静岡県富士市を走る「岳南電車」。わずか9.2km、10駅のみのミニ鉄道ですが、全駅から富士山が見える鉄道として有名です。車窓からは迫力のある富士山が見えたり、工場の敷地内を走ったりと、短いながら見どころの多い鉄道です。そんな「岳南電車」に、2020年1月に乗車してきましたので、乗車記をお届けします。
富士山を望むミニ鉄道「岳南電車」
岳南電車は、東海道本線の吉原駅から、岳南江尾駅まで、9.2km、駅数10のミニ鉄道です。
岳南電車は、全線・全駅が静岡県富士市内にあり、富士市民の足をして活躍しています。地図で見ると、駿河湾に近い吉原駅から、ぐるっと半円を描くように北から東へと線路が続き、東海道新幹線の高架をくぐったところで、終点の岳南江尾に到着します。
1両の電車が行ったり来たりしていますが、日中時間帯でも30分に1本程度の本数があり、途中下車も気軽にできます。
また、途中、工場地帯を走り抜けるため、工場夜景が見られる鉄道としても有名です。鉄道としては初めて「日本夜景遺産」に認定されています。週末を中心に、車内の灯りを消して走る「夜景電車」も運行されています。
詳しくは、岳南電車のWebサイトをご確認ください。
【岳南電車 乗車記1】 吉原駅から岳南電車に乗車!
日曜日のお昼過ぎ、東海道本線の吉原駅に到着し、跨線橋を渡って、JR吉原駅の北側にちょこんとある岳南電車の吉原駅へ。
岳南電車の窓口で「全線1日フリー乗車券」を購入しました。
横長の硬券で、1月上旬だったこともあってか、お正月バージョンのイラストが描かれていました。
「全線1日フリー乗車券」は、岳南電車に1日乗り放題で720円。吉原~岳南江尾の片道が370円、往復が740円ですので、全線を1往復するだけで元が取れます。
改札でフリー乗車券を見せてホームへ。ホームで待っていると、やってきたのは、元京王電鉄3000系の7000系電車。この日は、年末年始限定の「だるま電車」の塗装でやってきました。
電車は1両で、車内はロングシート。この日は、とても天気が良い日でしたので、観光客や家族連れが多く乗車していました。
12時57分、ロングシートの座席が半分くらい埋まるほどの乗客を乗せて、吉原駅を発車しました。
【岳南電車 乗車記2】 富士山、工場、そして富士山!
吉原駅を出発すると、すぐに川を渡りますが、このあたりが、まず最初の富士山絶景スポット! 進行方向右側の車窓から富士山をバッチリ眺めることができます。
川を渡る直前に撮影した写真ですが、雪をたたえた富士山が、青空によく映えています。静岡県から眺める富士山らしく、宝永火口もよくわかりますね。
田子の浦港へ注ぐ川を渡っている最中にも、富士山をきれいに眺めることができます。ちょっと鉄塔が被ってしまいますが……。
吉原本町駅ではかなりの乗降がありました。市街地に近い駅のようです。市街地に近いところでは、家の軒先をかすめるように進んでいきます。都市部を走る短い路線ではよく見られる光景です。
次の見どころは、岳南原田駅近くにある工場です。工場の敷地内を電車が走り抜けていきます。
工場の配管の下を電車が走ります。かなりのカーブになっていて、電車はゆっくりと工場を通過していきました。工場地帯の近くを走る鉄道は多いですが、本当に工場の敷地のようなところを通過するのは珍しいですね。
夜になると、工場の照明が作り出す「工場夜景」を電車の中から眺めることができるそうです。
いつの間にか、吉原駅を出発した時とは進行方向が180度逆になっていて、東の方へ向かって進んでいます。そのため、進行方向左側に富士山が見えるようになってきます。
とはいえ、住宅街の中を走る岳南電車。どこからでもバッチリと富士山が見えるわけではありません。
後半戦の富士山絶景スポットは、岳南富士岡駅を出て、赤渕川という小さな川を渡る付近です。川があるために、視界を遮る住宅が少なく、富士山をきれいに見ることができます。
ほんの少しですが、吉原駅周辺で見た富士山よりも大きく感じるのは、少し北側へ移動して、富士山との距離が縮まったからでしょうか。
【岳南電車 乗車記3】 住宅街の中の終着駅、岳南江尾駅
再び住宅街の中を進んでいくと、まもなく、終点の岳南江尾駅に到着です。
13時18分に岳南江尾駅に到着。吉原から20分ちょっとの旅でした。
岳南江尾駅は、幅の広いホームの真ん中に花が植えられていました。花の両側には電車。青空が広がり、住宅街の中にありながら、空が広く感じます。
岳南江尾駅の駅舎です。駅員がいそうな雰囲気ですが、無人駅です。小さいながら、立派な駅舎ですので、以前は駅員がいたのでしょうね。
岳南江尾駅の目の前には、東海道新幹線の高架橋があり、新幹線が高速で駆け抜けでいきます。時速40キロ程でのんびりと走る岳南電車とは対照的です。
【岳南電車 乗車記4】 貨物輸送自体の機関車がただずむ岳南富士岡駅
岳南江尾駅からは、折り返し13時24分発の「だるま電車」に乗ります。
このまま吉原まで戻ってもつまらないので、途中の岳南富士岡駅で下車。この駅で途中下車したのは、岳南江尾駅へ向かう途中で、車両基地のようなものが見えたからです。
駅の横には検修設備があり、9000系電車が止まっていました。元富士急行の1200形を譲り受けて改造したものだそうですが、富士急行に譲渡される前は京王電鉄の5000系という車両でした。
そして、岳南富士岡駅には、貨物輸送で活躍していた古い機関車たちが残されています。
岳南電車の前身(親会社)の岳南鉄道は、以前は貨物輸送も実施していましたが、2011年に廃止。その後、2013年に、鉄道事業を子会社の「岳南電車」に移管したという経緯があります。
上の写真は、ED50形とED29形の電気機関車です。
ED50形(ED501)は、元上田温泉電軌(現在の上田電鉄)が1928年に導入した電気機関車(川崎造船製)で、その後、名古屋鉄道へ譲渡。名古屋鉄道で貨物列車の牽引に利用されたあと、岳南鉄道にやってきたそうです。
ED29形(ED291)は、豊川鉄道で利用されていた電気機関車で、その後、岳南鉄道にやってきました。
岳南富士岡駅のホームからは、ED29形電気機関車と富士山を一緒に撮ることができました。
ED40形機関車も2両ありました。ED40形は、元国鉄の電気機関車で、ラックレールを利用するアプト式の電気機関車です。国鉄の横川機関区に配備され、信越本線の横川~軽井沢、いわゆる「横軽」で活躍していましたが、その後、駿豆鉄道(現在の伊豆箱根鉄道)を経由して、岳南鉄道にやってきました。
かつて、横軽で活躍していた電気機関車に、岳南電車で遭遇するとは、不思議な感じです。
【岳南電車 乗車記5】 再び岳南江尾駅を経由して吉原駅へ
このあとは、吉原駅へ戻るだけですが、吉原行きの電車はしばらくないので、再び岳南江尾行きの電車に乗車。13時41分発の電車です。
13時47分に岳南富士岡駅に到着。乗ってきたのは、吉原から乗った「だるま電車」と同じく7000系の電車。こちらは、塗装は通常でしたが、「2020賀正」の大きなヘッドマークがついていました。
本日二度目の岳南江尾駅ですので、ホームの散策はそこそこに、折り返し列車の車内でのんびり。ロングシートの車内はガラガラでした。
終点の一つ前のジヤトコ前と吉原駅の間のカーブでは、最後尾から富士山が見えました。ちょっと雲がかかってきましたが、良く晴れた一日で、岳南電車と富士山を満喫することができました。
14時20分、吉原駅に到着。わずか1時間半の岳南電車の旅でしたが、富士山や工場の車窓、そして、ちょっとだけ途中下車も楽しむことができました。
以上、『【岳南電車 乗車記】富士山を間近に望むミニ鉄道! 工場敷地内を走る様子も必見!』でした。とても短い鉄道ですが、富士山の車窓は抜群です。車窓を眺めるだけでも楽しいですし、鉄道ファンなら岳南富士岡駅の古い機関車を見に行くのもおすすめです。
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コメント
ひさ (id:kzlife)さん
こんにちは!
岳南電車いいですね!
乗ってみたいとは思っていてもなかなか行けず…。
工場夜景も盛り込むと遅くなっちゃいますしね…(;゚ロ゚)
昼間も富士山キレイですね(*´∀`)
ハヤトさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。
岳南電車、本当に富士山が近くに見えて、短い路線にもかかわらず満足度が高かったです。
富士山と工場夜景を一緒に見ようとすると、丸一日かかっちゃいますね。富士山は午前中のほうが雲がかかってなくて見やすいですし。