新幹線の中を美術館にしてしまった「現美新幹線」。車内には現代アートが展示されていて、雰囲気は美術館そのもの。カフェもあり、一味違った新幹線を体験できます。それほど混雑しないため、自由席でも気軽に乗車できます。
この記事では、「現美新幹線」の乗車記に加え、運転日・運転時刻、乗車方法なども紹介します。
「現美新幹線」は2020年12月で運行終了すると発表されました。乗車したい方はお早めに!
※2020.07.27更新
「現美新幹線」とは?
「現美新幹線」は、上越新幹線を走る観光列車(観光新幹線?)です。その特徴は、車内を現代アートの美術館にしてしまったこと です。
あとで詳しく紹介しますが、車内の様子を美術館そのもの。普通の新幹線とは似ても似つかないものになっています。車両(号車)ごとに異なるアーティストの作品が展示されています。
指定席もありますが、作品が展示されている車両にはゆったりとしたソファや座席が配置されていて、自由に座ることができます。
ちなみに、現美新幹線の車両は、もともとは秋田新幹線「こまち」として運転されていた車両を改造したものです。そのため、他の上越新幹線の列車とは異なり、6両編成で、車両の幅が小さい(在来線サイズの)新幹線になっています。
「現美新幹線」、2020年12月で運行終了!
JR東日本新潟支社は、現美新幹線の運行を2020年12月で終了すると発表しました。
現美新幹線の運行開始は2016年4月29日とのことで、5年弱という運行期間になります。観光列車としては短命ですが、秋田新幹線「こまち」として活躍していた車両を改装した新幹線車両ということもあってか、車両寿命が近づいているのでしょう。
上記のニュースリリースでは、2020年12月19日(土)が最後の運転日となるようです。
この記事でも紹介しますが、新幹線の車内を美術館そのものにしてしまったという珍しい新幹線です。このようなコンセプトの列車が、今後出てくるかわかりませんので、興味のある方は乗車しておきましょう。
「現美新幹線」の運転区間・運転日・運転時刻は?
「現美新幹線」の運転区間、運転日は以下の通りです。
- 運転区間: 上越新幹線 新潟~越後湯沢
- 運転日: 土曜日・日曜日・祝日(一部を除く)
運転日には、新潟~越後湯沢間で3往復運転されます。
- 下り(越後湯沢 → 新潟)
- とき451号: 越後湯沢 08:24発 → 新潟 09:14着
- とき453号: 越後湯沢 12:44発 → 新潟 13:38着
- とき455号: 越後湯沢 15:20発 → 新潟 16:14着
- 上り(新潟 → 越後湯沢)
- とき452号: 新潟 11:26発 → 越後湯沢 12:20着
- とき454号: 新潟 14:02発 → 越後湯沢 14:56着
- とき456号: 新潟 16:42発 → 越後湯沢 17:32着
- 途中停車駅: 浦佐、長岡、燕三条
「現美新幹線」の運行日については、JR東日本のWebサイトをご確認ください。
「現美新幹線」の乗車方法、おすすめのきっぷ
「現美新幹線」の乗車方法は普通の新幹線と同じで、乗車券+新幹線特急券(指定席または自由席)で乗車できます。
- 11号車: 指定席
- 12~16号車: 自由席
となっていますので、11号車に乗車したい場合には乗車券+指定席特急券を、それ以外の車両に乗車する場合には、乗車券+自由席特急券で乗車できます。もちろん、乗車したい区間の特急券が必要になります。
乗車券は「週末パス」「えちごツーデーパス」でもOK!
乗車券としては、「現美新幹線」の運転区間(新潟~越後湯沢)を含むフリーきっぷを利用することができます。
「現美新幹線」は土休日に運転されるので、たいていの運転日には「週末パス」を利用することができます。関東・甲信越・南東北の広い範囲がフリーエリアとなり、週末の連続する二日間利用できる、JR東日本の定番のフリーきっぷです。
新潟県を中心に鉄道で旅行する場合には、「えちごツーデーパス」がおすすめです。こちらも土休日の連続する二日間、新潟県内のJR線(上越新幹線 新潟~越後湯沢含む)や北越急行(ほくほく線)、えちごトキめき鉄道(全線)に乗車できて、2,690円という格安のフリーきっぷです。
これらのフリーきっぷに、「現美新幹線」に乗車したい区間の指定席特急券または自由席特急券を組み合わせれば、乗車することができます。
「現美新幹線」乗車記! 各車両の現代アートも紹介!
2019年7月に、「現美新幹線」に乗車してきました。越後湯沢から新潟までの全区間に乗車しました。といっても、乗車時間は50分ほどと短めです。
新幹線とは思えない外装は長岡花火の写真
まず目を引くのは、「現美新幹線」の外装(エクステリア)です。とても新幹線とは思えない派手な外装は、写真家、蜷川実花氏による「長岡花火」の写真です。
長岡花火といえば、毎年8月1日~3日の「長岡まつり」で実施される花火大会です。正三尺玉という巨大な花火が打ち上げられることで知られ、日本三大花火大会の一つにも数えられています。
車両ごとに、色合いの異なる花火の写真が描かれています。いずれも大迫力で、「現美新幹線」の目玉にもなっています。
「現美新幹線」に乗車するときには、早めにホームに行って、まずは外装を見学するのがおすすめです。
トンネルを利用したアートワーク! 座席は元グリーン車でゆったり!(11号車)
11号車は、「現美新幹線」唯一の指定席となっています。11号車は、元「こまち」のグリーン車。座席もそのまま利用されています。つまり、普通車指定席の料金で、グリーン車の座席に座れるのです。
この11号車もアートになっています。アーティスト 松本尚氏の作品です。「五穀豊穣」「祝祭」「光」をコンセプトとするアートワークになっていて、トンネルが多い上越新幹線の特徴を利用したアートになっています。
鏡面と車窓を融合させるアート!(12号車)
12号車は、通路の窓側にソファが、反対側にステンレスの鏡面を用いたアートが展示されています。
背景に広がる新潟の"今"と車内を映し出すステンレス鏡面によって、車窓と車内の人を融合させて見せるアートとのことです。
窓側に並ぶソファは、自由席となっていて、アートや車窓を眺めながら自由に座ることができます。
カフェとキッズスペース、そして、アート(13号車)
13号車にはカフェがあります。カフェの横には飲食スペースとして、テーブルが一組置かれています。カフェで購入したコーヒーやスイーツをここで食べても良いですし、他の車両のソファ席に持ち帰ってもよいです。
壁のカラフルなアートは、三国街道や新潟の山並みや里山の風景を大胆な色使いで描いたものです。アーティスト、古武家賢太郎氏の作品です。
カフェの横には、キッズスペースがあります。キッズスペースにはプラレールが置かれていて、お子様たちは自由に遊ぶことができます。
壁のアートは、アートユニット「paramodel」の作品で、線路をモチーフにしたパターンが配置されています。そして、通路側には山を模したオブジェが貼り付けられていて、山岳地帯の多い上越新幹線の風景を思わせるアートになっています。
世界第二位の高峰「K2」への旅!(14号車)
14号車には、写真がずらっと並びます。
写真家、石川直樹氏の作品です。エベレストなどヒマラヤの山々の写真を撮り続けている石川氏ですが、14号車の写真は、パキスタン・中国の国境付近のカラコルム山脈にある世界第二位の高峰「K2」を訪れた時のものです。
雪に閉ざされたゴツゴツした岩山の風景や、麓の町の景色など、「旅」を感じさせてくれる写真が多く展示されています。
川面に映る風景を再現したアート(15号車)
15号車の作品は、川面に移る風景と現実の風景が、水面を境にくっついて一体となっていることに着想を得たアート。アーティスト、荒神明香氏の作品です。
上下で対称になっていて、そのちょうど真ん中が水面を現わしているのでしょう。
風景というより、花や植物が集まって生き物を形作っているように見えました。とても色鮮やかなアートで、芸術を見慣れていない方にもわかりやすい作品です。
<やどかりに「やど」をわたしてみる>新潟里山編(16号車)
16号車は、アーティスト、AKI INOMATA 氏による<やどかりに「やど」をわたしてみる>シリーズの映像作品が、壁に掛けられた液晶ディスプレイで放映されています。
<やどかりに「やど」をわたしてみる>シリーズは、世界各国の建物をあしらった透明な殻(やど)をヤドカリに渡してみて、引っ越ししてもらう様子を映した作品です。
「新潟里山編」は、現美新幹線のために制作された新作で、新潟の茅葺の古民家を模した殻をヤドカリに渡しています。
車内の様子
7月の海の日の三連休の初日、土曜日に、現美新幹線「とき455号」(越後湯沢 15:20発 → 新潟 16:14着)に乗車しました。
越後湯沢出発時点では、乗客は少なく、各車両で数名ずつといったところ。空いているソファもかなりありました。
空いているうちにアートを見て回り、カフェで紅茶とスイーツを購入。スイーツは、佐渡クリームチーズのレモンケーキです。レモンの爽やかな味わいと、上品な甘さがマッチした、美味しいケーキでした。
現美新幹線は、基本的に片側しか窓がありません。11号車は両側にありますが、他の車両は、13号車以外は西側(新潟行きの進行方向左側)にしか窓がなく、もう片側はアートの展示スペースになっています。
それに、各車両のソファは、窓を背にしてアートのほうを向いて設置されています。そのため、車窓を楽しむのにはあまり向いていません。まあ、上の写真のように、見えないことはありませんが。
ちょうど中間地点になる長岡からの乗客で、座席はほぼ埋まりました。現美新幹線目当てというよりも、単にやってきた新幹線に乗った、という人が多いようです。越後湯沢~新潟間は、日中時間帯は30分に1本くらいしか新幹線がありませんので、現美新幹線も貴重な列車なのです。
越後湯沢から約50分で終点の新潟に到着。結局、それほど混雑することもなく、ゆったりと現美新幹線の旅を満喫することができました。
このあと、現美新幹線は、約30分後に発車する「とき456号」となって、越後湯沢へ戻っていきます。それまで、ホームに停車したままなので、外観を見学したり写真撮影したい場合には、終点に到着したあとでもよいでしょう。
「現美新幹線」で一味違う新幹線の旅を!
「現美新幹線」に乗車してみたわけですが、現代アートが理解できたかというと、それはなかなか難しかったです(笑) もともと、芸術やアートに詳しい方ではないですし、美術館にも滅多に行かないので。
それでも、「新幹線」という乗り物の中が、美術館のように改装されている様子 は、一度見てみてもよいと思います。
「美術館」なので、当然、列車の中を人が歩き回っています。これだけでも、普通の新幹線では見られない光景ですね。アート鑑賞に疲れたら、カフェでスイーツとコーヒーでも購入して、ソファに腰かけて一息。本当に美術館にいるような気分になります。
幸いなことに、乗車券と自由席特急券だけで乗車できますので、「現美新幹線」の運転日に新潟方面へおでかけの方は、乗車してみてもよいと思います。
以上、「【現美新幹線 乗車記】 走る美術館! 現代アート鑑賞にカフェで一休み、一味違う新幹線を体験できます!」でした。現代アートというテーマは、万人受けするものではないかもしれませんが、「美術館のような新幹線」に乗ってみるという体験は、たいていの方にとって、面白い経験になると思います。
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