車窓が美しい小海線を走る観光列車「HIGH RAIL 1375」(ハイレール1375)。日中に運転される「HIGH RAIL 1号」「HIGH RAIL 2号」に対して、景色の見えない夜間に運転されるのが「HIGH RAIL 星空」です。今回、この「HIGH RAIL 星空」に小淵沢から佐久平まで乗車してみましたので、乗車レポートをお届けします。野辺山駅での「星空観察会」など、イベント重視の観光列車です。
小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」とは?
小海線は、中央本線の小淵沢駅と、しなの鉄道の小諸駅を結ぶ非電化のローカル線です。ローカル線とはいえ、首都圏から比較的近いうえに、清里・野辺山といった観光地を通るため、特に夏を中心に、小淵沢~清里・野辺山間は観光客で混雑します。
その小海線に、2017年7月、待望の観光列車「HIGH RAIL 1375」がデビューしました。既存の気動車(キハ110/キハ100)の改造ですが、バリエーションの豊かな座席や、飲み物やおつまみ、お酒、お土産等が購入できる物販カウンター、ランチやお弁当のサービスなど、魅力的な観光列車に仕上がっています。
「HIGH RAIL 1375」の設備面については、下記の記事で詳しく解説しています。
デビューしてからすぐの2017年7月、午前中に運転される「HIGH RAIL 1号」に小淵沢から小諸までの全区間に乗車したときのレポートを掲載していますので、興味がありましたらご覧ください。
「HIGH RAIL 星空」は夕方~夜間帯の運転
小海線の大きな魅力は、八ヶ岳や高原の美しい車窓です。その車窓が全く見えない夜間帯に運転する観光列車ということで、一体どんなものなんだろう? と疑問に思ったので、今回、乗車してみた次第です。
「HIGH RAIL 星空」のダイヤは、以下のようになっています。(2023年3月改正ダイヤ)
停車駅 | 到着 | 発車 |
---|---|---|
小淵沢 | - | 18:17発 |
清里 | 18:44着 | 18:45発 |
野辺山 | 18:53着 | 19:42発 |
小海 | 20:14着 | 20:22発 |
中込 | 20:41着 | 20:42発 |
佐久平 | 20:50着 | 20:51発 |
小諸 | 21:02着 | - |
野辺山駅で49分の停車時間がありますが、この間に、野辺山駅前で「星空観察会」が開催されます。列車から景色が見えない反面、この野辺山駅での星空観察会が、「HIGH RAIL 星空」の一大イベントになっています。
「HIGH RAIL 星空」乗車レポート
それでは、「HIGH RAIL 星空」の乗車記をお届けします。乗車したのは2018年1月上旬の土曜日ですので、冬季ダイヤでの運転です。
※「HIGH RAIL 星空」のダイヤは2019年から変更になっています。以下の乗車レポートは、2018年1月時点でのダイヤで記載していますので、ご注意ください。
新しくなった小淵沢駅で駅弁を購入
このときは、青春18きっぷ旅の帰途で、松本から中央本線の普通列車で小淵沢に到着しました。小淵沢についたのは15:44。「HIGH RAIL 星空」の出発までは1時間以上ありますので、新しくなった小淵沢駅を見て回り、売店で夕食にする駅弁を購入しました。
改札を出て右側に行くと展望台にのぼる階段があります。展望台からは、美しい八ヶ岳を見ることができました。これから乗車する「HIGH RAIL 1375」の車両とともにパチリ。「HIGH RAIL 2号」として小諸から到着したあとは、そのままホームに留め置かれているようです。
八ヶ岳の反対側には富士山を望むこともできます。富士山にはそれほど近いわけではないのですが、この展望台からは富士山の中腹までよく見えますね。
天気は良かったものの、冷たい風が結構強く吹いていて、かなり体が冷えてしまいました。
そのあとは、1階にあるお土産屋さんで、「HIGH RAIL 星空」の中でいただく駅弁を購入。購入したのは、小淵沢の名物駅弁「高原野菜とカツの弁当」(1,000円)です。
前回、「HIGH RAIL 1号」に乗車したときは、ブランチセットをオプションサービスとして事前に予約していました。事前に予約しておくと、発車後に車内で提供されるのです。今回は「高原野菜とカツの弁当」を食べたかったので、オプションサービスは予約しませんでした。ちなみに、「HIGH RAIL 星空」のオプションサービスは特製弁当セット(お弁当と飲み物のセット)です。
「HIGH RAIL 星空」には16:55頃に乗車可能に
そのあとは、改札の横にある暖房のきいた待合室で時間をつぶし、16:45頃に改札を通って小海線のホームへ。「HIGH RAIL 星空」は小海線ホームの4番線から発車します。
ドアが開くのは16:55頃との放送があり、しばし、写真撮影などをして待ちます。他の乗客も、みな一様に写真撮影タイムです。記念になりますからね。
16:55になるとドアが開き、いよいよ乗車します。一か所しかない乗車口でにはアテンダントさんがいて、指定券を見せて、車内の「ギャラリー HIGH RAIL」で開催される「映像上映会」の整理券を受け取ります。全部で5回開催されるようですが、乗車順に1回目から配っているようでした。私は2回目(17:23~17:31)の整理券をもらいました。
窓に向いた一人掛けの広々とした座席を確保
ちなみに、今回は一人旅だったため、1号車の一人掛けの座席を確保しました。1号車の一人掛けの座席は、とても広々としていて、一人旅の方にはおすすめです。
「HIGH RAIL 1375」の座席は、「えきねっと」でも指定できます。詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ご覧ください。
発車から野辺山停車までは「映像上映会」タイム!
小淵沢駅を定刻通りの17:09に出発。すでに日没の時間を過ぎ、山に囲まれた小淵沢のあたりはかなり暗くなっています。車窓はほとんど眺めることができず、完全に夜汽車の雰囲気。車窓に見えるのは、通過する駅の灯りや、ときおり見られる町の灯りくらい。
そんな中、早速、「映像上映会」が始まりました。車内放送でアナウンスがあり、整理券に記載された回になったら、2号車の一番前にある「ギャラリー HIGH RAIL」に向かいます。
上の写真は、「HIGH RAIL 1号」に乗車したときに撮ったものですが、このスペースが締め切られ、電灯を消し、天井の部分にミニプラネタリウムのような映像が上映されます。
野辺山駅での「星空観察会」で解説をしてくださる「星空案内人」の方が、この映像上映会でも説明をしてくれます。今の冬の時期に見られる星座や明るい星についての説明を5分ほどで解説、そのあとは質問タイムで、だいたい10分弱で終わります。
気動車のエンジン音やレールを刻む音が響く中でのプラネタリウムというのも、なかなか経験できないですね。
途中の甲斐大泉駅で行き違いのための長時間停車があり、清里には17:55に到着。ここまでの間に、全5回の星空観察会は終了していました。
野辺山駅、厳寒の中での星空観察会!
野辺山には18:03に到着。乗客はみんなコートやジャンパーを着て、防寒対策をしてからホームに降ります。そのまま改札を抜けて駅前の広場に出ると、この列車で一番のイベント「星空観察会」が始まります。
野辺山駅前の広場は、まだ18時を少し回ったばかりだというのに真っ暗です。このイベントのために照明を落としているのでしょうか。足元も見えないくらいです。
先ほど、列車の中の映像上映会で解説をしてくれた星空案内人のおじさんが、空に見える星座や関連する知識などを説明してくれます。雲が多かったものの、雲の隙間から辛うじて星座が見えるくらいの天候でした。雲に遮られないで見える星座を次々と観察していきます。
それにしても寒い! 野辺山駅のホームにある温度計は、マイナス5℃を指しています。風はあまりないのですが、足元から冷えてくる寒さです。
ついには、星が見えているというのに雪がちらついてきてしまいました。
星空観察会は20分ほど続きましたが、じっとして星座を見ているとあまりに寒いため、途中で退散してしまいました。
野辺山駅のホームで撮影大会!
星空観察会が終わると、野辺山駅のホームでは撮影大会に。構内にある踏切を渡って、反対側のホームから撮影してみました。完全に夜汽車の雰囲気ですね。
上りのホームに小淵沢行きの普通列車が入ってきました。左側の普通列車は「キハ110系」という形式の車両で、これと同じ形式の車両を改造したものが、右側の「HIGH RAIL 1375」です。色は違いますが、形は同じですね。あたりまえですが…。
ヘッドライトに照らされて、雪が舞っているのがわかるでしょうか。
野辺山を出発したら夕食タイム!
氷点下5℃の外気で完全に体が冷え切ってしまいましたが、車内に戻れば暖房がきいていて暖かいです。
野辺山を18:40に出発すると、この後は特にイベントはありません。みな考えることは同じなのか、1号車にある物販カウンターには列ができています。お酒やおつまみ等を買い求める人が多いようです。
かくいう私も、物販カウンターで「軽井沢ビール」を購入して、夕食タイムにします。
小淵沢で買った「高原野菜とカツの弁当」、高原野菜とチキンカツのシンプルな駅弁ですが、高原野菜が本当にうまい! 素材が良くて新鮮なのか、駅弁とは思えないほどのシャキシャキ感で、余計な味付けは一切不要という感じです。生野菜が大量に入った駅弁は珍しいですが、そのためか、この駅弁を購入できるのは小淵沢駅のみ。今日、16時半ごろに購入したばかりなのに消費期限は21時。製造されてから6時間以内に食べなくてはならないのです。
3つ入っているチキンカツは当然冷めているのですが、冷めていてもおいしいのが駅弁屋さんの技術ですね。
ちなみに、この「高原野菜とカツの弁当」を販売しているのは、小淵沢の駅弁屋さん丸政です。他にも「元気甲斐」や「甲州かつサンド」などの有名駅弁があります。
佐久平までのんびりリラックスタイム
夕食を食べ終えたら、あとは特にイベントもなく、車内でのんびり過ごすだけです。途中、信濃川上、小海、八千穂、臼田、中込、岩村田に停車しますが、乗車する人も下車する人もゼロ。全席指定の観光列車で、乗車するには820円の指定席券が必要ですから当然でしょうね。
途中、中込駅で7分ほど停車時間があったので、ホームに降りてみました。小海線の主要駅の一つですが、駅員さん以外には誰もいません。写真を撮って、すぐに車内に戻りました。
佐久平では「はくたか574号」に7分で乗り換え
大部分の乗客が、北陸新幹線との接続駅である佐久平で下車します。佐久平には19:53着。東京行きの北陸新幹線「はくたか574号」(佐久平発20:00)に乗り換えますが、乗り換え時間はわずか7分。
それでも、時間通りに到着すれば、余裕で乗り換えができます。「HIGH RAIL 星空」の1か所しかないドアは、ちょうど新幹線の乗り換え口や出口への通路の前。そのまま通路を歩いていけば、すぐに新幹線の乗り換え改札口があります。
ただし、あらかじめ新幹線のきっぷは発券しておいたほうがよいでしょう。窓口できっぷを購入する時間はないと思います。それに、乗り遅れたら無効になってしまうようなきっぷ(えきねっとトクだ値のような割引きっぷ等)は、なるべく避けておいたほうがよさそうです。「HIGH RAIL 星空」が数分でも遅れたら、乗り継げないと思いますので。
【まとめ】「HIGH RAIL 星空」はイベント重視の観光列車!
小海線の一番のウリといってもよい車窓が見えない時間帯に運転される「HIGH RAIL 星空」。それで楽しめるのかと思っていましたが、結果的には十分に楽しめました。
特に、乗車してから野辺山までの間の映像上映会、それに続く野辺山駅での星空観察会は、個人的にはとても良い企画だと思います。星空観察会は、天候に左右されてしまうのが難点ですが、野辺山は標高が高くて空気が澄んでいるため、晴れれば満点の星空が見えます。今回は残念ながら雲の合間からかろうじて、という感じになってしまいましたが、晴れていれば天の川も見ることができるそうです。
それと、野辺山でのイベント後は、車内でのイベントはありません。野辺山から佐久平や小諸までは1時間以上かかりますが、車窓も見えないので、ヒマを持て余してしまいます。この時間を夕食に充てるのがおすすめです。飲み物やおつまみくらいなら物販カウンターで購入できますが、駅弁は販売していないので、事前に購入しておくか、オプションサービスを予約しておきましょう。幸いにも、小淵沢駅はおいしい駅弁の宝庫ですし。
以上、「HIGH RAIL 星空」の乗車レポートでした。野辺山までの前半戦でイベントが一通り終わってしまうので、後半戦に退屈しないように準備しておくことがポイントですね。初めて小海線に乗車するのであれば、車窓が楽しめる日中時間帯に運転される「1号」か「2号」をおすすめしますが、何度も乗車されている方であれば「HIGH RAIL 星空」に乗車すると、また違った小海線の楽しみ方を味わうことができます。
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