茨城県の海沿いの町、ひたちなか市を走る「ひたちなか海浜鉄道」。勝田~阿字ヶ浦の全線で14.7kmの小さな鉄道ですが、ひたち海浜公園やおさかな市場などへのアクセスにも使えます。鉄道ファン的には、日本各地で活躍していた古い車両にお目にかかれるのも嬉しいですね。
この記事では、ひたちなか海浜鉄道の乗車レポートと、沿線のおすすめ観光地をご紹介します。
ひたちなか海浜鉄道とは?
ひたちなか海浜鉄道は、茨城県のひたちなか市を走る第三セクター鉄道です。路線名は「湊線(みなとせん)」。JR常磐線の特急停車駅「勝田駅」と、太平洋側の阿字ヶ浦海岸にほど近い「阿字ヶ浦(あじがうら)駅」を結ぶ、全長14.7kmの非電化路線です。
もともとは、茨城交通が運行する路線でしたが、不採算路線として廃止の話が持ち上がったときに、ひたちなか市が出資する第三セクター鉄道「ひたちなか海浜鉄道」として生まれ変わりました。
「ひたちなか海浜鉄道」が誕生したのが2008年。2018年の今年は、運行開始10周年にあたります。
ひたちなか海浜鉄道 乗車レポート
それでは、早速、ひたちなか海浜鉄道 湊線に乗車してみましょう。
2012年夏に初めてひたちなか海浜鉄道に乗車したときと、2018年春に乗車したときの写真を交えてお送りします。
勝田駅1番線ホームから乗車!
JR常磐線の勝田駅。特急「ひたち」や「ときわ」も停車する特急停車駅です。茨城県の県都、水戸駅のお隣です。
ひたちなか海浜鉄道湊線は、勝田駅の一番端にある1番線ホームから発車します。JRの改札を出る必要はないですが、JRのホーム(2~4番線)との間には中間改札があります。
この車両は、兵庫県の元三木鉄道で走っていた「ミキ300形」です。
ちなみに、SuicaなどのICカードは使えませんので、きっぷを購入しましょう。乗り歩きを楽しむ場合には、「湊線1日フリーきっぷ」(大人900円) がおすすめです。勝田~阿字ヶ浦の普通運賃が片道570円ですので、単純に往復するだけでもおトクですね。
田園風景を進み中心駅 那珂湊(なかみなと)駅へ
勝田駅を出て、常磐線の線路と分かれて進路を南東に取ると、すぐに市街地を抜け、田園風景が広がります。駅の周囲は住宅街ですが、駅から離れると田んぼや畑が一面に広がります。
田園風景の中をコトコトと走ること15分ほどで、湊線の中心駅、那珂湊駅に到着します。
那珂湊駅は、3つのホームがあり、ほぼすべての列車が、この駅で行き違いをします。勝田を除くと、湊線では唯一の有人駅です。
ごらんの通り、ホームはかなり立派です。ほとんどが1両、ラッシュ時に2両のディーゼルカーが走るだけの湊線ですが、那珂湊駅に限らず、湊線の駅は、ホームが異様に長いのです。これは、かつて、常磐線経由で上野から湊線に直通する「急行あじがうら」という列車(7両編成)が走っていた名残だそうです。
那珂湊駅の車両基地は古いディーゼルカーの宝庫!
那珂湊駅に隣接して車両基地があります。ここには、日本各地で活躍していた古いディーゼルカーが集まっています。ひたちなか海浜鉄道が、古い車両を買い取っているのですね。
こちらは、茨城交通時代に新製された「キハ37000形」です。可愛らしい動物のイラストが描かれた「アニマルトレイン」として運転されています。
こちらは、JR東海(東海交通事業)から購入した「キハ11形」です。このキハ11-6は平成5年製ですが、ひたちなか海浜鉄道にやってきたのは平成27年。湊線の車両では新参者ですね。2012年に乗ったときには、まだいませんでした。
茨城交通時代に新製された「キハ3710形」です。車内は長い(?)ロングシート。ひたちなか海浜鉄道の車両の中では、最もモダンなデザインの車両です。
一面の畑が広がる那珂湊~阿字ヶ浦
那珂湊駅を出ると、進路を北東に変えて進みます。ここから先は、海岸沿いを通るのですが、線路は少し内陸寄りに敷かれているためか、車窓からは、ほとんど太平洋を眺めることができません。
その代わりに車窓に広がるのが、一面の畑です。上の写真は4月中旬に撮影したものですが、まだ作物が植えられていないので少し味気ないですね。
阿字ヶ浦駅近くの踏切です。線路を見ると、コンクリートの枕木に、ローカル線にしては太い立派な線路が敷かれています。
地方鉄道は、線路や路盤の整備にお金をかけられないため、安全面には問題がなくとも、乗り心地が悪いことが多いのですが、ひたちなか海浜鉄道湊線は、全線に渡って、乗り心地は上々です。
東日本大震災のときに、湊線は大きな被害を受けて、4ヶ月ほど不通となりました。幸い、車両や人的被害はなかったのですが、線路が曲がったり、路盤が崩れたりして、復旧には時間を要しました。そのときに、新しい枕木や線路に交換されたのかもしれませんね。
終点でも無人駅の阿字ヶ浦駅
那珂湊から15分弱で、終点の阿字ヶ浦駅に到着です。終着駅ですが、ホームが一つだけの無人駅です。
駅前にはバス停があり、ひたちなか市のコミュニティバス「スマイルあおぞらバス」が1日数本運転されています。これに乗れば、ひたち海浜公園にアクセスできます。
阿字ヶ浦駅のホームの横には、数年前まで湊線で活躍していた古いディーゼルカーが留置されています。
青いほうが北海道の羽幌炭礦鉄道で使われていて、昭和46年に茨城交通が買い取った「キハ222形」。後ろの国鉄色のほうが「キハ2000形」。東急車輛製で、昭和44年に留萌鉄道から購入したものです。
キハ222のほうは、塗装が剥げて可哀想な姿になってしまっています。
ということで、あっという間に終点に到着してしまいました(笑)
沿線のおすすめ観光スポットを紹介!
ひたちなか海浜鉄道には、各地のローカル線を走っていた車両が集まっていますので、鉄道ファンにはそれだけで魅力的な路線でしょう。
でも、せっかくひたちなか海浜鉄道を訪れるのであれば、沿線の魅力的な観光スポットにも足を向けてほしいですね。
ネモフィラで有名な国営ひたち海浜公園
沿線随一の観光スポットは、終点の阿字ヶ浦駅から、コミュニテイバスでアクセスできる「国営ひたち海浜公園」でしょう。
最近は、4月中旬~5月上旬に見ごろを迎える「ネモフィラ」の花で有名です。
阿字ヶ浦駅から、コミュニティバス「スマイルあおぞらバス」でアクセスできます。本数が多くないので、あらかじめ時刻を調べて、コミュニティバスに接続する湊線の列車に乗りましょう。
阿字ヶ浦駅を経由するのは、スマイルあおぞらバスの「那珂湊コース」です。次に紹介する「那珂湊おさかな市場」も通ります。
また、阿字ヶ浦駅から徒歩でもアクセスできます。一番近い入口は「南口」で、徒歩約20分です。ただし、ネモフィラが咲きほこる「みはらしの丘」は、南口からは最も遠い場所にあり、南口のゲートからさらに20分程度かかります。少なくとも片道はバスを利用したほうがよさそうですね。
那珂湊おさかな市場
湊線の中心駅、那珂湊駅から、徒歩10分のところにあるのが、「那珂湊おさかな市場」です。
www.nakaminato-osakanaichiba.jp
その名のとおり、魚市場です。那珂湊漁港など、近隣の漁港で水揚げされた新鮮なお魚が売られています。また、海鮮丼や寿司などの食事処も充実していますので、ランチにも最適です。
スマイルあおぞらバスの那珂湊コースは、おさかな市場を通ります。ひたち海浜公園も通りますので、公園で遊んだあとに、おさかな市場でランチにするのもよさそうです。
ひたちなか海浜鉄道湊線 ひたち海浜公園への延伸計画
今回ご紹介した「ひたちなか海浜鉄道 湊線」には、ひたち海浜公園への延伸計画があります。
阿字ヶ浦駅から、ひたち海浜公園の西口付近まで、約3.1kmを延伸する計画です。
2018年になって、計画が若干見直され、延伸費用が当初計画の65億円から78億円へ、新駅は3駅から2駅へと変更になっているようです。上記記事によれば、2018年中の事業許可取得を目指しているとあり、現在、まさに進行している計画のようです。
2024年の運行開始を目指しているそうですが、この延伸が実現すれば、年間200万人が訪れる「ひたち海浜公園」へのアクセスとして、ひたちなか海浜鉄道 湊線が見直されることになりそうです。ネモフィラの季節には、1両や2両の列車には乗り切れないほどの観光客が押し寄せる、というような光景が見られるかもしれませんね。
廃線が相次ぐ地方ローカル線が多い中で、明るいニュースですね。
以上、ひたちなか海浜鉄道と観光スポットの紹介でした。東京からも比較的近く、沿線に見どころの多い路線ですので、観光がてら、汽車旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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