2020年3月のJR各社のダイヤ改正では、各社の新幹線の増発が目立ちます。東北新幹線、上越新幹線、山陽新幹線では定期列車を増発、東海道新幹線では臨時列車を含めて「のぞみ」を毎時12本運転できるダイヤになります。また、東海道・山陽新幹線ではN700A系への車両統一による所要時間の短縮も図られます。
この記事では、2020年3月のJRダイヤ改正のうち、新幹線に関するトピックをまとめます。
全体としては増発傾向続く、北海道新幹線・北陸新幹線は現状維持
2020年3月のJRダイヤ改正ですが、新幹線に限ってみると、全体としては増発傾向となっています。各新幹線のダイヤ改正の状況を簡単にまとめると、以下のようになります。
路線名 | 2020年ダイヤ改正の状況 |
---|---|
北海道新幹線 | 現状維持 |
東北新幹線 | はやぶさ3往復増発 はやぶさ1本区間延長 |
上越新幹線 | たにがわ1往復増発 |
北陸新幹線 | 現状維持 |
東海道新幹線 | のぞみ12本ダイヤ 三島→東京 こだま1本増発 |
山陽新幹線 | のぞみ6本/時ダイヤ みずほ1往復増発 |
九州新幹線 | みずほ1往復増発 |
北陸新幹線は、2019年10月の台風19号の影響が残っており、現在の暫定ダイヤで運行している状況ですので、ダイヤ改正での増発や大きな改正は見送られた可能性があります。
北海道新幹線は、現状では増発する理由がないため、現状維持はやむを得ないでしょう。
定期列車の増発では、東北新幹線の「はやぶさ」(東京~新青森)の3往復の増発(臨時列車の定期列車化)が目立ちます。
一方、臨時列車も含めた運転本数の増加という点では、東海道新幹線の「のぞみ12本ダイヤ」の実現が大きなトピックです。定期列車の「のぞみ」は増発されていませんが、繁忙期に臨時「のぞみ」を含めて、1時間に12本もの「のぞみ」を運転できるダイヤに移行するということです。
このように、新幹線に限ってみると、全般的に増発傾向の強いダイヤ改正となりました。ダイヤ改正ごとに少しずつ減便されていく地方の在来線とは対照的です。
以下、主要なトピックについて紹介していきます。
【JR東日本】東北新幹線・上越新幹線は増発!
東北新幹線では「はやぶさ」が3往復増発、1本の運転区間を延長します。また、上越新幹線は「たにがわ」1往復を増発します。
東北新幹線「はやぶさ」は3往復もの増発!
東北新幹線では、東京~新青森間の「はやぶさ」が3往復も増発されます。また、下り「はやぶさ」は、1本が仙台→新青森間で増発されます。
一方、現在、東京発新函館北斗行きとして運転している2本の「はやぶさ」を新青森止まりに変更します。今回、東京~新青森間で増発、行先変更する2本の「はやぶさ」を新函館北斗行きとするため、北海道新幹線での列車本数の変更はありません。
東京~新青森間で増発される「はやぶさ」は、いずれもこれまで臨時「はやぶさ」として運転されていた列車です。仙台発着ではなく、新青森発着での増発ですので、仙台以北、盛岡や新青森への需要も多かったのでしょうね。
増発・行先変更される「はやぶさ」は以下の通りです。
列車名 | 東京 | 新青森 | 新函館北斗 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
下り | はやぶさ3号 | 07:00発 | 10:15着 | - | 増発、旧臨時はやぶさ383号 |
はやぶさ29号 | 14:28発 | 17:41着 | 18:40着 | 増発、旧臨時はやぶさ311号 | |
はやぶさ33号 | 15:28発 | 18:43着 | 19:47着 | 仙台~新青森間増発、旧はやぶさ29号 | |
はやぶさ37号 | 16:28発 | 19:41着 | - | 増発、旧臨時はやぶさ399号 |
列車名 | 新函館北斗 | 新青森 | 東京 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
上り | はやぶさ3号 | - | 08:29発 | 11:44着 | 増発、旧臨時はやぶさ46号 |
はやぶさ29号 | - | 11:20発 | 14:32着 | 増発、旧臨時はやぶさ52号 | |
はやぶさ33号 | - | 16:17発 | 19:32着 | 増発、旧臨時はやぶさ62号 |
上越新幹線「たにがわ」1往復は、E4系→E2系車両変更に伴う増発!
上越新幹線では上野~高崎間の「たにがわ」が1往復増発されます。
これは、純粋な増発というよりは、近い時刻のE4系「Maxとき」「Maxたにがわ」が、E2系の「とき」「たにがわ」に車両変更になるため、輸送力確保のための増発という意味合いが強いです。
増発される「たにがわ」は以下の通りです。
列車名 | 新潟 | 高崎 | 上野 | 東京 | 車両 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
上り | 改正前 |
Maxとき Maxたにがわ 300号 |
06:07発 | 07:15発 | 08:07発 | 08:12着 |
新潟~高崎 E4系8両 高崎~東京 E4系16両 |
改正後 | とき300号 | 06:07発 | (07:15発) | (08:07発) | 08:12着 | E2系 10両 | |
たにがわ474号 | - | 07:17発 | 08:08着 | - | E2系 10両(増発、土休日運休) |
列車名 | 東京 | 上野 | 高崎 | 新潟 | 車両 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
下り | 改正前 |
Maxとき Maxたにがわ 341号 |
18:52発 | 18:58発 | 19:50発 | 21:05着 |
東京~越後湯沢 E4系16両 越後湯沢~新潟 E4系8両 |
改正後 | とき341号 | 18:52発 | (18:58発) | (19:50発) | 21:05着 | E2系 10両 | |
たにがわ473号 | - | 18:52発 | 19:44着 | - | E2系 10両(増発) |
※()内の時刻は2019年12月時点のダイヤでの時刻です。2020年3月のダイヤ改正では変更になる可能性があります。
E4系16両編成で運転していた、上りの「Maxとき300号」、下りの「Maxとき341号」を、E2系10両編成へ変更するため、高崎~上野間に別の列車として上り「たにがわ474号」、下り「たにがわ473号」を増発した形です。
上りは朝の通勤時間帯、下りは帰宅時間帯にあたる列車ですので、単純にE2系10両に置き換えてしまうと輸送力が足りなくなってしまうためでしょう。
新幹線通勤の需要の多い高崎以南に限って増発したようです。東京側の発着駅が上野駅なのは、東京駅のホームの関係でしょうか。東京発着、上野発着と分けることで、通勤客の分散効果を狙ったのかもしれませんね。
【JR東海】N700A系に車両統一、「のぞみ12本ダイヤ」で東海道新幹線のダイヤは完成へ!
東海道新幹線から700系が引退し、いよいよ、JR東海念願のN700A系への車両統一です。これにより、「のぞみ12本ダイヤ」の実現、東京~新大阪間「のぞみ」全列車で2時間半切りを実現します。
東海道新幹線の車両をN700A系に統一、「のぞみ12本ダイヤ」を実現!
東海道新幹線(東京~新大阪)の車両が、2020年3月のダイヤ改正以降、すべてN700A系に統一されます。
全て同じ性能の車両に統一されるのは、JR東海の悲願だったはずです。開業当初の0系の時代を除けば、すべて同じ形式の車両に統一されるのは初めてではないでしょうか。
これにより、「のぞみ12本ダイヤ」が実現します。
(出典)2020年3月ダイヤ改正について(JR東海ニュースリリース 2019年12月13日)
「のぞみ12本ダイヤ」とは、臨時列車も含めて、毎時12本の「のぞみ」を運転できるダイヤです。普段は、上の表で「定期」と書かれた「のぞみ」を最低限運転し、追加で「臨時」を運転します。
金曜日の夕方や、年末年始、お盆休みや連休などの繁忙期には、臨時列車をたくさん増発しますが、その臨時列車が走るダイヤを、あらかじめ盛り込んでおくわけです。
「のぞみ12本ダイヤ」により、特に、繁忙期に臨時列車が増えることにより、混雑緩和につながる効果があります。
ちなみに、「のぞみ12本ダイヤ」では、「のぞみ」12本以外に、「ひかり」2本(毎時3分と33分)、「こだま」2本(毎時26分と56分)も運転されますので、最大で、毎時16本もの新幹線が走ることになります。
毎時16本といえば、運転間隔は平均で4分弱。実際には2分しか間が空かないところもあります。都会の通勤電車並みに新幹線が続々と発車していくのですね。
東京~新大阪間の「のぞみ」全列車が2時間30分以内に!
車両がN700A系に統一された効果としては、「のぞみ12本ダイヤ」のほかに、所要時間の短縮が挙げられます。
これまで、臨時列車では、東京~新大阪間で2時間37分かかる「のぞみ」がありましたが、ダイヤ改正以降は、すべての「のぞみ」が2時間30分以内になります。具体的には、2時間27分~2時間30分、平均すると2時間29分となります。
わずか数分の短縮ではありますが、この「数分の短縮」を何回も重ねて、東京~新大阪 2時間半を実現してきたわけです。
1964年(昭和39年)の開業当初は、最高時速200km、東京~新大阪間を4時間かかっていた東海道新幹線ですが、1992年(平成4年)に300系投入で初めて東京~新大阪間2時間30分を実現。ただし、1日2往復のみで、名古屋も京都も通過でした。
東京~新大阪間のすべての「のぞみ」で2時間30分を実現というのは、東海道新幹線の歴史を見ても、一つの到達点と言えそうです。ある意味、東海道新幹線のダイヤの「完成形」とも言えるのではないでしょうか。
【JR西日本】東京発着「のぞみ」の所要時間短縮、「みずほ」1往復増発!
JR西日本の山陽新幹線では、東京発着の「のぞみ」がN700A系に統一されることで、所要時間が短縮されます。また、九州新幹線へ直通する「みずほ」1往復が増発されます。
東京発着「のぞみ」の所要時間短縮、東京~博多の平均所要時間は5時間切りへ!
東京発着の「のぞみ」が、最高速度285km/hのN700A系に統一されることで、平均所要時間が短縮されます。東京~博多の平均所要時間は5時間を切り、4時間59分になります。
区間 | ダイヤ改正前 | ダイヤ改正後 | 短縮時分 |
---|---|---|---|
東京~岡山 | 3時間20分 | 3時間17分 | △3分 |
東京~広島 | 3時間57分 | 3時間55分 | △2分 |
東京~博多 | 5時間1分 | 4時間59分 | △2分 |
「のぞみ」毎時6本、新大阪発車時点で毎時10本の山陽新幹線を運転可能に!
東海道新幹線の「のぞみ12本ダイヤ」の効果ではありますが、山陽新幹線でも運転可能な「のぞみ」の本数が、これまでの毎時5本から6本へと増加します。これにより、「みずほ」「さくら」「ひかり」「こだま」をあわせて、毎時10本の列車を運転できるようになります。
列車名 | ダイヤ改正前 | ダイヤ改正後 |
---|---|---|
のぞみ | 5本/時 | 6本/時 |
みずほ さくら |
2本/時 | 2本/時 |
ひかり | 1本/時 | 1本/時 |
こだま | 1本/時 | 1本/時 |
合計 | 9本/時 | 10本/時 |
九州新幹線直通の「みずほ」1往復増発で8往復へ!
山陽新幹線~九州新幹線を直通する速達タイプの列車「みずほ」が1往復増発され、これまで1日往復だったものが、1日8往復の運転となります。
増発される「みずほ」の運転時刻は以下の通りです。これまで臨時列車として運転されていた「みずほ」を定期列車にする形です。
- みずほ613号: 新大阪 18:06発 → 鹿児島中央 21:57着
- 途中停車駅: 新神戸,岡山,福山,広島,小倉,博多,熊本,川内
- みずほ606号: 鹿児島中央 10:49発 → 新大阪 14:38着
- 途中停車駅: 熊本,久留米,博多,小倉,広島,岡山,新神戸
「みずほ」「さくら」の運転本数は以下のようになります。
列車名 | ダイヤ改正前 | ダイヤ改正後 |
---|---|---|
みずほ | 7往復/日 | 8往復/日 |
さくら | 17往復/日 | 17往復/日 |
合計 | 24往復/日 | 25往復/日 |
※「さくら」1往復は新大阪~熊本、それ以外は新大阪~鹿児島中央
山陽新幹線~九州新幹線直通の列車はそれほど多くないので、単純に1往復増えるのはありがたいことですね。
以上、『【2020年 JRダイヤ改正】 増発が続く新幹線! 東北新幹線「はやぶさ」3往復増発、東海道新幹線はのぞみ12本ダイヤへ!』でした。少子高齢化や高速道路網の整備が進み、鉄道全般としては縮小傾向ですが、新幹線に限ってみれば元気です。この状態がいつまで続くかは注目ですね。
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