岐阜県の恵那駅(中央本線)と明智駅を結ぶ明知鉄道。全長25kmという短いローカル線ですが、急勾配とカーブが連続します。急勾配の途中に設けられた駅「飯沼駅」や、周辺い大正時代の建物が多く残る終着駅「明智駅」など、短距離ながら見どころが多い鉄道です。そんな明知鉄道の乗車記をお届けします。
岐阜のローカル鉄道、明知鉄道「明知線」
明知鉄道 明智線は、中央本線の恵那駅と明智駅を結ぶ全長25kmの路線です。岐阜県や恵那市等が出資する第三セクター「明知鉄道株式会社」が運行しています。
元は、旧国鉄の明知線でしたが、国鉄時代末期に、乗客が少なく、廃止対象となる「特定地方交通線」に指定されます。1985年に、明知鉄道が国鉄から明知線を引き継ぎ、明知鉄道明知線として再スタートを切りました。
明知鉄道が走るのは、岐阜県南部の内陸部。中央本線(中央西線)の恵那駅から南側へ線路が伸び、途中、2つの峠を越えて、明智駅へと至ります。
平日は14往復、土休日は13往復が運転されています。お昼の1往復が急行「大正ロマン」として運転される以外は、全て各駅停車としての運転です。
明知鉄道明知線の特徴は、短距離の路線のわりに、急勾配やカーブが多いことです。途中、33パーミル(1000メートル進む間に33メートル登る)の急勾配に駅があるなど、なかなか変化に富んだ路線です。
そんな、明知鉄道明知線の乗車記をお届けします。
恵那駅でフリーきっぷを購入して明知線に乗車!
この日は、名古屋駅前のビジネスホテルを早朝に出発。名古屋駅から中津川行きの列車に乗って、恵那駅に7時50分に到着しました。
JRの改札を出て、左手に小さな明知鉄道の恵那駅があります。
恵那駅の窓口でフリーきっぷを購入します。通常の「1日フリー乗車券」は、恵那~明智間の全線を往復する運賃と同じ1,380円なのですが、2020年10月~2021年3月の期間限定で、「明知鉄道やりすぎ?!フリー切符」というフリーきっぷが発売されています。
沿線の観光施設の入場券がセットになったきっぷもありますが、最も基本的なフリーきっぷは「やりすぎ?!フリー切符A」というタイプで、なんと690円! 通常の1日フリー乗車券の半額、恵那~明智間の片道運賃と同じという、格安のフリーきっぷなのです。本当に「やりすぎ」です(笑)
1日フリー乗車券を購入して、改札口を入ると、すでに明智行きの列車が入線していました。明智鉄道の恵那駅は、東海道本線のホームの南側に並列して設置されていますが、ホームの長さは短く、行き止まりタイプになっています。
「麒麟がくる」ラッピングの黄色い車両。明智光秀ゆかりの地ならではです。
ドアとドアの間に長いロングシート。床や天井、ドア横の壁までも、きれいにラッピングされていました。(写真は、明智駅停車後に撮影)
恵那駅発車時点では、乗客は7~8名ほどでした。土曜日の朝8時ということで、学生さんが多く、観光客らしき人の姿は見えませんでした。
明知線最初の登りを経て、急勾配の途中にある「飯沼駅」へ
8時03分、恵那駅を出発します。恵那駅のすぐ横にある踏切を通過して、中央本線と並走しますが、すぐに分かれ、南へ針路をとります。
恵那の市街地のふちを、北から東へぐるりと周りこむように進みます。恵那の市街地を流れる阿木川がつくる河岸段丘なのでしょうか、市街地の淵は少し高くなっています。
恵那駅から5分で、東野(ひがしの)駅に到着。あっという間に市街地の端までやってきて、ローカル色が強くなってきました。
東野駅を出ると、一気に登り坂に差し掛かります。市街地を抜け、山の合間を縫って走ります。次の飯沼駅まで、たっぷり約10分、阿木川の支流の飯沼川がつくった谷に沿って進みます。ずっと登り坂で、エンジン音が響きます。
上の写真は車両最後尾から撮影したものですが、実際に見てみると、かなりの急勾配になっているのがわかります。
8時17分、飯沼駅に到着です。山間にある静かな駅ですが、この駅、33パーミルという急勾配の途中にあります。ホームには「勾配日本一の駅」という看板があります。
今は日本一ではないそうですが、それでも鉄道路線で33パーミルの勾配といえば、滅多にないほどの急勾配。飯沼駅は、明知線が国鉄から明知鉄道に引き継がれたあとに設置された駅だそうです。急勾配の途中に駅を設置することは、通常は認められないそうなのですが、当時の運輸省(現在の国土交通省)に特別な許可をもらって設置に至ったそうです。
田園風景を走り交換駅の「岩村駅」へ
8時22分、阿木駅に到着。一つ前の飯沼駅に比べると、だいぶ視界が開けていますが、標高はあまり変わらないようです。のどかなローカル線の駅といった風情です。
8時33分、岩村駅に到着。恵那行きの列車と交換します。明知鉄道明知線は、全列車が恵那~明智間を走りますが、この岩村駅で行き違いするダイヤが組まれているようです。恵那駅から約30分、明智駅から約20分と、明智駅にやや近い位置にある駅です。
構内踏切を中央に、上りホームと下りホームがずれて設置されている千鳥式の駅になっています。古い待合室やホームの上屋、それに、ホーム横にある高い木がアクセントになっていて、とても良い雰囲気の駅でした。
行き違いをした恵那行きの列車には「Merry Christmas」とかかれたヘッドマークが付けられていました。
気がつくと、数名乗車していた高校生の大半が下車してしまい、車内には、学生さん2名と私だけになっていました。
急勾配第3位の「野志駅」を経て、終点の「明智駅」へ
8時50分、野志(のし)駅に到着。この駅も急勾配の途中にあります。勾配は30パーミルということで、岩村駅には及びませんが、それでも、日本の普通鉄道の駅の中では、飯沼駅に次いで、第3位の急勾配にある駅なのだそうです。
飯沼駅と同じく、山の谷間にあるような駅です。すぐ横には国道が並行していますが、大きな集落はなく、とても静かな駅です。
山の合間を抜けて、少し開けたところに出てくると、まもなく終点の明智駅に到着しました。
うしろから別の車両が近づいてきたので、連結するのかと思って見ていたのですが、どうやら車庫への入れ替えだったようです。乗ってきた車両に近づきすぎないように、駅員さんが誘導しているのでした。
明智駅には、明知鉄道の車両基地があります。いくつか車両が止まっていましたが、駅構内には、もう運転されていない古い車両が置かれていました。
1985年、第三セクターとして開業したときに用意された「アケチ1形」という気動車の増備版で、「アケチ6形」という気動車のようです。2017年まで使われていたようですが、現在は明智駅に留め置かれています。いわゆる「レールバス」と呼ばれる車両ですね。
明智駅の駅舎の外に出てみました。なかなか雰囲気のある駅ですが、なぜか焼いもを売っていました。明智駅が販売しているようで、駅員さんがときどき、焼いもの様子を見に来ていました。明知鉄道の貴重な副収入なのかも。
明智駅周辺の「日本大正村」を散策
明智駅からは折り返しの列車に乗る予定ですが、発車時刻まで30分ほどあるので、駅の周辺を歩いてみます。
明智駅前の国道を渡ると、すぐに「大正浪漫亭」があります。このあたりは、大正時代の古い建物が多く残されていて、町を挙げて「日本大正村」としてアピールしているのです。
この大正浪漫亭そのものは古い建物ではないですが、お土産屋やカフェ、レストランなどが入っていて、日本大正村観光の拠点になっているようです。広い駐車場もありますし、近くに観光案内所もありました。
大正浪漫亭のすぐ裏には、大正時代の面影を残す路地「大正路地」があります。路地の両側には古い蔵の建物が並びます。米蔵や呉服屋の蔵だそうです。
車道を渡って少し坂を登ると、白い洋館風の建物があります。明治39年、明智町の町庁舎として建てられた「日本大正村役場」です。今は、役場としては使われておらず、資料館兼休憩所となっているようです。
「日本大正村役場」の入口です。赤いポストも置いてあり、大正時代の雰囲気が感じられます。
路地の突き当りには「絵画館」なる建物がありました。元小学校の建物だそうですが、今は学校としては使われていなくて、絵画や書物などの展示に利用されているとのことです。
まだまだ見どころはたくさんある日本大正村ですが、時間切れでここまで。今度来るときには、1本列車を遅らせて、じっくりと見学してみたいところですね。
このあとは、先ほど明智駅まで乗ってきた列車に乗り、恵那駅まで戻りました。
以上、「【明知鉄道 乗車記】短距離ながら急勾配とカーブが連続する岐阜のローカル線!」でした。短距離のローカル線なのに、勾配とカーブが連続する、乗っていてなかなか楽しいローカル線です。明智駅周辺の大正昭和村での観光も兼ねて乗車してみてはいかがでしょうか。
関連記事
当ブログで紹介している、観光列車やSL列車、風光明媚な路線の乗車記の目次ページです。
コメント