青春18きっぷで東北方面を目指す場合、東北本線をひたすら北上するのが最も所要時間の短いルートです。ところが、東北本線は細切れダイヤで乗り継ぎが非常に多く、落ち着いて移動することができません。時間はかかりますが、旅情や車窓を重視したい場合には、水郡線や磐越東線、常磐線まわりのルートで旅をしてみてはいかがでしょうか? この記事では、東京~仙台を移動するときにの、東北本線以外のおすすめルートを紹介します。
東京~仙台、最短・最速も乗り継ぎの多い東北本線ルート
旅情・車窓: ★☆☆☆☆
所要時間: ★★★★☆(約7時間)
乗り換え: ★☆☆☆☆(5~6回)
青春18きっぷで東北方面へ向かう場合、最短・最速ルートは東北本線経由です。ところが、東北本線は乗り継ぎが多く、繁忙期には混雑することが多いうえに、車窓は比較的単調です。
東北本線の普通列車は区間運転の列車が多く、1本の列車はおおむね1時間程度の距離しか走りません。つまり、何度も乗り換えが必要になるわけです。
時間帯によっても異なりますが、典型的な例では、
- 東京 → 宇都宮 → 黒磯 → 新白河 → 郡山 → 福島 → 白石 → 仙台
というように、東京から仙台まで6回もの乗り継ぎが必要 です。
東北本線の仙台以南は、従来から乗り継ぎが多かったのですが、2017年10月のダイヤ改正で黒磯と郡山の間の新白河でも列車が分断され、さらに乗り継ぎが増えてしまいました。さらに、2021年3月のダイヤ改正では、日中時間帯の仙台~福島間の普通列車が、白石で系統分離されてしまいました。
また、お盆休みや年末年始は、青春18きっぷで帰省をする乗客も多く、かなり混雑します。区間によっては2両編成の列車もあり、ずっと立ちっぱなしということもあり得ます。
東北本線の繁忙期(お盆休み)の状況については、筆者が実際に青春18きっぷで東京~福島を移動したときの様子を、以下の記事で紹介しています。乗り継ぎのコツも紹介していますので、ぜひご覧ください。
ということで、東北本線よりも時間はかかるものの、旅情があり、車窓もよいルートを3つほどご紹介します。私自身も、東北方面への乗り鉄の際にはよく利用するルートです。
旅情・車窓ともにおすすめ! 水郡線ルート(東京→水戸→郡山→仙台)
旅情・車窓: ★★★★☆
所要時間: ★★☆☆☆(約8~9時間)
乗り換え: ★★★★☆(3~4回)
まず、おすすめしたいのが、水戸~郡山を結ぶ水郡線を利用するルート です。このブログでも何度か水郡線を紹介していますが、久慈川という川に沿って走る川の景色が美しい路線です。
このルートでは、
- 東京 → 水戸(常磐線)
- 水戸 → 郡山(水郡線)
- 郡山 → (福島) → 白石 → 仙台(東北本線)
という3つの路線を乗り継いでいきます。
水郡線は久慈川に沿う「川の路線」
東京から水戸までは、常磐線の10両や15両の電車が直通します。青春18きっぷ+グリーン券で利用できるグリーン車(自由席)も連結されていますので、ゆったりと旅ができます。(日中時間帯は土浦以北でのグリーン車の連結がありません。くわしくはこちらをご覧ください)
水戸からは、このルートのメインディッシュともいうべき水郡線に乗り換えです。以下の記事でも紹介しているとおり、水郡線は久慈川という清流に沿う代表的な「川の路線」です。
水郡線は、久慈川と絡み合うように、何度も久慈川を渡って進んでいくのが印象的です。また、途中の袋田駅の近くには、日本三名瀑の一つ、「袋田の滝」があります。途中下車して訪ねてみるのもよいでしょう。
袋田の滝の様子や、袋田駅からのアクセスについては、以下の記事でまとめて紹介していますので、ぜひご覧ください。
水戸から郡山まで、水郡線の全線を走破する列車が1日数本あります。乗車時間は3時間ほどと、かなり長時間の乗車になりますので、飲み物やおやつなどを用意しておくとよいでしょう。
郡山からは東北本線で仙台を目指します。時間帯によっては仙台へ直通する列車もありますが、途中の福島、白石で乗り換えが必要になることが多いです。
水郡線ルート、水戸近辺は混雑するため早めにホームに並ぼう
水郡線ルートの混雑状況や乗り継ぎのコツを、路線ごとにまとめてみます。
路線 | 区間 | 混雑状況・コツ |
---|---|---|
常磐線 | 東京~水戸 | ラッシュ時間帯を外せば空いている 普通列車グリーン車がおすすめ |
水郡線 | 水戸~郡山 | 水戸近辺は混雑することが多い 早めにホームに並んでおこう |
東北本線 | 郡山~仙台 | 混んでいることが多い 時間があれば1本あとの列車がおすすめ! |
日中時間帯、常磐線の土浦~水戸・勝田間はグリーン車の連結がありません。朝や夕方以降の列車はグリーン車があります。グリーン車に乗車したい場合には時刻表を確認しておきましょう。くわしくはこちらをご覧ください。
水郡線の水戸近辺は、通勤通学客が多いうえに、週末の午前中は袋田の滝などへの観光客も乗車するため、かなり混雑します。水戸から乗車するときには、早めにホームに並んでおくことをおすすめします。
なお、水郡線ルートの東京~仙台の所要時間は約8~9時間。東北本線ルートと比べると2時間ほど余計にかかりますが、今回紹介するルートの中では、車窓、旅情ともにイチオシです。所要時間よりも汽車旅を楽しみたい場合におすすめのルートになります。
最も空いている! 磐越東線ルート(東京→いわき→郡山→仙台)
旅情・車窓: ★★★☆☆
所要時間: ★★☆☆☆(約8~9時間)
乗り換え: ★★★☆☆(4~5回)
先ほどご紹介した水郡線ルートと同じく、常磐線から郡山へ出るルートですが、水郡線ではなく、いわきから「磐越東線」を利用するルートです。
- 東京 → 水戸 → いわき(常磐線)
- いわき → 郡山(磐越東線)
- 郡山 → (福島)→ 白石 → 仙台(東北本線)
磐越東線は 福島県内の郡山~いわきを結ぶ路線 です。福島県内に閉じる路線なので、地元の方以外はあまりなじみのない路線ではないかと思います。
太平洋の大海原を車窓から! 常磐線(水戸~いわき)
常磐線の東京~水戸間は内陸部を走るために、ほとんど海を見ることはできません。ところが、水戸から先は、ところどころで太平洋の海岸沿いを走るため、車窓から太平洋を眺めることができるのです。
水戸~いわき間では、日立駅付近、磯原駅付近、勿来(なこそ)駅付近で、太平洋をよく見ることができます。この区間を乗車する場合には、海側の座席に座るのがおすすめです。
川と渓谷の路線、磐越東線
磐越東線も、水郡線と同じく川の路線です。阿武隈高地から太平洋に流れ出る「夏井川」という川に沿って進みます。途中、夏井川渓谷という景勝地を通ります。ところどころで、車窓からも夏井川の渓谷を眺めることができます。いわき~郡山の全線で約1時間半程度ですので、車窓を楽しんでいればあっという間です。磐越東線は、ローカル線のわりにはかなり飛ばすのです。
磐越東線の車窓については、以下の乗車記もご覧ください。
常磐線の水戸以北の列車は空いていることが多いですし、磐越東線も始発のいわき駅からの乗車になるので座席を確保できる可能性が高いです。
ただし、いわき~小野新町間は列車の本数が少ないので、あらかじめ乗車する列車を決めて、乗り継ぎの計画を立てておきましょう。特に、首都圏から常磐線の普通列車を乗り継いでいくと、いわき発8時台の列車には間にあわず、次の列車は13時台となってしまいます。そのため、仙台到着がやや遅くなるデメリットもあります。
水戸から先は空いている磐越東線ルート
磐越東線ルートの混雑状況や乗り継ぎのコツをまとめておきます。
路線 | 区間 | 混雑状況・コツ |
---|---|---|
常磐線 | 東京~水戸 | ラッシュ時間帯を外せば空いている 普通列車グリーン車がおすすめ |
水戸~いわき | ラッシュ時以外は空いている 海側の車窓には太平洋も! |
|
磐越東線 | いわき~郡山 | いわきからは空いていることが多い 小野新町~郡山は混んでいることも |
東北本線 | 郡山~仙台 | 混んでいることが多い 時間があれば1本あとの列車がおすすめ! |
東京から磐越東線経由で仙台までの所要時間は約8時間半。いわきでの常磐線と磐越東線の乗り継ぎが良くないため、かなり時間がかかってしまいます。いわきでの乗り換え時間をランチタイムに充てるなど工夫すればよいでしょう。
前述のとおり、日中時間帯、常磐線の土浦以北ではグリーン車の連結がありません。くわしくはこちらをご覧ください。
阿武隈急行線経由のルートもおすすめ!
東北本線ルート、水郡線ルート、磐越東線ルートでは、東北本線の郡山~仙台間を通ります。この区間、青春18きっぷでの最速はもちろん東北本線ですが、気分転換に阿武隈急行線に迂回してみてもよいでしょう。(阿武隈急行線には青春18きっぷで乗車できませんので、別途運賃がかかります)
阿武隈急行線は福島駅と槻木駅を結ぶ第三セクター路線。路線名称のとおり、途中、梁川~丸森間では、阿武隈川のすぐ近くを通ります。
東北本線とは全く異なる、長閑で旅情のある路線。阿武隈川の車窓も良いので、時間のある方は、阿武隈急行線経由で移動してみても良いでしょう。阿武隈急行線の乗車記については、以下の記事をご覧ください。
乗り換え3回! 所要時間も短く比較的空いている常磐線ルート(東京→水戸→仙台)
旅情・車窓: ★★☆☆☆
所要時間: ★★★☆☆(約7時間半)
乗り換え: ★★★★☆(3回)
最後にご紹介するのが常磐線ルートです。2011年の東日本大震災の津波と原発事故の被害で、長期間にわたって不通となっている区間がありましたが、2020年3月のダイヤ改正で、約9年ぶりに全線で運転が再開されました。
乗り換え回数が少なく、原ノ町~仙台間を除いて比較的空いています。そして、所要時間も、乗り継ぎのよい列車を選べば、東北本線経由とそれほど大きな差はありません。
常磐線沿線、特に福島県の復興応援の意味も込めて、常磐線ルートを利用してみるのもよいでしょう。
東日本大震災の被害から9年ぶりに全線で運転再開の常磐線
常磐線は、2011年の東日本大震災の津波と原発事故の被害で、長期間にわたって不通となっている区間があります。復旧工事が終了した区間から徐々に運転を再開し、最後まで残ったのが、原発事故の帰還困難区域を含む富岡~浪江間でした。
この富岡~浪江間が2020年3月14日のダイヤ改正と同時に運転を再開し、これにより常磐線は約9年ぶりに全線で運転を再開しました。
青春18きっぷの旅ではないですが、特急「ひたち3号」に上野から仙台まで通して乗車した際の乗車記もぜひご覧ください。どんな車窓が見えるかは参考になるかと思います。
常磐線ルート、仙台近くは混雑も!
常磐線ルートの混雑状況や乗り継ぎのコツをまとめておきます。
路線 | 区間 | 混雑状況・コツ |
---|---|---|
常磐線 | 東京~水戸 | ラッシュ時間帯を外せば空いている 普通列車グリーン車がおすすめ |
水戸~いわき | ラッシュ時以外は空いている 海側の車窓には太平洋も! |
|
いわき~原ノ町 | 比較的空いている 運転本数が最も少ない区間 海側は太平洋の車窓が素晴らしい! |
|
原ノ町~仙台 | 相馬~浜吉田間は津波被害後に内陸に付け替え 仙台近くではかなり混雑 |
2020年3月の常磐線全線運転再開後、普通列車で常磐線を移動する場合には、水戸、いわき、原ノ町での乗り換えが必要になります。
上記のとおり、水戸~いわき~原ノ町は空いていることが多いですし、東京~水戸間は普通列車グリーン車が連結されていますので、比較的ゆったりと移動できます。ただし、日中時間帯、土浦以北はグリーン車の連結はありません。くわしくはこちらをご覧ください。
いつも混んでいる印象があるのは、原ノ町~仙台間、特に仙台近郊です。日中時間帯は2両編成の列車もあり、仙台近辺では満員電車のような混雑になることもあります。早めにホームに並んで座席を確保することをおすすめします。
日中時間帯は土浦以北はグリーン車連結なしに!
常磐線の土浦以北では、日中時間帯は普通列車のグリーン車のサービスがなくなります。
2023年3月改正ダイヤでは、おおむね以下のようになります。
- 下り(上野→水戸)
- 始発~7時頃: グリーン車あり(水戸・勝田への直通列車)
- 7時台~13時台前半: グリーン車なし(土浦で乗り換えまたは切り離し)
- 13時台後半~終電: グリーン車あり(水戸・勝田への直通列車)
- 上り(水戸→上野)
- 始発~9時台: グリーン車あり(土浦以南への直通列車)
- 10時台~15時台前半: グリーン車なし(土浦で乗り換え)
- 15時台後半~終電: グリーン車あり(土浦以南への直通列車)
このように、土浦以北では、日中時間帯はグリーン車のない5両編成での運転となります。また、一部の列車では、土浦駅での乗り換えが必要となります。常磐線ルートを利用する際には注意しましょう。
【結論】所要時間・乗り換え回数重視なら常磐線ルート、車窓・旅情重視なら水郡線ルートがおすすめ!
東北本線をひたすら乗り継ぐルート以外で、東京~仙台を移動するルートをご紹介しました。
筆者の個人的な判断では、
- 所要時間・乗り換え回数重視なら常磐線ルート
- 車窓・旅情重視なら水郡線ルート
がおすすめです。
常磐線ルートは、乗り換え回数が少ないですし比較的空いています。それでいて、東北本線を乗り継ぐルートと、所要時間はそれほど変わりません。
一方、車窓重視なら、水郡線ルートがおすすめです。あちこちで久慈川を眺めることができます。さらに、沿線ののどかな雰囲気や、ディーゼルカーでエンジン音を聞きながら旅ができる点で、旅情もあります。
以上、首都圏(東京)から東北方面(仙台)へ青春18きっぷで向かうおすすめルートをご紹介しました。いずれも最短ルートの東北本線経由に比べると、所要時間がやや長めになりますが、その分、車窓を楽しむことができるルートです。青春18きっぷでの旅行や乗り鉄の参考にしてみてください。
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