × | 1日間 |
大人 2,310円 小人 1,160円 |
片道途中下車きっぷ (釜石⇔久慈) |
× | ⇔ | ⇔ | 2日間 |
大人 3,050円 小人 1,530円 |
片道途中下車きっぷ (宮古⇔久慈) |
× | × | ⇔ | 1日間 |
大人 1,890円 小人 950円 |
リアス線全線に2日間乗り降り自由となる「全線フリー乗車券」は、便利でわかりやすいきっぷですが、大人用で6,100円と高額です。
乗り歩く区間が決まっているのであれば、各区間で発売されている「1日フリー乗車券」がよいでしょう。また、途中下車はできますが、戻ることができない「片道途中下車きっぷ」も便利です。「片道途中下車きっぷ」の価格は、片道の運賃と同じです。それで途中下車ができるようになりますので、途中下車をしながら旅をする場合には便利です。
三陸鉄道のお得なきっぷについては、三陸鉄道のWebサイトをご確認ください。
岩手内陸部を走るローカル線の旅
岩手県の内陸部には、南北を貫く東北新幹線や東北本線の主要駅から、東側の三陸方面と、西側の秋田方面へとローカル線が伸びています。盆地ののどかな田園風景や、峠越えの険しい地形など、車窓の見どころが多い路線が揃っています。
ここでは、岩手県の内陸部を走るローカル線を乗車記とともに紹介します。
オメガループが見どころの「釜石線」
釜石線は、東北本線の花巻駅と三陸沿岸の釜石駅を結ぶJR東日本の路線です。いわゆるローカル線ですが、普通列車以外に、盛岡~花巻~釜石間を直通する快速「はまゆり」が1日3往復走っています。快速「はまゆり」にはリクライニングシートの指定席がありますので、車窓を眺めたい場合には指定席を確保しておくことをおすすめします。
釜石線の車窓の見どころは、遠野付近ののどかな田園風景が続く遠野盆地と、高低差300メートルもある仙人峠を越える通称「オメガループ」です。
オメガループは、大きな高低差を超えるために「Ω」の形に線路が敷かれた、いわゆるループ線です。これから通る線路を車窓から眺めることができる面白い区間です。オメガループをよく眺めたい場合には、指定席の「A席」を確保しましょう。
釜石線の中間にある遠野駅は遠野観光の玄関口。「遠野物語」や遠野民話、カッパで有名です。市内には観光スポットが点在していますので、途中下車して観光するのもいいですし、一泊しても良いでしょう。観光スポットについては、以下の遠野市観光協会公式サイト「遠野時間」をご覧ください。
以下の記事で釜石線の乗車記を掲載しています。快速「はまゆり」の指定席の乗車記ですので、指定席の様子もわかりますので、ぜひご覧ください。
錦秋湖の眺めが美しいローカル線「北上線」
北上線は、東北新幹線・東北本線の北上駅と秋田県の横手駅を結ぶローカル線です。北上駅付近の田園風景が広がる北上盆地から次第に山間部へと分け入り、湯田ダムによって作られた錦秋湖、そして、湯田高原付近の山深い区間と、車窓の変化に富んでいます。
途中の「ほっとゆだ駅」は湯田温泉郷への玄関口ですが、駅舎にも日帰り温泉がある珍しい駅です。途中下車して温泉を楽しむこともできますね。
以下の記事は、冬の青春18きっぷで雪景色の北上線に乗車したときの乗車記です。錦秋湖は紅葉が美しいのですが、モノトーンの車窓も素晴らしいです。
以上、岩手・三陸エリアのおすすめの路線や列車、沿線の観光スポット、お得なきっぷなどについてお届けしました。鉄道に乗って、リアス式海岸の美しい車窓や、内陸部ののどかな田園風景を楽しんでみましょう。
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