大糸線の北部、南小谷~糸魚川間は、姫川に沿って進む川の路線。観光路線の色合いが強い南小谷以南とは異なり、小さな気動車が行き来するローカル線ですが、急峻な地形と姫川の流れが車窓を飾ります。そんな大糸線の北側の区間に乗車してきましたので、乗車記をお届けします。
大糸線とは?
大糸線は、松本~糸魚川を結ぶJR東日本・JR西日本の路線です。
南側の松本~南小谷(みなみおたり)間(全長70.1km)はJR東日本の管轄で、電化されています。沿線には穂高、大町、白馬など、北信州の観光名所が数多くあり、特急「あずさ」や「ワイドビューしなの」が走ります。
一方、この記事で紹介する北側の南小谷~糸魚川間(全長35.3km)は、普通列車だけが行き来する非電化路線。姫川がつくる急峻な渓谷を縫うように走ります。南小谷~糸魚川の全線を走る列車は1日に7往復のみという閑散路線です。
西側には3000メートル級の山々が連なる北アルプス、東側には妙高山など2000メートル級の山々からなる頸城(くびき)山塊があり、大糸線は、これらの山々の間の急峻な渓谷の中を走ります。
長野県の白馬村に源流を発する姫川沿いに走り、途中、何度も姫川を渡ります。これだけの高い山々に囲まれた川ですので、大雨が降るとすぐに洪水が発生する「暴れ川」でもあります。大糸線のこの区間も、何度も災害で不通になったことがあります。
それだけの険しい地形の中を走る路線ですので、車窓もなかなかのものです。
大糸線(南小谷~糸魚川)乗車記
それでは、早速、大糸線の南小谷~糸魚川間の乗車記をお届けします。
乗車したのは2020年7月。この日は、長野からJR東日本の観光列車「リゾートビューふるさと」に乗車してきて、南小谷駅で、糸魚川行きの普通列車に乗り換えたのでした。
「リゾートビューふるさと」と、大糸線の南側の乗車記については、以下の記事で詳しく紹介しています。
南小谷駅3番ホームにキハ120形が入線
「リゾートビューふるさと」が南小谷駅の2番線に到着したあと、14時25分頃に、折り返し糸魚川行きとなる列車が入ってきました。
JR西日本の非電化ローカル線でよく見られるキハ120形気動車です。車体の小さな車両ですが、大糸線では1両で運行されていることが多いようです。それだけ、乗客が少ないということですね。
車内は半分がボックスシート、もう半分がロングシートになっています。手前左側はトイレです。
そこそこ乗客がいますが、ほとんどが、筆者同様に「リゾートビューふるさと」から乗り継いだ人たちです。おそらく青春18きっぷを利用している人が多いと思います。何とかボックスシートの窓側の座席を確保しました。
姫川を眺めながら北へ
14時43分、座席が6~7割ほど埋まった状態で、南小谷駅を発車します。
すぐに、進行方向左側に姫川が見えてきます。糸魚川の市街地に入る前まで、ずっと姫川に沿って進んでいきます。
あいにくの小雨模様ですが、川の水はかなり澄んでいることがわかります。なかなか梅雨が明けず、雨の日が多いにもかかわらずこの水の色ですから、普段はもっと透明なのでしょうね。
大糸線は何度も姫川を渡ります。そのたびに、車窓の左側から右側へ、そしてまた左側へと、目まぐるしく姫川が移動します。
姫川を渡るときには、川の水の様子がよくわかるのですが、やはり、かなり澄んでいますね。
中土(なかつち)、北小谷と小さな駅に停車しながら、そして、何度か姫川を渡りながらゆっくりと進んでいきます。
沿線随一の観光地、姫川温泉最寄りの平岩駅へ
アルペンルートの玄関口がある大町や、登山・スキーのメッカ、白馬などがある大糸線南部に比べると、大糸線北部は大きな観光地がないのですが、沿線で随一の観光地といえるのが、平岩駅の近くにある姫川温泉です。
※写真は2018年1月に撮影したものです。
姫川沿いに、何件かの温泉旅館が並んでいます。秘湯・秘境をアピールしている温泉地のようですが、古めの外観の建物と相まって、静かで渋い温泉地に見えます。
最も地形の険しい平岩~小滝間、25km/h制限でゆっくり進む
平岩駅を出ると、より一層地形が険しくなってきます。
姫川はすぐに氾濫を起こす「暴れ川」なので、護岸が整備されているところもありますが、それでも、川の両側が急峻な谷になっているため、大雨が降ると土砂崩れなどの被害を避けられません。
平岩駅と次の小滝駅の間も、2013年には護岸が崩れたために不通となっていました。
そんな地形のためか、あちこちに25km/h制限の区間があり、列車はノロノロと進んでいきます。
対岸の道路を見てもわかりますが、川岸と山の斜面の間に無理やり道路を通した感じで、ずっとシェルターに覆われています。こちら側の大糸線の線路も同様です。よくまあ、こんなところに鉄道や道路を通したものだと感心してしまいます。
護岸が整備されていないところでは、大雨で崩れたと思われる跡があちこちで見られます。それに、この大きな岩は、落ちてきたのでしょうか……。
糸魚川の住宅地から市街地へ
根知(ねち)駅で対向列車と行き違いのために4分停車。ここまで来ると、姫川も下流域に入ってくるために、渓谷よりも平地が目立つようになってきます。
糸魚川から二つ目の頸城大野(くびきおおの)まで来ると、田園風景の中に住宅が増えてきます。このあたりからは糸魚川の市街地に入ります。
15時45分、南小谷から1時間ちょっとで、定刻通りに終点の糸魚川駅に到着しました。
大糸線の列車は、3番線ホームの端っこに設けられた切り欠きホームの4番線に到着します。
下車した乗客は、3分の乗り継ぎで、えちごトキめき鉄道の直江津行きの列車に吸い込まれていきました。
大糸線で活躍したキハ52を利用した「キハ52待合室」
糸魚川駅で時間があればぜひ立ち寄ってみたいのが、「糸魚川ジオステーション“ジオパル”」です。
「糸魚川世界ジオパーク」の情報発信のために糸魚川市が建設した施設ですが、その中に、大糸線で活躍していたキハ52という古い車両を利用した「キハ52待合室」があります。
国鉄色に塗装されたキハ52がそのまま保存されています。待合室として使われているため、車内に入ることもできます。
車内は大糸線を走っていたときのまま! ボックスシートが通路の両側に並びます。
ボックスシートのいくつかには、地元の学生さんや観光客と思われる人たちが座って休んでいました。
運転台やワンマン対応の運賃箱、運賃表もそのままですね。
この車両は、2010年まで大糸線で走っていたキハ52-156という車両です。
大糸線で現役のときは、朱色(首都圏色)の塗装でした。この写真は2008年に乗車したときのものですが、車両番号が「キハ52 156」となっていますので、上で紹介した糸魚川駅のキハ52と同じ車両だということがわかると思います。
鉄道ファンの方、かつて大糸線のキハ52に乗車したことのある方は、必見ですよ。
以上、「【大糸線(南小谷~糸魚川)乗車記】姫川の険しい地形に沿って走る、渓谷の車窓が美しい路線!」でした。険しい地形を走る列車の車窓ほど魅力的なものですが、大糸線から眺める姫川もなかなかのものです。穏やかな大糸線南部とは異なる車窓を楽しんでみてください。
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