銚子周辺のジオスポット巡りに出かけてきたのですが、久しぶりに銚子電鉄に乗車したので、乗車記をお届けします。乗車した電車には、岩下食品とコラボした「ピンクニュージンジャー号」が連結されていましたが、車内のインテリアに度肝を抜かれました。おすすめのきっぷの情報もお届けします。
銚子電鉄とは?
銚子電鉄(銚子電気鉄道株式会社)は、銚子市にある鉄道会社です。運行する路線は銚子駅と外川駅を結ぶ全長6.4kmの「銚子電気鉄道線」の1路線のみという小さな会社です。
銚子電鉄は慢性的な赤字に苦しんでいて、鉄道の運行経費をまかなうために、「ぬれ煎餅」や「まずい棒」といったお菓子を製造・販売したり、検査費用をクラウドファンディングで募ったりと、限界鉄道会社として有名です。
これまで何度も廃止の危機がありましたが、2022年春現在、何とか鉄道の運行を継続しています。
銚子電鉄の「銚子電気鉄道線」(以下、銚子鉄道線)は、JR東日本の総武本線の終着駅である銚子駅から、こぶのように太平洋に突き出た半島を半周するように走り、終点の外川(とがわ)駅までを結びます。
駅数10駅、全長6.4km、全線を乗りとおしても20分ちょっとというミニ路線です。
銚子電鉄へのアクセス
都内から銚子電鉄へのアクセスについて、特急列車利用と普通列車利用(青春18きっぷ利用等)に分けて紹介します。
銚子電鉄へのアクセス(特急利用)
都心から銚子駅へ鉄道でアクセスする場合には、特急「しおさい」を利用します。
- 特急「しおさい」
- 運転区間: 東京~銚子
- 運転本数(土休日): 銚子行き6本、東京行き5本
- 使用車両: 255系9両編成(指定席4両、自由席4両、グリーン席1両)
特急「しおさい」は、東京~銚子を総武本線経由で結ぶ特急列車です。東京駅~銚子駅の所要時間は約2時間です。1日に5~6本ありますので、観光にも使いやすい列車です。
銚子電鉄へのアクセス(普通列車利用)
今回、銚子電鉄の起点駅となる銚子駅まで、都内の自宅から青春18きっぷを利用してアクセスしましたので、普通列車のみで都心から銚子駅へアクセスする方法もご紹介します。
- 普通列車のみでの銚子駅へのアクセス方法
- 総武本線経由
- 東京~千葉(総武本線・総武快速線)
- 千葉~銚子(総武本線)
- 成田線経由
- 東京~千葉~成田(総武本線・総武快速線、成田線)
- 成田~銚子(成田線)
- 総武本線経由
このように総武本線経由と成田線経由の2とおりのルートがあります。というのも、途中の佐倉~銚子(正確には一駅手前の松岸まで)は、総武本線と成田線の2つの路線に分かれているためです。
乗り換え案内で調べると、時間帯によって、どちらが早く着くかが異なります。所要時間重視であれば、早く着くほうのルートを利用するのが良いでしょう。
普通列車利用とはいえ、快適に移動したいのであれば、東京~千葉・佐倉・成田間で連結されている普通列車のグリーン車を利用しましょう。普通列車に連結されているグリーン車については、以下の記事でわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。
銚子電鉄の乗り歩きに便利なフリーきっぷ
銚子電鉄に乗車する際に便利なフリーきっぷを紹介します。
銚子電鉄に1日乗り放題のフリーきっぷ「弧廻手形」
銚子電鉄に1日乗り放題となるフリーきっぷが「弧廻手形」です。
- 弧廻手形
- 利用期間: 通年
- 有効期間: 1日(購入当日のみ)
- 発売箇所: 列車内、銚子電鉄の有人駅(仲ノ町、観音、笠上黒生、犬吠、外川)
- おねだん: 大人 700円,小児 350円
銚子~外川間の片道運賃が350円ですので、全線を1往復するのであれば「弧廻手形」と同じ金額になります。銚子電鉄は交通系ICカードが利用できず、現金できっぷを購入しなくてはいけないため、きっぷ購入の手間を減らすためにも「弧廻手形」の利用をおすすめします。
また、観光施設の入場料や売店での割引などのサービスも付属しています。主なものとしては、以下があります。
- 地球の丸く見える丘展望館 入場割引券(大人420円→370円)
- 銚子ポートタワー展望観 入場割引券(大人 420円→370円)
- 吉祥縁起守 引換券(飯沼観音 圓福寺)
- 犬吠駅売店 100円割引券(1,000円以上お買い上げ時)
銚子~外川間を往復するだけでも、上記のサービスを利用すれば、その分だけお得になります。
銚子電鉄以外に銚子エリアの路線バスにも乗れる「銚子1日旅人パス」
銚子電鉄1日乗り放題に加えて、銚子エリアを走る路線バスにも1日乗り降り自由となるフリーきっぷが「銚子1日旅人パス」です。
- 銚子1日旅人パス
- 利用期間: 通年
- 有効期間: 1日(購入当日のみ)
- フリーエリア
- 銚子電鉄線 前線
- 千葉交通バス 銚子市内路線バス全線
- ちばこうバス 銚子市内路線バス、岬めぐりシャトルバス(土休日のみ運行)
- 発売箇所
- 銚子電鉄 列車内、銚子電鉄の有人駅(仲ノ町、観音、笠上黒生、犬吠、外川)
- 銚子駅内観光協会
- おねだん: 大人 1,000円,小児 500円
銚子鉄道だけでなく、路線バスも活用して、銚子エリアの観光地を巡りたい場合にお得なフリーきっぷです。
「銚子ポートタワー」「ウオッセ21」など、銚子電鉄の駅から少し距離があるところを巡りたい場合には、路線バスの活用も考えたくなります。そんなときには、「銚子1日旅人パス」がお得です。
「弧廻手形」「銚子1日旅人パス」については、銚子電鉄のWebサイトをご確認ください。
【銚子駅へ】青春18きっぷの普通列車乗り継ぎで銚子駅へ
都内の自宅から銚子駅へは、春の青春18きっぷを利用して、普通列車を乗り継いでアクセスしました。
東京駅の地下ホームから発車する成田空港行きの列車に乗車します。この列車にはグリーン車が連結されているため、あらかじめモバイルSuicaで購入しておいたグリーン券を利用して、グリーン車に乗車します。
折り返し列車が少し遅れていたためか、グリーン車の清掃もそこそこに、乗車したらすぐに発車しました。
成田駅で下車して、隣のホームに停車している成田線の列車に乗り換えます。成田線の列車は209系という、かつて京浜東北線などで活躍していた車両が利用されています。
乗車した列車は4両編成。先頭と最後尾の車両はボックスシートなのですが、すでにボックスが埋まっていたため、中間車のロングシートへ。
途中、佐原駅などでそれなりの乗降がありましたが、終始、比較的空いたまま銚子駅に到着。
上のほうで銚子駅へのアクセスを紹介しましたが、青春18きっぷ利用、かつ、グリーン車を利用したいのであれば、この乗り継ぎが最も快適なのではと思います。
【銚子電鉄 乗車記1】デハ2002に乗車! 車内で「弧廻手形」を購入!
JR線で銚子駅に到着したあと、いよいよ銚子電鉄に乗り換えます。JR線の車内でもアナウンスがありましたが、銚子電鉄のきっぷやフリーきっぷは、銚子駅の窓口ではなく、車内でお買い求めくださいとのことでした。
銚子電鉄のホームは、JRの2・3番線ホームの端っこにあります。銚子電鉄のホームの前には、一応、乗り換え改札のようなものがあります。Suicaで銚子駅までやってきたら、この簡易改札機にタッチして出場処理をします。今回は青春18きっぷ利用ですので、横にいるJRの駅員さんに青春18きっぷを見せて、銚子電鉄のホームへ。
裏側から見るとこんな感じ。改札口と待合室を兼ねているようです。まあ、この写真でわかるように、建物の中を通らなくても、JR線と銚子電鉄のホームを行き来できてしまうわけですが。
銚子電鉄のホームへ移動すると、すぐに電車が入ってきました。
今回乗車する電車は、2000形という形式。元京王電鉄の車両ですが、伊予鉄道に譲渡されたあと、銚子電鉄にやってきたという「お古のお古」です。京王電鉄で走っていたときのカラーに復刻されています。
2両編成の電車ですが、銚子側のこの車両のお顔は、京王電鉄で運転されていた時のままだそうです。
外川側の車両は、2500形という形式で、少しお顔が異なります。伊予電鉄で利用されていたときに、中間車に運転台をつける改造を施されたようです。同じ形式のなのに、前後でお顔が違うのは面白いですね。
ちなみに、今回乗車した2000形は2002+2502という編成ですが、この編成は、2022年1月下旬に車両故障で運用から離脱していたものです。その影響で、朝晩の一部の列車が運休していました。京王電鉄や伊予鉄道から、代替部品の提供や技術的なサポートを受けることで、2月上旬には無事に復帰しています。今回も、元気に走っていたので、安心しました。
車内に入ると、車掌さんがきっぷを販売しています。この日は晴天の土曜日。観光客が多く、みな「弧廻手形」を購入していました。私も「弧廻手形」を購入しました。
【銚子電鉄 乗車記2】岩下食品とのコラボ車両「ニュージンジャー号」のデコレーションにびっくり!
銚子側の車両(2002)の車内は、このように赤いモケットのロングシートが並びます。ドアが大きな1枚扉であること以外は、ふつうの通勤電車のような車両ですね。
注目は、もう一両の車両です。
車内がピンク色にデコレーションされているのですが、これはやり過ぎではないかと思うくらい、徹底的にやっています(笑)
この車両は、銚子電鉄と岩下の新生姜で有名な岩下食品がコラボしてデコレーションした車両「ピンクニュージンジャー号」です。銚子在住のバルーンアーティストの方が、岩下食品のキャラクターをもとにデザインして実現したとのことです。2021年3月下旬に運行を開始しました。
車端部の座席には、岩下食品のキャラクター「岩下の新生姜アルパカ」の大きなぬいぐるみが腰かけています。他にも、岩下食品「イワシカ」というキャラクターのぬいぐるみが、あちこちに飾り付けられています。
大小さまざまな風船やバルーンがたくさんつけられていて、独特な空間を演出しています。とても鉄道車両の車内とは思えないですね。
この車両に乗ってきた観光客はみな驚き、さかんに写真を撮っていました。そういう意味では、この企画は成功だったようです。もっとも、平日のラッシュ時の運行では問題ないのかが気になりますが……。
「ピンクニュージンジャー号」については、銚子電鉄のWebサイトもご覧ください。
【銚子電鉄 乗車記3】大勢の観光客を乗せて銚子駅を出発!
「ピンクニュージンジャー号」のデコレーションに圧倒されていると、発車時刻が近づいてきました。ぽかぽか日和の週末だったためか、観光客が続々と乗車してきて、銚子駅を発車するときには、座席はほぼ埋まるくらいになっていました。
銚子駅を10時20分に出発。ポイントを通過し、ゆっくりとした速度で進んでいきます。銚子電鉄の最高速度は時速40kmですから。
銚子駅から2つ目の駅「観音駅」に到着。「観音」という駅名は、近くにある「飯沼観音」からとったものでしょうか。
一方、駅名とは異なり、駅舎は西欧風というか教会風。かつては、駅舎内でたいやきを販売していたようですが、今は無人駅のようです。たいやき屋は、犬吠駅へ移転したようです。
次の駅は「本銚子(もとちょうし)駅」。テレビ番組の企画でリニューアルされた駅舎が建っています。写真からはわかりづらいのですが、窓ガラスがステンドグラスになっているのが印象的な駅です。
本銚子駅から次の笠上黒生駅の間には、両側が緑の木々に覆われた「緑のトンネル」があります。この時期は葉っぱが落ちてしまっている木もありましたが、それでも「緑のトンネル」がよくわかりました。車内アナウンスで紹介されるので、車両の先頭か最後尾で眺めると良いと思います。
【銚子電鉄 乗車記4】笠上黒生駅で4分停車、ホームに下りて一休み
次の「笠上黒生(かさがみくろはえ)駅」は、駅員がいる有人駅です。木造の味のある駅舎が目を惹きました。1925年に開業した駅ですので、そのときからの駅舎だとすると、もう100年近いですね。
笠上黒生駅では時間調整のために4分ほどの停車時間がありましたので、ホームに下りてみました。
笠上黒生駅は、銚子電鉄の駅では唯一の交換可能駅。上り列車と下り列車が行違う駅はこの駅だけです。もっとも、行き違いが行われるのは朝や夕方などの一部の時間帯のみ。日中時間帯は1編成の列車が行ったり来たりするだけなので、行き違いは行われません。
笠上黒生駅の駅舎です。木造平屋建ての駅舎で、中では乗車券などのほか、銚子電鉄のグッズやぬれ煎餅などを販売しています。
銚子電鉄では、駅名の愛称をネーミングライツとして販売しています。笠上黒生駅は「髪毛黒生(かみのけくろはえ)」。株式会社メソケアプラスがネーミングライツを取得して、この愛称になっているそうです。他の駅でも愛称がつけられていますが、この駅の愛称がもっともインパクトがありますね。
ちなみに、正式駅名の「笠上黒生」は、この駅がある笠上町と、その横にある黒生(くろはい)町という町名からとったものです。町名は「くろはい」と読みますが、駅名は「くろはえ」となっているのも面白いですね。
【銚子電鉄 乗車記5】長閑なキャベツ畑を眺めながら犬吠駅へ
笠上黒生駅を出発すると、周囲には畑が増えてきます。車内アナウンスでも説明がありましたが、銚子名物の春キャベツを栽培する畑だそうです。
銚子では、その温暖な気候を利用して、秋~春に出荷される春キャベツの栽培がさかんだそうです。銚子電鉄を下車したあと、外川駅から散策しましたが、あちこちで春キャベツの収穫作業をしていたのが印象的でした。近くに止まっていた軽トラックには、収穫された春キャベツが入った段ボールが満載でした。
10時35分に海鹿島(あしかじま)駅に到着。何もない無人駅ですが、関東最東端の駅なんだそうです。地図を見てみると、銚子電鉄の線路は、この海鹿島駅の少し南側でもっとも東側を通っています。
海鹿島駅を出ると、進行方向左側の車窓には、のどかな田園風景が広がります。日本の他の地域で見られる田んぼが広がる風景とは異なり、ここもキャベツなどの畑が一面に広がります。あちこちで春キャベツの収穫作業をしていました。
10時40分、犬吠(いぬぼう)駅に到着。犬吠駅は、犬吠埼灯台や犬吠埼温泉郷への最寄駅ですので、ここで大勢の観光客が下車しました。
写真は、この日の帰りに犬吠駅から乗車する前に撮影したものですが、大きな広場と立派な駅舎があります。駅舎の中には、待合室のほか、銚子電鉄が製造・販売するぬれ煎餅やまずい棒、銚子のお土産品などを販売する売店があります。また、かつて観音駅にあったたいやき屋が、ここ犬吠駅に移転して営業しています。
2両編成の電車しか走らない銚子電鉄の駅としては、ホーム長がかなり長いです。これは、元旦の初日の出を眺めるためにたくさんの乗客がこの犬吠駅で下車するためだそうです。多数の乗客が安全に乗り降りできるように、ホームが長めになっているのですね。
【銚子電鉄 乗車記6】終点、外川駅に到着!
犬吠駅を出ると、車窓さんが車内改札のためにまわってきました。外川駅で下車するときの改札のようです。
そして、銚子駅から22分で、終点の外川(とがわ)駅に到着しました。6.4kmを22分、表定速度(距離を所要時間で割った速度)は時速17.4kmと、とてものんびりとした旅でした。
外川駅の駅舎です。1923年の開業時からの木造駅舎です。小さな駅舎ですが、味のある、とても良い駅舎ですね。
外川駅の駅舎の中の様子です。木製の出札口やベンチがノスタルジーを感じさせます。そんな中でも、しっかりとぬれ煎餅やまずい棒が売られているのがいいですね(笑)。
外川駅の構内には、引退した古い電車「デハ801形」が保存されています。
1950年に製造され、伊予鉄道で活躍したあと、銚子電鉄にやってきた車両です。2010年までの25年間、銚子電鉄で運行したあと、架線点検用の車両として利用されていました。その後は、外川駅で「昭和ノスタルジー館」として使用されていましたが、外装塗装工事のために閉館。2017年から無料開放が再開されました。
車両の中も見てみたかったのですが、感染症対策のために車内の無料開放は中止されていました。
わずか20分の汽車旅、銚子観光の足にどうぞ!
ということで、銚子電鉄の乗車記をお届けしました。
銚子駅から外川駅まで、わずか20分ちょっとの旅ですが、古い車両や味のある駅舎など、銚子電鉄の魅力を楽しむことができました。
ずっと危機的な経営が続いている銚子電鉄ですが、2020年からのコロナ禍で、さらに厳しい状況になっています。全売り上げに占める運輸収入はわずか2割。それ以外は、ぬれ煎餅などの食品が多くを占めています。鉄道運行の経費をねん出するために、食品製造・販売でお金を稼ぐという構造になっています。
ここ数年の間でも、車両の検査費用をクラウドファンディングでまかなったり、車両故障で運休が発生したりと、厳しい経営が続いています。
古い車両が多く、さらに、駅舎や設備も老朽化が進んでいるため、事故や災害などで設備の損傷が発生すると、本当に廃止せざるを得ないような状態です。安全運行、定時運行が求められる公共交通機関としては望ましい状態ではありません。
沿線住民の利用促進も必要ですが、人口減少・少子高齢化が進むこの時代では限界があります。とはいえ、銚子には「観光」という産業がありますので、これを推し進めて、乗客の増加につなげられるとよいと思います。
銚子を旅していても、マイカー利用が圧倒的に多いのが現状です。マイカーでやってきた観光客にも、銚子電鉄に乗ってもらえるような施策が必要でしょう。幸い、片道20分、往復しても1時間程度ですので、アトラクション的に乗ってもらえるといいのですけどね。
以上、『【銚子電鉄 乗車記】観光客で賑わう2両の古い電車でのんびり散歩!「ピンクニュージンジャー号」は超カラフル!』でした。わずか20分の旅ですが、古い電車に揺られてのどかな旅をするのも悪くないと思います。銚子観光の際には、ぜひ乗ってみてください。
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