茨城県の第三セクター鉄道「ひたちなか海浜鉄道」の延伸計画が国交省に承認されました。現在の終点の阿字ヶ浦駅から、国営ひたち海浜公園西口付近までの約3.1kmを延伸し、新駅を2駅設ける計画となっています。延伸開業予定は2024年春。ネモフィラで有名な国営ひたち海浜公園へのアクセスとして期待できそうです。
ひたちなか海浜鉄道、国営ひたち海浜公園西口まで3.1kmを延伸へ
2021年1月15日、国土交通省は、ひたちなか海浜鉄道が申請していた延伸計画を許可しました。ひたちなか海浜鉄道は2020年8月に延伸計画を国土交通省に申請していましたが、今回、その計画が許可されたことになります。
ひたちなか海浜鉄道の延伸計画は以下のとおりです。
- 延伸区間: 阿字ヶ浦~国営ひたち海浜公園西口付近の約3.1km
- 勝田駅からの全長は17.4km
- 新駅: 2駅
- 延伸区間の開業予定日: 2024年春
- 事業費: 78億円(事業者:1/3, 自治体:2/3をそれぞれ負担)
詳しくは、国土交通省とひたちなか海浜鉄道のプレスリリースをご確認ください。
ひたちなか海浜鉄道 延伸計画の詳細
ひたちなか海浜鉄道は、現在、JR常磐線の勝田駅から、那珂湊駅を経由して阿字ヶ浦駅まで、全長約14.3kmの「湊線」を運行しています。
勝田駅から、那珂川の北側の平地を南東方向へ進み、沿線の中心駅、那珂湊駅へ。その後、太平洋沿いを北へ進み、阿字ヶ浦海水浴場がある阿字ヶ浦駅へと至ります。
(出典)ひたちなか海浜鉄道(株)湊線の第一種鉄道事業許可について(国土交通省 2021年1月15日)
今回の計画では、阿字ヶ浦駅から、阿字ヶ浦町内を通り、県道247号線沿いに北西へと進み、国営ひたち海浜公園の西口付近まで延伸されることになります。
上の図にあるように、阿字ヶ浦駅の少し北側に新駅(中間駅)が設けられます。延伸部分はほぼ高架となり、新たに終点となる国営ひたち海浜公園西口付近の新駅も、高架駅となるようです。
また、今回許可された延伸部分ではありませんが、平磯~磯崎間に新駅「美乃浜学園駅」が設けられます。
ひたちなか海浜鉄道の延伸で国営ひたち海浜公園のアクセスは多様化へ
今回のひたちなか海浜鉄道の延伸には、国営ひたち海浜公園へのアクセスとして利用してもらうことで、利用者を増加させる狙いがあります。
国営ひたち海浜公園は、春のネモフィラや秋のコキア、毎年8月に開催される「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といったイベントなど、非常に集客力のある国営公園です。
公共交通機関で国営ひたち海浜公園へ行くには、JR勝田駅から路線バスに乗るルートが一般的です。ネモフィラの季節には、ひたちなか海浜鉄道の阿字ヶ浦駅から臨時のシャトルバスが運転されますが、バスの運転本数や輸送力を考慮すると、圧倒的に勝田駅から路線バスでのアクセスが優勢です。
2024年にひたちなか海浜鉄道が、国営ひたち海浜公園西口付近まで延伸すれば、路線バスを使わずに鉄道だけでのアクセスが可能になります。
国営ひたち海浜公園の主な入場口としては西口、南口、海浜口がありますが、ネモフィラやコキアが一面を覆う「みはらしの丘」へは西口が最も便利です。ひたちなか海浜鉄道が国営ひたち海浜公園の西口付近まで延伸されれば、ネモフィラやコキアを見物する観光客の利用が期待できます。
とはいえ、ひたちなか海浜鉄道は単線・非電化の路線です。朝のラッシュ時を除くと、ほとんどの列車が1両での運転です。観光シーズンになると、どんどん増発される勝田駅からの路線バスの輸送力に比べると、心もとない状況です。
このような事情からか、国土交通省の資料では、
○延伸により、年間200万人以上が訪れる「国営ひたち海浜公園」へのアクセスの多様化が図られ、鉄道を利用して公園を訪れる利用者の増加が見込まれるとともに、併せて終端駅に交通ターミナル機能を整備することによる交流人口の拡大や地域活性化が期待される。
(出典)ひたちなか海浜鉄道(株)湊線の第一種鉄道事業許可について(国土交通省 2021年1月15日)
というように、「アクセスの多様化」という言葉が使われています。
ひたちなか海浜鉄道の延伸が、現在の路線バスに代わる交通手段になるわけではなく、選択肢として増える、という意味でしょう。
個人的には、単に選択肢が増えるだけでなく、ひたち海浜鉄道沿線の観光スポット「おさかな市場」などへ、観光客が周遊しやすいルート作りに貢献するのではないかと考えています。
近年好調なひたちなか海浜鉄道、延伸でさらなる収益増となるか?
ひたちなか海浜鉄道は、2008年、廃線の危機に瀕していた湊線を茨城交通から引き継ぎ、第三セクター路線として再スタートした鉄道です。
第三セクター化される直前には、年間輸送人員は70万人台にまて落ち込んでいましたが、ひたちなか海浜鉄道となってからは回復傾向で、2017年、2018年と、輸送人員は100万人を超えました。
高校生の通学利用を増やすために通学定期券を値下げしたり、市民団体「おらが湊鐡道応援団」と連携してさまざまな施策を打ったりして、地域の鉄道としての価値を高めてきました。その成果が、徐々に出ているということです。
少子高齢化の時代に、廃線の危機にあった鉄道を見事に復活させたひたちなか海浜鉄道。現在は新型コロナウイルスの影響で厳しい状況ですが、今回の路線延伸のチャンスを上手に活かしてくれることを期待したいですね。
以上、「ひたちなか海浜鉄道の延伸計画が承認! ひたち海浜公園西口付近までの約3.1kmを2024年に延伸開業へ!」でした。国営ひたち海浜公園へのアクセス鉄道としてどのような活躍を見せるのか。今から楽しみですね。
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国営ひたち海浜公園のネモフィラの記事です。2018年に見に行った時の記事です。
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