小田急電鉄の新型ロマンスカー「GSE」(70000形)が、2018年3月17日にデビューしました。今回、箱根湯本から新宿までの全線に乗車してみましたので、車内設備や乗り心地などを中心に乗車レポートをお届けします。また、インターネットでの予約・購入方法についても、実際に試してみましたのでご紹介します。
※2018.05.05 更新
新型ロマンスカー「GSE」(70000形)とは?
「ロマンスカー」といえば、小田急電鉄が運行する特急列車の代名詞的存在です。そのロマンスカーの最新型車両が、2018年3月にデビューしたばかりの「GSE」です。
「GSE」は、"Graceful Super Express"の略称だそうで、"Graceful"は「優雅な」という意味。箱根への優雅な旅を演出する特急列車ということですね。
伝統的な塗色に現代的なデザインの車体
GSEの特徴といえば、まずは車体の色ですね。バラの色「ローズバーミリオン」の塗色に、窓下に入れられたロマンスカー伝統の色「バーミリオンオレンジ」の帯。その精悍なデザインとマッチして、とても「カッコイイ」仕上がりになっています。
最近のロマンスカーは、「VSE」(50000形,2005年デビュー)の白色、「MSE」(60000形,2008年デビュー)の青色など、伝統的なロマンスカーの塗色とは異なる車両が多かったのですが、今回の「GSE」は、かつてのロマンスカーの伝統を引き継ぐデザインになっていますね。
ちょっとマニアックになりますが、これまでのロマンスカーは「連接台車」という、車両と車両の間に台車を設置する構造の車両が多かったのですが、今回の「GSE」は、1両に2個の台車を装備する構造になっています。そのため、VSEが10両なのに対して、GSEは7両。それでも、編成全体ではほぼ同じ長さになります。
先頭車に16席の展望席
ロマンスカーの名物といえば展望席。両先頭車に16席ずつの展望席があります。
運転台が2階にあるため、展望席からは何も遮るものがなく、前面(最後尾の場合は後面)を眺めることができます。大きな前面ガラス張りの展望席から眺める車窓は抜群でしょう。
そんな展望席ですが、特別な料金は不要で、他の席(一般席)と同料金です。そのため、展望席は大人気で、あっという間に売り切れてしまいます。今回、乗車した平日日中時間帯の「はこね16号」(箱根湯本12:35→新宿14:07)は、一般席はかなり空きがありましたが、展望席は満席でした。
最新型の特急車両らしい設備
それでは、実際に乗車したときの体験をもとに、車内設備を紹介していきます。
白を貴重とした客室内、窓が大きく明るい印象
客室内に入ってまず感じたのは、「とても明るい」ということ。その理由は、何といっても、窓の大きさでしょう。
座席に座ってみると、肘掛けとほぼ同じ高さから、網棚のすぐ下まで、とても大きな窓になっています。先代のVSE、MSEと比べて、窓の大きさ(高さ方向)が30センチも大きくなり、100センチとなっています。
この大きな窓と、客室内の白を貴重としたデザイン、それに、間接照明の柔らかな明かりによって、とても明るい印象になっています。
足元が広く座り心地のよいシート
GSEのシートです。シートピッチ(前後の座席との幅)は983ミリで、MSEと同じです。ただ、前のシートの下が大きく空いており、足元がとても広いために、シートピッチの数字以上に広く感じます。
前のシートには、ペットボトルを置けるホルダー、傘や杖を挿せる傘立て、雑誌や本などを入れておける収納があります。また、フックが3つも着いており、上着や手荷物をかけることができます。このあたりは、実用性重視で、観光客にもビジネス客にもうれしい配慮ですね。
座席の肘掛けにはテーブルが収納されています。それほど大きくなく、駅弁を置くと、それだけでいっぱいになってしまうほどです。パソコン作業には小さめと思われますが、かなりしっかりとした作りになっているため、強度的な問題はないでしょう。
窓の下には物を置けるスペースはなく、代わりに、窓側の席だけにこのような小さなテーブルが設置されています。肘掛けに収納されているテーブルを出さなくても、スマホなどの小さなものであれば、ここに置くことができます。通路側の席にはこのようなテーブルはありません。
電源コンセント・WiFiを装備
各席の肘掛けの下には、電源コンセントが用意されています。スマホやパソコンを安心して使うことができますね。
また、最新の特急車両らしく、WiFiも装備しています。インターネット接続は簡単で、"Odakyu_Free_Wi-Fi"のSSIDに接続し、表示されたページで接続ボタンを押すだけです。実際に利用してみましたが、とても快適に利用できました。比較的空いていたからかもしれませんが…。
また、もう一つ"Romancecar-Link"というSSIDが用意されており、こちらに接続すると、車内のみのコンテンツ・サービスを楽しむことができます。
現在位置や観光案内など、一通りのコンテンツが揃っていますが、何と言っても面白いのは「展望映像」です。乗車しているロマンスカーの前面・後面に取り付けられたカメラの映像を、そのままWiFiで流しています。展望席が空いていなくても、これを眺めていれば展望席気分が味わえます。
客室内・デッキにある荷物置き場
インバウンドの観光客が多い箱根への特急列車であるためか、荷物置き場も多めに用意されています。
デッキにある荷物置き場です。大きなスーツケースを複数置けるほどのスペースがあります。
こちらは客室内にある荷物置き場。号車によって、客室内にあるか、デッキにあるかが決まっているようです。
従来のロマンスカーにあったカウンターはなし
従来のロマンスカー(VSE、MSE、LSE)には、車内販売用のカウンターがありましたが、GSEではカウンターはありません。その代り、ワゴンによる車内販売があります。
座席まで来てくれるワゴンと、こちらから買いに行く必要があるカウンター、どちらがよいかは好みの問題もありそうです。個人的には、気分転換がてら車内を歩いて買いに行けるカウンターのほうが好きです。
ただ、ロマンスカーは乗車時間が90分程度と短いことや、新宿・小田原・箱根湯本などの主要駅では、乗車前に駅弁や飲み物などがたくさん販売されているので、車内のカウンターは必要なしと判断されたのかもしれません。
GSE「はこね16号」乗車レポート!
4月下旬の平日、箱根湯本から新宿まで、GSEで運転される「はこね16号」に乗車してきましたので、乗車レポートをお届けします。
インターネット予約「e-Romancecar」で予約
ロマンスカーは全車指定席での運転です。そのため、乗車するには、座席指定を受けた特急券が必要です。
空きがあれば、乗車直前に駅でも購入できますが、観光シーズンの週末など、混雑する時期には、予約をしておいたほうがよいでしょう。
ロマンスカーの予約は、小田急のWebサイトから「e-Romancecar」で予約できます。
上記サイトの「空席照会・予約」欄で、出発駅・到着駅・乗車日・時刻(出発もしくは到着を選択)・人数を入力して「空席検索」すると、その時間帯に運転されるロマンスカーの空席状況が表示されます。
展望席に乗りたい場合は「前展望席」「後展望席」が「○(残席あり)」になっている列車を選びましょう。
乗りたい列車が決まったら、列車名をクリックすると、座席種別を選択する画面になります。一般席、展望席などを選択して、「号車/シートマップ」で号車番号を選びます。このとき、「指定号車の座席をシートマップで選択」をチェックして次の画面に進むと、シートマップで好きな座席を選べます。
購入・予約のどちらもできますが、予約しておき、乗車前に駅で購入することもできます。ただし、予約日を含めて8日以上経過すると、自動的に予約はキャンセルされてしまうようです。また、発車時刻15分前までに購入しないと、こちらも自動的にキャンセルされてしまいます。駅で購入する場合には、窓口が混雑することも想定して、少し早めに行ったほうがよいでしょう。
で、私の場合は、午前中に所用があり、その時間次第で変更できるようにと、とりあえず小田原→新宿の予約だけを入れておきました。当日、所用が思ったよりも早く済んだため、箱根湯本からの乗車に変更したのでした。
箱根湯本で特急券を購入
当日、箱根湯本に到着し、予約時のメールを窓口で見せて、特急券を購入します。
箱根湯本から新宿までは、特急券1,090円+乗車券1,190円の合計2,280円です。小田原~新宿であれば、特急券890円+乗車券880円の合計1,770円と、だいぶ安くなります。
ちょうどお昼時だったので、改札前の売店で駅弁も購入しました。
荒天の影響でやや遅延
当日は、低気圧の影響で大雨に強風が吹き荒れる春の嵐でした。お昼ごろには晴れ間も見えてきましたが、午前中から列車が全般的に遅れ気味になっていたようで、一つ前のロマンスカー「はこね14号」は20分遅れ。小田原~箱根湯本の区間は単線のため、一度遅れると、なかなか遅れが回復しないようですね。
ただ、こんな天候でも、さすがに国際的観光地、箱根です。箱根湯本駅のホームは観光客で賑わっていて、小田原方面から列車が到着すると、みな箱根登山電車に乗り換えていきます。登山電車とケーブルカーは動いているものの、ロープウェイと芦ノ湖の遊覧船は運休との掲示がありました。
そして、予定よりも少し遅れて、GSEが入線してきました。新宿から「スーパーはこね17号」として運転されてきた列車です。さすがにデビューしたてということもあって、先頭車の前で記念撮影をする乗客が後を絶ちません。それにしても、このローズバーミリオンの車体は鮮やかです。
車内清掃中に写真を撮ってまわりました。4号車の側面には「ROMANCECAR GSE」の文字が燦然と輝きます。
車内清掃後すぐに発車
車内清掃が終わって、いよいよGSEに乗り込みます。すでに出発時刻を過ぎていたためか、席につくやいなや、「はこね16号」は箱根湯本を発車しました。ドアが開いてから2分も経っていないような気がしますが、乗り遅れた人がいなかったか心配になるほどです。
車内は幸いに空いていたので、デッキなどを見て回ります。平日のお昼過ぎの列車ということもあって、箱根湯本からの乗客は、中高年グループや外国からの観光客が目立ちました。
乗車した2号車の乗客はこの程度。小田原から少し乗車がありましたが、埋まっている席はざっと2割くらい。箱根湯本12時35分発の列車ですので、箱根観光から帰宅するには少し早いのでしょうか。
小田原から町田までは高速運転!
小田原までは、線路が曲がりくねっている区間のため、スピードを出さずゆっくりと走っていきます。それでも左右に結構揺れます。まあ、この揺れは、車両性能のせいではなく、線路のせいでしょう。
小田原を出ると、小田急線区間に入ります。ここからはGSEも本気モードです。どんどんスピードを上げ、特急列車らしい走りになります。スピードが上がっても揺れは少なく、乗り心地は極めて快適です。さすがに最新型の特急車両ですね。
お昼がまだでしたので、このあたりで駅弁をいただくことにします。箱根湯本駅で購入した「はこね弁当 二十三の物語」(1,050円)というお弁当です。後藤商事(はこね弁当)が販売しています。
おかずは、椎茸の肉詰め、蓮根の天ぷら、カレイの西京焼き、つくね、枝豆コロッケ、卵焼き、煮物、かまぼこなど、盛り沢山です。俵ご飯の量はひかえめ。おかずをたくさん食べたい方、お酒のつまみにしたい方にはおすすめのお弁当ですね。ちなみに、「二十三の物語」の由来は、特に書かれていませんでした。
雨は上がりましたが、まだ風が強く、山にかかる雲がどんどん流されていきます。
本厚木、町田と停車し、それぞれ数名のビジネスマンが乗車。平日の昼間ですので、出張での利用でしょうね。
新たな複々線区間はそれほど飛ばさず?
登戸を過ぎて多摩川を渡ると、複々線の区間に入ります。3月に代々木上原までの複々線がすべて完成し、大規模なダイヤ改正が行われました。
この「はこね16号」、当然、内側の急行線を走ります。せっかくの複々線ですから、思いっきり飛ばすのかと思いきや、スピードは控えめ。平日の日中時間帯とはいえ、東京都に入るあたりまで来ると、列車の本数もそれなりに多く、前の電車につかえてしまうのでしょうね。
定刻どおりに新宿に到着
地下鉄千代田線との接続駅、代々木上原を過ぎると再び複線に。新宿に近いのにあまり利用者の多くない駅を通過し、14時07分、定刻どおりに新宿に到着しました。
せっかくなので、新宿駅でも写真を。この展望席、前面のガラスがものすごく大きいので、開放感がすごいでしょうね。今度はぜひ展望席に乗ってみたいですね。
ということで、箱根湯本から新宿まで、小田急の新型ロマンスカー「GSE」に乗車してみました。車内設備と乗車レポートを中心にお届けしました。豪華さはあまり感じませんが、洗練された車内設備と乗り心地、それに、大きな窓が明るい雰囲気を作り出している車内は、いずれも完成度が高い印象です。小田急のWebサイトでは、どの列車が「GSE」なのか、運用を公開していますので、狙って乗ることも可能です。
箱根へお出かけの際には、ぜひ新しいロマンスカー「GSE」に乗ってみてください!
コメント