旅人の旅情をかきたてる終着駅。日本には数多くの終着駅があります。本当の最果ての終着駅から、なぜここが終着駅?と思われる駅まで、これまでの乗り鉄で訪れた、印象的な終着駅を紹介します。青春18きっぷなどでの乗り鉄や鉄道旅行で訪れるのにおすすめの駅ばかりです。
※2020.09.08更新
最果ての終着駅!
終着駅といって思いつくのは、やはり、長距離を列車で旅してきて、ようやくたどり着いた最果ての駅。「やっとここまでやってきた」、そんな思いのする最果ての終着駅を紹介しましょう。
日本最北端! 道中の最果て感が半端ない稚内駅
日本最北端の駅、稚内駅。旭川から長大な宗谷本線をひたすら北上。特急列車でも4時間近く、普通列車なら6時間以上もかけて、ようやく到着する最果ての駅です。
ここを最初に訪れたのは、もう20年以上前。札幌から夜行急行「利尻」に乗車、一晩かけて早朝6時に稚内駅に到着したのでした。夜行列車で訪れたこともあり、ようやくここまできた! という感慨にふけったものです。
現在の稚内駅は2011年に建てられた新しいきれいな駅舎です。人口3万人を超える稚内市の中心駅でもありますし、駅舎にはお土産屋さんやカフェ、交流スペース、コンビニなども入っていて、今どきの「駅」という感じで、それほど最果て感はありません。
稚内駅の最果て感は、その道中にあるといっても過言ではないでしょう。旭川を出ると、大きな町は名寄くらいで、それ以降は道北の原野や、広大な牧場や牧草地が広がる中をひたすら進みます。
宗谷本線の車窓については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
もう一つは、宗谷岬でしょう。正真正銘の日本最北端の地です。稚内駅とは稚内湾を挟んで反対側になりますので、路線バスで50分ほどかかりますが、稚内まで来たら、宗谷岬を訪れないわけにはいかないですね。
東の最果て、荒涼とした原野の先にある根室駅
同じ北海道には、東の最果ての終着駅、根室駅もあります。
札幌から釧路までが4時間弱、さらに、釧路から花咲線(根室本線)の普通列車で約2時間半。ようやくたどり着くのが日本最東端の終着駅、根室駅です。
根室駅の駅舎は小さいながらも、根室市の中心駅ということもあり、それなりの設備が整っています。駅周辺は根室の市街地ですので、それほど最果て感はありません。
根室駅の最果て感を強めているのは、やはりその道中の花咲線の車窓でしょう。途中の厚岸湾や、その近くに広がる別寒辺牛(べかんべうし)湿原のあたりは、人工物がほとんど見られない荒涼とした湿原の中を進みます。
それ以外にも、荒涼とした原野や広大な牧場が車窓を飾り、札幌や釧路からの距離もあいまって、かなりの最果て感を感じること間違いなしです。
そして、根室の先には、日本の本土最東端の納沙布岬があります。目と鼻の先に北方領土を望む岬です。領土問題を考えずにはいられません。
花咲線(根室本線の釧路~根室)の乗車記については、以下の記事をご覧ください。
竜飛岬への玄関口! 最果て感漂う三厩駅
青森県は津軽半島の北端部にある三厩(みんまや)駅。青森からの津軽線の終着駅です。本州最北端の駅は、陸奥湾を挟んで反対側、下北半島にある大湊線の下北駅ですが、終着駅の印象が強いのは三厩駅です。
三厩駅にやってくる列車は、普通列車ばかりで1日たった5往復。2017年の三厩駅の利用者は1日平均で22名。まさに本州最果ての駅です。
津軽線は、起点の青森駅から途中の中小国信号場までは、北海道と本州を結ぶ物流の大動脈で、多数の貨物列車が走ります。ところが、その先、終点の三厩までは、完全なローカル線。そんな路線の終着駅ですから、印象に残るのかもしれません。
三厩駅前から路線バスに乗ると、津軽半島の最北端、竜飛岬へ行くことができます。津軽海峡を挟んで、北海道をすぐ近くに眺めることができます。
そして、竜飛岬といえば、昭和の大事業、青函トンネル建設の本州側の拠点となった場所でもあります。竜飛岬の近くには青函トンネル記念館があります。青函トンネルの工事の際に、作業員や物資の輸送に使われた竜飛斜坑線があり、青函トンネルの横にある坑道まで、なんと海面下140メートルまで降りることができます。
本州最果ての駅でありながら、実はまだその先がある、そんな駅なのです。
関東最果ての終着駅、大前駅
関東地方にも、最果て感の漂う終着駅があります。吾妻線の大前駅です。
上越線の渋川駅から西に分かれた吾妻線は、吾妻川の川筋に沿って進む川の路線。沿線には草津温泉、四万温泉など多くの温泉地を抱える、温泉地へのアクセス路線でもあります。
そんな吾妻線ですが、たいていの列車は、大前駅の一つ手前の万座・鹿沢口駅が終点。残りの一駅間を走り、大前駅まで到達する列車は1日たった5本しかありません。
大前駅の先で線路は途切れています。この先、山を越えると県境を超えて長野県の菅平高原への至りますが、鉄路はここまでです。
駅のすぐ横には吾妻川が流れていますが、集落は川の向こう、川岸の崖の上にあるようで、大前駅の周辺には民家が数件ある以外は何もありません。地元の方だけが利用する駅のようです。
ちなみに、大前駅訪問後は、隣の万座・鹿沢口駅から、路線バスで軽井沢へ抜けるルートがあります。バスの本数は多くないので、このルートを試そうという方は、バスの時間を確認しておいたほうがよいでしょう。
残念ながら終着駅になってしまった終着駅
本来は終着駅ではなかったはずなのですが、いろいろな事情から、終着駅になってしまった駅もあります。そんな終着駅をご紹介します。
廃線により終着駅となった留萌駅
函館本線の深川駅と留萌駅を結ぶ留萌本線の終着駅が留萌(るもい)駅です。2016年までは終着駅ではなかったのですが、2016年12月に留萌本線の留萌~増毛間が廃止となり、留萌駅が終着駅となりました。
人口2万人の留萌市の中心駅ですので、駅舎もホームも立派です。ですが、長いホームにやってくるのは単行の気動車のみ。ホーム屋根の錆びた支柱が哀愁を誘います。
駅舎にある広い待合室。かつては多くの人で賑わっていたのでしょう。これだけ立派な駅舎や待合室がある駅が、いまや朝晩は駅員が不在となる無人駅です。
そして、何よりも寂しいのが、2016年12月に途切れてしまった鉄路。留萌駅の少し先で、線路がぷっつりと途切れてしまっています。その先の鉄橋などの構造物は残されたままですが、それがさらに寂しさを誘います。
そんな留萌駅ですが、留萌本線そのものが、廃線の危機にあります。JR北海道が公表している「単独で維持困難案線区」の一つに、留萌本線の全線が挙げられています。しかも、著しく乗客が少ない5線区にも入っており、JR北海道は鉄道以外の交通機関への転換を目指すとしています。
終着駅になったばかりの留萌駅ですが、それも長くはないのかもしれません。
つながらなかった終着駅、越美南線 北濃駅
岐阜県郡上市にある北濃駅は、第三セクター 長良川鉄道、越美南線(美濃太田~北濃)の終着駅です。
長良川鉄道は、元国鉄の越美南線を引き継いで発足した第三セクター鉄道です。越美「南線」というくらいですから、越美北線もありまして、現在はJR西日本の越前花堂駅と九頭竜湖駅を結ぶ路線となっています。
この2路線は、国鉄「越美線」として計画され、北側と南側から建設が始まったのですが、最後までつながることはありませんでした。
越美北線の終着駅、九頭竜湖駅と、越美南線の終着駅、北濃駅は、直線距離で約16km、道なりで約30km離れています。両駅の間には、岐阜・福井の県境がありますし、九頭竜湖(九頭竜ダム)を挟んでいますので、この区間が一番最後まで残ってしまったのは必然だったのでしょうね。
北濃駅のホームの北側には、このような看板があります。高山本線、太多線の駅である美濃太田駅から、長良川に沿って北上、72.2kmの先にこの北濃駅があります。「バスにのりかえ」と書かれていて、残念ながらここから先、鉄路はつながっていません。
しかも、路線バスも、越美北線の九頭竜湖駅にはつながっていません。鉄道が廃止になった区間であれば、たいていは代替バスが運行されているのですが、北濃~九頭竜湖間は、そもそも鉄道自体が開通していないため、代替となる路線バスもありません。
長良川鉄道 越美南線を走る気動車です。長良川に沿って走るため、車窓はなかなか良く、長良川の車窓を眺める観光列車「ながら」も運転されています。
北濃駅にある転車台です。現在は使われていないようです。もともと岐阜駅に設置されていたものを移設したとのことです。
2012年に、以下のようなルートで旅をしたことがあります。
- 高岡駅~(JR城端線)~城端駅~(加越能バス)~白川郷~(白鳥バス)~北濃駅~(長良川鉄道 越美南線)~美濃太田駅
現在は、白川郷~北濃駅を直接結ぶ路線バスはないようです。前述のように、北濃駅は美濃太田駅から72kmも離れたところにあり、その間、他路線との接続もないため、北濃駅を訪問後は、基本的に美濃太田方面へ戻るしかなさそうです。
「横軽」廃止で終着駅に! 信越本線 横川駅
群馬県にある信越本線の横川駅。かつては、碓氷峠を超える列車が行き来していましたが、北陸新幹線の高崎~長野間の開業で、横川~軽井沢間が1997年に廃止になり、終着駅となりました。
現在は、高崎からの電車が1時間に1本ほどやってくるだけの閑散とした駅になってしまいました。
とはいえ、横川駅は、前述の横川~軽井沢間の碓氷峠越え、通称「横軽」を支えてきた歴史のある駅ですから、現在でも鉄道ファンにはとっては楽しめる終着駅です。
横川駅に隣接する鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」には、かつての「横軽」の鉄道遺産である補助機関車や、横軽を行き来した車両たちが展示されています。当時を知る鉄道ファンはもちろんのこと、そうでない方でも非常に楽しめるテーマパークです。
「碓氷峠鉄道文化むら」の様子については、以下の記事をご覧ください。
「碓氷峠鉄道文化むら」から温泉施設「峠の湯」まで、廃止になった信越本線の線路をそのまま活用して、トロッコ列車が運転されています(3月~11月の土休日、8月は毎日運行)。
とてもゆっくりですが、特急列車や普通列車が行き来していた急勾配を体験することができます。
トロッコ列車については、以下の記事をご覧ください。
このトロッコ列車が走る線路脇(正確には旧信越本線の上り線跡)は、「アプトの道」として整備されていて、ハイキングをすることができます。途中、レンガ造りの旧丸山変電所など、見どころもありますので、往路はトロッコ列車で、復路はハイキングで、というのもおすすめです。
横川駅周辺の見どころについては、以下の記事もご覧ください。
都会の秘境駅? 工場地帯にある珍しい終着駅
印象に残る終着駅というと、山奥や最果ての海の近くなど、都会から離れたところを思い浮かべがちですが、都会にも、都会ならではの珍しい終着駅があります。
3つの終着駅がある鶴見線
神奈川県の横浜市・川崎市の工業地帯を走る鶴見線。2つの支線があり、他路線と接続しない3つの終着駅があります。
鶴見線本線の終着駅、扇町駅です。埋立地の中にあり、周囲は工場ばかりが立ち並びます。この扇町駅には、ネコがたくさん住み着いています。人に慣れているのか、近づいても全く意に介さずに寝ています(笑)
鶴見線 大川支線の終着駅、大川駅です。今にも朽ち果てそうな駅舎が哀愁を誘います。完全に周辺にある工場への通勤用の路線で、日中時間帯は電車が来ません。土休日に至っては、1日3本しか電車がありません。そんな都会の秘境駅ですが、大川支線が分岐する武蔵白石駅からはたった1km。徒歩でも15分ほどで到着します。
扇町駅、大川駅の訪問記は、以下の記事をご覧ください。
そして、鶴見線の終着駅といえば、有名なのが海芝浦駅。東芝の事業所に接していて、東芝の社員でないと駅からでることすらできません。
そんな海芝浦駅の見どころは、この運河の絶景! 改札内に海芝公園という小さな公園が整備されていて、そこからは、運河と、その先にある工場や橋などを眺めることができます。
おすすめは夕方~夜間の訪問。工場夜景を眺めることができます。
海芝浦駅の訪問記については、以下の記事をご覧ください。
以上、『最果て駅から工場地帯の駅まで! これまで訪問した思い出の終着駅を紹介します!』でした。ひとくちに終着駅といっても、全く雰囲気の異なる、さまざまな駅があります。そんな終着駅への訪問を、旅の目的にしてみてはいかがでしょうか。
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