JR東日本の「新幹線eチケット」は、交通系ICカード(Suica、PASOMO等)だけで新幹線に乗車できる新しいチケットレスサービスです。この記事では、「新幹線eチケット」の購入方法に加えて、紙のきっぷや従来の「えきねっと」との違い、払い戻し・変更の方法、「えきねっとトクだ値」などの割引サービスとの関係などについて、わかりやすく紹介します。
「新幹線eチケット」はSuicaやPASMOだけで新幹線に乗れるチケットレスサービス
JR東日本の「新幹線eチケット」は、インターネット予約サービス「えきねっと」で予約したあと、交通系ICカード(モバイルSuica含む)を改札にタッチするだけで新幹線に乗車できる 新しいチケットレスサービスです。
「新幹線eチケット」の概要は以下のとおりです。
- サービス提供路線
- 東北・北海道新幹線
- 山形新幹線、秋田新幹線
- 上越・北陸新幹線(JR西日本区間含む)
- 対象設備
- 普通車指定席、グリーン席、グランクラス
- 普通車自由席
- 予約サービス
- えきねっと
- e5489(北陸新幹線のみ)
- 登録できる交通系ICカード
- Suica、モバイルSuica、Kitaca、ICOCA、PASMO、TOICA、manaca、PiTaPa、nimoca、SUGOCA、はやかけん
- 購入できる商品(きっぷ)
- 「新幹線eチケット」: 運賃と料金が一体になった商品(紙のきっぷから200円引き、ただし、特定都区市内制度は適用されない)
- 「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」「お先にトクだ値スペシャル」: 早期購入割引きっぷ(路線・列車・座席数限定、購入期限あり)
「新幹線eチケット」は「えきねっと」「e5489」と強く結びついたチケットレスサービス!
「新幹線eチケット」の特徴は、インターネット予約サービス「えきねっと」「e5489」での予約・購入が前提となっていることです。
「新幹線eチケットサービス」利用の流れは以下の通りです。
(出典)「新幹線eチケットサービス」が始まります!(JR東日本ニュースリリース 2020年2月4日 PDF)
「新幹線eチケット」は、いわゆるチケットレスサービスですので、事前に指定席等の予約が必要になります。その予約には「えきねっと」か「e5489」を利用するというわけです。
東海道新幹線に交通系ICカードで乗車できる「スマートEX」と同等のサービスです。
「新幹線eチケット」と紙のきっぷや「えきねっと」との違い
「新幹線eチケット」と、「えきねっと」で予約して紙のきっぷを受け取るサービスの違いは以下のとおりです。
新幹線eチケット | えきねっと (紙のきっぷ利用) |
|
---|---|---|
きっぷの種別 | 乗車券+特急券 のセットのみ |
特急券のみの 購入も可能 |
指定席 グリーン席 グランクラス |
通常料金から 200円引き |
通常の運賃・料金 が適用される |
自由席 | 通常の運賃・料金 が適用される |
通常の運賃・料金 が適用される |
乗車券 | 新幹線の乗車駅 ~下車駅のみ 特定都区市内制度 は適用されない |
組み合わせ自由 特定都区市内制度 が適用される |
主な違いについて、以下で詳しく紹介します。
「新幹線eチケットサービス」は乗車券+特急券のセットのみ
最も大きな違いは、「新幹線eチケットサービス」は、乗車券+特急券のセットのみ であるという点です。
えきねっと 紙のきっぷ |
新幹線eチケット サービス |
||
---|---|---|---|
出発駅~新幹線乗車駅 | 通しで購入可能 | 別途購入 | |
新幹線乗車駅~ 新幹線下車駅 |
新幹線eチケット に含まれる |
||
新幹線下車駅~目的駅 | 別途購入 |
乗車券は、新幹線の乗車駅~下車駅間のみに限定されてしまうため、出発地から新幹線に乗る駅までの乗車券と、新幹線を降りた駅から目的地までの乗車券が、別途必要になります。
乗車券を出発地~目的地の通しで購入できず、最大で3区間に分割されてしまいます。一般的に、JRの運賃は、長距離になるほど距離当たりの単価が安くなる制度(長距離逓減制)を採用しています。そのため、出発地~目的地を1枚のきっぷで利用できる紙のきっぷに比べると、「新幹線eチケット」利用の場合には乗車券が高くなってしまう可能性があります。
「新幹線eチケット」では特定都区市内制度が適用されない
「新幹線eチケット」では、特定都区市内制度が適用されない 点も要注意です。特定都区市内制度とは、遠距離のきっぷを購入した場合、その出発駅や目的地が「東京都区内」「仙台市内」などになり、そのエリア内の駅から(まで)乗車できる制度です。
「新幹線eチケット」対象の新幹線に関係のある特定都区市内制度の設定エリアは以下のとおりです。
- 【区】東京都区内
- 【山】東京山手線内
- 【仙】仙台市内
出発駅や目的地の駅が特定都区市内制度のエリア内で、出発駅~新幹線の乗車駅、新幹線の下車駅~目的地が比較的離れている場合、特定都区市内制度の恩恵を受けられなくなると、運賃が高くなってしまう場合があります。
上記のようなデメリットがある分、「新幹線eチケット」の指定席(普通車指定席、グリーン席、グランクラス)は、通常の運賃+特急料金に比べて200円安く設定されています。
「新幹線eチケット」の変更・払い戻し、乗り遅れは?
予定が変わった時のきっぷの変更や払い戻し、そして、乗り遅れてしまった場合など、新幹線に乗車する際に気になることは多くあります。
「新幹線eチケット」では、変更や払い戻し、乗り遅れ時にどうなるのか、以下で解説します。
「新幹線eチケット」の変更・払い戻しは発車時刻の4分前まで!
「新幹線eチケット」の変更・払い戻し(指定席の場合)のルールは以下のようになっています。
変更 | 払い戻し | |
---|---|---|
期限 | 使用開始前に限り 発車4分前まで (23時24分まで) |
使用開始前に限り 発車4分前まで (23時50分まで) |
回数 手数料 |
回数無制限※1 1回のみ※2 |
320円※1 2日前まで340円※2 前日30%※2 |
方法 | 「えきねっと」で実施 (オンラインのみ) |
「えきねっと」で実施 (オンラインのみ) |
※1: 「えきねっと特典」適用の場合(→JR東日本・JR北海道・北陸新幹線のエリア内で完結するきっぷに自動的に適用される特典)
※2: 「えきねっと特典」が適用されない場合
「新幹線eチケット」の変更・払い戻しはオンラインで実施します。いずれも、乗車駅での列車の発車時刻の4分前まで、かつ、変更の場合は当日の23時24分まで、払い戻しの場合は23時50分までが期限となります。変更の「23時24分まで」という期限は要注意です。
「新幹線eチケット」の変更は、えきねっと特典が適用されるきっぷ(JR東日本・JR北海道・北陸新幹線のエリア内で完結するきっぷ)の場合には、回数無制限です。出張など、用事の終了時刻がわからない場合でも、とりあえず予約だけしておき、必要に応じてスマートフォンから変更することができます。
「新幹線eチケット」の払い戻し手数料は、えきねっと特典が適用されるきっぷは一律320円です。
「新幹線eチケット」で予約した列車に乗り遅れた場合は後続列車の自由席に乗車可能
「新幹線eチケット」で予約した列車の発車時刻の4分前までに変更や払い戻しをせず、該当の列車に乗車しなかった場合(乗り遅れた場合)は、以下のような扱いになります。
- 通常の「新幹線eチケット」
- 当日に限り、後続列車の自由席または立席に乗車できる
- 「えきねっとトクだ値」等の割引きっぷ
- 特急券部分は無効
- 乗車券部分は当日に限り有効(別途、特急券を購入すれば後続列車に乗車できる)
通常の「新幹線eチケット」であれば、指定列車に乗り遅れたとしても、後続列車の自由席に乗車することができます。ただ、混雑している時期や時間帯の場合には、自由席に座れる保証はありませので、事前に予約変更をしておきましょう。
また、「えきねっとトクだ値」などの割引きっぷの場合は、特急券部分は無効になってしまいます。これでは、割引きっぷを購入した意味がありませんので、乗り遅れそうであれば、別の列車に予約変更をしておきましょう。
割引きっぷ「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」は「新幹線eチケット」専用
JR東日本の新幹線には、早期に購入することで、運賃+特急料金が割引となる「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」という割引きっぷがあります。
これらの割引きっぷを利用する場合には、「新幹線eチケット」の利用が前提となります。「えきねっと」で予約をしても、紙のきっぷを利用する場合には、「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」を購入することができません。
通常料金のきっぷ | えきねっとトクだ値 お先にトクだ値 |
|
---|---|---|
新幹線eチケット | 〇 | 〇 |
紙のきっぷ | 〇 | × |
「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」を利用する方は、新幹線eチケットを利用できるように、手持ちの交通系ICカードを「えきねっと」や「e5489」に登録しておきましょう。
また、「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」は、指定された列車に乗り遅れると、料金券部分(特急料金やグリーン料金など)は無効 になり、後続の列車の自由席に乗ることもできませんので、注意が必要です。乗り遅れそうなら、必ず事前に変更か払い戻しをしておきましょう。
「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」については、以下の記事もご覧ください。
実践! お先にトクだ値スペシャルで「新幹線eチケットサービス」を利用!
2020年3月の「新幹線eチケットサービス」の開始から何度か利用しましたが、実際の使い勝手を簡単にレポートします。
予約は通常の「えきねっと」で! ただし「お先にトクだ値」は購入期限に注意!
これまでご紹介したように、「新幹線eチケット」の購入方法は、これまでの「えきねっと」での新幹線の予約方法と変わりはありません。
えきねっとで「新幹線eチケット」の対象となる列車を検索すると、下のように、列車名、座席種別の下に「トクだ値」「5%OFF」「25%OFF」などの表示が出てきます。
列車を選択して次へ進むと、以下のように購入できる「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」の残席状況が表示されます。残席があるきっぷを選択すれば、購入することができます。
なお、「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」などは、いわゆる早期割引購入きっぷですので、購入期限がある点に注意しましょう。
「新幹線eチケット」を選択すると、予約の最後で、利用する交通系ICカードを選択する画面が出てきます。ここで選択した交通系ICカードを、乗車当日に忘れないように持参しましょう。
また、予約完了後、登録してあるメールアドレスに「 【新幹線eチケット】購入完了のお知らせ」というタイトルのメールが届きます。このメールに、乗車日、列車名、乗車区間・時刻、座席番号等が記載されていますので、なくさないようにしましょう。
乗車当日は改札口に交通系ICカードをタッチするだけ!
「えきねっと」での予約後、新幹線の乗車までは、特に何もしなくても大丈夫です。チケットレスですので、紙のきっぷを受け取る手間もありません。
乗車の2時間ほど前に、「【新幹線eチケット】ご乗車予定の予約のお知らせ」というタイトルのメールが届きました。内容は購入完了時のメールとほぼ同じで、予約内容が記載されています。このメールにも座席番号が記載されていますので、メールを受信できるようにしておきましょう。
「新幹線eチケット」に登録した交通系ICカードを新幹線の改札機にタッチして入場します。このとき、改札機からは何も出てきませんが、「【改札通過】(列車名)(座席番号)」というタイトルのメールが届きます。
メールを受信できない状況であったり、手元に座席番号が印刷された紙を持っておきたい場合などは、改札入場後においてある「新幹線eチケット 座席票発行機」に、交通系ICカードをタッチしましょう。列車名や座席番号が記載された紙が出てきます。
乗車後も、指定された座席に座っている限りは、車内改札もありません。下車後も、改札機に交通系ICカードをタッチすればOKです。
ということで、特に難しいことはありません。しいて言えば、「えきねっと」に登録されているメールアドレス宛てのメールを受信できるスマートフォンなどを持っておけば安心です。
新幹線の自由席は「タッチでGo!新幹線」、指定席は「新幹線eチケット」で新幹線のチケットレス化を推進!
JR東日本は、交通系ICカードのチャージ残高だけで新幹線の自由席に乗車できる「タッチでGo!新幹線」を提供しています。当初は、首都圏エリアだけでしたが、2021年3月にJR東日本の全新幹線に拡大されました。
「タッチでGo!新幹線」は、対象が自由席のため、予約すら不要です。最初に利用するときに、自動券売機で交通系ICカードの利用登録が必要ですが、それ以降は、Suicaなどの交通系ICカードに残高さえあれば、新幹線の改札をそのまま通れるサービスです。
一方、「新幹線eチケット」は、指定席(グリーン席、グランクラス含む)が対象です。
2つのチケットレスサービスの違いは以下のようになっています。
タッチでGo! 新幹線 |
新幹線eチケット | |
---|---|---|
対象線区 | 東北新幹線 秋田新幹線 山形新幹線 上越新幹線 北陸新幹線 (東京~上越妙高) |
北海道新幹線 東北新幹線 秋田新幹線 山形新幹線 上越新幹線 北陸新幹線 |
対象設備 | 普通車自由席 | 普通車自由席 普通車指定席 グリーン席 グランクラス |
事前予約 | 不要 | 必要 |
決済 | チャージ残高 | えきねっと予約時の クレジットカード等 |
きっぷの 受け取り |
不要 チケットレス |
不要 チケットレス |
自由席に予約なしで気軽に乗れる「タッチでGo!新幹線」と、指定席を対象にした「新幹線eチケット」で、JR東日本の新幹線のチケットレスサービスは一応の完成を見たと言ってもよいでしょう。
2021年6月には、「えきねっと」のリニューアルが実施され、えきねっとでの購入・決済時に「JRE POINT」が貯まるようになったほか、JRE POINTを利用して新幹線に乗車できる「特典チケット」に交換することもできます。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
以上、『Suicaのみで新幹線に乗れるJR東日本の「新幹線eチケット」、基本的な使い方、紙のきっぷとの違い、変更・払い戻し等について紹介します!』でした。紙のきっぷに比べていくつかデメリットがある反面、きっぷを受け取る必要がないというチケットレスならではのメリットがある「新幹線eチケット」。今後はチケットレスが標準的になっていくのでしょう。
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