2024年のJRダイヤ改正の概要が発表されました。青春18きっぷ旅の観点では、北陸新幹線敦賀延伸開業に伴う金沢~敦賀間の三セク化の影響が大きそうです。また、根室本線の富良野~新得間が廃止されます。首都圏では朝夕時間帯に快速列車が各駅停車化されるなどの影響がありそうです。
この記事では、2024年JRダイヤ改正の中から、青春18きっぷの旅に影響がありそうなトピックを取り上げてまとめます。
北陸新幹線 敦賀延伸開業で金沢~敦賀間が青春18きっぷのフリーエリア外へ
2024年ダイヤ改正の目玉が、北陸新幹線の金沢~敦賀間の延伸開業です。これに伴って、関西・名古屋~北陸方面の特急列車の運行形態が大きく変更されます。詳しくは、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
北陸本線の金沢~敦賀間130.7kmが第三セクターへ
青春18きっぷ旅の観点では、並行在来線となる金沢~敦賀間が第三セクターに移管されることで、青春18きっぷでは乗車できなくなります。
- 金沢~大聖寺: JR西日本 → IRいしかわ鉄道へ移管
- 大聖寺~敦賀: JR西日本 →ハピラインふくいへ移管
金沢~敦賀間は130.7kmもあり、かなり長い区間が青春18きっぷのフリーエリアから外れることになります。
北陸エリアの通過利用特例が大幅に変更へ
これまで、他のJR線から孤立してしまった氷見線・城端線、七尾線に乗車するために、金沢駅や富山駅から通過利用の特例が設定されていました。通過利用の特例というのは、他路線とつながっていないJR線に青春18きっぷで乗車できるようにするため、途中の第三セクター路線に乗車できるという特例です。
2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸開業に伴い、北陸エリアの通過利用の特例は、以下のように変更になります。
鉄道会社名 | 青春18きっぷで乗車できる区間 | 下車できる駅・乗換路線 |
---|---|---|
あいの風とやま鉄道 | 富山~倶利伽羅の通過利用 |
富山駅 高岡駅(城端線・氷見線) |
IRいしかわ鉄道 | 倶利伽羅~津幡の通過利用 |
津幡駅(七尾線) |
ハピラインふくい | 越前花堂~敦賀の通過利用 |
越前花堂駅(越美北線) 敦賀駅 |
新たに孤立するJR線となる越美北線へは、敦賀~越前花堂間の「ハピラインふくい」に乗車できるようになります。越美北線の列車の起点となる福井駅は特例の対象外ですので、注意が必要です。
また、これまで七尾線に乗車するための通過利用の区間は金沢~津幡間でしたが、2024年3月16日以降は、富山~津幡間に変更となります。
城端線・氷見線に乗車するための通過利用の区間は、これまでどおり富山~高岡間で変更はありません。
詳しくは以下の記事でわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。
「北陸おでかけtabiwaパス」の後継は「北陸3県2Dayパス」
これまで、旧北陸本線の直江津~金沢間をお得に移動しようとすると、JR西日本が発売する「北陸おでかけtabiwaパス」が有力な選択肢になっていました。土休日しか利用できませんが、おとな2,450円(こども980円)で、直江津~金沢~敦賀の旧北陸本線を含む北陸エリアのJR西日本と第三セクターの路線に1日乗り放題というお得なフリーきっぷです。
敦賀延伸開業後は、この「北陸おでかけtabiwaパス」に代わって、ハピラインふくい、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道の3社が連携して発売するあいの風・IR・ハピライン連携 北陸3県2Dayパスが、「北陸おでかけtabiwaパス」の代替きっぷとなりそうです。
- きっぷ名: 北陸3県2Dayパス
- 利用期間
- 2024年3月16日(土) ~ 2025年3月31日(月)の土・日・祝日とその翌日
- 2024年3月16日(土) ~ 4月1日(月)
- 2024年4月27日(土) ~ 5月13日(月)
- 2024年7月13日(土) ~ 9月2日(月)
- 2024年9月14日(土) ~ 9月24日(火)
- 2024年10月1日(火) ~ 2025年1月14日(火)
- 2025年3月15日(土) ~ 2025年3月31日(月)
- フリーエリア: あいの風とやま鉄道全線、IRいしかわ鉄道全線、ハピラインふくい全線(越中宮崎~敦賀)
- 発売箇所: 各社のMaaSアプリ(デジタル版のみの発売)
- おねだん: 大人 2,800円、小児 1,400円
3社の運行区間となる越中宮崎~敦賀間が2日間乗り放題で2,800円というフリーきっぷです。基本的に土休日とその翌日のみ利用できますが、ゴールデンウィークや夏休み、シルバーウィークなどのは毎日利用できます。
JR線には乗車できませんが、今後はこの「北陸3県2Dayパス」が北陸エリアを移動するときに定番のフリーきっぷとなりそうです。
「あいの風・IR・ハピライン連携 北陸3県2Dayパス」については、以下の記事でわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。
JR北海道の根室本線 富良野~新得間が廃止、廃止までは1往復増発へ
根室本線の富良野~新得間が、2024年3月31日の運行をもって廃止されます。この区間の廃止をもって、JR北海道が2016年に発表した「単独では維持困難な線区」のうち、輸送密度が200人/日以下の5線区は全て廃止・バス転換となりました。富良野~新得間の廃止については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
ダイヤ改正の3月16日から最終運行となる3月31日までの2週間ほどは、以下のような運行体系となります。
- 滝川~富良野間は富良野駅での折り返し運転
- 快速「狩勝」を含む3本の快速列車をすべて普通列車に変更
- 富良野~東鹿越間は廃止までの間、日中時間帯に1往復増発
3月16日のダイヤ改正で、滝川~富良野間は折り返し運転となり、富良野~東鹿越間との直通列車はなくなります。また、現在、滝川~富良野・東鹿越間には、滝川方面行きが2本、東鹿越行きが1本の計3本の快速列車が走っていますが、これらはすべて普通列車となります。
一方、鉄道が廃止となる富良野~東鹿越間は、廃止直前の乗客増に対応するため、わずか2週間ほどの間ですが、日中時間帯に1往復増発となります。
富良野~新得間を、代行バスも含めて乗車したときの乗車記を以下の記事で公開していますので、ぜひご覧ください。空知川、かなやま湖、それに、代行バスでの狩勝峠からの絶景など、見どころの多い区間です。
根室本線のダイヤ改正については、JR北海道のニュースリリースもご覧ください。
東海道本線 静岡エリアの運行体系が大幅に変更、熱海~浜松の長距離列車が大幅増へ!
青春18きっぷ旅の難関の一つが、東西に長い静岡県です。東海道本線の静岡エリアは、列車本数こそ多いものの、ロングシートの列車が多かったり、途中で乗り換えが必要だったり、そもそも熱海~豊橋間を抜けるのに3時間以上もかかるなど、落ち着いた旅をするのが難しい区間です。
2024年3月のダイヤ改正で、東海道本線の静岡エリアの運行体系が大幅に変更となります。
- ダイヤ改正前: 熱海~島田、興津~浜松の区間列車の組み合わせ
- ダイヤ改正後: 熱海~浜松の長距離列車と、興津~島田の区間列車の組み合わせ
ダイヤ改正前は静岡県の東側の熱海~島田間を走る列車と、西側の興津~浜松間を走る列車の組み合わせとなっていました。これにより、両方の列車が重複する静岡駅近辺の列車の本数を増やしていました。
ダイヤ改正以降は、熱海~浜松間を走る長距離の列車と、興津~島田間を走る静岡駅近辺の区間列車の組み合わせとなります。
これにより、熱海~浜松間を走る長距離列車が大幅に増えるため、青春18きっぷで東海道本線を大移動するのが容易となります。熱海駅または浜松駅で乗ってしまえば、2時間半は乗り換えなしで一気に移動することができます。
東海道本線静岡エリアの移動に関しては、以下の記事をご覧ください。ダイヤ改正後の運行パターンとおすすめの乗り継ぎについても解説しています。
首都圏各路線で通勤快速・快速を各駅停車化
※千葉県等の沿線自治体の要望により、京葉線の早朝の上り通勤快速2本は、ダイヤ改正後も存続することが決まりました。
首都圏の路線では、京葉線で朝夕の通勤快速・快速列車がすべて各駅停車化されるほか、宇都宮線や高崎線でも夕方以降の快速列車がすべて普通列車となるなど、優等列車の削減が実施されます。
京葉線では、外房線・内房線との直通列車も含めて、朝と夕方以降の通勤快速・快速がすべて各駅停車となります。
- 通勤快速: 朝の上り2本、夜の下り2本をいずれも各駅停車に変更(のちに、朝の上り2本は存続することが決定)
- 快速: 朝と夕方以降の快速列車をすべて各駅停車に変更、快速列車は10~15時台の日中時間帯のみの運転に
一方、宇都宮線・高崎線でも、以下のように夕方以降の快速列車がすべて普通列車となります。
- 宇都宮線の快速列車運転取りやめ
- 上り: 19時台以降(宇都宮駅発時点)
- 下り: 21時台以降(上野駅発時点)
- 高崎線の快速列車運転取りやめ
- 上り: 16時台以降(高崎発時点)
- 下り: 20時台以降(上野発時点)
青春18きっぷ旅の観点では、朝夕時間帯に通勤快速や快速といった優等列車がなくなることで、移動時間が少し増えることになりそうです。
中央本線は日中時間帯の東京~大月間の直通列車を5往復追加
中央本線では、日中時間帯に東京~大月間を直通する中央特快(一部は快速)を5往復増やします。東京~大月間の直通列車が増える時間帯は以下のとおりです。
- 下り(新宿発時刻): 10時台~15時台に中央特快4本、快速1本を追加
- 上り(大月発時刻): 12時台~17時台に中央特快5本を追加
現行のダイヤでは、日中時間帯に東京~大月間を直通する列車はほとんどなかったのですが、ダイヤ改正以降、日中時間帯でも1時間に1本は直通列車が発着するようになります。
今回のダイヤ改正では、富士急行線に直通する特急「富士回遊」が増発されていますが、大月直通列車の増加も、富士山方面へのインバウンドの観光需要増加に伴うものだと思われます。また、2024年度末以降に導入が予定されている中央線快速列車へのグリーン車の連結も関係している可能性がありますね。
高尾発長野行きの長距離普通列車「441M」は大月発に短縮へ
日中時間帯の大月駅への直通列車が増えた影響で、高尾発長野行き441M列車の運転区間が、ダイヤ改正以降は大月~長野間に短縮されます。
ただし、大月駅では、東京発の中央特快と接続しますので、東京~長野間を移動するという点から見れば、乗換駅が高尾駅から大月駅に変わっただけとなります。大月~長野間のダイヤは、ダイヤ改正前とほぼ同じです。
ダイヤ改正後の大月発長野行きを含む、中央本線の長距離普通列車については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
首都圏の普通列車グリーン車のグリーン料金を値上げ
青春18きっぷで首都圏を移動するときに影響がありそうなのが、普通列車グリーン車のグリーン料金見直しです。「見直し」となっていますが、実態は大幅な値上げとなります。
- | 見直し後 | 現行(事前料金) | ||
---|---|---|---|---|
距離 |
Suica グリーン料金 |
通常料金 | 平日 | ホリデー |
50キロまで | 750円 | 1,010円 | 780円 | 580円 |
100キロまで | 1,000円 | 1,260円 | 1,000円 | 800円 |
101キロ以上 | 1,550円 | 1,810円 | 1,000円 | 800円 |
大きな変更点としては、平日・ホリデー料金の区分がなくなり曜日にかかわらず料金が統一される点と、101キロ以上の料金区分が設けられる点です。
ダイヤ改正以降の普通列車グリーン車のグリーン料金は、これまでの平日料金に近いものとなるため、それだけで土休日の利用は値上げとなります。さらに、101キロ以上が1,550円となり、長距離の利用は大幅値上げとなります。
首都圏の普通列車に連結されているグリーン車は、「グリーン車自由席」のため、グリーン券を購入すれば青春18きっぷでも利用できます。上野東京ラインや湘南新宿ラインなど、200km以上を走る長距離列車も多いため、青春18きっぷで旅をするときには強い味方でしたが、今後は追加出費が増えることになりそうです。
なお、JRE POINT で交換できる「Suicaグリーン券」は、これまでどおり600ポイント(600円相当)のままとなりますので、JRE POINT を貯めておくと良いと思います。
普通列車グリーン車については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
また、JRE POINTで交換できる「Suicaグリーン券」については、以下の記事もご覧ください。
青春18きっぷの難所、奥羽本線 福島~米沢間のダイヤが変更に
青春18きっぷの難所の一つ、奥羽本線の福島~米沢間のダイヤが変更になります。
この区間は、普通列車が6往復しかなく、しかも朝晩に列車が偏っているために、日中時間帯は普通列車の運転間隔が5時間以上も開いてしまいます。
2024年のダイヤ改正では、普通列車の本数に変更はありませんが、以下のようにダイヤが変更になります。
(出典)2024年3月ダイヤ改正について(JR東日本 東北本部 PDF)
福島~米沢間の列車では、上り(福島行き)はほとんど変更がありませんが、下り(米沢行き)は、日中以降の列車のダイヤが変更されているので、乗り継ぎに注意が必要となります。
午前8時台の次が12時台というのは変わりませんが、その次が、現行の16時台から17時台後半に変更となります。そのため、12時51分の次が17時43分となり、午後も5時間近く列車がない時間帯ができてしまいます。
日中時間帯に青春18きっぷで移動するには厳しいダイヤですが、この区間では山形新幹線が1時間に1本は運転されていますので、福島~米沢間で「ワープ」するのも一つの手です。運賃770円+特定特急券760円の合計1,530円でワープができます。
青春18きっぷ旅で「ワープ」を効率駅に活用できる区間については、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
中央線 名古屋~中津川間で315系による130km/h運転を開始、日中時間帯は減便へ
中央線の名古屋側(JR東海エリア)では、名古屋~中津川間を走る快速列車・普通列車の車両をすべて315系に統一し、最高速度を110km/hから130km/hに引き上げます。これにより、朝夕時間帯で、以下のような所要時間の短縮となります。
- 名古屋~多治見間: 平均1分短縮
- 名古屋~中津川間: 平均3分短縮
また、日中時間帯の快速列車を、新守山駅と神領駅に停車する「区間快速」に変更し、名古屋~高蔵寺間の普通列車2本を削減します。名古屋発11時~14時台は、これまでの快速3本・普通列車5本から、区間快速3本・普通列車3~4本に変更になります。
(出典)2024年3月ダイヤ改正について(JR東日本 東北本部 PDF)
詳しくは、JR東海のダイヤ改正のニュースリリースをご確認ください。
大和路線・おおさか東線の「快速 うれしート」の設定本数を拡大、土休日も設定へ!
2023年10月からサービスを開始している大和路線・おおさか東線の「快速 うれしート」は、300円という安価な追加料金で、着席が保証されるサービスです。
2024年春のダイヤ改正では、「快速 うれしート」の設定本数が拡大されます。また、土休日も設定されるようになります。
- 平日朝時間帯(大阪方面行き/奈良駅発車時点)
- 6時台: 1本 → 4本
- 7時台: 3本 → 3本
- 土休日(大阪方面行き/奈良駅発車時点)
- 7時台・8時台: 2本ずつ新設
- 9時台: 1本新設
- 15時台・16時台: 1本ずつ新設
座席は通常の普通列車や快速列車と同じものですが、300円で確実に座れるということで人気があるようです。おそらく、今後も設定本数が増えていくものと思われます。
なお、青春18きっぷでも指定席券を追加すれば「うれシート」に乗車できますが、チケットレス指定席券(300円)との併用はできません。青春18きっぷで乗車する場合には、紙の指定席券(通常期530円、閑散期330円)を購入する必要がありますので、ご注意ください。
「快速 うれしート」については、JR西日本のWebサイトをご覧ください。
以上、「【2024年JRダイヤ改正】青春18きっぷ的ダイヤ改正まとめ! 三セクに移管される金沢~敦賀の扱いはどうなる? 根室本線 富良野~東鹿越は廃止まで1往復増発へ!」でした。北陸エリアでは、氷見線・城端線のあいの風とやま鉄道への移管の動きもあり、「日本全国のJR線全線がフリーエリア」の青春18きっぷも見直しの時期に来ているように思います。通過利用の扱いがどうなるか注目です。
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2024年のJRダイヤ改正のポイントをまとめた記事です。北陸新幹線の敦賀延伸開業、山形新幹線への新型車両「E8系」の投入など、新幹線の話題が多いダイヤ改正になっています。
2024年JR東日本のダイヤ改正の首都圏でのポイントをまとめた記事です。房総方面の特急列車の減便、車両変更、全車指定席化や、本記事でも触れた京葉線の朝夕の快速列車の廃止など、千葉方面で大きな動きのある改正になっています。
JR北海道のダイヤ改正では、北斗、すずらん、おおぞら、とかちの4特急が全車指定席化されるほか、カムイ、ライラックの自由席が2両に減らされます。全国的な全車指定席化の動きがJR北海道にも及んでいます。
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