JR東日本は、現在240km/hの上越新幹線の最高速度を275km/hに引き上げる計画を発表しました。E7系への車両の統一、吸音板の設置や防音壁のかさ上げ工事などを実施し、おおむね4年後に速度向上を実現する計画です。E7系への統一により、E4系に加えて、上越新幹線からはE2系も引退することになります。
上越新幹線の最高速度を240km/hから275km/hへ! 大宮~新潟で7分短縮!
JR東日本は、上越新幹線の速度向上に向けた取り組みを発表しました。
今回発表された内容をまとめると、以下のようになります。
- 上越新幹線(大宮~新潟間)の最高速度を240km/hから275km/hに向上させる
- 速度向上に向けて、以下に取り組む
- 上越新幹線の全列車の車両をE7系に統一(2022年度末)
- 吸音板設置(計約7km)、防音壁のかさ上げ(計約12km)などの地上設備工事を実施
- 時間短縮効果は、
- 上越新幹線 大宮~新潟間で約7分
- 北陸新幹線 大宮~高崎間で約2分
現在、上越新幹線を走る車両は、E2系、E4系、E7系の3種類がありますが、このうち、E4系は2階建て車両のため、最高速度が240km/hとなっています。このE4系が引退することで、上越新幹線を走る新幹線の最高速度を275km/hに統一できるということですね。
また、速度向上による騒音を防止するための地上設備工事も合わせて実施するという計画になっています。
上越新幹線 東京~新潟は1時間半切りへ
2019年3月改正のダイヤでは、上越新幹線の催促列車は、とき311号(東京 09:12発 → 新潟 10:49着)で、所要時間は1時間37分です。
今回発表された速度向上施策で、大宮~新潟間が7分短縮されます。また、すでに発表されている上野~大宮間の速度向上施策で約1分短縮されますので、合わせて8分の時間短縮。最速列車が同じ停車駅(大宮のみ停車)で走るとすれば、所要時間は1時間29分となり、東京~新潟間は1時間半を切ることになります。
上越新幹線の速度向上は庄内地方への所要時間短縮が目的?
JR東日本は、東北新幹線での速度向上に積極的に取り組んでいます。その最たるものは、営業最高速度360km/hを目指して製造された試験車両「ALFA-X」による走行試験でしょう。東北新幹線の速度向上を目指す理由は明確で、北海道新幹線の札幌延伸時に、少しでも所要時間を短縮して、航空機から多くのシェアを奪うためです。
一方、東京~新潟間は、現在でも上越新幹線で2時間程度の距離ですので、羽田~新潟の定期航空便は飛んでいません。東京~新潟間は、夜行高速バスに適した距離ですので、新幹線のライバルは高速バスでしょう。ただ、高速バス対抗を目的とするなら、所要時間短縮ではなく、割引きっぷなどで料金を下げる必要があります。つまり、多少の速度向上をしたところで、東京~新潟間の乗客が増える見込みはないのです。
それでは、上越新幹線の速度向上の目的は何でしょうか?
おそらく、東京~庄内地方の所要時間短縮が目的ではないかと思います。現在、羽田空港~庄内空港には1日4往復の航空便があります。JR東日本の狙いは、航空機から乗客を奪うことでしょう。
庄内地方(山形県の日本海側の地方)へは、新潟経由で、上越新幹線と特急いなほを乗り継ぐルートが(鉄道では)最も速いルートになりますが、現在は4時間~4時間半程度かかります。4時間を切ると、鉄道と航空機のシェアが逆転すると言われています。そう考えると、7分の短縮というのはかなり大きく思えてきます。
実際、JR東日本は、新潟駅での乗り換え時間を短縮するために、上越新幹線と特急いなほを同一ホームで乗り換えられるようにしています。これも、東京~庄内地方の所要時間短縮のための取り組みの一つと考えられます。
E4系に加えて上越新幹線からE2系も引退!
今回の発表で驚いたのは、あと3年ほどで、上越新幹線の車両をE7系に統一するという点です。これは、すでに引退が決まっているE4系に加えて、同時にE2系も上越新幹線から引退してしまうということを意味しています。
ところが、上越新幹線で利用されているE2系車両の中には、比較的新しいものがあります。東北新幹線の新青森延伸時に合わせて製造された車両です。2010頃年に製造されたため、現在でもまだ9年ほどしか経っていません。しばらく東北新幹線の「やまびこ」や「なすの」で利用されるかもしれませんね。
過去にも上越新幹線では275km/h運転が実施されていた?
実は、上越新幹線の最高速度が275km/hになるのは、今回が初めてではありません。過去には、200系という、すでに引退してしまった車両で、一部区間、一部の列車に限定されますが、上越新幹線で275km/h運転が実施されていました。
具体的には、上毛高原~越後湯沢間の大清水トンネルの中央部にある最も標高の高い地点から、越後湯沢駅を過ぎて、浦佐駅の近くまでの区間で、越後湯沢を通過する下り列車のみ、275km/hで運転していました。
なぜ下り列車だけかというと、上記の区間の下り勾配で勢いをつけることで、設計最高速度の250km/hを超える275km/hを実現していたためです。
その後、2階建て新幹線のE1系、E4系が投入されると、275km/h運転ができなくなり、すべての列車で最高速度が240km/hとなってしまいました。
今回の上越新幹線での速度向上計画は、ある意味では、275km/h運転の復活とも言えるわけです。
E7系で275km/h運転は初?
E7系に統一することで275km/h運転を実現する、ということですが、現在のE7系は、最高速度260km/hでの運転となっています。
E7系は、北陸新幹線の長野~金沢間の延伸開業に合わせて投入された車両です。この区間は、いわゆる整備新幹線のスキームを用いて建設された区間で、構造物や線路などの設計最高速度は260km/hとなっています。
E7系の車両自体は、設計最高速度が275km/hとなっていますので、車両性能上は問題ありません。ただ、実際の営業列車として、E7系が275km/hで運転されるのは初めてとなりそうです。
以上、「上越新幹線をE7系に統一して最高速度を275km/hへ! E4系に加えてE2系も上越新幹線から引退へ!」でお届けしました。所要時間が短縮され、車両も新しくなるので、利用者には良いことづくめですが、鉄道ファン的には古い車両が引退してしまうのはちょっと寂しいですね。
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